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今月のことば

2016年6月  梅雨の晴れ間

 梅雨がやってきて、ルーフバルコニーの緑が一段と濃くなってきました。緑に雨のしずくがしたたる風景も、いのちの恵みという感じがします。
 さくらんぼ、梅、ゆすら、ぐみ、桑、いちじく、ぶどう、きんかんなど、実のなる木をたくさん植えています。すこしずつ季節をずらしながら、芽が出て、葉が広がり、花が咲いて、小さな青い実をつけて、それらが色づいていくプロセスを眺める時間は、何ともいえない至福のひとときです。実が熟すと食べ頃をよく知っている野鳥たちがやってくるので、ほとんどは彼らが賞味することになりますが。
 今年は、ミニトマト、青じそ、キュウリ、ゴーヤ、シシトウ、パセリ、ミニレタスなどの野菜も、いつもよりも多く植えたので、その収穫も楽しみになりました。
 つかの間の晴れ間、バルコニーに寝イスを置いて、のんびり本などを読むのもいいものですね。長いあいだ晴耕雨読の生活にあこがれてきました。定年後は好きな本でも読んで・・・と想い描いていました。書斎にも書庫にも、そのときのためにと買いこんだ読み切れない本がいっぱい、いっぱいあふれています。しかし、実のところは、なかなかそのような時間がとれません。なぜか今もスケジュールに追われて暮らしています。
 今日は、ゆっくりしようと決めて、熊谷守一の画集を読みながら、ぜいたくな時間を過ごしました。彼にならって、寝イスに寝転んでみると、空が真上に広がって、見慣れた景色がすっかり変わりました。歩いたり立ったりしながら空を見上げているときとは違って、ひとつところにじっとしていると、雲がやってきては広がり、そして去って行く様子がよくわかります。風も木々を揺らしながら動いていくし、木々を通した光もきらきらまぶしく反射しながら動いていきます。
 下を見ると、蟻がたくさん歩いていました。マンション7階の屋上のルーフバルコニーまで、どこからどのようにしてやってきたのでしょうか。地面に寝転びながら、小さい生きものを見ることが好きだった守一によれば、蟻は左の二番目の足から歩き出すというのですが、それは何度見ても、わかりませんでした。


 地面に頬杖つきながら、蟻の歩き方を幾年も見ていてわかったんですが、蟻は左の二番目の足から歩き出すんです。

(96歳のときのことば)『熊谷守一画文集 ひとりたのしむ』求龍堂


写真 我が家のルーフバルコニーにて



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