立命館法学  一九九七年六号(二五六号)一二一三頁(一頁)




今日の環境保護の課題とその手法



安本 典夫








は  じ  め  に

  今日、環境問題は、かつての悪質な個別工場による産業公害のようなものはかげをひそめながら、しかし自動車公害問題は依然として解決せず、廃棄物問題は深刻化し、あるいは地球の環境容量を食いつぶす状況が生じてきている。他方、まもるべき環境の内容に関しては、きれいな空気・水などに加えて、自然、それも生態系自体に、さらには文化的・歴史的要素をも含んだ快適さにまで、我々の認識はひろがりをもってきた。また、そのような環境をまもり、改善する手法も、かつての「規制」、「事業」、「紛争解決・救済」というものにとどまらなくなってきた。特に、近年、経済的手法の必要性が強調されてきている。
  本稿は、このような下で、改めて、環境保護の課題とそれを遂行する手法について全体像を描き、展開の方向を探ろうとするものである。
  なお、本稿は、「環境保護の手法」という統一テーマで行われた東アジア行政法学会(一九九七年五月二・三日、於韓国ソウル大学)において報告したものをベースにしてまとめたものである。報告の機会を与えて頂いたことに感謝するとともに、様々なご配慮を頂いた会長の徐元宇教授、事務総長金鐵容教授、幹事朴正勳教授、通訳の労をとって頂いた金敞祚教授をはじめお世話頂いた方々にあつくお礼申し上げたい。


一  公害規制手法の展開


1.公害対策基本法下における規制手法の展開
  (1)  公害対策基本法下の公害規制とその展開
  (a)  環境基本法制定までは、公害対策基本法(一九六七)を頂点に、そこに規定された典型七公害について、同法にもとづく環境基準の達成をめざすべく、@排出等の規制、A公害防止事業、B公害紛争処理・被害者救済の制度によって、公害対策法制は構成されていた。
  (b)  公害対策基本法は、規制については、次のものを定めた。@大気汚染その他の原因となる物質の排出等の規制(一〇条一項)、A公害が著しく、または著しくなるおそれがある地域について、公害の原因となる施設の設置の規制(一一条後段)、B公害防止のための土地利用規制(一一条前段)。騒音、振動、地盤沈下、悪臭については、必要な措置を講ずると定めるにとどまったが(一〇条二項)、その後、この四つについても規制法が定められたことを受け、環境基本法では、典型七公害すべてについて「必要な規制の措置」が定められた(二一条一項一号)。あわせて、自然環境保全のための規制(同項三号)、および上記の規制以外の必要な規制措置も法律上規定された(同条二項)。
  (2)  排出等の規制
  (a)  現実の法制の展開は、環境を悪化させる個々の排出行為の規制が中心であった。
  排出等の規制について、大気・水質・騒音・振動・悪臭(1)の規制システムは、特定施設を指定し、特定施設から排出される汚染物質等につき、物質の種類ごとに法令で一定の基準を設け(排出基準等)、それを超えると、処罰、および改善命令等を行うという構成である(振動・悪臭については、指定地域制をとる)。
  したがって、ここでは、対象の限定、基準の設定、基準違反の監視、違反の是正が適切・有効であるかが問われる。規制基準については、当初は緩い基準で公害防止の機能を十分に果たしていなかったが、公害反対住民運動・公害訴訟等を受けた一九七〇年の公害国会以来、次第に強化されてきた。
  (b)  規制法制の多くは、行政機関による監視にもとづく規制権限の発動という構成をとっている。行政機関による監視として、水質の場合は排水口での採水検査、大気の場合は重油等抜取検査およびごく少数頻度の排出口(煙突口)検査を行う。しかし、少ない職員数で多くの工場の測定を行うため、自治体にもよるが、年間で三分の一程度の工場が検査の対象となるようなレベルである。ましてや下水道法上、工場排水を公共下水道に排出するところで水質規制することになっているのは、実効性を著しく減じている(2)
  それを補う業者自身の自己コントロールによる監督システムとして、事業者に測定・記録義務が課されているが(大気一六条(3)、水質汚濁一四条)、報告義務はなく、罰則の定めもなく、知事の方から報告を求めることによってその履行を担保しているにすぎない(水質汚濁二二・三三条(4)、大気汚染二六・三五条(5))。指定工場については、公害防止統括者・公害防止(主任)管理者をおいて公害防止に努める義務を課しているが、それは具体的なものではない。
  (c)  排出基準等に違反した場合の直罰方式が、大気汚染防止法・水質汚濁防止法などで一九七〇年に導入された(6)。但し、実際には、廃棄物処理違反を除いて、検挙に至るのはごく少数にすぎない。多くの場合、行政指導が繰り返されるにとどまる(7)。なお、個々の規制違反とは別建ての刑事罰として、「人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律」にもとづく公害罪がある。
  他方、違反に対する改善命令等の行政的措置は、違反継続のおそれとそれによる人の健康または生活環境に係る被害発生という要件(大気一四条)や、勧告に従わないという要件(騒音一二条)を設けるなど、要件がしぼられている(8)。過去の違反には刑罰により対処し、行政的措置は「将来の排出」の適正化に目的をしぼったともいえる(9)
  ただ、改善命令等によって課した義務の履行確保手段として行政代執行を行うのは、その「改善」内容の多様性のために困難である。したがって、改善命令等の履行も罰則による間接的確保になり、上記の問題はここにも生じる。このような現行の義務履行確保手段の機能不全をふまえて、行政上の執行罰や反則金制度などの導入も提唱されている(10)
  このような状況ではあるが、行政担当者のところでは、今日では違反は少ない、悪質な違反はほとんど見られない、と認識されている。違反したら今日ではもう通らない、という規範意識が、公害反対運動に始まる社会全体の取り組みの中で普遍化してきたといえるのだろうか。
  (d)  なお、わが国の多くの規制権限の行使の法構造は規制行政庁対被規制者との関係として構成され、被規制者以外の第三者、端的にいえば周辺住民が、行政手続上も、争訟上も法的な地位をもつものとして制度上、十分に位置づけられていない。このことは、公害問題に関わっては特に鋭い矛盾を生ぜしめる。
  (3)  公害発生施設設置の規制
  (a)  個々の排出行為の法令違反をとらえるのは上記のように現実には困難であり、それだけに施設設置規制が重要になる。
  公害発生施設の設置そのものを規制する制度として、許可制と、「届出制+計画変更命令」の組み合わせがある。わが国では、大気汚染防止法その他、一般的な法制度としては届出制がとられた。許可制をおいたのは、瀬戸内海環境保全特別措置法五条、廃棄物処理法八・一五条、また東京都公害防止条例二三条など、限られている。
  (b)  届出の場合、適法な届出であれば受理される。その上で、知事は、排出が排出基準に適合しないと認めるときは、六〇日以内に、計画変更・計画廃止命令、ばい煙処理方法改善等の命令を出すことができる(大気汚染防止法六・九条、九条の二など)。ただ、実際には、事前に計画変更の指導をして、排出基準に抵触しないようなものについてのみ届出をするようになっているので、許可制に近い運用といえる(11)
  それにもかかわらず、「届出制+改善命令等」という構成は、環境を悪化させる個々の排出行為の規制が基本で、それに必要な限りでの設置規制にとどめようという点で、原理的に許可制と異なるといえよう(12)
  一定規模以下は規制対象からはずすという「スソ切り」も、環境を一定程度以上に悪化させる排出行為のみをとらえて規制する、ということの現れといえる。限られた行政職員・予算の効率的運用や、中小企業の負担が重くなるのを避けるという意味あいもあるだろうが、実際にはそれが不公平をもたらし、時には分割設置という回避行為をもたらす。
  (c)  しかし、環境を悪化させる個々の排出行為の規制にとどまらず、公害を発生させない地域・社会構造の構築への展開が求められるようになってきた。規制法自体についても、地域全体の環境管理へと展開する萌芽が、既に排出の総量規制基準に見られた(13)
  ただ、総量規制には、地域の環境許容量の算定、および総排出量の各事業者等への公正な配分で、なお困難がある。実際には、新設施設に一律により厳しい基準を適用する形をとるため、既存工場に有利に働く。今日でも総量規制は限定的に、大気関係ではいおう酸化物、窒素酸化物、水については瀬戸内海その他閉鎖性水域におけるCOD(化学的酸素要求量)に導入されているにすぎない。
  (4)  土地利用規制
  (a)  公害を発生させない地域・社会構造の構築において重要なのは、土地利用の計画的コントロールである。
  都市計画法上の用途地域制その他、個別法で地域制がおかれ、一定の地域内では工場等の立地が制限される。ただ、特別の地域・特定の工場は別として、わが国の用途地域制では、工場と商業施設・住宅との混在について、あまり厳しく統制はしていない。
  また、零細工場のかなりのものが住宅兼用工場であったり、あるいはその操業・労働実態から、職住の距離的隔離が現実的でもなかった、ということをも反映していた。
  (b)  都市計画法は、地域地区制以外に、騒音・振動等による環境の悪化をもたらすおそれがある予定建築物等の建築・建設の用に供するための一ヘクタール以上の規模の開発行為に対しては、四−一〇メートルの範囲内で、省令で定める幅員の緑地帯その他緩衝帯を設けなければならないとしている(法三三条  一項一〇号、令二三条の四・二八条の三、規則二三条の三)。
  また、工場立地法は、一定規模以上の工場立地について「工場立地に関する準則」で緑地の割合を定め(四条。現在は二〇パーセント)、準則に適合せず周辺地域の生活環境保持に支障を及ぼすおそれがある時は、所管大臣が勧告をし、勧告に従わない場合には変更命令をすることがある(九条二項、一〇条)。
  いずれも立地自体の規制ではなく、立地を前提として環境施設を義務づける規制であり、しかも適用はかなり限定されている。
  (5)  今日の到達点
  このように、公害規制の手法としても、なお多くの課題を残しているのみならず、八〇年代の公害行政はいくつかの重要な点で後退をした。しかしながら、産業公害についての規制は一定の成果をあげ、この下での各企業の公害防止努力も進んできた。経済の減速化で産業活動が不活発になったこと、わが国の産業構造が重化学工業中心から、ハイテク・情報産業に比重を移していったこともあったとはいえ(14)、ひどい個別加害型公害は少なくなってきたといえる。
  ただ、そこで展開したのはあくまで有害な個々の排出等の行為を規制するものが中心であって、地域構造を再編するというものではなかった。しかし、以下に見る自動車公害、廃棄物などの環境問題は、もはや個別の行為規制のみでは対応できない。

2.新たな段階での環境保護の課題
  (1)  自動車公害
  (a)  公害規制の展開の中で、今日なお我々が直面している深刻な環境問題に、自動車公害の進行がある。
  窒素酸化物による大気汚染は、大都市地域を中心として、なお深刻であるばかりでなく、一九八五・八六年あたりを底に現在はむしろ漸増傾向にある(15)。これはいうまでもなく、自動車の排気ガスによるものが主要なものである。たとえば、東京都区部の地域では、窒素酸化物の三分の二以上が自動車からのものである。
  自動車単体の排出規制は、一九七三年以降、逐次強化され、世界でも最も厳しい規制になっているといってよいだろう。乗用車については、窒素酸化物を未規制時の一〇分の一以下に低減する規制が一九七八年度から実施されている(16)。それにもかかわらず、悪化は進行した。
  (b)  自動車排出ガスの総量が削減されない限り、この問題の解決にはならない。しかし、自動車総量の増加は、わが国の産業構造、国土構造にも関連する。一九五八年度に道路整備特別会計が創設されて以来、道路整備は進み、今日の日本の主要運輸手段は自動車運送となった(17)。また、これによって、自動車産業は日本経済の基幹産業に発展した。しかも、日本で展開した特有の生産・流通システムであるジャスト・イン・タイム方式が交通量を一層増加させているともいわれる。
  さらに、大都市地域に人口・経済活動が集積し、これが交通の集中をもたらしている。たとえば、東京都、大阪府では、昼間の交通量の平均値が道路の交通容量を超過する状況となっている(18)。それにもかかわらず、八〇年代以降、内需拡大、民間活力の活用によって都市の土地利用高度化政策が進められ、都市での自動車交通需要増は拍車をかけられた。そして現在もなお、都市の容積率緩和施策がとられようとしている(19)
  (c)  一九九二年に制定された「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」(通称「自動車 NOx 法」)は、特定地域を政令で指定し、環境基準を二〇一〇年までに概ね達成することを目標に総量削減計画を知事が策定して総合的施策を講じるとともに、特定地域を使用の本拠とするトラック・バス等については特別の排出基準に適合しない自動車には自動車検査証を交付しないという方法で、使用できる車種の規制することとした(20)。しかし、そのカバーする地域はなお狭く、指定地域内においても、その担いうる役割は、そう大きなものとはなりにくい。
  自動車公害を減らすためには、改めて、大量輸送機関・公共交通機関の拡充など交通・運輸体系、および都市構造の改編、さらには現在の産業構造、生産・流通システム、生活構造に食い込む施策の検討が必要とされる。
  (2)  廃  棄  物
  (a)  大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システムの中で、一般廃棄物の量も増え続けている。そのため、ゴミ焼却による大気汚染のみならず、焼却場の立地も困難となっている。最終処分場も、現存のものの残余年数は八・一年にすぎない。また、産業廃棄物の排出量も増え続け、三・九七億トンとなった。その最終処分場の残余年数は、全国で二・三年、首都圏で〇・八年という状況である(21)。新しい処分場の立地をめぐって、地元市町村・住民との間で厳しい対立も生じている。
  (b)  この問題は、ゴミ減量化と再資源化なしには解決不可能である。
  一九七五年前後より、ゴミ減量化のため、ごみの分別収集をし、可能なものの再資源化がめざされ始め、今日、多くの自治体で取り組まれるようになった(22)。しかし、回収古紙・鉄屑の価格は暴落し、下値安定してきたため、収集・再資源化の展開はなお困難である。首都圏四都県約二五〇自治体で、一般廃棄物の総排出量に占める再資源化量は、一九九一年現在で三・四パーセントにすぎない(23)
  ゴミ収集の有料化への方向も、環境庁、厚生省、全国市長会、経済団体連合会などの各報告書・答申による積極的な推進もあって、いくつかの地方自治体で実施されてきた(24)。しかし、料金が高いと不法投棄に向かい、安いとゴミ減量のインセンティブとしては不十分である(25)。経済的手法を導入するにしても、排出の段階のみで、しかも経済的手法単独では、なお十分な実効性は得られない。また、再資源化したものの需要の拡大など、リサイクル全体の流れのシステムの形成なしには展開しえない(26)
  (c)  そこで、廃棄物処理法一九九一年改正で目的に廃棄物排出抑制・再生が加えられ、あわせて事業者の責務として、その製品・容器等が廃棄物となった場合の処理の困難性の自己評価、困難とならないよう製品・容器等の開発の責務等を規定した。そして、一九九一年に「再生資源の利用の促進に関する法律」、一九九五年には「容器包装に係る分別収集及び商品化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)が制定された。
  再生資源利用促進法は、再生資源を原材料として利用すべき業種を指定(紙製造業、ガラス容器製造業)、リサイクルを容易にするため材料・構造の工夫を行うべき製品を指定して製造業者の製品アセスメントを促進(自動車、家電製品)、リサイクル目的の分別収集を容易にするための表示を行うべき製品を指定(スチール缶、アルミ缶、ペットボトル)その他を定める。最後の手段として勧告・下命も規定するが、基本的には事業者が、一定の基準にしたがって自ら実施することを期待するものである。
  容器包装リサイクル法(27)にもとづいて、市町村が市町村別分別収集計画を定め、それにもとづいた分別収集を行う場合には、容器の製造業者・容器の内容物の充填業者・包装利用事業者は定められた量の容器包装の引取り・再商品化(リサイクル)が義務づけられる(あるいは、再商品化業務を指定法人に委託し費用を負担する)。これは、製造業者等にもリサイクル義務を課すという意図である。しかし、市町村が法の趣旨に適合する分別収集を行い、そして事業者に再商品化義務の生じる「分別基準適合物」にするには、かなりの費用を要する(28)。回収から再生まで事業者による自己責任体制になっていないために、発生そのものを回避するなどのコスト削減努力への動機づけが働きにくい(29)
  廃棄物問題の解決の基本方向は、@生産から消費の段階における系内での原材料または消費財のクローズドシステムの確立、A各段階の系内からやむをえず廃棄されるものの適切な収集・再資源化(それもまず再使用(reuse)、次いで再生・再利用(recycle))、B最後に処理・処分であるが、可能な限り埋立て等による自然生態系への還元、というものであり(30)、その視点からすると、わが国の現在の到達点は、なお低い。
  (3)  自然の保護と環境の「質」の展開
  (a)  自然保護の法制は、史跡名勝天然記念物保存法(一九一九)、国立公園法(一九三一)等に始まり、自然公園法(一九五七)へと展開した(31)が、それは、特に貴重な自然の保護や、国民の保健・休養の場として風向明媚な景観の場を確保するというものであった(32)。特別なものを保護する自然保護法制と環境に特に悪影響を及ぼす排出行為を規制する公害防止法制とは、別の体系として構成されざるをえなかった。
  ようやく、自然環境保全法(一九七二)で自然環境の保全という趣旨で組み立てられ、環境基本法制定に伴って、現在及び将来の人類を含むすべての生物の生存基盤となる自然の生態系を総体として保全する、その重要な一環として自然保護も位置づけられるに至り(33)、両者が環境法制として包括的な体系を構成する基盤がつくられた。
  (b)  しかしながら、自然保護の具体的手法は従来の個別法によって組み立てられている。計画を策定し、整備事業を実施するとともに、地域を指定して一定の行為についての届出制、特別地区等では許可制をとる、という構成のものが多い。しかも、財産権の尊重を定める条項(自然環境保全法三条、自然公園法三条、絶滅法三条)など、財産権偏重の発想で制度構築がされ、その運用がなされているため、不許可補償が必要とされ、そのため土地所有者が同意しないと地域指定をしないという状況にもなっており、実効性はうすい(34)
  (4)  現段階での環境政策・環境法の課題
  地球環境の問題も含め、上記のような環境問題の解決には、次のことが必要となる。@まず、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会活動の様式を変えて、循環型の社会を構築する。Aまた、人口・経済社会活動の都市へのさらなる集中を抑制し、地域構造・都市構造を変える(35)。このようにして、自然の大きな循環の一つとして人間の経済活動も組み込まれるような、そのような社会構造をめざすことが、環境保護政策の、そして環境法の課題となる。そこでは、現在及び将来の国民・地球民共有の財産であり、その保全は土地所有者及び自然の利用者の共同の義務であるという基本理念にもとづいた環境管理の視点(36)に立たなければならない。
  以下で、このような視点から、各手法の若干の検討を行う。

3.環境配慮への社会・経済構造変革の手法
  (1)  経済的手法の導入
  (a)  都市・生活型公害、不用物の排出量の増大、地球温暖化問題等は、広範な主体による様々な経済社会活動に起因している。このような問題については、大規模発生源や特定行為の規制を中心とする従来の規制的手法では、実効性に次のような限界がある。@各企業によって汚染減少のコストが異なることが無視され、社会的費用が浪費される。A基準によって定められた排出許容値まで汚染を削減できればそれ以上の削減を行う継続的インセンティブはない。B許容範囲内でも環境汚染をして負の生産がなされているのに、企業が何らその負担をしなくてよいのは不都合である(37)
  したがって、生産の全過程において環境コストが内部化するような制度を構築し、環境管理に適合するような合理的意思決定手続がなされるような過程を組立てる必要があるが、そこでは、市場のルールを修正しつつ市場を利用する経済的手法が有効だとされる。
  (b)  経済的手法とは、@環境に負担をかける活動にはマイナス・インセンティブを課す(排出課徴金(税)、ユーザー課徴金(利用者税)などの課徴金)、A環境により配慮した活動にはプラス・インセンティブ(資金援助など)、Bリサイクルに対して経済的インセンティブ(デポジット・システム)、C売買可能排出権制度の創設−新たな市場創設、などがあげられる(38)
  たとえば、課徴金・賦課金制度については、次のような、上記の直接的規制とは裏腹の関係にある長所がいわれる。@環境汚染による社会的費用(汚染防除費用+汚染による損害)を最小化しうる。A汚染物質の排出量削減や汚染防止の技術開発に対するインセンティブが継続的に与えられる。B執行が容易である。C新しい財源が得られる(39)。特に、Aによって、各主体が環境の保全に適合した行動を一貫してとることを促す、という意味で経済構造・社会構造を変える契機となりうる。
  もっとも、経済的手法がいわれるようになった社会的背景として、規制緩和・規制改革、経済の低成長下での政府予算の緊縮化に伴うコスト削減、財源調達の要請などがあることも事実である(40)
  (2)  経済的手法と汚染者負担原則
  (a)  公害に関わる汚染者負担の原則は、既に国際的な共通認識となってきている。一九七二年に、OECD閣僚理事会は「環境政策のためのガイディング・プリンシプル」を出し、汚染者負担原則を示した。それは次のような趣旨である。「環境は有限な経済的資源である。これをある程度のコストを払ってでも良好な環境を消費したいという需要と、コストをかけて良好な環境を作り出すという供給が存在し、両者の一致した点で環境という資源の配分、すなわち汚染の最適レベルが決定される。この最適レベルを市場機構を通じて効率的に決定するためには、環境資源の消費に伴うコストが商品の価格に反映されることが必要であり、このために汚染者は汚染防止の費用を負担すべきである。」
  これは、清浄な空気・水など、いまや希少化した環境資源が伝統的市場機構の外にあって浪費されている状態を市場機構の中に取り込み、政府の活動を含めて是正しようという考え方であり、同時にそれは、当時各国で強まりつつあった公害規制に関して、国際貿易面でのバランス上、足並みをそろえようという趣旨もあったかと思われる。
  ただ、そこで負担すべきであるとされた費用は、公害防除費用にとどめられ、その他のダメージ救済費用、ストック公害除去費用などは、たとえば数量的把握が困難であるとの理由などにより、含められなかった。
  その後、EU指令九一/一五六は、廃棄物処理についての一定の措置を国内法化することを求めたが、そこでPPP原則にしたがって廃棄物所持者ならびに廃棄物発生の源となった製品の所持者および生産者に廃棄物処分費用を負担せしめることを指示した。これは、「公害防除費用」を負担すべき事業者の範囲を広げたものといえよう。
  (b)  わが国でも原因者負担原則について検討が進められ、ガイディング・プリンシプルの前、一九七〇年の公害防止事業費事業者負担法、そして四日市公害訴訟判決を経て定められた一九七三年の公害健康被害補償法として制度化された。
  ここでは、民事責任追究とのからみで生成してきたという経過もあって、ダメージ救済も重要な要素として含められ、民事上の不法行為責任と連続したものとして展開してきた。これは、OECDのガイディング・プリンシプルが直接は含まなかったものである。
  いずれにせよ、汚染者負担原理は、その主要な柱を原因者負担の展開として性格づけられてきた。
  (c)  今、経済的手法というとき、OECDのガイディング・プリンシプルの文面がいっている汚染者負担の原則によってたつものとする考えがある。リオ宣言・原則一五が、「各国当局は、汚染者負担原則を考慮に入れつつ、公益に対し適切な配慮を払い、かつ国際貿易や国際投資を歪曲することなく、環境コストの内部化および経済的措置の利用を促進するよう努力しなければならない」というのも、この立場といえようか(41)
  しかし、はじめに述べたような経済的手法の位置づけ、内容は、原因者負担原則の下に実際に構築されてきた制度を超えるものがある(42)。環境の利用・消費が決して無償ではありえないことを社会システムとしても明確にし、またいわゆる外部効果を内部化することを、より広い範囲で構築しようとしている。これによって、すべての社会的・経済的活動が環境に配慮したものとなることを確保しようというのである。環境の有限性が地球規模で現実の認識となってきた状況をふまえ、また、環境保護のためには、社会・経済構造を変えなければならない、という認識が共通のものとなってきた今日、そのような広い制度枠組みが必要とされよう。
  (3)  経済的手法を導入した制度の展開
  (a)  わが国では、ヨーロッパ諸国以上に経済的手法はあまり展開してこなかった。大塚直は、その原因を、行政指導、公害防止協定などの手法の発達に求める。すなわち、各企業によって汚染減少のコストが異なることが無視される、汚染削減の継続的インセンティブが与えられないなどの直接的規制手法の短所が、行政指導、公害防止協定によって補完されてきたというのである(43)
  (b)  それでも、いくつかのものは見られる。汚染防除のための賦課金制度として、航空機特別着陸料(空港管理規則、「運輸大臣が設置し、及び管理する公共用飛行場の使用料に関する告示」)、下水道原因者負担金(下水道法一八条の二)、産業廃棄物の事業者の処理責任(産業廃棄物及び清掃に関する法律一〇条)、一般廃棄物中の事業廃棄物についての事業者の処理・回収義務(東京都清掃条例八・一四・一九条)などがそうである。公害健康被害補償制度における賦課金は被害者救済費用の財源確保目的であるが、同時に何らかのインセンティブ機能をも果たしうるものと一応はいえる(44)。そのほか、上述のゴミ収集の有料化も、経済的手法に入れられる。
  それ以外のところでは、あまり展開していない。それどころか、公害健康被害補償制度の非特定疾患に係る第一種地域が、一九八七年の法改正を受けて一九八八年には全部指定解除され、したがって新たな認定はなされなくなり、@既存患者への補償を引き続き行いながら、A健康被害予防事業が実施されることとなった(45)。@の財源は、汚染負荷量賦課金(全国の事業者につき過去の排出量と現在の排出量を基準に算定)と自動車重量税収引当分(八対二)からなる。賦課金については強制徴収もありうる。Aのための年間二五億円の元金として五〇〇億円の基金が、固定発生源四〇〇億円任意拠出、自動車工業会五〇億円、国五〇億円拠出で積み立てられてきた。これは、事業者等の社会的責務にもとづくものという理解である(46)
  このようにして、社会的責任の思想は、むしろ弱まったといえる。この下では、環境資源の私的消費についての対価、という考えすら展開しにくい。
  (c)  上記の経済的手法導入のメリットとされていたものが、現実に十分な役割を果たしたか。わが国よりも広く導入された制度、ドイツの水質汚染に対する排出賦課金制度、フランスの大気汚染に対する排出特別徴収税などは、その設計如何にもよるが、インセンティブ効果は、当初の予定よりも少なかったといわれる。賦課金その他経済的負担の水準が汚染防除費用に比べて低い、というのが、多くに共通する主要な原因であろう。したがって、これらはほとんど直接的手段を補充するという位置づけの下に設置されている(47)
  一般に、経済的手法は、(i)費用負担の対象となるべき特定の環境の悪化をとらえ、(ii)それについての費用の特定、算定を行い、(iii)原因者たる事業者に負担させる、というものである。しかし、その各々について、難点がある(48)。@費用の負担を求めるべき環境の悪化要因と、一般行政の中で処理すべき環境の悪化要因の区別が明かでない。A特定の負担の妥当性の根拠が、負担をしない者との対比で必ずしも自明ではない。B最適なレベルの賦課料率を設定することが困難である。C多くの発生源からの排出量を、行政機関が把握するには困難がある。Dあまり小さな発生源を対象とすると、徴収コストがかさむ。E製品価格に反映させるような政策は、完全競争市場を前提として主張されてきたが、現実の市場ではそれはうまく機能しにくい。F逆進的であり、社会的弱者への負担が大きい。G毒性が強いなど汚染物質を緊急に削減しなければならない場合には、直接的手段によらざるをえない。
  地球温暖化に伴う二酸化炭素排出削減のため、炭素税が北欧四ヶ国やオランダで導入され、広がる傾向を見せているが、それは、直接的規制になじみにくい、経済的手法が有効となる次のような要素をもっているからであるといわれる。@二酸化炭素そのものは有害でないため、緊急性はない。A継続的な技術革新を必要とする。B非常に多様な活動によって惹起され、特に我々の日常生活にも深く関連している。C二酸化炭素と地球温暖化との関連は未だ科学的に不確実なことが多い(49)
  それにもかかわらず、実質的に意味のある規模で排出量を減らそうとすれば、極めて高率の税にならざるをえないという炭素税の最大の問題は、なお懸案となっている。
  (4)  規制的手法と経済的手法との総合による経済構造変革の政策
  (a)  廃棄物処理に関わり、生産の全過程において、環境コストが内部化するような制度が必要となる。しかし、そこでは、直接的規制手法も依然として大きな役割を果たす。また逆に、直接的規制が経済的インセンティブともなりうる。
  たとえば、循環型社会の形成において、商品が廃棄物となった時に生産者が引き取ることを義務づけることも有効な手法たりうる(50)
  既に、一九九〇年代に入り、ドイツ、フランスでは一般廃棄物の多くを占める容器包装廃棄物についてその製造業者が一定の責任を負うリサイクルシステムが導入されてきた。ドイツでは、廃棄物回避処理法(一九八六)、包装廃棄物を回避するための政令(一九九一)が、さらには循環型経済・廃棄物法(一九九四)が定められた。最後のものは、製品を開発・加工・処理・販売する者に、製造・使用に際して廃棄物の発生を可能な限り抑制し、使用後に発生する廃棄物が環境に適う方法で利用・処分できるようにしなければならないとされた(51)。台湾の一九八九年の廃棄物処理法改正も、ペットボトル回収・引き取り義務などを定めるものであった。
  わが国でも、廃棄物処理法施行令改正(一九九四・九)で、一九九六年四月以降は、自動車・家電製品等の金属類のシュレッダーダストは管理型処分場にしか投棄できなくなったが、これもリサイクルシステムの構築を進めるものである(52)
  (b)  地球環境の有限性の認識と、環境の利用・消費が無償ではありえないという認識が、経済的手法導入についての合意形成の基本的条件でもあり、また、経済的手法の導入がその観念の一般化を促進する、ということは確かにいえる。
  ただ、経済的手法がそれ自体で環境保護の目的を達することには、おそらくなりえないだろう。それは、直接的規制手法と補完関係にたつものである。問題は、どういう補完関係にたつか、各々の役割は何か、ということである。
  (5)  「自律」の促進・組織
  (a)  ただ、そのような規律の網をはりめぐらすことは、行政コストの面から困難な問題も生じうる。すべてを行政が監視し、規制するというのではなく、環境に配慮した社会・経済活動を促進するような、事業者、消費者等の自律がさらに促進されるべきであろう。一九九〇年「地球温暖化防止行動計画」での二酸化炭素排出抑制対策を実施するための、一九九三年改正「エネルギーの使用の合理化に関する法律」に、その萌芽がうかがえないでもない。そこでは、工場を指定してエネルギー使用状況を大臣に届出させ、またエネルギー管理者をおかせて、設備維持・燃料使用合理化の改善・監視を行わせて大臣に報告させる、エネルギー使用合理化が著しく不十分である場合には、エネルギー使用合理化計画をつくらせ、それを実施させる(そのための指示、命令)などが定められている。
  ここに見られるように、単なる行政的規制ではなく、自ら計画をたて、責任者をおいて実行させる枠組みは、この分野では有効である。これに、経済的手法(53)を組み合わせ、さらに努力状況のわかりやすい公表制度等をおいて社会的監視を制度化することなどをあわせることによって、「自律の組織化」も進むと考えられる。
  また、国際標準化機構による環境マネジメントシステムに関する標準の作成と、それに沿った企業経営の改善、特に ISO 14001(環境マネジメントシステム−仕様及び利用の手引き)規格の認証制度(環境マネジメントシステム審査登録制度)ないしは自己適合宣言の制度も、このような自律を促進する意味あいがあろう(54)

4.地域環境管理−立地規制手法
  (1)  地域環境管理計画と環境アセスメントによる地域環境管理
  最近、地域の環境管理に関しても、容積率規制を撤廃し、たとえば混雑料金を課すという経済的手法がより有益である、という主張が見られる(55)
  経済的手法が有効な局面があることは上記のように少なからずある。しかし、それをも包含して、環境に影響を与えるすべての活動において、環境に適合するような合理的意思決定がなされるシステムをつくることが肝要である。そして、そこでは、環境資源の有効・公正な利用という視点から地域の諸活動を調整すべき計画(環境管理計画)を策定し、それに照らして、個々の計画・事業を行うか、どのように行うかの合理的決定をする過程(環境アセスメント)が不可欠のものとして位置づけられよう。
  市民の環境関連情報の入手、意思決定過程への参加、救済手段等への効果的なアクセス(第一〇原則)、環境アセスメントの実施(第一七原則)をリオ宣言が求めたのも、まさにこのような意味がある。
  (2)  環境管理計画
  (a)  環境管理計画について確定した定義があるわけではないが、一応次のような意味と考えることができよう。
  まず、環境を資源ととらえ、資源のもつ諸特性、たとえば、希少性、有限性等が環境にはある、と考える。環境管理とは、一定地域の大気、水、土壌、植物および動物等を含めたトータルな環境を管理対象として、それを創造的また総合的に管理することである。そこでは、その地域の有限な環境資源の需給のバランスの調整・利用配分、公害の監視と規制、土地利用に関する各種の施策の実施や計画の策定、良好な環境を創造するための事業の実施、資金の融通、自然保護、廃棄物の収集処理や再利用、環境教育などが行われる。環境管理計画とは、これらを総合的に遂行するための計画である(56)
  現在、環境管理計画というタイトルをつけられたものには、指標(ガイドライン)を示す型、施策総合化型などいろいろあるが、一般的には二つの機能、すなわち、@調整機能(環境資源利用行為の、環境サイドからの調整)、A即地的な環境配慮の指針(評価基準(57))機能をもつ。そのため、@地域の環境保全・創造に関する目標と理念、A地域の環境資源の自然的特性、その特性に応じた環境資源の適正な利用を図るために配慮すべき指針、B目標を達成するための諸施策が、その一般的な内容とされる(58)
  (b)  環境管理計画でまず想起されるべきは、一九七三年の「大阪府環境管理計画」(BIG PLAN)である。それは、環境を有限なものととらえ、その地域での汚染物質の総量を削減する、という方式をうちだした。
  これにつづいて、環境庁は「地域環境管理計画」などに関する一連の調査を行い、『環境白書』などにおいてそれを位置づけるとともに、その推進を図った。これらを受けて、環境管理計画は、相次いで各地方自治体で作成されていった(59)
  環境基本法(一九九三年)に国の環境基本計画が規定され、同法制定後は各地方自治体も「環境基本計画」を定めるところが多くなった。そこでは、規制のみならず、経済的措置、施設整備等の事業、環境教育・環境学習、その他様々な施策を有機的連携を保ちながら進めることとされている。ただ、この名称には、地域環境資源の有限性、その適正な配分という視点は必ずしも明確には現れていないように思える。
  (c)  この環境管理計画に、すべての施策・事業は整合することが本来は求められるはずである(60)。これを具体的に担保しようとするのが環境アセスメントである。しかし、現実には、環境管理(基本)計画は、”環境サイドが作った総合計画”という程度の位置づけしかされず、現実に行われる開発等をコントロールする機能は十分には果たしていない。それは、環境アセスメントが十分には機能していないことをも意味する。
  (3)  環境アセスメント
  (a)  環境アセスメントは、合理的意思決定を保障するというのが、最も基本的な機能である。合理的意思決定の基本要素は、@課題を設定し、Aその課題を達成するためのいくつかの手だてについて、その結果・影響を予測し、Bその中から評価・選択する、というものである。産業、運輸、建設などの行政を担当する組織は、自己の部分の目標を最優先し、環境目標の達成は二の次にする傾向がある。行政組織の縦割りからくる弊害といえよう。これを克服する手段として、環境アセスメントは意義をもつ(61)
  また、現在の環境法制の中軸である規制法制は、「行政」対「規制される者」という二者対立構造で今なお組み立てられている。規制によって実現する利益、損なわれる間接的不利益等々、諸々の利害は行政が代表する、すなわち、行政が諸々の私益を総合し、公益に止揚して、その立場から事業者・開発者の私益を規制する、というのである。環境に関して住民が独立してその利益=共同の利益=環境権を主張して登場する場はない。環境資源をどう使うかという共同のルールを形成する場はなかったのである。環境アセスメントは、住民に情報を提供するとともに、その意見を主張する場を提供する役割も果たす。
  (b)  環境アセスメントの必要性は、日本においても、アメリカの一九六九年国家環境政策法(NEPA)の紹介等によって次第に認識されるようになり、また、判例でも事前の調査・予測・評価が事業者の私法上の注意義務の一要素であると判示された(62)。そこで、一九七二年の閣議了解「各種公共事業に係る環境保全対策について」は環境影響評価をするよう指導することとし、さらに引き続いて、一九七三年のいくつかの個別法の制定・改正によって、環境アセスメントがとりいれられた(63)
  一般的な環境アセスメントの制度化は地方自治体が先行し、国のレベルでは、「環境影響評価実施要綱」が閣議決定されてきたが(一九八四)、ようやく一九九七年に至って環境影響評価法が制定された(64)
  (c)  このように、日本でも環境アセスメントの経験はかなり積み重ねられてきている。しかし、アセスメントの結果、事業の部分的手直しにとどまらず事業の実施自体が取りやめになった例、大幅な変更がなされた例はほとんどない。それは、環境アセスメントのやり方についても、次のようないくつかの欠陥がみられるからである(65)
  @  資料が十分には公開されず、問題点の指摘が踏み込んでなされにくい。
  A  住民参加の手続が不十分である。意見書、公聴会での公述に対して事業者に応答義務が課されていない。
  B  環境アセスメントが、事業実施段階で、追認的に行われるにすぎない(66)
  特に、Bの問題は環境アセスメントの機能の根幹に関わる問題である。それを実効あるものとするためには、代替案の検討を義務づけること、そのためにも、事業を行うかどうか、事業の基本的性格の決定段階でアセスメントを行うことが必要であろう(67)。計画アセスメントの必要性が主張されるのもそのためである。今次の環境影響評価法は、スクリーニング手続、スコーピング手続をおき、アセスメントでの早い段階の住民参加を定めたが、事業の早期の構想・計画段階でのアセスメント実施自体を定めたものではない。
  確かに、計画アセスメントといっても、@計画の熟度が低い段階でのアセスメントは、判断材料が不足するために、不正確なものでしかない、A各段階でアセスメントを行うと計画実施に遅れが生じるなどの懸念もありうる(68)
  しかし、計画アセスメントの研究は、既に一定の蓄積をもっている。たとえば工業系計画について、(i)レベルT(工業再配置計画・開発構想の予備的検討の段階)、(ii)レベルU(都道府県による工業基地・工業団地開発の基本構想段階。計画規模、業種の設定、おおよその立地位置が定まる段階)、(iii)レベルV(工業基地・工業団地の開発基本計画段階。港湾・道路等の施設、工業用水・下水道・住宅等の関連施設の計画の概要を定める段階)、(iv)レベルW(工業基地・工業団地の基本設計・実施計画段階。開発基本計画を実施に移す際の詳細な設計・計画の段階)に分ける。
  そのレベルUでのアセスメントについては次のように整理されている。主計画として基幹工業の業種・規模・位置、関連工業の規模・位置、関連計画として、発生交通量、関連交通施設、関連住宅需要、用排水量、廃棄物排出量、関連生活施設・関連環境施設を対象として、@開発区域の設定において優れた自然環境保護・保全に係る立地制約を考慮しているか、A同じく自然災害防止に係る立地制約を考慮しているか、B計画規模・計画業種の目標実現により、地域の第一次産業への著しい影響を生じないか、C同じく周辺地域の生活環境を著しく悪化させるような汚染・公害の進行はないかを評価する。そこでは、開発計画と既定計画とのチェックを行うと同時に、環境影響の上から重要と判断される事項については代替案の比較評価を行う。なお、計画内容に具体的でない部分も残されているので、影響要因の同定は、開発による影響として重要な要因を明らかにし、影響の大小をおおまかに把握するアプローチをとる(69)
  また、川崎市においては、一定の大規模な事業について、環境アセスメント手続に入る前の構想の段階で、行政部内の調査手続をおいている。まず、担当部局が既存の資料等に依拠して構想が環境に与える影響について調査書を書く。それに対して、各部局がそれぞれ意見書を出す。さらに「環境調整会議」(助役および全局長)で議論する。さらに詳細に調査すべき項目が析出された場合、二次調査を行う。そして代替案を含め再び調整会議で議論する、というものである(70)
  これを、行政部内の検討にとどめず、公表し、関係住民と関係行政機関の意見を聞き、さらに具体的事業案として詰めて行くような展開が求められよう。


お  わ  り  に


  これまで述べてきたように、今日、経済・社会構造、地域・都市構造を変革することが環境政策の課題となってきた。そこでは、生産過程から流通過程、消費過程を経て再びものが自然に帰る、それを前提とした製造者の行為が組み立てられなければならず、それは様々な行動様式や社会関係の取り結び方にも変容を迫る。たとえば、製造者がその製造物の廃棄されるものを引き受けるべきものとされたとき、ものの「販売」の観念自体、一定期間の利用利益の「販売」であるかのように観念することもおこりえないではない。
  そのような再編をする手法として、一人びとり・個別企業の行動原理に関わる経済的手法がきわめて有効な役割を担いうることは強調されるべきである。しかし、同時に、それはあくまで規制その他の多様な手法を組合わされてはじめて実効性をもつ。個人・個別企業の行動のあり方、社会的なレベルでのその共同的な規律、そして公的規制等を組合わせるのが計画である。分野ごとの計画、地域環境の計画、それらをいかにしてコンセンサスの下に形成するか、それをいかに実効性あらしめるか。これが今日の課題である。

(1)  土壌汚染と地盤沈下については、部分的な規制および事業手法により抑制が図られている。土壌汚染について環境基準は定められたが、農用地についてのみ「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」が制定され、その内容も潅漑施設整備や客土事業が中心で、具体的な規制は水質汚濁防止法、大気汚染防止法にのっとって行われる。地盤沈下対策としては、規制は建築物用地下水採取の規制(建築物用地下水の採取の規制に関する法律)にとどまり、工場の地下水汲み上げ抑制は工業用水供給によって行うものとされた。
(2)  阿部泰隆は、河川等への放流の前に池をつくらせ、そこに生物を生かし、生物と底の泥を時々検査する生物監督手法を提案する。同「環境法制の課題」ジュリスト一〇〇〇号八一頁。
(3)  大口のばい煙発生施設には常時測定義務を課している(大気汚染一六、規則一五)。
(4)  水質汚濁法は、総量規制制度をとっている地域については、CODの自動測定・記録義務を課し(一四U)、記録義務違反については罰則規定をおいている(三三B)。
(5)  阿部泰隆『行政の法システム・上[新版]』(有斐閣、一九九七)一一七・一一九−一二〇頁。
(6)  水についての総量規制基準や、騒音についての基準のように、直罰方式がとられていないものもある。
(7)  北村『自治体環境行政法』(良書普及会、一九九七)二〇六・二一〇・二一一頁、阿部・注(5)一二一頁。
(8)  水質汚濁防止法は、知事は「排水基準に適合しない排出水を排出するおそれがあると認めるとき」(一三)と、緩い要件を定めている。
(9)  北村・注(7)二〇四頁以下、阿部・注(5)一六七−一六八頁。
(10)  原田尚彦『環境法〔補正版〕』(弘文堂、一九九四)一二三−一二四頁、宮崎良夫「行政上の実効性の確保]行政法違反とその是正をめぐる問題点」成田頼朋・園部逸夫・金子宏・塩野宏・小早川光郎編『行政法の諸問題  上〔雄川一郎先生献呈論集〕』(有斐閣、一九九〇)二〇三頁以下など参照。
(11)  阿部・注(5)八一頁。
(12)  周辺住民が設置自体を訴訟で争う場合、届出制ではさらに困難が増す。また、阿部・注(5)一二四頁は、命令を発する場合と規制基準違反による不許可を事業者が争う場合とで基準違反の立証責任に違いが出てくるという。
(13)  原田尚彦「公害・環境政策法制の推移と現状−公害対策から環境管理へ」ジュリスト一〇一五号四〇頁。総量規制の先駆的なものとして、一九七三年「大阪府環境管理計画」(BIG PLAN)がある。庄司光「環境問題とその対策」(庄司光・鉄川精・亀井利明・沢井裕共著『環境論序説』法律文化社、一九七五)三八頁以下参照。
(14)  原田・注(13)四一頁。
(15)  鈴木安次「自動車交通と窒素酸化物による大気汚染」増原義剛編『地球化時代の環境戦略』(ぎょうせい、一九九四)一一四頁。
(16)  鈴木・注(15)一二四頁。ディーゼル車については、一九八九年には中公審答申にもとづいて、遅くとも一〇年以内に窒素酸化物排出量を三−六割低減することとされた。
(17)  一九六五年と一九九一年を対比すると、自動車保有台数は八一二万台から六、二七一万台、貨物輸送量(トンキロ)は鉄道三〇・七パーセントから四・九パーセント、自動車は二六・〇パーセントから五〇・七パーセント、旅客輸送量(人キロ)は鉄道六六・八パーセントから三五・三パーセント、自動車三一・五パーセントから五九・三パーセントと変化した。鈴木・注(15)一一八頁以下。
(18)  鈴木・注(15)一二一頁以下。
(19)  安本典夫「容積率規制緩和の法律問題」法律時報七〇巻二号参照。
(20)  鈴木・注(15)一二四頁以下、淡路剛久「都市環境政策の新たな展開−統合的環境政策への転換を−」都市問題研究四三巻六号七頁など参照。これを検討した「窒素酸化物自動車排出総量抑制方策検討委員会」では、@規制地域内の工場・事業場について、その使用する自動車からの NOx の許容排出量を個別に割り当てる「総量規制」、A規制地域内を使用の本拠とする自動車について、NOx 排出量の大きい車種の使用を規制する「使用車種規制」、B規制地域内においては、一定の基準に適合した自動車としてステッカーを添付しているもののにみ走行を認める「ステッカー方式による走行規制」が検討されたが、Aを基本とする諮問が中央公害対策審議会に対してなされ、同日、諮問の通りとする旨の答申がなされた。西川直哉「NOx 規制について」環境と公害一九九三年 July 五九−六〇頁。
(21)  いずれも一九九三年現在。『平成九年版  環境白書(各論)』一二八頁以下。
(22)  分別収集に取り組んでいる市町村は、一九九一年には二割、一九九五年では四割という。植田和弘「ごみ減量化・リサイクルと費用負担」都市問題研究四七巻一〇号二六頁。
(23)  佐野敦彦「持続可能な開発に向けての廃棄物処理と再資源化」増原編・注(15)七四頁。産業廃棄物のリサイクル率は三九パーセントである。大塚直「容器包装リサイクル法の特色と課題」ジュリスト一〇七四号一一〇頁。
(24)  田口正己『ごみ問題の政策争点』(自治体研究社、一九九六)七〇頁以下。
(25)  阿部・注(5)二九九−三〇〇頁、大塚直「環境賦課金(5)」ジュリスト九八六号四七頁以下。
(26)  寄本勝美「リサイクルをめぐる公共政策と経済的手法」環境と公害一九九四年 Jan. 七頁以下。
(27)  容器包装廃棄物は、一般廃棄物中、容積で六割、重量で二割五分をしめる。『平成九年版  環境白書(各論)』一三二頁。
(28)  大塚・注(23)一一〇頁、植田・注(22)二〇頁以下。一般廃棄物中のリサイクル比率は、一九九一年厚生省データによると三・四パーセントにすぎない。吉村哲彦「『企業戦略』としての事業者のリサイクル」都市問題研究四七巻一〇号七八頁。なお、阿部・注(5)二九九頁参照。
(29)  植田・注(22)二五頁。
(30)  通産省環境立地局監修『環境総覧一九九六』(通産資料調査会)一九七頁、倉阪秀史「リサイクルのための経済的手法」かんきょう一九九三年九月号一〇頁参照、郡嶌孝「リサイクル経済・循環経済・エコ経済」都市問題研究四七巻一〇号四八頁など参照。
(31)  そのほか、都市の自然保護目的の都市緑地保全法、首都圏近郊緑地保全法・近畿圏の保全区域の整備に関する法律など、また、動物の保護のために機能しうるものとして、鳥獣保護及狩猟等ニ関スル法律(一九四八)、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(一九九二)などがある。
(32)  阿部泰隆「自然環境保全の法的手法−その欠陥と改善策」ジュリスト一〇一五号九一頁。
(33)  山村恒年『環境保護の法と政策』(信山社、一九九六)五七頁参照。
(34)  阿部・注(32)九一頁以下。
(35)  中央公害対策審議会・自然環境保全審議会「環境基本法制のあり方について(答申)」(一九九二・一〇)、淡路・注(20)三頁参照。
(36)  原田・注(13)四二−四三頁。同教授は、公物管理法とのアナロジーで「環境管理法」を構成すべきことを、既に「環境行政法の位置づけ」(同『環境権と裁判』弘文堂、一九七七、初出一九七六)において主張していた。なお、その方向は「公物管理行為と司法審査」(同右書所収、初出一九七三)において示されていたといえようか。
(37)  大塚直「環境賦課金(1)」ジュリスト九七九号四六−四七頁。
(38)  天野明弘「環境保護をめぐる法と経済」ジュリスト一〇一五号八四頁以下、阿部・注(5)二七八頁以下、大塚・注(37)四七頁、小笠原秀信「先進七ヶ国の廃棄物に係る法規制と政策動向」廃棄物学会誌三巻二号など参照。
(39)  大塚・注(37)四八頁。
(40)  大塚・注(37)四六頁。
(41)  竹内謙「地球環境時代の環境行政」ジュリスト一〇一五号四九頁。
(42)  中央公害対策審議会・自然環境保全審議会答申における経済的手法導入消極論は、この点を強調する。
(43)  大塚・注(25)四七頁。
(44)  大塚・注(25)五六頁。公健法賦課金制度のインセンティブ効果については議論がある。同じく大阪を検討対象としながら、松野裕・植田和弘「環境政策の経済学4−公健法賦課金制度の経済分析−」(経済セミナー一九九五年七月号一一五−一二三頁)は、インセンティブ効果はあまりなく、あったとしても中小企業などに対してというように部分的であったとするが、井村秀文「汚染負荷量賦課金にみる汚染低減のインセンティブ」(かんきょう一九九三年九月号一三−一五頁)はインセンティブ効果はあったが、対策による総排出量の急減にもかかわらず、補償に必要な財源は増大し、異常に高い料率になったため、汚染削減のための経済的インセンティブとして見れば非効率な状態となった、という。
(45)  この背後には、大気中の硫黄酸化物の濃度がかなり改善され、指定地域としての指定要件を下回るようになったにもかかわらず、年々被認定患者数が増え続け、負担する費用が膨大になってきたという産業界の不満があった。大塚・注(25)五一頁。
(46)  野村好弘「公害被害者救済のあり方−公健法と公害防止事業費事業者負担法を素材として」ジュリスト一〇一五号七三頁以下、大塚・注(25)五三頁以下。
(47)  大塚直「環境賦課金(3)」ジュリスト九八二号四六−四七頁、同(4)ジュリスト九八三号、細田衛士「環境管理のための非規制的手法−経済的手法を中心に−」都市問題八六巻九号四二頁以下。
(48)  大塚・注(37)号四九頁、九八一号九四頁以下、郡嶌・注(30)五三−五四頁など参照。ただし、大塚は、賦課金制度も著しく不公正ではないとしている。
(49)  大塚直「環境賦課金(6)」ジュリスト九八七号六三頁参照、天野・注(38)八六頁。
(50)  ドイツ方式では、容器包装ゴミの回収・再生に要する費用を、GP使用料を媒介に、容器包装事業者が自己完結的に負担する仕組みになりうるので、少なくとも理論的には、市場がリサイクルしにくい容器包装を淘汰していくメカニズムを内蔵するシステムとなりうる。植田・注(22)二五−二六頁。
(51)  郡嶌・注(30)五五頁以下、松村弓彦「ドイツ新循環型経済・廃棄物法」ジュリスト一〇六二号一〇五頁。ドイツは、いち早く環境問題に対応できる体制を整えることで次の世代での競争力を高めようとしている。吉村・注(28)八一頁以下。
(52)  吉村・注(28)八三−八四頁。
(53)  上記省エネ法にもとづく活動には、「エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法」(一九九三)により、日本開発銀行等の融資についての産業基盤整備基金からの利子補給や租税特別措置、中小企業近代化資金助成の特別措置など、プラス・インセンティブのみ定められている。
(54)  さしあたり、吉澤正監修『環境マネジメントの国際規格』(日本規格協会、一九九七)参照。
(55)  経済審議会行動計画委員会土地・住宅ワーキンググループ報告書(一九九六年一〇月)、安本・注(19)。
(56)  上河原献二・熊谷道夫・森秀行「環境政策の総合的、計画的推進」増原編・注(15)二五四頁)。山村の場合、計画が評価基準として役割を果たすための土地利用適正環境管理計画というように、より限定的な意味で使っている。山村・注(32)七八頁以下、同『自然保護の法と戦略[第二版]』(有斐閣、一九九四)三二一頁以下。
(57)  村田哲夫「広域的環境管理の行政組織のあり方」環境法研究二一号四三頁。
(58)  村田哲夫「計画アセスメントと環境管理計画」都市問題八二巻一一号三五頁。大阪府環境管理計画の内容については、尾田晃一「新しい時代の環境行政−EPOC21の推進にあたって」都問研四三巻六号一六一頁以下参照。北村喜宣は、環境管理計画を、計画の実施・管理とフィードバックまで含んだ動態的な一連のプロセスと見る。北村・注(7)一〇八頁。
(59)  上河原他・注(56)二四九頁以下、北村・注(7)一一〇頁以下。
(60)  山村恒年は、計画が評価基準として役割を果たすための土地利用適正環境管理計画を主張する。山村・注(33)七八頁以下、注(56)参照。
(61)  山村・注(33)一六六頁。
(62)  津地方裁判所四日市支部昭和四七年七月二四日判決。
(63)  瀬戸内海環境保全臨時措置法(現在は特別措置法五・一三)、公有水面埋立法四七U、施行令三二の二、港湾法三の三、工場立地法。その後、総合保養地域整備法(リゾート法)などでも定められた。
(64)  本法は、中央環境審議会答申「今後の環境影響評価制度のあり方について」(一九九七・二・一〇)にもとづくものである。なお、本法によって、国の制度の対象事業については地方自治体のアセスメント条例の適用が排除されたといわれることがあるが、全面的な排除はされていないと考えるべきであろう。
(65)  山村・注(33)七〇・一六七頁。
(66)  建設省都市局長通達「都市計画における環境影響評価の実施について」(一九八五・六・六)は、たとえば道路建設の都市計画決定に際して行うアセスメントについて定めていた。しかし、都市計画決定自体、事業全体のプロセスの後の段階になってからが多く、しかも同通達は、環境影響評価準備書等の縦覧期間を閣議決定要綱の一ヶ月より短い、通常の都市計画決定手続での二週間でよいとするなどの特例を定めていたのであって、いわゆる計画アセスメントを定めているのではなかった。
(67)  山村・注(33)七〇−七一頁、山村・注(56)三七五頁以下、島津康男「都市と環境アセスメント」都市問題研究四三巻六号三四・四一頁。
(68)  島津・注(67)四一−四二頁、浅野直人「日本の環境影響評価について」環境法研究一七号六一頁など参照。
(69)  [環境庁委託]『計画段階における環境影響評価技法の体系化に関する調査研究報告書(第三分冊)・計画アセスメント実務手引資料集(工業計画編)』(一九八一・三)。
(70)  なお、川崎市の例については、田中充「川崎市環境基本条例が切り開く地平」地方自治職員研修一九九二年九月号なども参照。なお、そのほか、石田正「横浜市の環境面からの事業の調整システム」地方自治職員研修一九九二年一〇月号五二頁参照。