立命館法学  一九九八年五号(二六一号)


ドイツ公共調達法と司法審査の保障

− 委託発注法改正法による裁判的統制の展開 −

米丸 恒治




は じ め に

第一章  従来のドイツ委託発注法
  第一節  従来の委託発注法
  第二節  「財政法的解決策」の概略
  第三節  「財政法的解決策」下の判例と批判

第二章  委託発注法改正法
  第一節  委託発注法改正法の概略
  第二節  改正法への評価

お わ り に

 

 

は  じ  め  に


  国や公共団体などの行う公共調達(1)、すなわち物品調達、建設事業の委託発注、サービスの調達の活動は、国内経済上も国際経済上もきわめて重要な意義を持っている。本稿で検討するドイツにおいては、連邦、州およびゲマインデなど約三五〇〇〇の公共委託発注者が、推定約三八二〇億ドイツ・マルクの公共調達を実施しているといわれ(2)、国内総生産の約七パーセントにものぼっている。EU全体では、約五〇万の公共調達者が、約七二〇〇億ECU、約一兆四〇〇〇億ドイツ・マルクの公共調達を行っており、これはEU全体の国内総生産の約一一・五パーセントにのぼるとされている(3)

  公共調達は、会計法上、公正かつ透明な手続で行われなければならず、その契約相手方の決定基準も基本的には経済性原則に従い低い価額の入札者と契約をしなければならない。一方で、この間の経済情勢も手伝って、公共事業に景気浮揚策の過大の期待がかけられ、それが地域の経済の振興のための手段として位置づけられていることも確かである。そこでは、地域企業、中小企業の振興の観点も期待され、こうした観点が重要であることもいうまでもない。経済性を重視して柔軟な発注が求められる一方で、行政が行うものであるからそれ相応の法的統制も必要である。公共調達の法制度は、ピーツカー(4)のいうように、まさにアンビバレントな性格を持っているように思われる。

  本稿は、直接的には、ドイツにおいて、EU法の影響を受けながら九八年に改正された公共調達法制を検討することを通じて、公共調達を外部からコントロールする制度の必要性とその制度設計についての示唆を得ようとするものである(5)

  EUでは、すでに別稿で検討してきたように(6)、公共調達関連の複数の指令に基づき各国の国内法制の整備を行い、契約手続の国際的開放、透明性の向上、権利救済制度の整備が進められてきた。ドイツにおいては、一九九三年に、ECの指令(7)に基づいて、応募者に対する請求権の付与をせず財政法的な観点からの適正化を主旨とする「財政法的解決策(8)」と呼ばれる方式で、その国内措置を行った。しかしEC委員会は、その問題点を指摘し(9)、EC裁判所でドイツを被告とした条約違反手続も進めてきた(10)。こうしたEUレベルでの批判を受けて、ドイツでは再度、九八年に公共委託発注法制を改正し、EUの公共調達法制に適合させる法改正を行ったのである(11)。本稿の検討対象は、この度の法改正である。


  ドイツ委託発注法(O¨ffentliches Vergaberecht (12))の比較法的検討の持つ意味については、既に別稿(13)で述べたが、その後のWTO政府調達協定の批准に伴って現在取られているわが国の制度の概略も含めて、以下簡単に述べておこう。

  わが国の公共調達は、国のそれについては、会計法および予算決算及び会計令により、地方公共団体のそれについては、地方自治法により一応の規制がなされている。しかし、基本的にそれらの法的性質は私法上の契約とされてきたために、契約締結前には、応募者には特別の権利はなく、したがって、損害賠償請求が認められるごく例外的な事例を除けば、民事訴訟により救済されるべき権利利益を欠き、実質的には、訴訟による救済はほとんど不可能であり、公共調達自体に影響を与えるような裁判所の統制は行われていない。特別の争訟制度も、後述の苦情処理制度を除けばもうけられていない。

  また、私法上の契約としての公共契約は、公正性および経済性の観点から規制する会計法令その他の基準に反した場合でも、それらが「行政内部的」な規制と考えられるために、契約の効力に影響を与えない。

  こうした公共調達法制について、参加者に対して法的統制の機会を確保するために、その手続の中で行政が行う一方的な決定で、参加者の利益に重大な影響を与えるものについて、処分性を認めて、行政事件訴訟の機会を保障しようとする見解(14)も出されてきたが、なおその判例等における支持は広がっていない。

  こうした法制度を前提として、現在さらに、公共調達に関し設けられている制度としては、WTO(15)の政府調達協定の実施のために設けられた苦情処理制度がある(16)

  一九七九年に、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)に基づく「政府調達に関する協定」(旧協定)が定められ、八一年一月一日から発効した。その後、一九九四年四月、「世界貿易機関(WTO)を設立するマラケシュ協定」の付属書四の中に、「政府調達に関する協定」(新協定)が盛り込まれ、九六年一月一日から発効している。新協定は、旧協定の内容をほぼそのまま取り込むとともに、サービスの調達、地方政府機関、わが国の場合地方自治体(都道府県、政令指定都市)、政府関係機関(わが国の場合、大半の特殊法人)に範囲を拡大し、さらに協定違反の調達について不服を申立てることができる手続を設けることを締約国に義務づけることとなったのである。

  協定第二〇条は、協定の適用を受ける調達が協定に反して行われているかどうかについて疑いがある場合に、供給者が調達について迅速に「苦情」(challenge 、不服(17))を申し立てることができる手続を締約国が定めることを求めている(二項)。

  また六項は、不服は裁判所または調達の結果にいかなる利害関係も有しない公平なかつ独立した「検討機関」(review body 、審査機関)であって任期中に外部からの影響を受けない構成員から成るものにより取り上げられるものとしている。裁判所でない審査機関は、その決定が司法審査に服するものとするか、または次のような手続を持つものが求められている。それは、(a)意見陳述、聴聞の機会の保障、(b)代理人および輔佐人の承認、(c)すべての手続への参加、(d)公開での手続、熕R査機関の意見または決定が意見または決定の理由付けを伴う書面で行われること、瘴リ人の出席の承認、竦R査機関への文書の公開の諸点を満たす手続である。

  ある公共調達関係の解説書によれば、わが国では、公共調達をめぐる訴訟としては、国の契約でも私人の契約と同様、裁判所により民事訴訟として取り扱われることができるので、調達協定との関係では、裁判所による審査により担保しているとされている(18)。それに加えて、政府調達苦情処理本部を設け、司法審査に服さない特別の手続による「検討機関」として政府調達苦情検討委員会を設置し、苦情処理手続を用意しているというのである。

  しかしこの制度は、行政部内のまさに「苦情処理」のために設置されたものであり、その独立性、専門性、法的効果の実効性などの点で、不十分なもののように思われる。すなわち、この制度は、その法的根拠として、閣議決定と行政規則にしか基づいておらず、法的根拠がないに等しく、結果的に、その独立性、苦情処理の結果の実効性も、法的にみればない。行政部内の監督権限と、外部の政府関係機関に対しては行政指導によって、苦情処理の実を挙げる仕組みとなっているのである。

  また、委員の専門知識および委員の資格を法定し委員の任期を法的に保障することにより専門的で公正中立な判断ができるようにはなっておらず、その審議における手続保障も弱いといわざるをえないのである(19)

  このように現在の機関が、政府調達協定の求める審査機関の要件を満たすものかどうかはなはだ疑問に思われる。

  苦情検討委員会の決定は司法審査から免れているとされているが、その説明は、委員会が法令に根拠をおかない内部的な機関として設置されている結果であり、これは法的拘束力を持たないことの裏返しであるといえよう。このように、法的にその実効性が保障されているかどうかの点では、問題があると思われるのである。

  さらに、手続参加者による裁判所への出訴自体は、形式的には否定されるものではないとしても、契約締結前にその調達手続の合法性を審査し、場合によっては手続を停止し、手続の是正を求める実効的な民事訴訟が可能かどうかについては、現状ではほとんど不可能と思われる。これも極めて限定された損害賠償請求を除けば、手続自体に影響を与える訴求可能な請求権はほとんどないと解されよう。むしろ現状では、損害賠償の場合でも、その勝訴の見込みは、極めて例外的な事例でない限り、ないのではなかろうか(20)


  以上のようなわが国の公共調達のコントロールと比較するとき、EUにおいて進められてきた構成国の国内公共調達法制の国際的整合化と、救済制度の整備は、極めて有益な示唆を与えてくれるものと考えられる。筆者は、これまで、EU法によるドイツ公共調達法(ドイツ法では、公共委託発注法)の展開を検討してきたが、ドイツ法と比較する理由は、ドイツ行政法の公共調達に関する位置づけとわが国のそれとが従来は極めて類似していたにも関わらず、ドイツのその後の展開の中で、従来の理論が大きな変更を迫られるものとなっており、それが基本的な考え方を同じくしたわが国行政法学に対し、あるべき外部統制等の制度ないしは理論の構築のために重要な示唆を示すものであるように思われたからである。

  なお、調達協定に関する救済措置の国内法制については、韓国、カナダ、スイス、米国などEU加盟国以外の国についての比較法的な研究の必要があるし、ドイツ以外のEU構成国の国内法制の変容については、これまた興味深い研究課題であるが、いずれも別稿に委ねたい(21)。最近わが国で問題となった防衛関係の調達については、EU法でも公共調達法制の適用除外とされている(22)ことも付け加えておく。

  本稿では、以下、従来のドイツ公共委託法制の展開を便宜的に概観した上で、その問題点を整理し(第一章)、第二章で九八年の改正法の内容とその意義を検討する。

 

第一章  従来のドイツ委託発注法


第一節  従来の委託発注法とEC公共調達原則


  ドイツにおける(九三年の「財政法的解決策」導入以前の)従来の公共調達に関する伝統的な法システムは、公共委託発注法(O¨ffentliches Vergaberecht)と称されてきたが、それは特別の実定法からなるものではなく、各種の調達分野毎に「請負規程(Verdingungsordnung)(23)」が定められ、そこで発注手続や基準および契約内容などを定めてきた。しかしこの請負規程は、たとえば連邦の場合、連邦財政法五五条が公開入札を原則とし、契約の締結に際しては統一的な要網にしたがって手続をすべきものとした規定と対応して定められているものであり、行政部内の訓令および契約の約款の性格しか持たないものであった。そしてこの請負規定にしたがって締結される公共調達契約は、純粋に私法上の契約であると解されてきたために、それを統制するための特別の制度や手続はなく、特に契約の相手方として選定されなかった事業者が契約締結自体を争うことはほとんど不可能とされていた。

  そこでは、内部法による規律しか行われていないため、手続参加者には攻撃すべき手がかりが提供されておらず、ほとんど裁判から自由な空間を形成していたとされるのである(24)

  委託発注に関わって、損害賠償を請求することも、基本的には困難を伴うものであった。契約締結時の過失の理論(25)(26)に基づく請求権によって、損害賠償が重要な意味を持ってはいた。しかし同理論により救済される場合は、同理論により保護される具体的な契約締結へ向けての交渉の存在が求められ、また損害賠償の範囲も消極利益のみ(入札費用およびその準備費用のみ)、因果関係との関係では、最も有利な入札をしていたときにのみ、認められたにすぎない。

  その際の規制規範として、具体的な委託発注手続または基準等を定めている請負規程のA部は、保護規範とはみなされず、民法八二三条二項の意味の保護法律とされない。もっぱら法の下の平等を定める基本法三条一項、特別の要件の下に市場支配的企業等による差別的行為を禁止する競争制限禁止法二六条二項から生じる請求権のみが考えられた(27)。積極利益の損害賠償については、数年前に連邦最高通常裁判所BGH(28)が、極めて限定された要件の下に履行利益を請求することを認めたにすぎない。


  こうしたドイツの伝統的な公共委託法制に対し、ECの公共調達関連の指令が大きな影響を与えることとなった。

  ECにおける公共調達の基本原則は、七〇年代から、公共事業、物品調達およびサービス調達の三つの基本分野毎の指令と、水道、電気通信などの特別部門に関する指令、ならびに公共調達に関する権利救済制度に関する指令によって形成されてきた(29)

  そこではまず、それぞれの分野毎の指令により、指令により特定される公共調達者(国、公共団体のみならず、それらが支配力を行使する私法上の組織も含まれる。)が一定額以上の公共調達をしようとするときは、EU全域に対して公告をし、外国の事業者にも参加の機会を保障し、調達関連情報を公開すること、外国の事業者に対する非差別措置(差別的な技術基準、証明手続などの排除)、契約締結に際しての競争の実現(公開手続、非公開手続、折衝手続のそれぞれに可及的な競争の実現)、契約相手の選定基準(最低価格または経済的に最も有利な供給先の決定)の確保が義務づけられてきた。

  次に、公共調達に関する権利救済手段の制度化が義務づけられてきた(30)。すなわち、救済手段指令によって、構成国は、ECの公共調達法の実施のために、発注者の手続違反の迅速な是正、公共調達法遠反の是正、法遠反による損害の賠償などを行うための適切な事後審査手続・救済手段をもうけることが義務付けられることとなった。そこでは、権利救済を行う機関が、裁判所のように公共調達を行う機関から独立した機関でなければならないほか、仮処分等により公共調達規定違反を暫定的に是正する権限、違法な決定の取消権限または取消請求権限、損害賠償命令権限を持つ機関でなければならないとされている。

  ECにおいては、以上のように域内での公共調達について、指令により、公正かつ平等な競争による相手方の決定のための手続と、それについての権利救済手続を定めることが構成国に義務づけられてきたのである。

 

第二節  「財政法的解決策」の概略


  前述のような伝統的法システムをもつドイツは、ECの公共調達法改革の動きに対して、特に救済制度の確保について、公共調達手続を遅延させるとの産業界の意見が強いことから、消極的な対応をとってきた。しかし遅れ馳せながら九三年になって、「財政法的解決策(31)」と呼ばれる方式をとった。

  財政法的解決策は、「財政原則法改正法(32)」として、財政原則法(33)の中に公共調達に関する三箇条の規定が置かれ九四年一月一日から施行された。その概略は、従来公共委託発注規定の適用を受けていなかった(請負規程に従う必要のなかった)事業者も含めて公共委託発注者の範囲を確定し(財政原則法五七a条一項)、従来からある請負規程にはEC指令の実体的および手続的内容をとりこむこととして、それに法規(Rechtssatz)としての性格を付与することにより(同一項、二項およびそれらにもとづく法規命令たる「公共委託の委託発注規定に関する命令(委託発注命令Vergabeverordnung)(34)」による)そこでの手続準則を法的に拘束的なものとした。そしてそれらを適用する公共委託発注手続に関する特別の争訟手続(財政原則法五七b条、五七c条およびそれらにもとづく「公共委託の事後審査手続に関する命令(委託発注審査命令Vergabepru¨fungsverordnung (35))」)が用意された。特に注目されたのは、従来から裁判所による法的統制または権利救済の対象とならなかった契約締結手続に対し、新たに法的な争訟手段を制度化したことであった(36)

  しかし注意を要するのは、後述のように、この改正によっても争訟制度および争訟手続は設けられたものの、立法者の意思によれば、それを利用する発注手続参加企業、応募者の権利、法的に保護される主観的利益を与えるものとはされなかった点である(37)。文字どおり財政法的な規制にとどまり、なおも完全な外部法化はされていなかったのである。


  ドイツが制度化した旧委託発注審査手続は、二段階の行政内部的な審査手続からなっていた。

  第一段階の審査機関は、委託発注審査機関(Vergabepu¨fstelle)とよばれた。これは、連邦、州、ゲマインデなどの公共団体については、委託発注権限を持つ機関に対し監督権限を持つ機関が新たな名称を与えられたものにすぎず、公法上の法人についても同様である。私法上の法人については、審査命令の中で審査機関が定められた。この委託発注審査機関は、職権でまたは手続参加者からの申立てにより(38)審査手続を開始するが、その権限には、大きな制約がある。すなわち、委託発注手続の仮停止、適法な措置を取るべきことの命令、公告入札の取消し、公告入札権限の取消しなどを行うことはできるが、契約締結とみなされる委託先決定(Zuschlag (39))後には、委託発注手続の違法性の確認しかできない。結局のところ、契約が締結されてからは、手続の違法確認を得た上で、損害賠償の方法でしか救済を受けることができないのである(40)

  次に、第二段階の審査機関は、委託発注監視委員会(Vergabeu¨berwachungsausschu β)と呼ばれた。これは、連邦と各州に設置される行政機関内部の機関である。委員会は、三人の委員から構成され、委員長および一名の委員は官吏より、他の委員一名は名誉職委員から構成される。さらに委員は、独立し法律にのみ服するものとされ一定の身分保障がされるとともに、資格の面でも、委員長および一名の委員は、裁判官としての資格の保有者でなければならないとされるなど、行政機関内部の機関ではありながら、独立性と法律および公共調達についての専門性が一定程度は確保されるように配慮された。そして、連邦の委託発注監視委員会は、連邦カルテル庁におかれた(41)

  なお審査命令三条二項によれば、委託発注審査委員会は国内最終審として位置づけられ、ヨーロッパ法に関する委託発注法関連の疑義について、EC条約一七七条によりEC裁判所に先決的判決を求めて出訴する義務を課されている。この点に関わり、後に、その手続に関連して、委託発注審査委員会の「裁判所」としての性格が問題とされることになる。

  以上のような財政法的解決策は、実体的にはドイツ法の伝統的な請負規程による委託発注の実務を維持しながら、EC指令により求められた権利救済については、訴求し得る権利を与えない争訟制度を創設することによる妥協策であったと評することができる。

  さて、以上のような制度の利用状況については、既に一部については、別稿で検討したが(42)、ここでは、全体的な利用状況をみておこう(43)

  連邦政府が把握している連邦の委託発注審査機関および委託発注監視委員会の利用状況については、活動開始(九四年三月二一日に審査命令の施行)から九六年一一月三〇日までの期間に、委託発注審査機関に九四六件の申請があり、うち九五件は、委託発注をめぐる決定の変更がなされている。委託発注監視委員会に対しては、四六件の審査の申立てがあり、うち二件は、EC裁判所に出訴されている。四六件の審査のうち、八件は、委託発注審査機関の決定の違法性が確認されている。なお、連邦関係の訴訟も六件あげられている(残念ながら訴訟の詳細は不明)。

 

第三節  「財政法的解決策」下の判例と批判


  ドイツにおける批判と裁判所の対応

  1  文献における批判

  こうした財政法的解決策に対しては、ドイツにおいても様々な批判が出されてきた。文献の中で展開された疑問は、次の点である。

@参加企業への争訟提起の「権利」の付与がない。

  立法者の意図としても、そしてまた、争訟手続の職権性を考慮しても、参加企業に訴求し得る「権利」を与えていないことは明らかであり、したがって、EC指令とは、相容れないとされている(44)

  また、委託発注審査機関および委託発注監視委員会の審査は、基本的には職権により開始され、申請権の保障が十分でないという問題(45)も指摘された。

A委託発注監視委員会の「裁判所」性の疑問

  委託発注監視委員会がEC指令により求められた「裁判所」と同等の争訟機関として認められるかについて、文献では、申請権の定めがなく、異議申立ての精確な法律上の規定を欠いている点、委員の任用についての詳細な法律上の規定の欠如(委員の独立性の担保規定を欠く)、対審手続の欠如、事実認定権の欠如(委員会の審理は、法的判断のみに限定されている)などを理由として、裁判所としての性格が欠けているとの批判がなされた(46)。また、委員会が自らその執務規則を定め、自治的に改正することも保障されていない(47)、委員会の裁決に対し、法的拘束力とその執行力を付与するための手あてがされておらず、結果的に実効的な権利保護が達成されない(48)、などの問題点も指摘されてきた。

B委託発注監視委員会のドイツ基本法との適合性(49)

  さらに、ドイツ基本法との関係でも、争訟制度としては、次のような問題点が指摘されてきた。

  最も重要な基本法の要件の不充足としては、委託発注監視委員会自体が、事実認定をすることができず、委託発注検査機関の判断の法律問題の審査に基本的に限定されていることの問題点(50)が指摘されている。そこでは、裁判官の任命のような制度的担保の欠如、委員が同時に行政活動も行うこと、委託発注監視委員会の各部ごとの権限の法律上の規定の欠如、法律上の手続規定の欠如も問題とされている。

  次に、委託発注審査機関の決定は公権力の行使(委託発注者および企業を拘束する、その意味で私法形成的行政行為とされる(51))として位置づけられているが、それに対する審査機関たる監視委の権限が、裁判所による統制として認められないことが、出訴の途を保障する基本法一九条四項に違反する(52)。委託発注監視委員会が基本法上の裁判所の要件を満たさなければ、この問題点を解消することはできない。この点は、特別部門指令が適用される部分についても、高権的関与に対する基本法一九条四項の要請から、同様の指摘がある。

  基本法九二条および基本法二〇条で含意されている実効的な権利保護の要請からすれば、仮の権利保護の手段が用意されていないこと、契約締結後は、契約の効力に関わる第一次的な救済が排除されていることも問題とされる(53)

  なお、財政法五七b条四項六段により委託発注審査機関が、委託発注手続を仮に停止させる場合に、諸利益の考慮が求められているが、その際、公益が尊重される文言になっていることの問題点の指摘もある(54)

  以上みてきたように、財政法的解決策による国内措置はEC指令との関係で完全な国内措置とはなっていないが、この状況で、文献の中では、EC指令と請負規程をEU法の趣旨に即して解釈することによって、それらに民法典八二三条二項の保護規範としての性格を与え、民法典一〇〇四条に基づき不作為請求権を主張できるとする主張(55)や、これら保護規範違反に対して、民法典八二三条二項により、損害賠償を認める主張(56)なども出されてはいたが、裁判例の中で認められたわけではない。

  2  ゼネラル・エレクトリック事件

  財政法的解決策は、以上のような諸文献の批判に加え、ゼネラル・エレクトリック事件を契機にアメリカ政府からの批判も受けることになった(57)

  アメリカのゼネラル・エレクトリック社は、東部ドイツの電力会社VEAGの発電設備入札(自ら落札できなかった)に際し、違法な委託先決定があったにもかかわらず、契約の取消が不可能だった点を批判している。

  同社は、契約締結後に民事訴訟でEC指令違反を理由として契約の取消しを求めた。それに対し、ベルリン上級通常裁判所は、まず裁判所の前提として、通常裁判所の管轄が同事件については及ぶことを認めた。裁判所は、裁判所構成法一七条二項(58)により、競争制限禁止法二六条二項(59)に基づく請求権、民法典八二三条二項(60)および八二六条(61)を根拠として、不作為請求権について裁判を行う権限を有すると判断した(62)

  しかしその上で、契約締結後の契約の取消しは排除され、ドイツの委託発注法上は、個人が訴求し得る一般的な法的請求権はない旨判示して、同社の請求を退けたのである(63)

  原告の主張は、委託発注関連指令および競争制限禁止法二六条二項に基づくものであった。裁判所は、原告の主張に対しては、本件についての裁判管轄がないという理由からではなく(通常裁判所が、財政法的解決策により認められた二段階の争訟制度以外に契約の法的効力または契約手続自体に影響を与えるような裁判をすることができるかどうかには直接明示的にはふれず)、委託契約が既に別の事業者と締結されているからという理由でその取消しを否定したのである。

  文献の中では、既に前述した二段階の争訟手続以外に別途の通常裁判所への出訴を認める見解も出されていた(64)が、ベルリン上級通常裁判所の判決も、裁判所への出訴を認めたのである。しかし、この点の解釈には、財政法的解決策の解釈として認められるかどうかに疑問が出されていた(65)。すなわち、こうした訴訟が認められれば、財政法的解決策を導入して特別の争訟制度を置く必要はなかったからである。

  いずれにせよこの事件により、国際的にも、ドイツの委託発注法が、裁判所により統制されない欠陥があることが印象づけられたといってよい。


  EUにおける批判と裁判例

  1  EC委員会の批判

  ドイツの財政法的解決策に対しては、EC委員会もこれまで批判的な見解を示してきた(66)

  EC委員会は、既に一九九二年に、ドイツの委託発注法が裁判所による行政庁の決定の審査を行わせない点を批判していたが(67)、その後、九五年一〇月三一日の連邦政府宛て警告書で、なおドイツの委託発注法が不十分なものであることを厳しく批判している(68)。委員会は、この点につきEC裁判所に訴訟を提起している。その批判は、概略以下のとおりである。

  九五年一〇月の警告書における批判の中心は、事後審査制度に向けられる。

  まず、委託発注審査機関および委託発注監視委員会が、EU法で求められているような裁判所または裁判所類似の機関の要件を満たしていない。それが極めて弱い権限しかあたえられていない。つまり審査機関は、通常の行政組織の中に組み込まれているし、連邦カルテル庁におかれている連邦監視委員会も、連邦カルテル庁の組織構造の中に組み込まれ、委員長がカルテル庁の指揮命令系統から独立してもいないというのである。

  第二に、事後審査過程で適用される手続規定もほとんどないために、たとえば監視委員会で、申請者が申請権、審問権および防御権などの具体的な手続的権利を与えられているのか不明であるという。事後審査機関の決定または裁決が、実効性を持つのかどうかも疑問であり(69)、また、事後審査機関に誰でも審査を申立てることができるわけでもないというのである(たとえば、発注手続参加者が第一段階の審査機関に対して審査を申立てた後に、別の参加者が、第二段階の監視委員会の手続をとることができない点を例示している)。

  そのほか、批判は、規定全体のわかりにくさや、事後審査手続の審問権、防御権など具体的な手続的権利が不分明であり、また、仮の権利保護のための措置がなく、契約締結後の取消しが不可能であるという点にも及んだ(70)

  このように委員会の批判は、前述したドイツ国内での批判とほぼ同様の問題点を指摘するものであった。

  2  EC裁判所の判断

  @九五年八月一一日EC裁判所判決

  EC裁判所は、さらにそれと前後して、EC委員会が提起した条約違反手続(71)に対する判決を九五年八月一一日に下した(72)。この事件では、前述の財政原則法改正がなされる前、すなわちまだ委託発注についての争訟制度が新設される前の段階で、指令の国内立法期限までに、ドイツが公共事業および物品調達分野の指令(88/295/EEC, 89/440/EEC)の立法手続を取らなかったことが問題とされた。

  本件は、財政法的解決策以前の法状態を前提とするものではあるが、判決の中で裁判所は、EC委員会の主張を認め、ドイツの条約違反を認めた。この判決の中では、手続参加者に委託発注について訴求可能な「権利」を認めず、また、国内の裁判所に出訴し得ないような状況が、EC指令の趣旨と適合しないことが明確に述べられており、この点では、現行法を前提としてもEC指令違反の状態にあることが、先取りされていたともいえよう(73)

  Aドルシュ・コンサルト事件判決

  その後、委託発注監視委員会の評価にかかわり、関係者の関心を引いたものとして、ドルシュ・コンサルト(Dorsch Consult)事件判決(74)がある。この事件で、EC裁判所は、結果的に委託発注監視委員会の裁判所としての性格を認めた。本件は、委託発注監視委員会がEC裁判所の先決訴訟(75)を申請する権限のある「裁判所」に該当するのかどうかが争点となったものである。EC裁判所の判断は、珍しく訟務官の最終弁論(76)に反して、専門家を驚かす判断を示した。

  従来、裁判所の要件として、EC裁判所が主張してきた要件(77)としては、法律による機関の創設、その継続的な性格、争訟の裁断が裁判(Rechtsprechung)としての性格をもっていること、争訟の手続(対審手続)、法規の適用、機関の独立性がある。EC裁判所は、本件においては、これらの要件の存否を検討した後、対審手続は、絶対的な要件ではないとして、従来の要件を緩和する判断を示している。

  この点ドイツにおいても、委託発注監視委員会は、しばしば明示的に、その手続が対審的な手続ではないと判示してきた。そのために、こうした要件の緩和をしているが(78)、EC裁判所は、対審手続要件を緩和した上で、裁判所性を認めたのである。

  いずれにせよ、本件においては、EC裁判所も、対審手続の点では、EC指令違反であることを述べていることが重要であろう。

  本件判決は、EC裁判所が、明らかに、EU法上の様々な解釈について統一的な解釈を今後とも示すことができるように、それへのアクセスをできるだけ広く確保しようとしたという背景からのみ理解できる(79)。このような解釈をしておくことなしには、ドイツの委託発注関連の事件において、EU法の遵守をEC裁判所が判断する機会がなくなるからである。本件判決については、このように限定した評価をする見解が有力である。

  3  不完全な国内措置に対する救済

  最後に、こうした問題のある指令の国内措置しかとられていない状況において、その救済のためにどのような方法があると考えられているか、補足しておきたい。

  ドイツの立法者が、指令の国内措置化を完全に行わず、また、ドイツの行政庁および裁判所も、国内法の解釈に際してEU法の趣旨に即して権利保護を確保する対応をしない場合においては、ドイツ連邦共和国を被告として、指令の国内措置の懈怠を理由とする損害賠償を請求する(80)ことが認められるとされている。この点は、前述、Dorsch Consult 事件判決でも、ふれられている。このほか、通常裁判所および行政裁判所が権利救済を拒めば、連邦憲法裁判所に出訴することも主張されている(81)

  EC委員会の対応とともに、こうした対応がなされる可能性があることもあり、指令の完全な国内措置化が間接的に強制されることになったと思われる。

 

第二章  委託発注法改正法


第一節  委託発注法改正法の概略

  これまで見てきたような批判を受けたドイツ連邦政府は、公共委託発注法の法改正を検討してきた。政府は、九六年九月二五日に二段階からなる争訟制度への改正案をまとめ(82)、九七年九月三日に改正法案を決定し、連邦参議院(83)に提出した。同法案は、その後連邦議会の審議、両院協議会による調整を経て成立し、九八年八月二六日の法律として公布され、九九年一月一日から施行されるに至っている。

  成立した改正法の正式名称は、「公共委託発注のための法根拠改正法(84)」である。改正法は、公共委託発注の法規定を定める第一条、訴訟費用および手数料に関する規定を定める第二条ならびに付則(三、四条)とからなるが、その中心は、第一条である。

  第一条の基本は、公共委託発注についての一般原則および事後審査についての規定を競争制限禁止法(85)の中に挿入するという内容であり、新公共委託発注法の条項は、一〇六条から一三八条までの三三条からなる(公布された改正法は、第六次競争制限禁止法改正法との関係で、九七条から一二九条までに条数を修正されて公布された)。

  本法の改正目的は、公共委託発注手続のより一層の競争促進と透明性の確保をめざし、応募企業の法的地位を強化した点にあるとされている。これにより、統一的な一般法としての委託発注法の制定ではなく(86)、まさに競争制限禁止法に委託発注法を「接木した(aufgepfropft (87))」のである。このように、従来の財政法的解決策から競争制限禁止法の中へと公共委託発注規定の位置づけを変更したのは、何よりも委託発注の透明性と競争原則をより明確に位置づけるという意味と、公共委託発注規制に対する連邦の権限の位置づけを従来の基本法一〇九条三項から同七四条一一号へと移して確保するという意味を持つものであった(88)。この点については、特に競争制限禁止法と公共委託発注規制の競争に対して持つ意味を根拠にして、その体系的な位置づけの不適切さについて、批判が出されているところである(89)

  これに併せて、従来、財政原則法に基づき定められていた、委託発注命令(VgV)および委託発注審査命令(VpV)は、九七条六項および一二七条に基づき定められる委託発注命令(VgV (90))により置き換えられる運びとなっている。また、これまでは、サービス調達のうち、自由業的なサービスについては請負規程が定められていなかったが、今回の改正にあわせて委託発注命令が改正され、自由業的サービス請負規程(Verdingungsordnung fu¨r freiberu fliche Leistungen ; VOF)も委託発注法の中に統合されることになった(91)

  委託発注に関する規定が、委託発注命令、各種請負規程(Verdingungsordnungen)などの下位法令に分散している状況は従来と変わらず(92)、規定全体の分かりやすさ、総合性という点では、後述のように問題を残している。

  1  基本原則

  公共委託発注の基本原則を定める九七条によれば、委託発注法の適用される公共委託の範囲は、物品(Waren)、建設給付(Bauleistungen)およびサービス(Dienstleistungen)の調達の三種類よりなり、これらが、競争により、透明な委託発注手続の中で調達されることを定め(九七条一項)、委託発注手続への参加者は、同法により明示的に不平等取り扱いが命ぜられまたは許容されていない限り、平等に取り扱われなければならない(同二項)とされる(93)

  委託発注先決定の基本原則としては、同四項により、「専門知識があり、給付能力がありかつ信頼性のある企業に発注し、その他のまたはさらなる要件は、受託者に対しては連邦法または州法が定めるときにのみ、課することができる」と定めた。この規定により、公共委託発注と直接には関わらない事情、たとえば、環境配慮、女性の就労促進などの事情も、法律の規定による限りで認められることになっている(94)。ただ、こうした事情を考慮に入れることが認められる場合でも、「委託先決定(Zuschlag)は、最も経済的な申込みに対して与える」(同五項)。

  旧法と決定的に異なる改正点としては、委託発注手続参加者に対して、法的権利を保障する同条七項がある。それによれば、「企業は、委託発注者が発注手続についての諸規定を遵守することを求める請求権を有する」。このように手続参加企業に対して、「請求権」を保障することによって、前章第二節で示されたような国内措置化の欠陥を克服することとしたのである。

  規制を受ける委託発注者の範囲については、連邦および州、地域団体の他、特殊法人、水道事業者、ガス事業などの生活手段供給事業者、建設特許を受けた私企業、資金助成を受けた私企業など公共的なサービスにかかわる法人を公法人、私法人に関わらず把握している(95)。これらの点は旧法とほとんど変化がない。

  同法の規定が適用される委託発注は、同法一〇〇条一項により、法規命令の中で定められる適用限界値(Schwellenwert)以上の発注額のものに限定されている。したがって、限界値を下回る発注額のものについては、改正法の規定は及ばず(96)、したがって、権利保護も保障されない(97)

  委託発注手続の種類については、一〇一条で定められているが、その内容の変更はほとんどなく、五項で、公共委託発注者は、公開手続(公開入札O¨ffentliche Ausschreibung)を原則とする旨が法令上定められた。委託発注者全体について、公開手続が原則とされたのは、今回がはじめてのことである。

  前述のように旧法との決定的な相違点は、従来の公共委託発注法が、応募企業に対し、裁判所に出訴する請求権を認めていなかったのに対して、本法では、公共委託発注規定が遵守されることに対する請求権を認め、契約に至らなかった応募企業が有効な権利救済を受けることを可能とした点である。九七条七項によって保障された「委託発注者が発注手続に関する諸規定を遵守することを求める請求権」が、次の争訟制度により主張されるという法的構成になったのである。

  2  争訟制度

  公共委託発注をめぐる争訟制度として、新法では三段階の救済を認めているが、このうち新たなものは二段階である。新法の救済制度は、従来からあった委託発注審査機関(Vergabepru¨fstelle)(一〇三条(98))および監督庁によるチェックとは別に、新たに「委託発注審査部(Vergabekammer)」を設け、さらに裁判所への出訴(即時抗告)を認める制度として形成されている。

(1)  委託発注審査部(Vergabekammer)

  @  委託発注審査部の設置と構成

  まず、新たに設けられる第一段階の救済制度は、行政内部的な救済制度である委託発注審査部によるものである。委託発注審査部は、連邦と州に設置される。連邦については、連邦カルテル庁に設置される。これは、独立性を保障された(一〇五条)合議制の審査機関として構成され、公共委託発注の専門知識を持つ者と法的知識を持つ裁判官資格を持った者とにより構成される。委員長と二人の委員よりなり、委員の一人は名誉職委員、通例委員長が、裁判官資格を持つ者とされている(99)。以上のように今回の委託発注審査部は、基本的には、従来の委託発注監視委員会と組織的には大差ないものとなっている。立法理由によれば、一般的には、この段階で専門的および法的判断がなされるので、第二段階へ進むケースは少ないと予想されている(100)

  A  申  請

  委託発注審査部への申請は、連邦の発注手続については、連邦の委託発注審査部に、州の手続については、州のそれに申請を行う。なお、申請に対する委託発注審査部の審査は、委託発注事件の事後審査については、「第一次的な権利保護(101)」として独自の唯一の管轄を設定するものとされている。したがって、従来、委託発注審査機関の決定について行政裁判所への出訴を許容した解釈は(102)、この改正により排除されるとされている(103)。なおこの場合でも、民事裁判所に対する損害賠償請求およびカルテル庁による手続については、この限りではなく(一〇四条二項後段)、別途請求が可能とされている(104)。しかし、予防的不作為請求およびその際の仮命令による仮の権利保護は、許容されない(105)とされているし、また損害賠償も、金銭によるものに限定されている。

  委託発注審査部の手続は、委託発注に対する利益および委託発注規定の遵守を求める請求権を規定違反により侵害されたことを主張する発注手続参加者(手続参加企業)の申請によってのみ開始される(一〇七条二項)。申請にあたっては、企業がその主張する法令違反により損害を被り、または被る虞があることを実質的に説明しなければならない。ただし、申請は、「申請者がその非難する委託発注規定違反を既に委託発注手続の中で認識しておりかつ委託発注者に対して遅滞なく警告を発しなかったとき」、および「委託発注規定違反が、公告に基づき認識し得るもので、遅くとも公告で示された応札または委託発注者に対する申込みの期限までに警告されていないとき」は許されない(106)(同三項)。この要件によって、申請の許容範囲は一律に極めて限定されている。立法理由の中では、不必要な手続を避けるための信義誠実の観点からの除斥規定(Pra¨klusionsregel)であるとされている(107)。この点の評価は、後述する。

  B  執行停止原則

  さらに重要なことは、委託発注審査部に対する申請には、自動的に執行停止の原則(108)がとられていることであり、有効な権利救済を行うための手当てがなされたことである。すなわち、「事後審査の申請が委託発注者に送達された後は、委託発注者は、委託発注審査部の裁決の前および第一一七条第一項による異議申立期間の経過の前には、委託先決定は、これを行ってはならない」(一一五条一項)。この執行停止原則の導入は、「革命的(109)」とも評されている。もっとも、この執行停止義務が生じるのは、あくまで事後審査の申請が送達された後の段階であり、既に委託先決定をしている場合は、この効果は意味がない。

  さらに、一一五条は、発注者からの申請により、審査部が迅速な委託発注手続の進行により確保される利益が執行停止の存続により確保される利益に優越するかどうかの利益衡量に基づき執行停止効果を取り消し、委託先決定を行わせることも認めている(同二項)。

  C  審理期間・審理手続と迅速化

  審理手続については、一一〇条以下に規定がおかれている。事実の調査は職権探知主義によることとされ(一一〇条)、口頭審理(一一二条)を経て行われる。参加者には委託発注審査部の文書閲覧権(一一一条)が与えられているなど委託発注審査部の審理手続の規定も整備されている。審理手続の迅速化のために、一一三条は、申請受理後五週間以内に裁決を行わなければならない(同条一項)という原則を定めるほか、参加人に協力義務を課し、期限に遅れた主張の制限の規定(同条二項)も盛り込まれている。

  なお、法令上は、迅速な審理のための規定を入れているが、委託発注審査部の数と能力、予想される申請の数や複雑性から、迅速化に疑問を投げかける見解も出されている(110)

  D  裁決の内容と行政行為性

  委託発注審査部の裁決は、申請には拘束されず申請者の権利侵害があったかどうかにつき裁断し、権利侵害を除去し関係利益の侵害を防止するために適切な措置をとる(一一四条)。ただし既に発注がなされたものについては、それを取り消すことはできない(同二項)という限界も、以前同様にある。委託発注審査部は、行政内部の機関として行政的に判断をした上で裁決を行うが、この裁決は、執行力を持たせるために「行政行為」により発せられるとされている(一一四条三項)。しかし提案理由によれば、この行政行為の取消を行政裁判所に訴求することは認められていない(111)。これに不服がある者は、次の段階の訴訟手続を利用する。

(2)  上級通常裁判所への即時抗告

  @  即時抗告

  委託発注審査部に次ぐ段階としては、審査部の決定に対して不服がある場合に、裁決が送達されてから二週間以内に(一一七条一項)、州の上級通常裁判所(Oberlandesgericht)への即時抗告(sofortige Beschwerde)が可能である。審査部の決定については、第一次的な専属管轄として設けられている(112)。裁決期間内に審査部が裁決を行わない場合も、棄却裁決と見なして裁判を提起することができる。二週間以内という極めて短期の出訴期間とならんで、「同時に」理由付記を求められている(同条二項)。そのため実務上は、非常に大きな困難をもたらすとの指摘がある(113)

  A  執行停止原則

  この場合も、審査部に対する申請の場合と同様、執行停止原則が取られている(114)。審査部に対する申請が棄却されたときは、執行停止効果は、申込者が期間延長を申請しないときは、抗告期間の経過後二週間後に消滅する。この場合に、実効的な権利保護を求めるためには、委託発注審査部の裁決が出された直後に、裁決の取消しと同時に執行停止期間の延長を求めるふたつの申請を行っておかなければならないという指摘(115)もなされている。なお、裁判所は、発注者からの申立てにより、委託発注手続の続行および発注を許容することもできる。委託発注審査部の手続においても、即時抗告の手続においても、執行停止の認否が極めて重要な意味を持つのである。

  B  委託先決定の予先決定

  なお、改正法は、委託発注が迅速な執行を必要とするときは、委託発注者の申請に基づき、本案の勝訴の見込みを審理した上で、手続の継続および委託先決定を許容することができる(一二一条)(予先決定)。

  この場合、執行停止を取り消し委託先決定を認めるよう求める発注者からの申請についての予先決定が認められなかった場合、委託発注手続を継続することはできず、発注者は、手続の適法性を回復しなければならない。さもなくば、委託発注手続は、決定の送達後一〇日後に、終了したものと見なされる(一二二条)。これは、発注者の予先決定が認められない場合は、その後の本案で、裁判所が別の判断に至ることを期待し得ないからという理由で説明がなされている(116)。したがって、こうした裁判所の仮の権利保護についての裁判が、実際上は、本案の裁判と同様の機能を果たすことになろう。

  C  決  定

  裁判所は、認容の裁判においては、審査部の裁決を取り消し、自ら決定を行うか、または裁判所の法的見解を斟酌して事案について新たに決定を行うよう義務づける(一二三条)。これは、決定(Beschlu β)により行われる。そして裁判所の決定は、その後の損害賠償等の審理を担当する裁判所を拘束する(一二四条一項(117))。

  なお、裁判所の決定は、既に行われた委託先決定を取り消すことはできない(一二三条、一一四条二項)。したがって、前述のように、裁判所の本案の決定よりも、予先決定を認め手続継続および委託先決定を許容するか、それともそれを禁じ、場合によっては委託発注手続の終結をもたらすかの、仮の権利保護についての決定が重要な役割を果たす。即時抗告に対する決定も、公共委託発注の遅延を防止するために、五週間以内に決定が出されるものとされている(一二一条三項(118))。

(3)  その他の論点

  @  濫用防止策

  今回の改正法では、委託発注改正法によって訴求し得る権利が保障されるとともに、その濫用防止策も定められている。これらの争訟制度の利用が、権利濫用に該当する場合には、申請者は当該申請権または抗告権の濫用により引き起こされる損害の賠償の義務を負うとされており(一二五条)、こうした措置によって、法制度上特別に認めることとされた公共調達に対する争訟制度により不必要な遅延や損害が生じることに対する対策がとられていることにも注意が必要であろう(119)

  A  費  用

  さらに本改正では、委託発注審査部の審査手続も、有料となり、敗訴した参加人は、一二八条三項および四項により、手続の費用を負担し、手続の相手方の費用についても補償しなければならない。

  B  排他的管轄と違法な契約の効力

  このように、委託発注規定の遵守・不遵守そのものを問題とする争訟については、純粋な損害賠償を除き、委託発注審査部と上級通常裁判所への即時抗告が唯一の管轄として設定されることになる。またこの場合でも、委託発注が既になされていて契約が成立している場合は、ドイツ法の原則にしたがい、その契約は原則として取り消すことができず、違法性の確認しかできないものとされているのである(一二三条、一一四条二項)。一方、委託発注先決定が、執行停止を命じる一一五条一項に反して行われた場合は、それにより成立した民法上の契約も民法典一三四条により無効であるとされている(120)

  C  連邦最高通常裁判所の判例調整

  なお上級通常裁判所が、他の上級通常裁判所および連邦最高通常裁判所(BGH)の判例と異なる判断をしようとするときは、連邦最高通常裁判所が裁判を行う(一二四条二項)。

  D  裁判所の審査の範囲

  最後に、立法過程では、改正法九七条の委託発注規定の範囲の解釈に関連して、連邦参議院より、裁判所による審査の範囲をEU法上の規定に限定しようとする主張がなされたが(121)、結果的に、そのような限定はなされていない。

(4)  損害賠償訴訟

  なお、以上のような二段階からなる救済手続とは別に、損害賠償の訴えが起こされることもありうるが(一〇四条二項)、その場合でも、当該裁判所が予防的に仮処分を行うことは制限する目的で、金銭賠償に限定されていると解される。

  損害賠償訴訟の場合に、委託発注審査部の手続で認容裁決が出されているときは、通常裁判所は、委託発注審査部の認容裁決および上級通常裁判所の裁判(決定)に拘束されるものとされている(一二四条一項)。この審査部の裁決および通常裁判所の認容決定が、損害賠償訴訟を審理する裁判所を拘束するとする規定とこの度設けられた審査部の審査手続規定などがあいまって、企業は、損害賠償訴訟を提起する前に、審査を申請して、職権主義に基づく審査部の調査や、文書閲覧権などを利用するものと予想される。

  今回の改正でも、損害賠償訴訟は、存続するものとされた。以下、考えられる損害賠償とその要件を整理しておこう。

  @  必要経費の損害賠償(消極的利益)

  必要経費等の損害賠償については、今回、一二六条で明文化された。

  委託発注手続への参加およびその準備に要した費用(消極的費用)は、委託発注者が委託発注法に違反し、かつ参加者が適法な手続においてその申込み条件の適正な評価がされたならば委託発注先として決定される真の機会を有したであろうこと、ならびにそのチャンスが法令違反により侵害されたことが必要である(一二六条)。

  A  得べかりし利益(積極的利益)

  得べかりし利益を含む積極的利益の損害賠償については、これまで連邦最高通常裁判所判決(122)が示した原則に従って、認められることもありうると考えられる。この場合、参加者は、委託発注手続の違法性と、自ら委託発注先とされていたという点まで証明しなければならないと考えられる(123)

 

第二節  改正法への評価

  以上が、委託発注法根拠改正法の概要である。今回の法改正の持つ意義と問題点を、若干の論点に即して検討しておこう。

  @  内部法から外部法へ

  筆者は、財政法的解決策を検討した別稿で、すでにドイツの公共委託発注法の動きをEC法の影響を強く受けて(124)、「内部法から外部法へ」の動きとして、指摘した。今回の改正法の結果、手続参加企業に「権利」を与えて法的統制を認めることによって、「外部法化」が完成したと評価することができよう。特に、契約締結前の段階の行政の手続および作用に対して、裁判所の法的統制が及び、請負規程を含む委託発注関係法令への行政の適合性を判断することができるようになったことの意義は大きいものと考えられる。

  A  財政法から経済法へ

  さらに今回の法改正では、前述のように様々な批判はあるものの、委託発注法自体が競争制限禁止法の中に組み込まれ、公正かつ平等な競争原則に支配されることを明確化したことも注目される。この点は、談合等による公共委託の競争制限に対する立法者の強い批判的姿勢の現れとして、評価することができる。もちろん、非常に政治的な影響を強く受ける公共委託発注法を、競争法の基本法たる競争制限禁止法に接木し、同法の三分の一の分量を増やすこととなった点への批判(125)も正当である。競争原則の重視の点は評価できるが、法体系における位置づけの適正さの点で問題を残しているといえよう。

  B  法的救済の実効性

  次に、今回の改正の最も大きな意義としては、手続参加企業に対して(のみではあるが)、訴求可能な「権利」を保障して、行政部内の統制機関と裁判所による「権利救済制度」を保障した点である。さらに、委託発注審査部および即時抗告に際し、自動的な執行停止効果を与え、文書閲覧および審理手続の法的保障も行った上で、実質的にそれを保障しようとしている点が重要であろう。今後、この保障に基づいて、公共委託発注活動全体の法的統制の程度が向上することが予想される。

  なお、今回の改正でも、委託先決定がされ、同時にドイツ法上契約が成立したと解されてから後は、それを取り消す権限を委託発注審査部にも即時抗告にも認めていない。この点が、EC指令の国内措置化として問題を残すところとなっている。今後のEC委員会の対応が注目される。

  C  濫用防止策、要件の限定

  しかし一方で、権利救済制度が濫用されて、迅速な公共委託が妨げられ、公益および関係企業の利益が侵害されることに対し、濫訴防止策、極めて慎重な濫用防止策が講じられていると評価してよいであろう。主張要件、主張制限要件、損害賠償、相手方の損害まで含めての費用負担、事後審査手続の有料化などに、そうした配慮が現れている。その意味では、本稿の冒頭で述べた委託発注のアンビバレントな性格に対応して、アンビバレントな評価が可能なのであろう。

  特に、委託発注審査部への申請に際して、それ以前の手続の中で知り得た法令違反を主張しなかった場合の申請制限の規定については、それが実効的な権利保護を狭く限定するとして強い批判が出されている(126)

  申請権者の範囲は、広く設定されている。たとえば、入札参加者への納入者や下請業者は、入札の動向に利益を持つ者と思われるが、改正法では、参加者ではないこれらの申請資格も認められうると考えられる。この点では、従来の「委託に対する利益」を持つ者に限定した「財政法的解決策」(財政原則法五七b条三項二段)と同様の範囲が設定され、また、ECの救済指令が、委託への利益を持つこと及び主張する法令違反により損害を被る危険を要件として申請を認める(127)のと同様である。

  D  迅速化と裁判所の能力

  次に、前述した迅速な事後審査手続のための審理期間の限定については、迅速化のあまり、権利保護の質が低下することを懸念する見解(128)もある。

  特に、上級通常裁判所の審査の実務が、非常に大きな困難に直面するのではとの予測(129)もだされている。五週間のうちに、事実の解明、即時抗告の申請の許容性についての判断(申請理由)、弁論、決定の理由付けなどを行わなければならないことから、司法の負担が膨大になるとの指摘である。

  それとの関係では、迅速化の一環として、仮の救済についての判断が、終局的な勝敗につながることから、そこまでの審査の重要性が極めて大きくなるが、仮の権利保護手続の段階で終局的な判断が先取りされることへの批判も出されている(130)

  裁判所の審査が、基本的に一回かぎりとなっている点も、迅速化のためであり、ドイツにおけるこのところの裁判も含めた迅速化改革(131)、それによる司法の負担軽減の傾向の中に位置づけておく必要がある。

  E  なお残る複雑性等

  最後に、財政法的解決策の段階でも出されていた、複雑性解消のための統一的な委託発注法律(Vergabegesetz)の制定は今回も行われず、その結果、委託発注法全体の複雑性の問題が残っている(132)。今回の改正でも、多くの委託発注関連規定が、従来からの請負規程を存続させ、その中に設けられていることに批判がある。それらに委託発注命令により、法規としての性格が与えられたとしても、それが権利の根拠として問題がある点、請負規程の改正が、非国家的な機関に委ねられており民主主義原則から問題がある点などが批判されている(133)

 

お  わ  り  に

  公共調達の法的統制のために多元的なアプローチが必要なことは、前稿で述べた。わが国では、形式上、民事訴訟の対象となるとはいえ、実体的には、出訴または勝訴の可能性が極めて低いことから、公共調達は訴訟の対象とならず、裁判所によるコントロールを免れてきた。その結果、公共調達は法的コントロールがほとんどなされておらず、いまだ「外部からの統制から自由な空間」を形成しているともいえよう。

  特に、わが国の場合、独立の第三者による法的コントロールの保障という点で問題がある。現存の苦情処理制度についても、ドイツ等の動向を前提とすれば、審査機関としての独立性、中立性、手続保障、決定の拘束力、実効性の点で大きな問題をはらんでいるといえよう。裁判所などなんらかの外部の第三者による法的保障を伴うコントロールの実効化が、喫緊の課題であるといってよいであろう。その際、望ましい制度設計、手続保障等について、これまで検討してきたドイツの新制度は、有益な示唆を与えてくれることはこれまでみてきたところから明らかである。

  もちろん、こうした見方に対しては、苦情処理制度をつくっても、利用者がほとんどない現状(134)に鑑みれば、机上の空論とのそしりを免れないかもしれない。しかし、ドイツの動向も示すように、公共調達の分野でも、外部法化、権利の付与による「法化」を進め、競争原則の強化を行うことが、国際的なひとつの動向であることは否定できないと思われる。その点では、法的根拠の不明確な苦情処理制度により事実上の対応をしている現状は、早晩、改めざるを得ないことになろう。また、本稿では取り上げなかったが、既に財政法的解決策について指摘したように、国、地方団体以外の公共的団体の調達活動まで公共調達法制を及ぼすEUの動向は、特殊法人、指定法人等の公共調達制度、筆者によれば指定機関などの機能的行政組織の調達制度についての見直しまで射程に入れるべきであることを示すものでもあることも指摘しておきたい(135)。現在、わが国で議論が進みつつある民間資本を利用した公共施設の整備手法であるPFI(Private Financial Initiative)に際しての公共調達規制も検討が必要であろう。

  最後に、公共調達に関する汚職の防止も重要な課題となっている。ドイツにおいても、委託発注手続過程の汚職および締結された契約の執行過程で生じる不適切な事例についての対応策がとられてきている。公共調達に関する法制の改善によって、汚職防止の課題にも貢献できるものと考えられ(136)、その意味で公共調達に関する多元的な法制度の整備が、求められているのである。

(1)  従来、政府調達、政府契約と称されてきた法分野を、国、公共団体、特殊法人等が行う調達、契約という意味で、公共調達、公共契約と呼ぶ最近の用語法にならっている。もっとも、ある論者のいうように、EUでは、後述のように、上水道、エネルギー、交通、電気通信分野の私企業もこの法制の統制をうけることから「公共調達」でもなくなっている。調達規制法、委託規制法ととらえるべきだとするFritz Rittner, Abschied vom ”O¨ffentlichen Auftragswesen fu¨r private Unternehmen, EuZW 1997, S. 161 の見解の方が厳密になっている。

(2)  FAZ v. 2. 6. 1997 ; Byok/v. Meibohm, FAZ v. 5. 9. 1997. 連邦政府によれば、連邦の一九九五年の委託発注額は、約三六二億ドイツ・マルクの発注額にのぼる。九四年段階の試算では、全体の五〇%は、地方団体、二六%は州、一九%が連邦とされている。Antwort der Bundesregierung, Vera¨nderung der vergabeverfahren bei o¨ffentlichen Auftra¨gen, BT-Drucks. 13/7137, S. 3.

(3)  BT-Drucks. 13/7137, S. 3 ff. EUの公共調達法制の現状については、九六年にGru¨nbuch der Kommission der Europa¨ischen Gemeinschaften, ”Das o¨ffentliche Auftragswesen in der Europa¨ischen Union - U¨berlegungen fu¨r die Zukunft KOM (96) 583endg (本稿では、BR-Drucks. 50/97 に所収のドイツ語版)を参照。

(4)  Jost Pietzcker, Die neue Gestalt des Vergaberechts, ZHR 1998, S. 427 ff., 428.

(5)  公共契約の司法審査の制度と解釈については、碓井教授の一連の論稿が出されている。碓井光明『公共契約の法理論と実際』(弘文堂、一九九五年)〔以下、碓井@とする〕、同「政府契約」(『岩波講座  現代の法  八  政府と企業』岩波書店、一九九七年)三五頁以下〔同A〕、同「公共契約と司法審査」(成田頼明先生古稀記念『政策実現と行政法』有斐閣、一九九八年)三八九頁以下〔同B〕、が比較法的研究に基づく重要な業績である。

(6)  拙稿「政府契約締結の争訟的統制−EC法によるドイツ公共調達法の新展開を中心に−」鹿法三一巻一号一頁以下(一九九五年)〔@〕、同「EU公共調達法の展開とドイツ法の『欠陥』」行財政二八号二九頁以下(一九九六年)〔A〕参照。なお本稿の内容についての概略は、既に法案段階で、拙稿「政府契約法改正の動き−裁判所による救済の承認−」行財政三四号四一頁以下(一九九七年)〔B〕で紹介した。

(7)  前掲・拙稿注(6)@九頁以下。現在の公共調達に関する指令等の措置については、Christian Bock, Table of E. C. Public Procurement Measures, PPLR 1998, p. CS54 -58 ; 1998, p. CS123 -127 が最新の一覧をかかげている。

(8)  前掲・拙稿注(6)@二五頁以下。

(9)  これについても、既に前掲・拙稿注(6)A三一頁で述べた。後述、第一章第三節二参照。

(10)  すでに、九五年八月一一日のEC裁判所判決については、前掲・拙稿注(6)A三一頁以下で述べた。第一章第三節2参照。

(11)  ドイツの学説および実務にとっても重大なこの改革をめぐって、既に多くの論稿が発表されている。本稿で参照した今次の改革前後の論稿だけでも、以下のものがある。Jost Pietzcker, Die deutsche Umsetzung der Vergabe- und Nachpru¨fungsrichtlinien im Lichte der neuen Rechtsprechung, NVwZ 1996, S. 313 ff. ; Horst Franke, Auswirkungen der Rechtsprechung des EuGH auf das deutsche Vergabewesen (Teil. 1 u. 2), ZfBR 1996, S. 291 ff., 1997, S. 1 ff. ; Meinrad Dreher, Perspektiven eines europa- und verfassungsrechtskonformen Vergaberechtsschutzes- Konsequenzen des EuGH-Urteils vom 11. 8. 1995 fu¨r das deutsche vergaberechtliche Nachpru¨fungsverfahren-, NVwZ 1996, S. 345 ff. ; ders., Die Neugestaltung des Vergaberechtsschutzes, NVwZ 1997, S. 343 ff. ; ders., Richtlinienumsetzung durch Exekutive und Judikative ?, EuZW 1997, S. 522 ff. ; Herta Da¨ubler-Gmelin, Kann das neue Vergaberecht noch bis zum Ende der Legislaturperiode beschlossen werden ?, EuZW 1997, S. 709 ff. ; Josef Ruthig, Rechtsschutz von Bietern bei der Vergabe o¨ffentlicher Bauauftra¨ge, DO¨V 1997, S. 539 ff. ; Georg Hermes, Gleichheit durch Verfahren bei der staatlichen Auftragsvergabe, JZ 1997, S. 909 ff. ; Arnold Boesen, Deutsches Vergaberecht auf dem Pru¨fstand des Gemeinschaftsrechts, EuZW 1997, S. 713 ff. ; Rainer Noch, Die Revision des Vergaberechts - Bestandsaufnahme und kritische Analyse, ZfBR 1997, S. 221 ff. ; Friedhelm Marx, Der Gesetzentwurf zur Neuregelung des Vergaberechts, ZG 1997, S. 393 ff. ; Jost Pietzcker, a. a. O. (N. 4), S. 427 ff. ; Jochem Gro¨ning, Rechtsschutzqualita¨t und Verfahrensbeschleunigung im Entwurf fu¨r ein Vergaberechtsa¨nderungsgesetz, ZIP 1998, S. 370 ff. ; Wolfgang Heiermann/Thomas Ax, Neueste Entwicklungen im deutschen Vergaberecht, BB 1998, S. 1541 ff. ; Hans-Joachim Prie β, The New Amendment to German Procurement Law and its Impact on Remedies, PPLR 1998, p. CS154. ; Arnold Boesen, Das Vergaberechtsa¨nderungsgesetz im Lichte der europarechtlichen Vorgaben, EuZW 1998, S. 551 ff. ; Hans-Joachim Prie β, Recent Decisions on Judicial Protection in German Public Procurement Law, PPLR 1998, p. CS116 ; Jan Byok, Das neue Vergaberecht, NJW 1998, S. 2774 ff. ; Kai-Uwe Schneevogl/Lutz Horn, Das Vergaberechtsa¨nderungsgesetz, NVwZ 1998, S. 1242 ff. ; Andre ´Martin-Ehlers, Die Novellierung des deutschen Vergaberechts, EuR 1998, S. 648 ff. 

  なお旧法たる財政原則法による「財政法的解決策」の段階の権利保護の限界と新法の必要性について突っ込んで検討したものとして、Rainer Noch, Vergaberecht und subjektiver Rechtsschutz, 1998 がある。

  また、連邦政府による報告として、BT-Drucks. 13/7137, v. 5. 3. 1997, a. a. O. (N. 2) 参照。

  EU全体の公共調達法制のコントロールについて最近のものでは、Meinrad Dreher, Die Kontrolle der Anwendung des Vergaberechts in Europa, EuZW 1998, S. 197 ff. ; Adrian Brown, Effectiveness of Remedies at National Level in the Field of Public Procurement, PPLR 1998, p. 89 -94. 参照。

(12)  委託発注法(O¨ffentliches Vergaberecht)、委託発注制度(Vergabewesen)などの用語については、前掲・拙稿注(6)@五〇頁注(6)。

(13)  前掲・拙稿注(6)@五頁以下。

(14)  代表的な見解として、碓井教授の一連の主張がある。特に、碓井・前掲注(5)B三九一頁以下参照。筆者は、現行法上の限界はあるものの、基本的には碓井教授の解釈論的な主張を支持する者である。

(15)  公共調達に関する最近の国際的な展開については、Susan Brown, Rcent Global Developments on Public Procurement, PPLR 1998, p. CS50 -53 ; Hans-Joachim Prie β, Das O¨ffentliche Auftragswesen im Jahre 1996, EuZW 1997, S. 391 ff. 参照。APEC の動向については、Sue Arrowsmith, The APEC Document on priciples of Transparency in Government Procurement, PPLR 1998, p. CS38-CS45. 同所p. CS46 以下に同文書が掲げられている。日本語のものでは、さしあたり次注の文献参照。

(16)  碓井・前掲注(5)B四二一頁以下、川口康裕「新しい政府調達苦情処理手続の概要」NBL六二三号一三頁以下(一九九七年)、牧野治郎編『新・政府調達制度の手引』(大蔵財務協会、一九九七年)、申三K『WTO時代の政府調達』(ジェトロ、一九九七年)など参照。

(17)  協定の邦訳では、challenge を「苦情申立て」と訳しているが、本稿では、あえて不服と訳しておく。

(18)  牧野編・前掲注(16)三八頁。

(19)  碓井教授は、政府調達協定を実施するための国内争訟制度の位置づけについて、第一に、その法的な保障がない点、第二に、審査を行う専門的な人材確保の問題点を指摘されている(碓井・前掲注(5)B四二二頁)。

(20)  なお、住民訴訟により住民が争う場合でも、「損害」の立証等困難が伴うと考えられる。

(21)  EU全体でも、なお、EUの各種公共調達関係指令の完全な国内措置化は遅れている。九六年の公共調達に関する緑書では、完全な国内措置化を行っているのは三ヶ国のみとされ、三六の条約違反手続が進行中とされている。Gru¨nbuch, a. a. O. (N. 3), S. 13.

(22)  EC条約二二三条に基づき除外されている。Prie β, a. a. O. (N. 15), 391 f. 委員会は、公共調達の指令を防衛調達にも及ぼすことを提案している。Die Herausforderungen fu¨r die europa¨ische Ru¨stungsindustrie- Ein Beitrag fu¨r Aktionen auf europa¨ischer Ebene, KOM (96) 10 endg. v. 24. 1. 1996, S. 20 ff. ; Gru¨nbuch, a. a. O. (N. 3), S. 58.

(23)  請負規程の歴史等については、拙稿・前掲注(6)@八頁参照。

(24)  Pietzcker, a. a. O. (N. 4), S. 468.

(25)  契約締結時の過失(culpa in contrahendo)については、さしあたり、Angela Faber, Drittschutz bei der Vergabe o¨ffentlicher Auftra¨ge, DO¨V 1995, S. 403 ff., 410 f. ; Noch, a. a. O. (N. 11), 1998, S. 200 ff. 参照。この理論の実効性について批判的な者として、Gu¨ndisch, Der Rechtsschutz bei o¨ffentlichen Auftra¨gen, EuR-beiheft 1/1996, S. 59 ff., 60 ff.

(26)  契約締結時の過失(culpa in contrahendo)の理論は、補助金仲介者により補助金交付を拒否された申請者がそれを求める場合にも、根拠とされる。拙稿「ドイツにおける『私人による資金助成行政』の法的統制」(室井力先生還暦記念『現代行政法の理論』法律文化社、一九九一年)一二一頁以下、一三〇頁、その後の補足を含めて、拙著『私人による行政』(日本評論社、一九九九年)一九七頁以下参照。委託発注の場合も、資金助成の場合も、こうした交渉に基づく信頼関係の形成がされてはじめて、法的に救済が可能となるというのが、民事法的な対応の限界なのであろう。補助金を含む資金助成の交付決定については、ドイツでは、予算補助の事例も含めて、その交付決定を行政行為として、義務づけ訴訟等の行政訴訟を認めている。拙稿「資金助成行政の行為形式論(一、二、三・完)−西ドイツ行政法学および裁判例の理論とその問題点−」名法一〇六号三七三頁以下、一〇八号二四九頁以下、一一一号五一一頁以下(一九八五、一九八六年)。それに対して、委託発注の分野でこうした対応がされてこなかったのである。拙稿・前掲注(6)@七頁以下参照。

(27)  後述、ベルリン上級通常裁判所判決注(63)参照。

(28)  BGH, Urt. v. 25. 11. 1992, BGHZ 120, S. 281 ; NJW 1993, S. 520. この点については、拙稿・前掲注(6)@四五頁、碓井・前掲注(5)B四〇四頁以下も参照。事案は、石材の調達に関わり、公告条件に厳密に適合した申込みをした業者が原告のみであったものである。

(29)  拙稿・前掲注(6)@執筆以後の、EUの動きとしては、次のような動向がある。

  EUの委員会は、「EUにおける公共委託制度」Das o¨ffentliche Auftragwesen in der Europa¨ischen Union, KOM (98) 143 endg. ; Ratsdok. 6927/98, BR-Drucks. 296/98 のコミュニケーションを発表した。これについては、さらにRhodri Williams, The European Commission’s communication on Public Procurement in the European Union, PPLR 1998, p. CS99-CS107 の紹介もある。

  公共調達に関する指令の国内措置は、他の分野と比較すると遅れているといわれている。加盟国全体としてみれば、指令の五五・六パーセントしか対応できていないとされている。Mitteilung, a. a. O. (N. 29), KOM (98) 143 endg., S. 2. 

  EUは、九六年に公共調達についての緑書をまとめている。Gru¨nbuch, a. a. O. (N. 3) この間のEUの公共調達市場対策の主要な柱は、法的な体制の統一、新たな情報社会対応の公共調達制度の確立にあるようである。BR-Drucks., a. a. O. (N. 3), S. 4.

(30)  拙稿・前掲注(6)@一八頁以下参照。

(31)  拙稿・前掲注(6)@二五頁以下。

(32)  Zweites Gesetz zur A¨nderung des Haushaltsgrundsa¨tzegesetzes v. 26. 11. 1993 (BGBl. I S. 1928). 法案は、BT-Drucks. 12/5334 v. 30. 6. 1993 所収。

(33)  Gesetz u¨ber die Grundsa¨tze des Haushaltsrecht des Bundes und der La¨nder (Haushaltsgrundsa¨tzegesetz- HGrG), v. 19. Aug. 1969 (BGBl. I S. 1273).

(34)  Verordnung u¨ber die Vergabebestimmungen fu¨r o¨ffentliche Auftra¨ge (Vergabeverordnung- VgV) v. 22. Feb. 1994 (BGBl. I S. 321).

(35)  Verordnung u¨ber das Nachpru¨fungsverfahren fu¨r o¨ffentliche Auftra¨ge (Nachpru¨fungsverordnung- NpV) v. 22. Feb. 1994 (BGBl. I S. 324).

(36)  新たに制度化された争訟手段が、排他的なものか、それとも通常裁判所の出訴は別途認められるかが、後述のように争点となった。Vgl. Pietzcker, a. a. O. (N. 11), S. 313 ff., 318. 

  EC裁判所への出訴が認められるものは、国内裁判所の最終審に限られるものであることから、委託発注監視委以外には、出訴が認められないと解するのが一般的である。さらに行政裁判所または通常裁判所への出訴を認める者として、H.-J. Prie β, a. a. O. (N. 11), S. 357 ff., 360. 委託発注審査機関に対する委託発注監視委の決定を行政行為として、行政裁判所への出訴を認める者として、v. Wolfgang Meibom/Jan Byok, Anmerkungen zur Notwendigkeit eines Vergabegesetzes in Deutschland, EuZW 1995, S. 629 ff., 631 。

(37)  拙稿・前掲注(6)@二五頁以下。財政法的解決策についての政府の立法理由(BT-Drucks. 12/4636, S. 12)参照。

(38)  委託発注審査機関の手続に対して、参加企業が申請権を有するかについては、議論が分かれる。財政原則法五七b条三項の規定によれば、職権で手続が開始され、それに対する申請権を付与すると解される規定はないことから、申請権を付与していないとの解釈(Pietzcker, a. a. O. (N. 11), S. 314 f. ; Boesen, a. a. O. (N. 11), S. 347 ; ders., a. a. O. (N. 11), S. 554)がされる一方で、EU法の趣旨に即して、申請権を認める解釈をする者(Michael Brenner, Die Umsetzung der Richtlinie u¨ber o¨ffentliche Auftra¨ge in Deutschland, EuR-Beiheft 1996, S. 23 ff., 33 f.)もいる。

(39)  ドイツ法の伝統として、委託発注先の決定がすなわち契約の成立とされてきている。この点は、後に、EC委員会によって批判されることともなる。

(40)  ドイツ法の解釈上は、委託先決定(Zuschlag)により同時に契約が成立すると解釈されている。これは、ゲルマン法の伝統に基づいているためで、ロマンス法圏の国において、両者が区別されているのとは異なるとされている。Boesen, a. a. O. (N. 11), EuZW 1998, S. 553. また、ドイツの民事法上は、強く、合意は拘束する(pacta sunt servanda)の原則が貫かれているために、違法な委託先決定が行われたときでも、それと同時に成立した契約を取り消すことはできないとされてきた。Ebenda.

(41)  連邦の委託発注監視委員会の行った審査手続と若干の裁決については、拙稿・前掲注(6)@四三頁以下参照。なお、連邦の監視委員会を含め、監視委員会の裁決、裁判所(ドイツ国内の裁判所およびEC裁判所)の判決等を収録したものとして、Hans Georg Fischer (Hrsg.), Entscheidungssammlung Europa¨isches Vergaberecht, St. Nov. 1998 (Losenbl.) が便利である。

(42)  拙稿・前掲注(6)@四三頁以下。

(43)  以下のデータは、BT-Drucks. 13/7137, a. a. O. (N. 2), S. 6 による。

(44)  たとえば、Pietzcker, a. a. O. (N. 11), S. 315.

(45)  Boesen, a. a. O. (N. 11), EuZW 1997, S. 713 ff., 714.

(46)  Dreher, a. a. O. (N. 11), EuZW 1995, S. 637 f. ; ders., Der Rechtsschutz bei Vergabeversto¨βen nach ”Umsetzung der EG-Vergaberichtlinien, ZIP 1995, S. 1869 ff, 1871 f., 1877. ; Pietzcker, a. a. O. (N. 11), NVwZ, S. 316 ; Boesen, a. a. O. (N. 11), S. 345 ff., 347 ; ders., Die Gerichtsqualita¨t der Vergabeu¨berwachungsausschu¨sse i. S. des Art. 177 EGV, EuZW 1996, S. 583 ff., 586.

(47)  Boesen, a. a. O. (N. 11), EuZW 1997, S. 714.

(48)  Ebenda.

(49)  Pietzcker, a. a. O. (N. 11), S. 316 f.

(50)  Pietzcker, a. a. O. (N. 4), S. 440.

(51)  Pietzcker, a. a. O. (N. 11), S. 317 ; v. Meibom/Byok, a. a. O. (N. 36), S. 629 ff., 631.

(52)  Pietzcker, a. a. O. (N. 11), S. 317.

(53)  Dreher, a. a. O. (N. 11), ZIP 1995, S. 1869, 1873 ; Pietzcker, a. a. O. (N.), S. 137 ; ders., a. a. O. (N. 4), S. 437 ff.

(54)  v. Meibom/Byok, a. a. O. (N. 36), S. 629 ff., 632 ; Boesen, a. a. O. (N. 11), S. 348.

(55)  Meinrad Dreher, Der Rechtsschutz bei Vergabeversto¨βen nach Umsetzung der EG-Vergaberichtlinien, ZIP 1995, S. 1869 ff., 1875 ; Faber, a. a. O. (N. 25), S. 403 ff., 410.

(56)  Dreher, a. a. O. (N. 55), S. 1874 ; Boesen, a. a. O. (N. 11), NJW 1997, S. 345 ff., 349.

(57)  拙稿・前掲注(6)A三一頁。

(58)  裁判所構成法一七条二項「許容される出訴の途(Rechtsweg)の裁判所は、法的争訟を考慮されるすべての法的観点で裁判する。」

(59)  同条二項は、市場支配的企業等が、その取引において、同等の企業がその取引に参加するのを直接または間接に妨げたり、直接または間接に不平等な取り扱いをしてはならない旨定めている。

(60)  民法典八二三条二項「同じ義務(損害賠償義務著者)は、他者の保護を目的とする法律に違反した者も負う。」

(61)  民法典八二六条「公序良俗に反する方法で他人に故意に損害を生ぜしめた者は、他人に損害の賠償の義務を負う。」

(62)  さらに、ベルリン上級通常裁判所は、別の決定において、民法典一〇〇四条および八二三条、八二三条二項による不作為請求権、ECの指令に基礎付けられるものではないと述べている。KG, Beschl. v. 31. 5. 1995, in : Fischer (Hrsg.), a. a. O. (N. 41), KG II2.

(63)  KG, Urt. v. 10. 4. 1995, EuZW 1995, S. 645 ff. ; auch in : Fischer (Hrsg.), a. a. O. (N. 41), KG II 1. Vgl. Horst Eidenmu¨ller, Einstweiliger Rechtsschutz und europa¨isches Vergaberecht, EuZW 1995, S. 632 ff.

(64)  Gro¨ning, a. a. O. (N. 11), ; Dreher, a. a. O. (N. 55), ZIP 1995, S. 1875 f. ; Prie β, a. a. O. (N. 11), EuZW 1995, S. 793.

(65)  Pietzcker, a. a. O. (N. 11), S. 314, 318. ピーツカーによれば、財政法的解決策は、委託発注契約および手続についての第一次的な権利保護は、財政原則法の認める二段階の手続によってのみ認めるという意味での、排他的な手続となっているとしている。同旨の見解として、Fritz Rittner, Das deutsche O¨ffentliche Auftragswesen im europa¨ischen Kontext, NVwZ 1995, S. 313 ff., 319 ; Eidenmu¨ller, a. a. O. (N. 63), S. 633 f.

(66)  EU委員会の批判については、拙稿・前掲注(6)A三一頁でも既に簡単に紹介した。

(67)  九二年三月二〇日に委員会の警告書が出されている。

(68)  Beanstandungsschreiben v. 31. 10. 1995, ZIP 1995, S. 1940 ff. 以下については、SZ v. 4. 12. 1995 ; SZ v. 28. 11. 1995 なども参照。

(69)  「指令(Anweisung)」の性格も拘束力も不明である。

(70)  その他に、ドイツ法上、委託相手先決定と契約締結とが分離されていないことも批判されている。A. a. O., S. 1944.

(71)  その他に、九二年の公共役務委託についての指令(92/50/EWG)の国内措置、九三年七月一四日の公共物品調達手続についての指令(93/36/EWG)の国内措置についても、国内措置が遅れていることを条約違反として認めた判決として、それぞれ、EuGH, EuZW 1996, S. 575 ff., EuGH, Urt. v. 16. 12. 1997 - Rs. C-341/96, Kommission der Europa¨ischen Gemeinschaften gegen Bundesrepublik Deutschland, EWS 1998, S. 62 f. 参照。公共調達法に関するEC裁判所の判決については、Thomas Schabel/Marianne Zellmeier-Neunteufel, Neue Rechtsprechung des Europa¨ischen Gerichtshofs zum Vergaberecht, BauR 1996, S. 642 ff. ; Horst Franke, Auswirkungen der Rechtsprechung des EuGH auf das deutsche Vergabewesen - Teil 1 u. 2, ZfBR 1996, S. 291 ff., 1997, S. 1 ff. も参照。

(72)  EuGH, Urt. v. 11. 8. 1995 -Rs. C-433/93 (Kommission / Bundesrepublik Deutschland). ; NVwZ 1996, S. 367 ; auch in : Fischer, a. a. O. (N. 41), EuGH Nr. 24. など。既に拙稿・前掲注(6)A三一・三二頁でもふれた。

(73)  なお、Pietzcker, a. a. O. (N. 11), S. 314 ; Dreher, a. a. O. (N. 55), ZIP 1995, S. 1895 ff. 参照。

(74)  EuGH, Urt. v. 17. 9. 1997, ZIP 1997, S. 1749 ff. ; JZ 1998, S. 37 ff. m. Anm. v. Ingo Brinker, S. 39 ff. ; Fischer, a. a. O. (N. 41), EuGH Nr. 33. 簡単な評釈として、Hans-Joachim Prie β, ECJ Decision in the Dorsch-consult case : Implications for Germany, PPLR 1998, p. CS10. ; Jose ´Ferna ´ndez-Marti´n, The Decision of the European Court of Justice in the Dorsch Consult Case on the German Transpositon of the Remedies Directive, PPLR 1998, p. CS1 ; Anm. v. Meinrad Dreher, EWiR 1997, S. 987 f. なお、Jose ´Mar´a Ferna´ndez-Marti´n, Recent Cases of the European Court of Justice Relevant to Public Procurement, PPLR 1998, p. CS59-CS69 も参照。

(75)  先決訴訟は、国内裁判所が、先決的に、EC裁判所の解釈についての判断を求める制度である(EC条約一七七条)。山根裕子『新版EU/EC法』(有信堂、一九九五年)一四五頁参照。

(76)  GA (Generalanwalt) EuGH (Generalanwalt Giuseppe Tesauro) Schlussantr. v. 15. 5. 1997 -Rs C-54/96 (VU¨A des Bundes), EWiR 1997, S. 597 ; ZIP 1997, S. 1293 ff. Vgl. auch Anm. v. Meinrad Dreher, EWiR 1997, S. 597 f. 

  要旨

1  EC条約一七七条の裁判所概念は、EC法上の概念である。

2  委託発注法上の最終審たる事後審査機関としての連邦の委託発注監視委員会は、審査命令三条二項とあわせて財政原則法五七c条の確認にもかかわらず、EC条約一七七条の裁判所ではない。

3  VU¨A が条約一七七条によりEuGH に提起した先決訴訟請求は、許されない。

4  個人が、直接適用可能な指令の場合に委託発注法上の権利保護を求めることのできる裁判所の規定に関しては、もっぱら国内の立法者が権限を持つ。

  訟務官は、問題となっている「裁判所」の要件は、特殊EU法上のものであることを確認した上で、一般的な定義はしていないが、その重要な構成要件として、法律による機関の創設、その継続的な性格、争訟の裁断が裁判(Rechtsprechung)としての性格をもっていること、争訟の手続、法規の適用、機関の独立性を挙げた。そしてその上で、VU¨A の裁判所としての性格を否定した。機能的な要件である、手続が裁判としての性格を欠く、独立性、不偏不党性に欠ける。財政原則法五七c条の官吏たる委員の配転禁止および独立性は、petitio principii 、先決問題要求の虚偽《理由なく前提を立てることによる虚偽》であると批判している。

(77)  「裁判所」として認められる要件については、山根・前掲注(75)一四六頁以下、Boesen, . a. a. O. (N. 11), EuZW 1997, S. 715 ff. 参照。

(78)  Dreher, a. a. O. (N. 74), S. 988.

(79)  Dreher, a. a. O. (N. 74), S. 988. 同旨の指摘として、Pietzcker, a. a. O. (N. 11), S. 315 ; Martin-Ehlers, a. a. O. (N. 11), S. 659.

(80)  EuGH, Rs. C-392/93, (The Queeen/H. M. Treasury, exparte British Telecommunications), EuZW 1996, S. 274 ff. ; auch in : Fischer, a. a. O. (N. 41), EuGH Nr. 27. これは、フランコヴィッチ判決(EuGH, Urt. v. 19. 11. 1991 - Rs. C-6/90 ; C-9/90 (Andrea Francovich, Danila Bonifaci u. a. /Italienische Republik), NJW 1992, S. 165 f.)以来認められている基本原則に基づいている。

(81)  Dreher, a. a. O. (N. 75), EWiR 1997, S. 598 は、EuGH 判決のいう共同体法違反を理由とする損害賠償義務の判例により、ドイツ連邦共和国に損害賠償を請求することができることとともに、本文のように述べている。

(82)  FAZ v. 25. 9. 1996 ; SZ v. 25. 9. 1996.

(83)  九七年四月二〇日に参事官草案を作成した。その後法案は、連邦参議院に提出された(Gesetzentwurf v. 5. 9. 1997, BR-Drucks. 646/97)後、連邦議会に提出された(BT-Drucks. 13/9340)。これに対しては、緑の党・九〇年同盟の修正申請(BT-Drucks. 13/9813, v. 1. 4. 1998)、経済委員会決定、連邦政府案および緑の党・九〇年同盟の修正案について(BT-Drucks. 13/10328, v. 1. 4. 1998)、SPDの修正申請(BT-Drucks. 13/10441, v. 21. 4. 1998)、緑の党・九〇年同盟の修正申請(BT-Drucks. 13/10461 v. 22. 4. 1998)が出されている。連邦議会では、九八年四月二三日に承認、通過したが、その後、連邦参議院からの両院協議会の開催要求(BT-Drucks. 13/10711, v. 13. 5. 1998)が出され、その後、九八年五月二九日に成立したものである。

  連邦参議院は、四〇にも及ぶ見解を表明している。特に、前掲Dorsch Consult 事件判決を前提として、法改正がおよそ必要なのかどうかを問題としている。

(84)  Gesetz zur A¨nderung der Rechtsgrundlagen fu¨r die Vergabe o¨ffentlicher Auftra¨ge ; Vergaberechtsa¨nderungsgesetz - VgRA¨G v. 26. 8. 1998 (BGBl. I S. 2512). 第六次競争制限禁止法改正法(Sechstes Gesetz zur A¨nderung des Gesetzes gegen Wettbewerbsbeschra¨nkungen v. 26. 8. 1998, BGBl. I S. 2521)によって、条文の調整がなされた結果、現行法は、当初の改正法と条数が変わっている。なお、第六次競争制限禁止法改正については、さしあたり、Hermann-Josef Bunte, Die 6. GWB-Novelle - Das neue Gesetz gegen Wettbewerbsbeschra¨nkungen, DB 1998, S. 1748 ff. 参照。

(85)  Gesetz gegen Wettbewerbsbeschra¨nkung, idF. v. 20. Feb. 1990 (BGBl. I S. 235).

(86)  たとえば、法システム全体を鳥瞰することができ、委託発注法の分野全体の今後の発展にも資するものであるなどの理由から統一的な委託発注法の制定が望ましいとしていた者として、Dreher, a. a. O. (N. 11), S. 344 参照。

(87)  Dreher, a. a. O. (N. 75), EWiR, S. 598.

(88)  Pietzcker, a. a. O. (N. 4), S. 441 f.

(89)  競争法は、競争制限を禁止するのが主たる機能であるのに対し、委託発注法は、競争を担保する点、委託発注法は、競争法に吸収され得ない規定内容も含む点、委託発注法は、規制された市場に関わる法制度である点などが批判されている。Vgl. Wolfgang Heiermann/Thomas Ax, Neuordnung des Vergaberechtsschutzes, DB 1998, S. 505 ff. 

  なお、資金助成の詐欺などを規制する資金助成法(Subventionsgesetz)との統合も議論されたようである。Vgl. Dreher, a. a. O. (N. 11), S. 345. 公共委託発注の場合も、特定の相手方について優遇する法令に基づきその相手方に対する資金助成措置として行われる例もあり、その場合は、資金助成の一類型として、場合によっては「二段階論」の適用を認めてきていることについては、既に拙稿・前掲注(26)(一)三八〇頁、三八五頁、(二)二五三頁の連邦行政裁判所一九五八年六月六日判決のほか、二六二頁注(一九)参照。

  また、公共調達の関係者からなるForum O¨ffentliches Auftragwesen からは、財政法的解決策による委託発注審査機関をなくし、委託発注監視委を委託発注審査部として位置づける意見も出されていた。Vgl. Heiermann/Ax, a. a. O. (N. 89), S. 507. Dreher, a. a. O. (N. 11), S. 345 も同旨。

(90)  新委託発注命令の草案(Vorentwurf)は、委託発注改正法の法案理由書の付録に収録されている。BR-Drucks. a. a. O. (N. 83), 646/97, S. 64 ff.

(91)  自由業的サービスについての請負規程(Verdingungsordnung fu¨r freiberu fliche Leistungen ; VOF)は、既に九七年一月二九日の第一次委託発注命令改正で、同命令に組み込まれている。Vgl. Erste Verordnung zur A¨nderung der Vergabeverordnung, BR-Drucks. 82/97 v. 29. 1. 1997. 公共サービス委託については、Jan Byok, Die Vergabe von o¨ffentlichen Dienstliestungsauftra¨gen, WuW 1997, S. 197 ff. ; Stefan Hertwig, Die neue Verdingungsordnung fu¨r freiberu fliche Leistungen (VOF), MDR 1998, S. 194 ff. も参照。

(92)  請負規程の適用範囲、その構造については、Ute Jasper, Das Vergaberechtsa¨nderungsgesetz, DB 1998, S. 2151 ff. も参照。

(93)  なお現在の九七条三項は、当初の政府案には含まれていなかった条項であるが、それによれば、中小企業の利益は、委託発注の専門区分Fachlose または部分区分Teillose への分割によって適正に考慮されるものとされている(中小企業条項)。

(94)  この条項が、基本法三条、EC条約六条の平等取扱い原則に反するほか、建設請負規定A部、競争制限禁止法二〇条(旧二六条)二項に反する、九七条四項にも明らかに反するとする者として、Schneevogl/Horn, a. a. O. (N. 11), S. 1243 がいる。

(95)  連邦、州、ゲマインデおよび特別財産などのように財政法の規制を受ける発注者については、請負規程の第一部が適用され、有限会社および株式会社等の私法上の委託発注者については、それらは、適用されない。この点については、拙稿・前掲注(6)@三四頁以下、および注(一一三)も参照。

(96)  限界値を下回る委託発注の問題点を指摘するものとして、EUの緑書(Gru¨nbuch, a. a. O. (N. 3), S. 22) 、Byok, a. a. O. (N. 11), S. 2776 参照。

(97)  権利保護手続についても、一体的に整備すべきだとしていた者として、Dreher, a. a. O. (N. 11), NVwZ 1997, S. 344.

(98)  従来からあった委託発注審査機関は、「設置することのできる」審査機関として位置づけられ、その審査の結果は、公共調達者に対し「違法な措置を取消しおよび適法な措置を行うことを義務づけ、その機関および企業と委託発注規定の適用に際し協議し、および紛争を調停する活動」(一〇三条二項)を行うとされている。

(99)  なお、従来は、ドイツ裁判官法の規定を準用して、委員の任用の無効および取り消し等についての規定を置き、間接的に委員の独立性を保障していた(財政原則法五七c条三項および四項)が、新法では、委託発注審査部は、純粋に行政内部の機関として位置づけられ、これに対応する規定は、存在しない。

(100)  BT-Drucks. 13/9340, S. 13. 委託発注審査部の審査の質と、費用負担の危険を理由としている。

(101)  委託発注手続の中止、変更など手続自体に対する法的効果を有する救済として用いられる。それに対して、手続そのものには影響を与えない損害賠償事件、カルテル法違反の手続は別途存続する。

(102)  たとえば、VG Regensburg, Beschl. v. 22. 9. 1997, in : Fischer, a. a. O. (N. 41), VG II 5 ; VG Koblenz, Urt. v. 8. 7. 1997, S. 1267, in : Fischer, a. a. O. (N. 41), VG II 6 、拙稿・前掲注(6)@四〇頁参照。

(103)  Pietzcker, a. a. O. (N. 4), S. 470.

(104)  BT-Drucks. 13/9340 ; BR-Drucks. a. a. O. (N. 83), S. 28 ; Noch, a. a. O. (N. 11), ZfBR 1997, S. 223. 従来の委託発注監視委員会の裁決でも同様の判断が出されている。

(105)  したがって、KG, Urt. v. 10. 4. 1995 前注(63)のような事例は、排除される。Vgl. auch Pietzcker, a. a. O. (N. 4), S. 470.

(106)  この制限規定については、Prie β, a. a. O. (N. 11), S. 394 などの批判が出されていたが、議会の審議の中で、連邦参議院の提案に基づき、公告の際の瑕疵にまで範囲が広げられた。

(107)  BT-Drucks. a. a. O. (N. 83), S. 17 ; BR-Drucks. a. a. O. (N. 83), S. 33.

(108)  執行停止については、v. Meibom/Byok, a. a. O. (N. 36), S. 632 ; Boesen, a. a. O. (N. 11), S. 348. 連邦参議院は、この法律による執行停止原則に反対の見解を示していた。BT-Drucks. 13/9340, Anlage Nr. 2, Nr. 28.

(109)  Schneevogl/Horn, a. a. O. (N. 11), S. 1244.

(110)  Schneevogl/Horn, a. a. O. (N. 11), S. 1245.

(111)  BT-Drucks., a. a. O. (N. 83), S. 19 ; BR-Drucks., a. a. O. (N. 83), S. 39.

(112)  これは、カルテル法(GWB六三条)の例による訴訟方法の仕組みが取られているものであり、そこでは、委託発注の迅速な審理が必要なことで根拠付けられている。BR-Drucks. S. 27 f. 弁護士強制(一二〇条一項)も同様に(GWB六八条)取り入れられた。

(113)  Schneevogl/Horn, a. a. O. (N. 11), S. 1245.

(114)  執行停止は、前段階からのものを含めて、通常、一二週間に及ぶことになる。

(115)  Schneevogl/Horn, a. a. O. (N. 11), S. 1244.

(116)  BT-Drucks., a. a. O. (N. 83), S. 22 ; BR-Drucks., a. a. O. (N. 83), S. 47.

(117)  なお、損害賠償訴訟を審理する裁判所は、委託発注審査部の確定力を生じた(bestandskra¨ftig)裁決にも拘束される(一二四条)。

(118)  なお、このそれぞれ五週間の審理期間の制限は、公共調達の関係者からは、両者併せて五週間にすべきだとの意見が出されていた。Heiermann/Ax, a. a. O. (N. 89), S. 510, Anm. 81.

(119)  しかし、濫用の証明が難しいことから、この濫用防止規定の実効性を疑問視する見解もある。Schneevogl/Horn, a. a. O. (N. 11), S. 1245. 連邦参議院も、濫用条項の取り入れに反対していた。BT-Drucks. 13/9340, a. a. O. (N. 83), Aanlage 2, Nr. 34.

(120)  契約を無効とする効果は、法律の文言上、明示的には定められていないが、立法理由にははっきりと述べられている。BT-Drucks. a. a. O. (N. 83), Begr. z. § 125 Abs. 1.

(121)  これは、州の権限との関係で出されている。BR-Drucks. 50/97, a. a. O. (N. 3) ; BR-Drucks. 82/97, a. a. O. (N. 91). それに対しては、法案に付された、ハイルブロナ教授の鑑定書で、EC法とドイツ法と分けての審査は困難である旨述べられている。BT-Drucks. 13/9340, a. a. O. (N. 83), S. 25 ff.

(122)  前述BGH, NJW 1993, S. 520 ; OLG Du¨sseldorf, BauR 1996, S. 98, 101 も参照。

(123)  Jasper, a. a. O. (N. 92), S. 2157 も参照。

(124)  ドイツ行政法の「ヨーロッパ化」として語られることがある。Vgl. Julinane Kokott, Europa¨isierung des Verwaltungsprozessrechts, DV 31 (1998), S. 335 ff., 351 ; Dimitris Triantafyllou, Europa¨isierungsprobleme des Verwaltungsprivatrechts am Beispiel des o¨ffentlichen Auftragsrechts, NVwZ 1994, S. 943 ff.

(125)  なお、当初、この改正案は、カルテル庁の関係者も、公共調達の専門家も知らなかった、とされる。Dreher, a. a. O. (N. 74), S. 987.

(126)  Boesen, a. a. O. (N. 11), S. 555 ; Byok, a. a. O. (N. 11), S. 2778.

(127)  八九年の救済指令の一条三項および九二年の特別部門救済指令参照。

(128)  Gro¨ning, a. a. O. (N. 11), S. 375. 大規模な委託発注事件の場合の資料の多さや、経済性判断の難しさがある一方で、裁決または裁判所の決定を出す期間は、一律に原則五週間と定められていることを問題としている。

(129)  Gro¨ning, a. a. O. (N. 11), S. 377 ; Da¨ubler-Gmelin, a. a. O. (N. 11), S. 712.

(130)  Boesen, a. a. O. (N. 11), S. 557.

(131)  ドイツにおける迅速化改革については、簡単ながら、拙著・前掲注(26)第一編第一章参照。

(132)  たとえば、Heiermann/Ax, a. a. O. (N. 89), S. 508 など多数。

(133)  そのように明示的に批判するものとして、Noch, a. a. O. (N. 11), ZfBR S. 226 参照。

(134)  新協定施行にあわせ国に設置された政府調達苦情検討委員会への「苦情」は、設置以来、受付一件、しかし受理〇件(同協定の苦情対象とならない調達であったことによる)である。第一章第二節末で紹介したドイツの旧制度の利用件数とはきわだった違いをみせている。

(135)  この点については、拙著・前掲注(26)四二頁以下、三八五頁以下で指摘した。

(136)  EUの汚職防止についての見解については、Politik der EU zur Beka¨mpfung von Korruption, KOM (97)192. ドイツにおける汚職防止措置については、拙稿「汚職防止の法と対策−汚職防止法を中心に−」行財政三七号三二頁以下(一九九八年)で、国際的な動向も含めて検討をした。汚職防止のための法規定を、範囲を拡大し、刑罰を重くし、適用範囲を公務員以外にも広げて、刑法に取り込んだものである。