立命館法学  一九九六年六号(二五〇号)一七三一頁(三九一頁)




中国の政治制度とその発展


劉 海 年
呉 成 慎(訳)







  中国共産党の指導の下で、一九四九年一〇月中国は半植民地、半封建の国家の歴史を終え、中華人民共和国を樹立し、人民が主人公となる新しい時代を切り開いた。建国直前に制定され、臨時憲法の役割を果たした「中国人民政治協商会議共同綱領」、一九五四年に制定された「中華人民共和国憲法」と現行の「憲法」のいずれも、人民代表大会制度が中国の基本的な政治制度であると明確に規定している。「憲法」の規定によると、中国共産党の指導する多党合作と政治協商制度は中国政治制度の重要な一部である。四〇数年来、この制度は不断の改革と完全なものにすることを通じて、広く人民大衆の支持を得、実践の中でますます強固になる生命力を示した。



  中国人民代表大会制度は資本主義国家の権力分立制度と異なり、ソ連が十月革命後に樹立したソビエト制度とも異なり、中国的特色のある社会主義の人民民主制度である。「中華人民共和国憲法」は、「中華人民共和国は労働者階級が指導し、労働者と農民の同盟を基礎とする人民民主専制の社会主義国家である(1)」、「中華人民共和国の一切の権力は人民に属する(2)」と規定している。中国のように国土が広く、人口が多く、五十六もの民族からなる統一した大国では、人民がいかにして自己の民主的権利を行使し、主人公になれるのであろうか。「憲法」には、「人民が国家権力を行使する機関は全国人民代表大会及び地方の各級人民代表大会である」と規定している(3)。これは言い換えれば、中国人民は主として自己の選出した代表で構成される全国及び地方の各級人民代表大会を通じて、国家を管理する民主的権利を行使するのである。このほか、憲法と法律は、下級では民衆の自治、民衆が法律によって自らの管理を実行すると規定している。
  全国人民代表大会は最高の国家権力機関である。これは省、自治区、直轄市及び軍隊から選出した代表で構成される。各小数民族にも適当な定員の代表がある。「人口が特別に少ない民族には、少なくとも一人の代表がいる(4)」全国人民代表の毎期の任期は五年である。その常設機関は全国人民代表大会常務委員会である。「憲法」では国家機構は民主集中の原則を実行すると規定している。人民代表大会制度は以下の面でこの高度な民主でしかも高度な集中の原則を十分に体現している。
  (一)  全国人民代表大会と地方各級人民代表大会は民主的な選挙で成立し、人民に責任を負い、人民の監督を受ける。
  (二)  全国人民代表大会及びその常務委員会は統一した国家の立法権を行使する。全国人民代表大会は法定の手続きにより憲法を改正し、刑事と民事、国家機構及びその他の基本的法律を制定、改正する。その常務委員会は全国人民代表大会が制定するべき法律以外の法律を制定、改正し、且つ憲法とその他の法律の実施を監督する。
  (三)  全国人民代表大会は国家主席、副主席を選出し、且つ国家主席、副主席を罷免する権限を有する。国家主席、副主席の連続就任は二回を越えてはならない。
  (四)  全国人民代表大会は、国務院総理、副総理、国務院委員、各部の部長、各委員会の主任と秘書長の候補を決定する。中華人民共和国国務院、即ち、中央人民政府は最高国家権力機関の執行機関であり、最高国家行政機関である。その組閣は全国人民代表大会により決定され、それの監督を受ける。全国人民代表大会は国務院の構成員を罷免する権限を有する。
  (五)  全国人民代表大会は中央軍事委員会の主席を選出し、中央軍事委員会のその他の構成員候補を決定し、最高人民法院院長、最高人民検察院検察長を選出し、且つこれらを監督する。これらを罷免する権限を有する。立法と監督を通じて、人民法院が単独で裁判権、人民検察院が単独で検察権の行使を保障する。
  (六)  中央と地方国家機構の職務権限の区分は中央の統一した指導に従い、地方の能動性、積極性を十分に発揮する。少数民族の集まり住んでいるところでは民族区域自治制度を実行する。
  以上の規定から、国家の基本的な政治制度として、人民代表大会制度の内容は全国人民代表大会と地方各級人民代表大会及びその常務委員会の関係する制度を内含しているだけでなく、これらから成り立つその他の国家機関、及びそれらの間の相互に関係する諸制度をも内包している。概して言えば、人民代表大会は統一した国家権力を行使する。この前提の下で、国家の行政権、裁判権、検察権、軍事への指導権に対して、明確に区分し、協調させ、且つ厳格に監督する。中国共産党が指導する多党合作と政治協商制度は中国歴史形成の政党制度と広範な人民民主統一戦線であり、社会主義の民主政治の中で大きな役割を果たした。中国の政治制度はすべての権力が人民に属する−即ち、主権在民の原則の実現を保障した。



  中国の政治制度の発展は困難に満ちていた。一九六六年から一九七六年まで一〇年間続いた「文化大革命」の中で、その民主主義の原則は傷づけられた。一九七八年一二月、中国共産党一一期三中全会はその歴史的経験をまとめた。また社会主義的民主主義を発展させ、社会主義法制度を健全化し、民主主義を制度化、法律化させる任務を提起した。これによって歴史上の誤りを正し、人民代表大会制度をもっと発展させるための基礎を固めた。その後の十年余りの間、政治制度と法律制度に対し主に以下の改革を行った。
  (一)  選挙制度に重大な改革を行った。一九七九年七月、第五期全国人民代表大会の第二次会議で採択された「全国人民代表大会及び地方各級人民代表大会選挙法」は次のように規定している。「法律により政治的権利が剥奪されている人以外に、中華人民共和国の一八歳に達した公民は、民族、種族、性別、職業、家庭の出身、宗教信仰、教育の程度、財産の状況と居住期間を問わず、選挙権と被選挙権をもつ」。「選挙法」はまた次のように選挙制度に対して重大な改革を行った。第一、下から上へ、上から下へ、十分協商し、繰り返して候補を選び出す。第二、候補者の数と定員が同じである同額選挙の方法を候補者の数が定員より多い、即ち、差額選挙に改めた。第三、人民代表大会の代表を直接選ぶ範囲を県から郷に拡大した。このために、選挙民の範囲を拡大しただけでなく、選挙民が有効に選挙権を行使するのを保障した。
  (二)  憲法に対して重大な改革をした。一九八二年一二月採択した「憲法」及びその後の改正は、「文化大革命」に影響された一九七八年の「憲法」の誤りを正しただけでなく、国内、国外の形勢の発展と社会主義民主制度建設の需要により、一連の重大な問題に新たな規定をした。第一、全国人民代表大会に属していた一部の職権をそれの常務委員会に譲渡し、常務委員会の職権を拡大し、もっと円滑に、有効に作用できるようになった。第二、国家主席と副主席の設置を回復した。第三、中央軍事委員会を設立し、全国の武装兵力を統帥し、指導する。第四、国務院は総理責任制を実行する。各部、各委員会は行政の効率を高めるため、主任責任制を実行する。第五、県以上の各級人民代表大会は常務委員会を設立する。省、自治区、直轄市の人民代表大会及びその常務委員会は地方の法規を制定、公布する権利を持つ。地方各級人民政府はそれぞれ省長、市長、県長、区長、郷長、鎮長責任制を実行し、地方の政権建設を強める。第六、農村人民公社の「政社合一」(農村人民公社が農業経済運営の主体であるばかりでなく郷・鎮の行政事務を合わせ管理したこと)の体制を改め、郷政権を設立する。第七、下級部分では大衆の自治組織として住民委員会(都市)、村民委員会(農村)を設立する。第八、国家主席と副主席、委員長と副委員長、総理と副総理など国家の指導者は連続就任が二回を越えてはならない(一〇年以内)。実際存在していた国家指導者の職務終身制を取り消す。第九、中国共産党の指導する多党合作と政治協商制度を堅持、発展させることを明確に規定し、各政党と社会団体は憲法を根本的な活動基準にしなければならない。第十、国家は必要なときに特別行政区を設立し、基本法の形式で「一国二制度」の戦略構想を肯定した。「憲法」の上述の重大な改正は中国政治制度の発展を力強く促進した。
  (三)  立法の歩調を速め、法の執行を強めた。一九七八年以来の一〇年余り、全国人民代表大会と地方の各級人民代表大会及びその常務委員会は積極的に業務を展開し、中国の立法の歩調を大いに速めた。統計によると、一九九五年末までに、全国人民代表大会及びその常務委員会は全部で二八〇余りの法律を制定した。国務院は七〇〇余りの行政法規を制定した。地方の権力機関は四〇〇〇余りの地方に関する法規を制定した。憲法を中心とする社会主義の法律体系の大枠が大体形成され、政治、経済、文化などの領域においては大体照応する法律があるようになった。
  これと同時に、法律の執行も増強された。政府の各部は漸次的に「以言代法」(ことばで法律に代える)の現象を改め、法律で行為を規範に合わし、厳格に法律により行政を行う。各級政府は真剣に「公務員条例」を貫徹し公務員制度を推進する。人民法院と人民検察院では独自に裁判権と検察権を行使するのを保障し厳格に法律によって業務を行う。一九九五年に制定した「裁判官法」と「検察官法」は真剣に実施され、裁判官と検察官の素質の向上につれて、独自の司法権の行使がはさらに切実に保障されるであろう。
  国家機関及びその公務員が厳格に法律に照応して職務を遂行するのを促進し、公民の合法的な権益が侵害されず、しかも国家機関及びその公務員により侵害されたときに有効な救済が受けられるよう、一九九四年五月全国人民代表大会常務委員会の制定した「国家賠償法」は、行政賠償と刑事賠償を規定している。行政機関及びその公務員、調査、検察、裁判、監獄の管理などの職権を行使する機関及びその公務員は、職権を行使して不法に公民の人身の自由を侵害し、負傷、または死亡させた場合、被害者は賠償を求める権利を有する。この法律は「被害を受けた公民が死亡した場合、その相続人とその扶養関係にある親族は賠償を請求する権利を有する」と規定している。賠償の方式と賠償金の基準についてもこの法律は明確に規定している。
  (四)  権力に対する監督と制約を強めた。権力は監督を受けないと必ず腐敗する。国家機関は憲法と法律の実施を有効に監督できるかどうか、行政、裁判、検察機関及びその公務員に対して厳格に監督、制約できるかどうかは人民民主が実現できるか否か、国家権力が人民の手中にしっかりと握られるかどうかの大問題に関わっている。
  監督と制約を強めるため、一九八二年の「憲法」はまず立法に対する監督を強めた。この憲法は「全国人民代表大会は、憲法の実施を監督する権利を有する」、「全国人民代表大会常務委員会の不適切な決定を改正、撤回する権力を有する」と規定している(7)。全国人民代表大会常務委員会は「憲法を解釈し、その実施を監督する権力を有する」、「国務院の制定した行政法規、決定と命令のうち、憲法および法律に抵触するものを取り消す」権力を有する、「省、自治区、直轄市の国家権力機関の制定した地方的法規および決議のうち、憲法、法律および行政法規に抵触するものを取り消す」権力を有する(8)。地方の各級人民代表大会は同級の人民代表大会常務委員会の不適切な決定を改正、撤回する権力を有する(9)。県以上の地方の各級人民代表大会常務委員会は、同級の人民政府の決定と命令、下級の人民代表大会の不適切な決議を撤回する権力を有する(10)
  このほか、行政、司法に対する監督を強めた。この一〇年来、全国人民代表大会と地方の各級人民代表大会は、国務院と地方の各級政府の政府工作報告、最高人民法院と地方の各級人民法院の法院工作報告、最高人民検察院と地方の各級人民検察院の検察院工作報告をそれぞれ聴取・審議し、この監督方式はすでに制度化している。人民代表は「一府両院」(政府、法院、検察院)工作報告に対して、要点をついた重みのある意見を提出でき、これらの職務を大いに促進した。「中華人民共和国憲法」は「公民はいかなる国家機関またはその職員に対しても、批判と提案を行う権利を有し、いかなる国家機関またはその職員による違法行為におよび職務怠慢に対しても、関係する国家機関に訴願、告訴または告発する権利を有する(11)」。全国人民代表大会常務委員会は人民の訴願、告訴と告発の受理に関して具体的に規定している。ここ数年以来、全国人民代表大会および地方各級人民代表大会の常務委員会が接受した大量の人民の訪問と投書の中の相当の部分は、政府、裁判所と検察院の工作に対する監督に関係している。人民の訪問、投書に対して、全国と地方各級人民代表大会常務委員会は、関連する機関に責任ある処理をさせた。以上の監督方式以外に、人民代表大会とその常務委員会はまた質問、詰問、特定の問題を専門的に調査することを通じて、公務員の任用と罷免権の行使に監督を実行する。人民代表大会はすでに有効な監督メカニズムと比較的整った監督制度を形成した。
  (五)  中国共産党の指導する多党合作の政党制度と政治協商制度を、さらに発展、整備させる。各民主党派は共産党の指導を受け、さらに全力を挙げて社会主義の事業に尽力する親密な友党である。
  各民主党派は与党であり、国家の一部の野党ではない。民主党派は国家権力に参加し、国家の事務管理に参加し、大政方針と社会発展、経済、文化建設など重大な問題の決定にも参与する。これは中国共産党が指導する多党合作は、社会主義の政党制度であり、わが国の政治制度の一つの特徴であることを立証している。これはわが国の政治権力の人民性と広範性を充分に体現している。
  中国人民政治協商会議は多党合作の重要な政治形式と組織形式であり、「人民民主を発揮し、各方面の人民大衆を連携する重要な組織である(12)」。これは八つの民主党派との協商を指すだけでなく、無所属の人々及び各民衆の組織、社会団体の代表との協商をも指す。この協商では、中国共産党と各民主党派はそれぞれ構成員の身分で参加するのではなく、政党の身分で参加する。中国政治協商会議は広範な代表性を有する統一戦線組織である。全国政治協商会議以外に、省、市、県など地方の人民政治協商会議もある。人民政治協商会議は基本的に全国人民代表大会と地方各級人民代表大会と同期に会議を開き、共に大政方針を議論し、指導、立法、行政と司法に対する監督権を行使する。



  中国の政治制度の改革と発展は、中国の社会主義市場経済の建設と社会進歩を力強く促進した。中国経済は高度な発展を持続し、人民の生活水準が大幅に高められ、各方面で注目に値する業績を遂げた。新たに採択された第九番目の五カ年計画と二〇一〇年までの長期計画によると、二〇〇〇年までに、人口が一九八〇年より三億人程度も増加した状況の中で、一人当たりの国民総生産を四倍にしようとしている。その一〇年後、即ち二〇一〇年には、二〇〇〇年より国民総生産を二倍にする大きな目標を実現しようとする。これまで政治制度の建設は、経済発展と助け合って発展してきた。社会主義市場経済の発展は、必然的に政治制度の整備と発展を促進するのである。
  (一)  中国の公有性を主体とする、国有経済、集団経済、私営経済、個人経済と外資経済など多種の経済要素を含めた社会主義市場経済は一つの制度である。この制度は全員が豊かになるために、効率、競争を提唱し、公正、秩序を必要とする。この制度は、これに見合う直接に経済の運営を調整する法律体系の確立を必要とするだけでなく、政治制度の改革、これに見合う政治制度、法律制度を必要とする。この制度の発展に伴って生じた、利益の個別化及び科学文化水準の向上は一層人々の権利の意識を喚起し、人々の参政、議政の観念を増強する。これらすべては、中国の政治制度がもっと発展するための堅固な基礎となる。
  (二)  中央と地方の国家機構と職権の関係について、憲法は原則的に規定している。「一国両制度」の構想も憲法の確認を受けた。わが国の社会主義市場経済の発展につれて、中央と地方国家機構の職権は、いかに中央の統一した指導を守りながら地方の能動性、積極性を発揮するか、重要な面でいかに区画するか、という新しい問題の研究、解決を必要とする。このほか、香港は一九九七年中国に返還され、マカオも一九九九年中国に返還され、次は台湾の平和統一である。「一国両制度」はもうすぐ現実となる。形勢の発展は必ず中国共産党の指導する多党合作と政治協商に新しい内容と要求をもたらす。これはわが国の政治制度を発展、整備するための動力となるだろう。
  (三)  中国で実行している改革開放政策と社会主義市場経済の発展は必ず日増しに国際市場と連携を強め、世界各国の政治、経済及び文化との交流も強めるであろう。第二次世界大戦後、世界各国は積極的に発展の道を探っているが、植民地、半植民地の統治から逃れた発展途上国も多くの成功した実践を行った。各国の政治制度、法律制度と経済制度はすべて人民の知恵であり、人類の優秀な文化の結晶である。さしあたり、民主と法治はもう世界で一つの潮流となっており、このプロセスの中で相互に影響するのは避けられない。これは中国の政治制度の発展の外部条件となるだろう。
  (四)  中国の政治制度はすでに四〇年余りの歴史を持つ。その間成功した経験もあれば挫折した経験もあるが、概して、成功している。事実が証明しているように、政治制度が正常に発展しているとき、経済が繁栄し、国家が安定し、人民が安住して職業を持ち楽しくやって行ける。政治制度が侵害されたとき、経済が衰退し、国家が混乱し、人民の権利も保障できない。正負の経験、特に一一期三中全会以来一〇数年の成功した経験は、我が人民が人民代表大会制度、共産党の指導する多党合作と政治協商制度を堅持、発展する自覚と自信を増強させた。この自覚と自信は憲法を実施し、憲法建設を推進する大きな力となるのであろう。中国の客観的形勢は政治制度の更なる発展、改善を必要としている。中国の政治制度も必ず更なる発展と改善を遂げるだろう。しかし、歴史の経験から見れば、一つの制度の発展、改善はプロセスと経験の蓄積を必要とし、代価を強いられる場合さえある。こういう意味で、我々の任務はまた重いものである。
  まず、党の指導を増強、改善する前提で、各級の党の組織と人民代表大会及びその常務委員会との関係、各級の政府及び各級の司法機関との関係、各民主党派、各人民団体及び民衆組織との関係を一層うまく処理し、人民政治協商制度と人民民主統一戦線を更に増強する。第二に、共産党内の民主と社会主義的民主がいかに十分発揮され、憲法、法律が規定する各項の人民民主の権利と自由が切実な保障を受け、とくに国家に対する管理権、経済、文化や社会など重大問題に対する管理権が、確実な保障を受けることができるのであろうか。憲法と法律の規定する国家の指導者と各級の国家公務員の選出、任命と罷免権を実現させ、しかもこれらに対して有効な監督を行う。第三に、各級の国家機関及びその公務員が、「公務員条例」、「警察法」、「裁判官法」、「検察法」などの法律により、「人民のために服務する」の本旨にのっとり、自己の素質を高め、その職務に忠実で、大衆のうえに君臨することなく、いかに人民の公僕になって廉潔で公のために尽くすかである。いかにわが政府が、法によって行政を行い、司法機関が独立して裁判権、検察権を行使しうるのか、いかに国家の政治を簡明にし、量刑を適切にし、国家を繁栄、発達させることができるのか。これらすべてを一挙になしえるものではなく、忍耐強く、がんばり抜いて、各種の困難を乗り越えなくてならない。
  9902  小平は中国の民主制度に言及したときに、「特権は封建制の残りかすがまだ一掃できていないことを表している。旧中国は多くの封建専制の伝統、少ない民主法制伝統を我々に残した。解放の後も、我々は自覚的に系統を立てて人民の民主的権利の各項制度を保障せず、法制も不完備で重要視されてこなかった。特権現象を克服するためには、思想上の問題、制度上の問題をも解決しなければならない」と話した(13)。一九九六年の初めに当たり、江  沢民主席の発表した、法の支配、国家の長い治世と安定の保障との重要な談話の中で、更に答案を提出した。中国共産党中央の催した今回の法制講座で、江  沢民の重要談話と肯定された社会主義的法の支配の建設は、わが国の政治制度の発展と完備のためはっきりした青写真を描いた。これは中国の政治制度と法律制度の発展の里程標となるのであろう。改革の絶え間のない深化により、中国の政治制度と法律制度は日に日に完全なものとなるのであろう。独立、民主、自由、富強の社会主義の中国は、世界の東方に現れるであろう。

(1)  「中華人民共和国憲法」第一条。
(2)  「中華人民共和国憲法」第二条。
(3)  「中華人民共和国憲法」第二条。
(4)  「中華人民共和国憲法」第一五条。
(5)  「中華人民共和国全国人民代表大会および地方各級人民代表大会選挙法」第三条。
(6)  「中華人民共和国賠償法」第六条。
(7)  「中華人民共和国憲法」第六二条。
(8)  「中華人民共和国憲法」第六九条。
(9)  「中華人民共和国憲法」第九九条。
(10)  「中華人民共和国憲法」第一〇四条。
(11)  「中華人民共和国憲法」第四一条。
(12)  「9902小平文選」一七三頁、人民出版社、一九八三。
(13)  「9902小平文選」二九二頁、人民出版社、一九八三。