第2回 立命館懸賞論文大賞 審査結果発表
佳作作品

「クジラは環境の番人?!」
京都府 立命館宇治高等学校 3年 木下 真友子

「ストランディング」という言葉を知っていますか。これは、クジラなどの海洋生物が海岸に打ち上げられてしまうことです。クジラは肺呼吸をしますが、波打ち際で身動きできなくなると、命が危ないのです。海水を吸い込み窒息するか、自分の体重で筋肉や内臓が圧迫されて死ぬことが多いのです。日本でも、年間百件というペースで「ストランディング」は起こっています。

これらの原因は、「エサの深追い」「シャチなどの外敵に追われて」「船舶による騒音や撹乱(かくらん)」「個体数を調節するための集団自殺」。様々な仮説がありますが、まだはっきりしていません。中でも、寄生虫、海の磁場の影響、海洋汚染などが主に原因としてあげられています。

寄生虫は、ナジトレーマという寄生虫が耳の神経組織に穴を掘って卵を産み、神経を破壊させます。聴覚が異常になると、音波でエサを探せなくなり、衰弱して座礁するということです。
磁場の影響は、クジラは磁場の強さが等しい線に沿って移動し、海岸と交わる所で座礁すると言われているからです。
確かに、どれも有力な説だと思いますが、私が一番の原因だと思うのは海洋汚染です。

人間は昔から、海辺や川沿いに工場を作り、多くの化学物質や産業廃棄物を海や川に流出してきました。それらは決して体に良いものとは言えません。工場廃水中の有機水銀が原因でおこった水俣病、コンビナートの亜硫酸ガスが原因の四日市ぜんそくなど、人間にも被害をおよぼしています。陸に住んでいる人間に害があるなら、海に住んでいる海洋生物にも害がでるのはあたりまえのことです。私は、この人間の勝手で、関係ない海洋生物が苦しんでいるということが許せないので、この「ストランディング」と海洋汚染の関係について、調べてみることにしました。

まず、工場から排出される化学物質についてですが、主に「ストランディング」には、DDTとPCBと呼ばれるものが関係しています。もちろん、DDTとPCB以外で海洋汚染に関係している化学物質は山とあります。DDTは第二次世界大戦後、世界中で使用された有機塩素系殺虫剤。農薬の一種です。そしてPCB(ポリ塩化ビフェニル)は化学的に安定な物質で、PCB特有の優れた性質から(燃えにくく電気を通しにくい)、機械の潤滑油や蓄熱材、また絶縁体として広く用いられた物質です。

私の予想では、工場から排出されたこれらの化学物質が直接、海水からイルカやクジラなど大型の海洋生物の体内に入ると思っていました。なぜなら、海が汚染されているのならば、その海の中で生活している動物も汚染されているに違いないと思ったからです。しかし、どうやら直接海水から入ってくるわけではないみたいです。環境に放出されたDDTやPCBは生物の体内に取り込まれ分解されにくい性質により体内に残留し蓄積するのだそうです。しかもクジラの体内に入ったDDTやPCBの濃度は海水と比べると1000万倍もの濃度で蓄積されているのです。これは、私の考えていたDDTやPCBが直接入るのでありえない濃度です。

では、一体どうやってDDTやPCBはクジラの体内に入ってくるのでしょうか。また、何故化学物質は体内に入ると濃度が濃くなってしまうのでしょうか。

海の中はとてつもなく広く、多くの種類の生物が生活しています。海藻を食べるもの、プランクトンを食べるもの、そして魚を食べるものもいます。ということは、ここである一つの言葉が思いあたります。それは、中学校で習った「食物連鎖」。これは、生きもの同士が「食う=cd=ba52食われる」という関係の中で、生きもの全体が連鎖的なつながりを持つというものです。陸でいうと、草を草食動物が食べ、草食動物を肉食動物が食べるということです。この言葉を考えると次のように予想がつきます。

まず、海に流出してきたDDTやPCBを「食物連鎖」の中で一番下にいる海藻や、たい積した遺体などが体内にとりこみます。そして、それらを小さい小さい微生物(プランクトン)が食べます。そして、その微生物を小型の魚類が食べ、そしてそれらをクジラが食べます。プランクトンの段階で、すでに海水の5000倍ものDDTやPCBが蓄積されているのですから、そのプランクトンを何千、何万と一度に食すクジラはどうなるのか想像がつきます。しかも、クジラなどの海棲ほ乳類は授乳によって大量の化学物質が母から子へと引き継がれているのです。これは人にも言えます。ダイオキシンはもうすっかり有名な汚染物質ですよね。母体に蓄積したダイオキシンは授乳によって乳児を汚染しているのです。

こうしてクジラなどに多量の化学物質が蓄積し彼らを死においやっているのです。よく考えてみてください。私たちがたべている鯖などの小中型の魚はプランクトンを食べています。したがって、それらを食べている人間の体内にも化学物質は入ってきているということです。人間の何倍もの大きさの体を持つクジラがただの化学物質で死んでいくのです。人体への影響はすさまじいことでしょう。海の中は今、大変なことがおこっているのです。

さて、陸に打ち上げられてしまったクジラはどうなってしまうのでしょうか。大半は最初に述べたように死んでしまいますが、人間の助けを借りて海に戻れるクジラもいます。死んでしまったクジラは、一部は、どこかの研究所や大学が引き取り、今後のクジラ研究にやくだてたり、「ストランディング」の原因究明に使われます。しかし、明治時代には、死んだクジラの肉を売って大儲けをしていたそうです。小学校が一つ建つぐらい儲けたそうですから、当時の日本人のクジラに対する執着心というか、食欲はすごかったことだと思います。しかし、いまやその処理に頭を悩める地元自治体もあります。今年1月、巨大なマッコウクジラ14頭が打ち上がった鹿児島県大浦町では、沖への投棄代などに6千万円以上かかりました。いくら、お金がかかるからといっても、きちんと埋葬するべきだと私は思います。

海洋汚染は全て人間の責任です。人間の作り上げた物によってクジラなどが死んでいってしまっているのです。この問題をどう解決していくのでしょうか。今更、工場の排出を止めたって海水にはもうたくさんの化学物質が含まれているので長期的な解決法にしかなりません。今、多摩川に現われたアザラシのたまちゃんが有名ですが、彼も汚染された海がいやになって川に逃げてきたのかもしれませんね。

私はまず、人々の環境に対する意識の向上が大切だと思います。海からは少し離れてしまいますが、街中にしてもゴミを普通に道の上にポイ捨てしていく人がいるし、産業廃棄物を不法投棄したりする心ない人が日本にはまだまだ多くいます。「ストランディング」のことだって、テレビで見て、「ああ、かわいそうだな。」で終わりです。一部の人だけががんばっていて残りの人たちは無関心という状態では向上しないのは当たり前だと思います。

ひどい人は、DDTやPCBをつくった奴が悪い、とまでいいます。全ては人間が良かれと思って作ったものなんですけどね。一人一人が環境について意識すれば、何か大きなものが得られるはずです。だから、もっと学校で教えるとか、テレビで広めるとか、したらいいと思います。また、クジラ以外にも海にはたくさんの貴重な生物がいます。しかし、彼らは常に人間におびえていることでしょう。海がめが産卵した後の砂浜をジープで走ったり、サンゴに自分の名前を彫ったり、むやみやたらに魚を獲りまくっていたりといいだしたらきりがありません。こんなことをする人たちは、海、生物の大切さがわかっていないのでしょうか。それともわかってやっているのでしょうか。私はどちらの人も許せません。知っていて、やっている人は人間として最悪です。しかし、知らないでやっている人も、自分の無知を恥じてほしいのです。

次に考えたのは少しでも化学物質を減らすことです。これから海へ化学物質を排出しないのはもちろんのことです。できたら、化学物質を消せる何か、機械でも薬でも開発できたらいいなと思います。今は無理でも、私たちが、私たちの子供が開発していけたらいいです。しかし、はっきり言って今すぐに海中全ての化学物質を取り除くことは不可能です。だから、減らすというよりもうこれ以上排出、製造させないということが大事です。工場も排水を浄化してから排出するなどしなければいけないと思います。また、家庭からも排水はでているので、洗剤や、油、生活用水には十分気をつけなければいけないと思います。

そして、クジラたちのかわいさを知ってください。一度彼らと泳いでみることをお勧めします。彼らの人懐っこさ、愛くるしい顔に少しでもふれることができれば、こんなかわいらしい生物を死なせてたまるかと思うはずです。

私なりの解決方法を述べました。しかし、これらは私1人ががんばったって、どうすることもできません。10人でもできません。日本中の人々がやって、初めて成功するものだと思います。
「私は内陸部に住んでいるし、海とは全然関係ないもん。」
と思っている人でもやらなければいけないのです。なぜなら、海はみんなのものだからです。みんなで守っていかなければいけないものなのです。

クジラ達は自分が打ち上げられることによって、人間に海洋汚染を知らせてくれている重要な番人といえるでしょう。クジラは人間と同じ哺乳類なのです。同じ地球上に住む仲間なのです。そんな彼らからの必死の信号を人間はしっかりとうけとって、そしてお互いが気持ちよく、同等に暮らしていけるように改善していかなければいけないと思います。


トップページへ戻る