立命館大学のトップページへリンク 知事リレー講義
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    2007年6月26日         
    鹿児島県知事  伊藤 祐一郎   さま
三つの挑戦
〜フェアな社会づくりを目指して〜

冒頭

 6月26日(火)に開催された全国知事リレー講義は、鹿児島県の伊藤祐一郎知事を迎えて「三つの挑戦〜フェアな社会づくりを目指して〜」をテーマに講義が行われた。伊藤知事は、旧自治省において財政局や行政局で課長を勤め、内閣府地方分権改革推進会議事務局長、自治大学校長などを歴任し、長年にわたって地方行政に関わり続け、総務省を退官した後、2004年に鹿児島県知事に初当選している。
 
鹿児島を取り巻く現状

 鹿児島県はその地理的特性として、奄美大島や屋久島など特色溢れる離島をかかえており、多様な風土を有している。さらに、今後も経済成長が予測されるアジア地域の最も近くに位置している。将来の鹿児島を考えるにあたって、勃興するアジア経済とどう付き合っていくのかが重要になるだろう。
 鹿児島県の課題としては、まず地域間格差の顕在化が挙げられる。日本の景気が上向きになったと言われるが、鹿児島県での低調な県民所得や求人倍率を見る限り、その恩恵を受けられない地方も存在している。現在の公共事業への投資においても大都市圏が中心で、相対的に地方への予算は縮小傾向にある。
 また、人口減少と高齢化の割合が非常に高く、集落人口の半数以上を高齢者が占める、限界集落への対応も今後の課題である。鹿児島県では、高齢化やワーキングプア、低所得の問題などがすべて同時進行で進んでいる。
 
鹿児島県における地方財政改革

 鹿児島県では、こうした厳しい状況のなかで財政の健全化へ取り組んでいる。伊藤知事の就任以降は、歳出の削減を毎年成功させている。一般財源ベースでみた場合、歳出において、人件費、公債費、普通建設事業費、一般政策経費の4項目が大きな割合を占め、こうした歳出を県庁の採用人数や職員の給与を大幅に減らすなどして徹底的に縮小することに努めている。ただし、鹿児島県は全国的にも財政が悪化している県であり、再建にはまだまだ時間がかかる。
 また、中央―地方関係からみた改革について、国と地方との相互不信のなかで政策が進められていることが懸念されるとした。国の地方への不信によって、国が出す政策の実効性が疑わしいものになっている。そのため、次の分権型社会に向けた改革のためには、知事会等を通じてさらに力を入れて取り組む必要があるとした。伊藤知事は、三位一体の改革においても、その過程で地方財政はより厳しいものになったのではないかと考えている。第2次の分権改革も予断を許さない状況にある。
 
道州制と市町村合併について

 平成の大合併によって全国の市町村数は1800程度になった。これまで都道府県は当該地域の自治体をまとめる役割と国からの情報伝達の役割を担っていたが、現在の情報化社会では、国と市町村の間に都道府県が介在する必要性が無くなった。これまでの都道府県を中心とした経済構造や伝統、文化などを破壊する可能性もあるが、やはり将来的には道州制が必要になるだろうとした。
 都道府県の今後の役割として産業政策が挙げられるが、九州を例にした場合、大きく成長するアジア経済のなかで国際競争を視野に入れた戦略的な政策を実行するためには県単位では規模が小さすぎ、九州全体で臨む必要がある。21世紀に適した産業構造を構築するということも道州制のひとつの動機付けになるのではないかとした。
 道州制へ移行するためには基礎的自治体の充実強化も必要である。伊藤知事は、今後も市町村合併が進んで、数が1000を切った場合、都道府県の仕事は基礎的自治体が担えるようになるだろうとした。ただし、拡大した基礎的自治体においては、コミュニティ単位の地域社会をある程度の課税権や強制力をもった団体へ再構成せざるをえないとした。伊藤知事は、道州制への移行には地域社会をケアできる構造を準備することも重要であると指摘している。
 また、以前に中央官庁の立場から市町村合併に関わっておられた経験から、次のステージの市町村合併があるならば、統治の合理性などから道州制を視野に入れた合併になるだろうとした。
 
鹿児島県での挑戦

 鹿児島県は農業出荷額が全国2位の農業県であり、現在、農作業の全工程での機械化など農業形態への新しい取り組みが始まっている。こうした農産物をアジアへ安全で安定的に供給できることが日本の農業の強みである。また、観光においては来年の大河ドラマの舞台となることが決定し、そのための体制整備が進められている。さらに、経済基盤が弱い鹿児島県では、自動車、電子、食品関連の企業誘致も進められている。
 最後に、伊藤知事は、地方行政のキーワードは多様性であると述べ、多様性をもち、多様性を理解することこそが地方自治であると説明した。学生達に向けて人生や人間関係においても多様性を理解することが重要であると訴え、講義を終了した。
 
質疑応答
  1. 最近、国と地方の間で「ふるさと納税」が話題になっているが、知事としてどのようにお考えか。

    → 結論から言うと、「ふるさと納税」よりも他にやらなければならないことがあると考えている。大都市と地方との税源配分を調整する仕組みとして奨励されているが、その前に法人課税の配分基準を見直すべきだ。法人住民税と法人事業税の法人二税は地方税から国が徴収するように見直して、交付税の原資にした方が効果的ではないかと考えている。「ふるさと納税」は理念としては美しいが、税の安定性という観点から疑問である。この制度では、あまりにも恣意的に歳入が変動するため予算編成が困難になる。結果として地方全体の税体系を壊しかねない。地域間格差を解消するためには、よりドラスティックにやらなければならないのではないか。

  2. アジアの時代が来るということだが、特に東アジアに対して観光や特産品を売り出すような戦略はあるのか。

    → いまはトップセールスの時代。去年は香港へ売り込みに行った。中国本土では肉や魚の売り込みは制度によって容易ではないが、今後は上海へ行くことを計画している。おそらく、九州の他の知事も皆、同じようにPRに努めているだろう。観光においては、観光客に一定の財政的な支援をする制度をすでにもっている。中国が爆発的に経済発展すると3億程度の人々が中産階級になると言われている。いまの中国からの観光客は秋葉原や大阪に買い物へ来ている。今後、多数の中産階級がゆとりなどを求めだしたときに、地理的に最も近い沖縄や九州にチャンスがある。



毎回のながれ
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事前・事後学習のしおり
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講義要約
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受講生レポート
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