NTTの11万人リストラ反対のアピール

呼びかけ人
   東京合同法律事務所   弁護士 上田 誠吉
   天王寺法律事務所    弁護士 字賀神 直
   東京法律事務所    弁護士 坂本  修
   杉井静子法律事務所  弁護士 杉井 静子
   龍谷大学法学部       教 授 萬井 隆令
   日本福祉大学経済学部 教 授 大木 一訓
   日本大学経済学部   教 授 牧野 富夫
   全国労働組合総連合  議 長 小林 洋二
   通信産業労働組合   委員長 岩崎  俊
 

          ア ピ ー ル(案)

1、国が46%の株式を保有する持株会社日本電信電話株式会社(NTT)は、2001年4月に「事業構造を改革する」として3カ年計画を発表し、これに基づきNTT東日・西日本会社は、傘下の社員が3人中2人の割合で対象となる(対象人員11万名強)リストラ「合理化」計画を打ち出し、来年4月から実施に移そうとしている。その計画の内容は、電話受付、保守・管理などの業務を県・地域別に新設するNTT100%出資の別会社に「外注化」し、50歳以下はNTTから在籍出向させ、50歳以上の社員は、退職のうえこの別会社に再就職させるが、賃金は3割引き下げるというものである。NTTは、この一方的で不利益な「退職」に同意しない社員には、「今までの仕事はない」「勤務地は、全国配転を了解すること」として大幅な変更になるとしている。

2、しかし、このNTTのリストラ「合理化」計画には、看過できない重大な問題がある。
 第1に、50歳以上の社員が、「外注化される仕事」を引き続き働くには、解雇に等しい「退職を認めて、賃金30パーセント切り下げという労働条件の大幅切り下げに応じて「再雇用」するしかないということは、「労働条件の一方的不利益変更の禁止」という労働のルールの破壊である。
 第2に、50歳という年齢を理由に「退職」(解雇)と賃金の大幅切り下げを強いるというのは、法の下の平等(憲法14条)に反し、不合理な差別を禁止した労基法(第3条)の基本的趣旨に反するものであって許されないものである。そもそも、業務を「外注化」するといっても、NTTの100%子会社への「外注化」なので、NTTに在籍したままでの「出向」も可能なはずである。この「在籍出向」の道を社員や労働組合の意向を無視して、50歳以上の社員に「選択の道」から一方的に除外することは、不合理な年齢差別による労働条件の不利益変更にあたることは明白である。
 第3に、NTTの計画が、50歳以上の社員に「在籍出向」の道を除外し、また、その合理的説明さえ欠いたまま、社員に対して、NTTに在籍して勤務地を問わない別業務の道か、「退職」して賃金引き下げの道かという選択だけを迫るのは、「退職」を拒否すれば事実上仕事がなくなるという脅しと、かつ、働けない遠隔地配転がされるという脅しによって「同意」を強要し、法的に許されない「退職」(解雇)の承諾とこれと結びついての労働条件の不利益変要を強制するものである。これは法が認める本来の自由な判断による「同意」ではなく、「強制による同意」であって、その「同意」を口実に違法行為の責任を免れようとすることは到底認められるところではない。
 第4に、NTTのやり方は労働協約に違反している。NTTグループの各会社においては、NTT労組との間で「転籍に関する労働協約」があり、退職金は転籍前後を通算することとなっているうす、別会社への転籍は、「現行労働条件の持込」として変更しないとしている。今回のNTTの計画で、「50歳退職・再雇用」は「転籍」そのものである。ところが、NTTは、これを「転籍」といわず適用しようとしていない。もともと「転籍」については、労使協約があっても個々の社員の同意なしに出来ることではないが、少なくとも使用者が協約上約束したことは個々の社員との労働契約の内容に転化し、一人ひとりの労働者の権利になっている。従って、上記協約内容を無視して、今までの労働条件を不利益に変更する労働契約の変更(NTT東・西会社からの「退職」(解雇)の承認と別会社での不利な労働契約のて締結)を迫ることは、個々の労働者の同意がない限り許されないことである。

3、以上から、今回のNTTのリストラ「合理化」計画は、多くの違法・脱法があり、黙過することはできない。
 さらに立ち入って本件の実態をみれば、NTTは持株会社のもとにNTTドコモなども含めた巨大なグループ企業であり、2000年度連結営業利益8983億円という日本一の巨大な利益を計上している。東・西会社の「赤字」は、グループ全体の利益などのために接続料を大幅に引き下げたなどの結果であり、その犠牲を東・西会社の社員に転嫁することは企業の社会的責任に反する。
 この間の小泉内閣による「構造改革路線」に激励されたかのように、通信、情報、電機、自動車といった、今後も成長が見込まれ、かつ高蓄積を果たしている産業分野でも、名だたる大企業が人員削減、「合理化」計画を発表し、実施に移している。政府は、国民・労働者の完全雇用を目指すのがその重要な役割であるにもかかわらず、現実の政府の施策は明らかにこれに逆行している。NTTは、国が株式の46%を保有する半官企業であり、国の方針によってその経営方針が定まるといって過言でない。となれば、法に基づいて動くべき政府が、上記のとおり違法不当な「合理化」計画を認め、NTTにそのまま実行させることは、許されるはずがない。ちなみに、昨年政府が提案して成立した「会社分割」に伴う「労働契約承継法」によっても、「会社分割」に際して新会社では「労働条件を低下させてはならない」と厳しく定められている。政府は、この法の趣旨からもNTTのこのリストラ計画を改めさせるべき責務がある。
 よって、われわれは、NTTが上記のわれわれが求める方向で事態を解決するように、政府としての指導と必要な株主権の行使を行うよう強く求める。

 以上から、われわれは、NTTが現在の計画を白紙に戻して、上記の重要問題を解決した内容で労使協議を尽くすこと必要不可欠であり、それ以前に個々の社員の「意思」選択を迫ることは、決して行うべきでないと考える。
 われわれは、このことを強く求め、NTT労伽者および広くわが国労働者全体にアピールするものである。

以上

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