JR採用差別事件について
最高裁判所に弁論の開催と公正な判決を求めるアピール

 国鉄の分割・民営化に際し て、国鉄労勘組合(国労)・全国鉄動力車労働組合(全動力労・現全日本建設交運一般労働組合全国鉄道本部)の組合員らが組合所属・組合活動を理由にJRへの採用を拒否されました。そのうち1047名の組合員は国鉄清算事業団からも解雇され、16年余にわたってJRへの採用を求めてたたかいを続けています。
 中央労働委員会は、中心的な争点であった「JRの使用者性」についてこれを認め、JR職員の選別の際に不当労働行為が行われたことを詳細に認定したうえで、JTに対して救済命令を発しました。ところが、東京地方裁判所、東京高等裁判所は、JRが提訴した救済命令取消訴訟で、中央労働委員会命令の取消を命じる不当な判決を言い渡しました。 国労組合員に対する採用差別事件では、東京高等裁判所第9民事部(本州事件・2000年11月8日)同第7民事部(北海道・九州事件・2000年12月14日)が、いがれもJRへの採用手続を定めた国鉄改革法23条を根拠に、JRの職員選定の過程で国鉄が不当労働行為を行っても別法人であるJRが使用者として不当労働行為責任を負う余地はないとする判決を言い渡しました。これは、JRと国鉄の実質的な関係や国鉄改革法をめぐる国会答弁に示された立法者の意思を無視した不当な判断にほかなりません。
 他方、2002年10月24日の全動労事件判決(東京高等裁判所第8民事部)は、裁判所としてはじめて、JRの職員選定の過程で不当労働行為があったときはJRが使用者として責任を負うという判断を示しました。しかし、同判決は、JRの職員選定の過程で分割民営化に反対した全動労組合員が差別されたとしても、それは「国是」というべき国鉄改革のためにはやむをえないもので不当労働行為にはならないという、労働者の団結権を否定する不当な判断を示しました。
 現在、国労と全動労の採用差別事件は、最高裁判所の第一小法廷に同時に係属しています。最高裁判所には、事実と道理にもとづいてJRの使用者性を認める判断を行うこと、憲法28条が保障する団結権を事実上否定する全動労事件高裁判決の結論を変更することが求められています。
 本件に対する最高裁判所の判断は、国際的にも注日されています。国際労働機関(ILO)は、本年6月20日、全動労事件の東京高裁判決にも触れながら、採用差別事件が「結社の自由原則、すなわち、採用における差別待遇の点から極めて重大な問題であり、政府によって取り組まれるべきであることを強調する」とし、「政府と関係当事者が可能な限り最大多数の労働者に受け容れられる公正な解決を見いだす方向で努力を追求する」ことを強<求める勧告を出しました。最高裁判所の判断が、労働基本権を保障した憲法あよぴILO条約と勧告に沿うものでなければならないことはいうまでもありません。
 私たちは、以上の見地から、最高裁判所に対して、以下の点を強く要請します。

 1 国労事件・全動労事件について、口頭弁論を開催すること。
 2 中央労働委員会の救済命令の取消を命じた東京高等裁判所の判決を破棄し、JRの請求を棄却する判断を行うこと。