第三十九期京都府地方労働委員会労働者委員の任命にあたって公正・公平な任命を求めるアピール


 第三十九期となる京都府地方労働委員会の委員の改選が、京都府知事の手によっておこなわれようとしている。周知のように、京都府地方労働委員会の労働者委員の任命については、「京都総評排除、連合京都独占」という極めて異常で不正常な事態が長年に渡って続いている。今回の任命は山田啓二氏が京都府知事となって初めての全面改選であるが、わたしたち京都の労働法学者、弁護士は、今回の任命にあたって、労働委員会制度の趣旨・目的をふまえた任命、すなわち労働者委員から京都総評推薦委員を排除し、連合京都推薦の委員に独占させている現状を是正することを強く求め、ここに連名のアピールを発表するものである。

 そもそも、労働委員会制度は、日本国憲法、労働組合法にもとづく、使用者による不当労働行為から労働者・労働組合を救済し、労働争議の調整・あっせんをおこない解決する、労働者の労働基本権を守るための制度である。このような重要な意義をもつ労働委員会が十分機能するためには、労働委員会を構成する委員の任命が公正・公平になされなければならないことは言うまでもない。特に、労働者委員の任命にあたっては、労働者委員が不当労働行為によって組合活動の権利を侵害されている労働者の主張や、争議中の組合の主張を労働委員会の審議に正確に反映する役割を担い、また公益委員の任命に対する同意権ももっていることから、いっそうの公正・公平さが求められる。

 京都の労働者、労働組合が要求や運動の進め方の違いから、連合京都と京都総評という二つのローカルセンターに別れている京都の労働界の現状のもとで、労働委員会申し立て組合と労働者委員が信頼関係を保ち、労働委員会の審議を円滑に進めていく上でも、それぞれのローカルセンターから労働者委員を選任することが不可欠である。地方労働委員会の任命手続きを定めた昭和二十四年七月二十七日付労働省通牒第五十四号が「委員の選考にあたっては(ローカルセンター毎の)系統別組合員数に比例させる」ことと定めているのは、かかる趣旨からである。しかるに、「京都総評排除、連合京都独占」という労働者委員の任命の現状は、地方労働委員会が正常に機能するのを著しく妨げていると指摘をせざるをえない。

 昨年二〇〇三年三月、ILOは、日本政府に対して、「労働委員会及び他の審議会における構成の公平性に対するすべての労働者の信頼を回復するために、結社の自由原則にもとづいて、すべての代表的な労働組合組織に公平で平等な待遇を与えるために適切な措置を講じる」ように勧告した。この勧告は日本政府にだけ宛てられたものではない。また、昨年七月には、福岡地裁が、「県労連の推薦候補を排除したのは、知事の裁量権を逸脱している」と明確に判じた。

 咋今、リストラ「合理化」の横行、一方的な解雇や貸金・労働条件の切り下げなどによって、労働争議が増える傾向にある。こうしたときにこそ、労働委員会はその役割を果たさなければならない。京都府労働委員会の信頼を回復し、その機能が十分に発揮されるためにも、わたしたちは、今回の京都府地方労働委員会の労働者委員の任命にあたって、「京都総評排除、連各京都独占」ということを改め、公正・公平な任命を強く求めるものである。
 

二〇〇四年三月 日