第三十八期京都府地方労働委員会労働者委員の補欠任命にあたって公正・公平な任命を求めるアピール

 連合京都推薦の歴代の京都府地方労働委員会の労働者委員が、連合京都の政治団体「きょーと連合」の政治資金虚偽報告とそれにもとづく所得税の不正還付問題に深く係わっていたことが発覚し、「寄付の事実がなかったにもかかわらず、寄付金控除による税の優遇措置を受けていた」第三十八期労働者委員の辞任によって、第三十八期京都府地方労働委員会労働者委員の補欠任命がおこなわれることになった。わたくしたち関西の労働法学者、京都の弁護士は、今回の補欠任命にあたって、労働委員会制度の趣旨・目的をふまえた任命、すなわち労働者委員を連合京都推薦の委員に独占させていることの是正を求めるものである。

 そもそも、労働委員会制度は、日本国憲法、労働組合法にもとづく、使用者による不当労働行為から労働者・労働組合を救済し、労働争議の調整・あっせんをおこない解決する、労働者の労働基本権を守るための制度である。このような重要な意義をもつ労働委員会が十分機能するためには、労働委員会を構成する委員の任命が公正・公平になされなければならないことは言うまでもない。特に、労働者委員の任命にあたっては、労働者委員が不当労働行為によって組合活動の権利を侵害されている労働者の主張や、争議中の組合の主張を労働委員会の審議に正確に反映する役割を担い、また公益委員の任命に対する同意権ももっていることから、いっそうの公正・公平さが求められる。

 京都の労働者、労働組合が意見や運動の進め方の違いから、連合京都と京都総評という二つのローカルセンターに別れている京都の労働界の現状のもとで、労働委員会申し立てと組合と労働者委員が信頼関係を保ち、労働委員会の審議を円滑に進めていく上でも、それぞれのローカルセンターから労働者委員を選任することが不可欠である。地方労働委員会の任命手続きを定めた昭和二十四年七月二十七日付労働省通牒第五十四号が「委員の選考にあたっては(ローカルセンター毎の」系統別組合員数に比例させる」ことを定めているのは、かかる趣旨からである。しかるに、「京都総評排除、連合京都独占」という労働者委員の任命の現状は、地方労働委員会が正常に機能することを著しく妨げていると指摘をせざるをえない。

 昨年二00二年六月、第二八四回ILO理事会は、ILO結社の自由委員会の日本政府に対する「労働委員会およびその他の審議会の公正な構成にたいするすべての労働者の信頼を回復するために、すべての代表的な労働組合組織にたいして公正かつ平等な取り扱いを与える必要にかんする結社の自由原則にもとづく適切な措置をとるよう求める」勧告を採択した。日本政府は、ILOに対し、この件に関する進展についてひきつづき情報提供するよう求められている。こうした動きもうけて、昨年、東京・大阪・高知・埼玉・和歌山に続いて、長野・千葉・宮城で県労連推薦の労働者委員が任命され、連合独占をあらためる動きが全国的に広がっている。

 昨今、リストラ「合理化」の横行、一方的な解雇や賃金・労働条件の切り下げなどによって、労働争議が増える傾向にある。こうしたときにこそ、労働委員会はその役割を果たさなければならない。京都府労働委員会の信頼を回復し、その機能が十分に発揮されるためにも、わたしたちは、今回の京都府地方労働委員会の労働者委員の補欠任命にあたって、「京都総評排除、連合京都独占」の弊害の除去、公正・公平な任命を強く求めるものである。
 

浅野 則明(弁護士)  荒川 英幸(弁護士)  井関 佳法(弁護士)
一岡 隆夫(弁護士)  岩佐 英夫(弁護士)  岩橋 多恵(弁護士)
大河原 寿貴(弁護士) 大橋 範雄(大阪経済大学教授)
大脇 美保(弁護士)  小笠原 伸児(弁護士) 岡根 竜介(弁護士)
久米 弘子(弁護士)  小林 務(弁護士)   佐藤 克昭(弁護士)
佐藤 敬二(立命館大学教授) 高山 利夫(弁護士)
中島 正雄(京都府立大学教授) 中島 晃(弁護士)
中村 和雄(弁護士)  野村 泰彦(弁護士)  平田 武義(弁護士)
福山 和人(弁護士)  藤浦 龍治(弁護士)  藤澤 眞美(弁護士)
宮本 平一(弁護士)  村井 豊明(弁護士)
村下 博(大阪経済法科大学教授) 村松 いずみ(弁護士)
村山 晃(弁護士)   森川 明(弁護士)   山田 耕造(京都府立大学教授)
吉田 隆行(弁護士)  吉田 美喜夫(立命館大学法学部教授)
萬井 隆令(龍谷大学教授) 渡辺 馨(弁護士)
渡辺 哲司(弁護士)

二00三年二月十日

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