立命館法学  一九九八年六号(二六二号)




◇資  料◇
公共委託発注のための法根拠改正法 (ドイツ)
−公共調達法制の競争制限禁止法への組み込みと裁判的統制の展開−

米  丸  恒  治(訳)



ま え が き


   以下で邦訳したのは、EUにおける公共調達関連の指令の国内措置として財政法的解決策をとっていたドイツにおいて、その後のEC委員会の批判や条約違反手続ならびにアメリカ合衆国からの批判を受けて一九九八年に再度改正された公共調達法関連の法律「公共委託発注のための法根拠改正法(1)」により改正された競争制限禁止法の該当法条である。この改正法については、既に前号で概括的な紹介と若干の検討を加えているが、争訟手続等の点で、なお資料的な価値があることを考慮して、公表するものである。
  なお、「公共委託発注のための法根拠改正法」は、第六次競争制限禁止法改正法(2)の公布に伴い、条文の調整がなされた結果、現行法は、当初の改正法と条数が変わっている。以下では、便宜的に、第六次競争制限禁止法により調整された現行の該当法条の邦訳を示すこととした。

(1)  Gesetz zur A¨nderung der Rechtsgrundlagen fu¨r die Vergabe o¨ffentlicher Auftra¨ge;Vergaberechtsa¨nderungsgesetz - VgRA¨G v. 26. 8. 1998 (BGBl. I S. 2512).
(2)  Sechstes Gesetz zur A¨nderung des Gesetzes gegen Wettbewerbsbeschra¨nkungen v. 26. 8. 1998 (BGBl. I S. 2521).


競争制限禁止法


[公共委託発注のための法根拠改正法(発注法改正法;VgRA¨G)および第六次競争制限禁止法による改正後の現行法]


第四章  公共委託の発注
  第一節  発注手続
  〔一般原則〕
第九七条  公共委託発注者は、以下の諸規定に従い、競争によりかつ透明な発注手続において、物品、建設給付およびサービス給付を調達する。
(2)  発注手続への参加人は、不利益取扱いが本法に基づき明示的に命じられまたは許容されているのでない限り、これを平等に取り扱うものとする。
(3)  中小企業の利益は、とりわけ専門区分および部分区分への委託の分割によって適切に考慮するものとする。
(4)  委託は、専門知識があり、給付能力がありかつ信頼性のある企業に発注し、その他のまたはさらなる要件は、受託者に対しては連邦法または州法が定めるときにのみ、課することができる。
(5)  委託先決定(Zuschlag)は、最も経済的な申込みに対して与える。
(6)  連邦政府は、連邦参議院の同意を要する法規命令により、発注に際して遵守されるべき手続について、特に、発注の公告、経過および種類、企業および申込みの選択および審査、契約の締結、ならびにその他の発注手続上の問題について、細目規定を定める権限を有する。
(7)  企業は、委託発注者が発注手続についての諸規定を遵守することを求める請求権を有する。
  〔委託発注者〕
第九八条  本章における公共委託発注者は、次の各号にかかげる者とする。
  一  領域団体およびその特別財産
  二  公益に資する非営利的な事務を遂行する特別の目的のために設立されたその他の公法上および私法上の法人で、第一号または第三号の機関が単独でまたは共同で資本参加によりもしくはその他の方法で圧倒的にその財源を負担し、またはその執行部に対し監督を行い、またはその業務遂行もしくは監督を行う機関の構成員の過半数を決定したもの。それらの機関が単独でまたは他者と共同で圧倒的な財源負担をしまたは業務遂行または監督のための機関の構成員の多数を決定した者も第一段と同様とする。
  三  第一号または第二号の者を構成員とする団体
  四  上水道、エネルギー供給、交通または電気通信の領域で活動している私法上の自然人または法人で、権限ある行政庁により与えられた特別の権利もしくは排他的な権利に基づきその活動が行われている者または第一号ないし第三号の委託発注者がこの者に単独でもしくは共同で支配的な影響を与えることのできる者
  五  地下建設工事のため、病院、スポーツ施設、レジャー施設もしくは余暇施設、学校、大学もしくは行政の庁舎の設置のため、またはそれらと関連したサービスおよび懸賞広告手続のために、第一号ないし第三号の機関より、これらの事業の百分の五〇を超える財源がまかなわれる場合における私法上の自然人または法人
  六  建設給付を行う契約を第一号ないし第三号の機関と締結した私法上の自然人または法人で、その際、報酬に代えて、場合によっては費用の支払いを含む建設設備の利用権が建設工事の反対給付であるものを締結した者につき、第三者への委託に関して(建設特許)
  〔公共委託〕
第九九条  公共委託は、物品供給給付、建設給付またはサービス給付を対象とする公共委託発注者と企業との有償契約、およびサービス委託に至る懸賞広告手続である。
(2)  物品供給委託は、物品の調達のための契約であり、特に購入もしくは割賦購入またはリース、購入オプションつきもしくはなしの使用賃貸借または用益賃貸借に関するものである。契約は、従たる給付を含むことができる。
(3)  建設委託は、建設事業の、地下建設または高層建設の結果であり経済的または技術的な機能を果たす建造物の、または委託発注者により求められる要件にあわせた第三者による建設給付の、実施または計画と実施に関する契約である。
(4)  第二項または第三項に属さずかつ懸賞広告手続でもない給付に関する契約は、サービス委託とする。
(5)  本章の意味の懸賞広告手続は、審査委員会による比較判断に基づいて、賞の配分を伴うかまたは伴わないで委託発注者に計画を達成させる懸賞広告手続のみをいう。
  〔適用範囲〕
第一〇〇条  本章の規定は、第一二七条による法規命令により定められている委託額(Auftragswerte)(限界額 Schwellenwert)以上の委託にのみ適用する。
(2)  本章の規定は、労働契約および次の各号の委託には適用しない。
  (a)  軍隊の駐留に関連する国際的な協定に基づき発注されかつそれについて特別の手続規律が適用されるもの
  (b)  ドイツ連邦共和国とヨーロッパ経済地域に関する協定の加盟国でない他の単数もしくは複数の国との国際的な協定に基づく委託で、加盟国により共同で実施されかつ担われるプロジェクトでそのために特別の手続規律が適用されるプロジェクトのために発注されるもの
  (c)  国際組織の特別の手続に基づいて発注されるもの
  (d)  ドイツ連邦共和国における法規および行政規則に従い秘密裡に行うことが認められ、その実施がこれらの規定により特別の安全確保措置を必要とし、または国家の安全保障の重大な利益の保護のために求められるもの
  (e)  ヨーロッパ共同体設立条約の第二二三条第一項bの適用範囲に属するもの
  (f)  上水道供給、エネルギー供給、交通または電気通信の領域において活動する委託発注者により、第一二七条による法規命令の細目規定に従い、それら発注者自らが活動する領域で発注されるもの
  (g)  第九八条第一号、第二号または第三号に定める委託発注者である者でその給付の提供のために法律または命令に基づく排他的な権利を持つ者に対して委託発注されるもの
  (h)  その財源の如何にかかわらず、土地、現存する建築物もしくはその他の不動産の取得もしくは賃貸借またはそれらに対する権利に関するもの
  (i)  上水道供給、エネルギー供給、交通または電気通信の領域において活動する委託発注者のための、第一二七条による法規命令により細目が定められる結合企業のサービスについてのもの
  (j)  送付物の配送についてのもの
  (k)  電話サービス、テレックスサービス、移動体電話サービス、無線サービスおよび衛星通信についてのもの
  (l)  仲裁サービスおよび調停サービスについてのもの
  (m)  有価証券またはその他の金融手段の発行、売却、購入または委任ならびに中央銀行のサービスに関する金融サービスについてのもの
  (n)  研究および開発の結果がもっぱら委託発注者の自らの活動の実施に際してのその利用のために委託発注者の所有となりかつそのサービスが完全に委託発注者により費用補填される場合を除くほか、研究サービスおよび開発サービスについてのもの
  〔委託発注の種類〕
第一〇一条  公共の物品調達委託、建設委託およびサービス委託の発注は、公開手続、非公開手続または折衝手続でこれを行う。
(2)  公開手続は、無制限の数の企業が公開で申込みの提供を求められる手続である。
(3)  非公開手続においては、公開で参加を求めた上で、その応募者の集団から次に数を限った企業が申込み提供を求められる。
(4)  折衝手続は、委託条件について一社または複数社と交渉するために、委託発注者が予め公開での参加募集をしまたはそれをしないで選択された企業と相談する手続である。
(5)  公共委託発注者は、本法に基づき別途許容されている場合を除くほか、公開手続を適用しなければならない。第九八条第四号の委託発注者は、その自由な選択により三つの手続を利用する。
  第二節  事後審査手続
    一  事後審査庁
  〔原則〕
第一〇二条  監督庁及び委託発注審査機関(Vergabepru¨fstelle)の審査可能性にかかわらず、公共委託の発注は、委託発注審査部(Vergabekammer)の事後審査に服する。
  〔委託発注審査機関〕
第一〇三条  連邦および州は、第九八条第一号ないし第三号に定める委託発注者により適用されるべき委託発注規定の遵守の審査の義務を負う委託発注審査機関を設置することができる。委託発注審査機関は、専門監督庁または法監督庁にこれを設置することもできる。
(2)  委託発注審査機関は、申請に基づきまたは職権により、第九八条第一号ないし第三号に定める委託発注者により適用されるべき委託発注規定の遵守につき審査する。委託発注審査機関は、委託発注手続を実施する機関に、違法な措置を取消しおよび適法な措置を行うことを義務づけ、その機関および企業と委託発注規定の適用に際し協議し、ならびに紛争を調停する活動をすることができる。
(3)  委託発注審査機関の決定に対しては、第九七条第七項により生じる諸権利の確保のためには、委託発注審査部のみに申立てることができる。委託発注審査機関による審査は、委託発注審査部への申立ての要件ではない。
  〔委託発注審査部〕
第一〇四条  連邦に属する委託については連邦の委託発注審査部が、州に属する委託については州の委託発注審査部が、公共委託発注の事後審査を行う。
(2)  第九七条第七項により生じる権利および公共委託発注者に対する委託発注手続における作為または不作為を求めるその他の請求権は、委託発注審査機関での場合を除き、委託発注審査部および抗告裁判所でのみ、これを主張することができる。損害賠償請求権の主張についての通常裁判所の管轄およびカルテル庁の権限は、この限りでない。
  〔委員配置、独立性〕
第一〇五条  委託発注審査部は、法律の範囲内で独立してかつ自らの責任においてその活動を行う。
(2)  委託発注審査部は、委員長および二名の委員(うち一名は名誉職委員とする)の配置のもとに決定を行う。委員長および常勤委員は、上級行政職の資格を有する生涯官吏または相当の専門知識を有する雇員でなければならない。委員長または常勤の委員は、裁判官職の資格を有する者でなければならず、原則として委員長がこれであるものとする。委員は、委託発注制度についての基本的な知識を、名誉職委員も委託発注制度の分野で長年にわたる実務上の経験を有するものとする。
(3)  審査部は、口頭での審理なく取消不可能な決定により単独で決定するよう手続を委員長または常勤委員に委任することができる。この委任は、事案に事実上のまたは法的な観点で重大な困難がなく、決定が基本的な意味を有しない限りでのみ、これを行うことができる。
(4)  審査部の委員は、五年の任期でこれを任命する。委員は、独立に決定を行い、法律にのみ服する。
  〔設置、組織〕
第一〇六条  連邦は、必要な数の委託発注審査部を連邦カルテル庁に設置する。委託発注審査部の設置および委員配置ならびに業務配分は、連邦カルテル庁の長官が決定する。名誉職委員およびその代理人は、長官が公法上の会議所(Kammer)の全国組織の提案に基づき任命する。連邦カルテル庁長官は、連邦経済省の認可を得て、業務規則を定め、これを連邦公報(Bundesanzeiger)に告示する。
(2)  州の本節で定める機関(事後審査庁)の設置、組織および委員配置は、州法により権限ある機関がこれを行い、かかる規定なきときは、州政府がこれを行い、州政府はその権限をさらに委任することができる。委託発注審査部の委員配置に際しては、少なくとも一名の委員が裁判官職の資格を有し、かつ可能ならば委託発注制度についての基本的な知識が存するよう確保しなければならない。州は、共同の事後審査庁を設置することができる。
    二  委託発注審査部の手続
  〔開始、申請〕
第一〇七条  委託発注審査部は、申請に基づいてのみ事後審査手続を開始する。
(2)  委託に利害関係を有しかつ委託発注規定の不遵守により第九七条第七項によるその権利の侵害を主張するあらゆる企業が、申請権能を有する。それに際し、その主張する委託発注規定違反により企業に損害が生じたかまたは生じる虞があることを、説明しなければならない。
(3)  申請は、申請者がその非難する委託発注規定違反を既に委託発注手続の中で認識しておりかつ委託発注者に対して遅滞なく警告を発しなかったときは、許されない。委託発注規定違反が、公告に基づき認識し得るもので、遅くとも公告で示された申込みの提供または委託発注者に対する応募の期限までに警告されていないときも、申請は許されない。
  〔形式〕
第一〇八条  申請は、文書で委託発注審査部に提出しかつ遅滞なく理由を述べなければならない。それは、一定の要求事項を含んでいるものとする。住所または居所、所在地または執行部が本法の適用領域にない申請者は、本法の適用領域に受領代理人を任命しなければならない。
(2)  理由は、申請相手の表示、事実の説明を伴う主張する法違反の説明、および利用可能な証拠手段の表示を含み、ならびに委託発注者に対し警告が発せられたことの説明をするものでなければならず、それは、知る限りにおいてその他の参加人を列挙するものとする。
  〔手続参加人、召喚〕
第一〇九条  手続参加人は、申請者、委託発注者、およびその利益が審査部の決定により重大な影響を受けかつそれゆえ委託発注審査部により召喚された企業である。召喚の決定は、この取消を求めることはできない。
  〔職権探知主義〕
第一一〇条  委託発注審査部は、事実を職権で調査する。審査部は、その活動のすべてにおいて、委託発注手続の進行を不当に侵すことのないよう注意する。
(2)  申請が明らかに許されないかまたはその理由がない場合のほか、委託発注審査部は、申請の受理後申請書を委託発注者に送付しかつ発注者に委託発注手続を記録に留めた文書(委託発注文書)を求める。委託発注審査機関が設置されているときは、審査部は委託発注審査機関に申請書の移しを送付する。委託発注者は、ただちに委託発注文書を提供する。第五七条ないし五九条第一項ないし第五項は、これを準用する。
  〔文書閲覧〕
第一一一条  参加人は、委託発注審査部の文書を閲覧し、およびその費用に基づき事務局により副本、抜粋または写しを求めることができる。
(2)  委託発注審査部は、特に秘密保護または製品秘密、企業秘密または営業秘密の保護のためなど重大な理由から拒否が求められるときは、資料の閲覧を拒否しなければならない。
(3)  あらゆる参加人は、その文書または見解の送付とともに第二項の秘密を指示し、および書類の中のこれら秘密を相当の方法で知らしめなければならない。これらが行われていないときは、委託発注審査部は、それらが閲覧に同意したとして扱うことができる。
(4)  文書閲覧の拒否は、本案における即時抗告との関連でのみこれを争うことができる。
  〔口頭審理〕
第一一二条  委託発注審査部は、口頭審理に基づいて決定し、その口頭審理は一回の期日に制限するものとする。すべての参加人は、意見を述べる機会を持つ。参加人の同意があるとき、申請が許容されないとき、または明らかに申請の理由がないと見えるときは、文書の状態によって決定を行うことができる。
(2)  参加人が審理期日に現れずまたは適正に代表者を送らないときでも、事案につき審理しかつ決定をすることができる。
  〔迅速化〕
第一一三条  委託発注審査部は、申請受理後五週間以内に文書でその決定を行い理由を付する。特別の事実上のまたは法的な困難があるときは、委員長は、例外的事案において、参加人への通知により必要な期間、期限を延長することができる。委員長は、この処分に文書で理由を付す。
(2)  参加人は、手続の促進および手続の迅速な終結を目指して考慮された基準に対応するように、事実の解明に協力しなければならない。手続参加人には、期間の限定がされることができ、その期間経過後はさらなる主張は考慮されることができない。
  〔委託発注審査部の裁決〕
第一一四条  委託発注審査部は、申請者がその権利を侵害されているかどうかを決定し、権利侵害の除去および関係利益の侵害の防止のための適当な措置を行う。委託発注審査部は、申請に拘束されず、申請から独立して委託発注手続の適法性に影響を及ぼすこともできる。
(2)  すでに行われた委託先決定(Zuschlag)は、取り消すことができない。事後審査手続が相手先決定の通知、委託発注手続の取消もしくは中止、またはその他の方法で終了したときは、委託発注審査部は、参加人の申請に基づき、法令違反があったかどうかの確認を行う。第一一三条第一項は、この場合には適用しない。
(3)  委託発注審査部の裁決は、行政行為により発する。執行は、公権力の主体に対しても、連邦および州の行政執行法によりこれを行う。第六一条はこれを準用する。
  〔委託発注手続の停止〕
第一一五条  事後審査の申請が委託発注者に送達された後は、委託発注者は、委託発注審査部の裁決の前および第一一七条第一項による抗告期間の経過の前には、委託先決定は、これを行ってはならない。
(2)  委託発注審査部は、ありうるすべての侵害利益および委託発注手続の迅速な終了に対する一般の利益を考慮して事後審査の終了までの委託発注の遅延の不利益的効果がそれと結び付いた便益に優越するときは、委託発注者にその申請に基づき、委託発注審査部の裁決の通知から二週間経過後に委託先決定を行うことを許容することができる。抗告裁判所は、申請に基づき、第一項による委託先決定の禁止を回復させることができ、第一一四条第二項第一段は、影響を受けない。委託発注審査部が、委託先決定を許容しないときは、抗告裁判所は、委託発注者の申請に基づき第一段の要件の下に、即時委託先決定を許容することができる。抗告裁判所における手続に関しては、第一二一条第二項第一段および第二段は、これを準用する。第一一六条第一項による即時抗告は、本項の委託発注審査部の裁決に対しては、許容しない。
(3)  第九七条第七項より生じる申請者の権利が、委託発注手続において、行われようとする委託先決定による以外の方法で侵される虞れがあるときは、審査部は、特別の申請に基づき、その他の仮処分により委託発注手続に介入することができる。審査部は、その場合において第二項第一段の判断基準を基礎とする。この裁決は、独立して取り消すことはできない。
    三  即時抗告
  〔許容性、管轄〕
第一一六条  委託発注審査部の裁決に対しては、即時抗告が許される。即時抗告は、委託発注審査部での手続参加人に認められる。
(2)  即時抗告は、委託発注審査部が事後審査の申請に基づき第一一三条第一項の期間内に裁決を行わなかったときにも許され、この場合においては、申請は棄却されたものと見なされる。
(3)  即時抗告については、もっぱら委託発注審査部の所在地の管轄をもつ上級通常裁判所が裁判を行う。上級通常裁判所には、委託発注部が設置される。
(4)  第一項および第二項による法律事件は、州政府により、法規命令により、その他の上級通常裁判所または州の上級裁判所にその管轄を移されることができる。州政府は、その権限を州司法行政に委任することができる。
  〔期間、形式〕
第一一七条  即時抗告は、裁決の送達後から起算し、第一一六条第二項の場合においては期間の経過とともに開始する、二週間の緊急期間内に、文書により抗告裁判所に提出するものとする。
(2)  即時抗告は、申立てと同時に理由を付するものとする。抗告理由には、次に掲げる事項を含まなければならない。
一  委託発注審査部の裁決がどこまで取り消され、かつそれと異なる裁判が申請されるかの説明
二  抗告の基礎となる事実および証拠手段の指摘
(3)  抗告書は、ドイツの裁判所において許可されている弁護士により署名がなされているものでなければならない。公法上の法人による抗告にはこれを適用しない。
(4)  抗告の提出とともに、その他の委託発注審査部の手続参加人は、抗告人により抗告書写しの送付により、教示を受けるものとする。
  〔効果〕
第一一八条  即時抗告は、委託発注審査部の裁決に対して停止効果を有する。停止効果は、抗告期間の経過後二週間で消滅する。委託発注審査部が事後審査の申請を棄却したときは、抗告裁判所は、抗告人の申請に基づき、抗告についての決定まで、停止効果を延長することができる。
(2)  第一項第三段による申請についての決定に際しては、裁判所は、抗告の認容の見込みを考慮する。裁判所は、ありうるすべての侵害利益および委託発注手続の迅速な終了に対する一般の利益を考慮して、抗告についての裁判の終了までの委託発注の遅延の不利益的効果がそれと結び付いた便益に優越するときは、申請を却下する。
(3)  委託発注審査部が、委託発注先の決定の拒否により事後審査の申請を認めるときは、抗告裁判所が委託発注審査部の裁決を第一二一条または第一二三条により取り消さない限り、委託発注先決定は行われない。
  〔抗告手続の参加人〕
第一一九条  委託発注審査部での手続参加人は、抗告裁判所の手続に参加している。
  〔手続規定〕
第一二〇条  抗告裁判所においては、参加人は、ドイツの裁判所において許可された弁護士の代理人により代理されなければならない。公法上の法人は、裁判官職の資格を有する官吏または雇員により、代理されることができる。
(2)  第六九条、第七〇条第一項ないし第三項、第七一条第一項ないし第六項、第七二条、民事訴訟法第二二七条第三項の参照を除く第七三条、第一一一条および第一一三条第二項第一段の規定は、これを準用する。
  〔委託先決定についての予先決定〕
第一二一条  委託発注者の申請に基づき、裁判所は、即時抗告の認容の見込みを考慮して、委託発注手続の継続および委託先決定を許容することができる。裁判所は、ありうるすべての侵害利益および委託発注手続の迅速な終了に対する一般の利益を考慮して、抗告についての裁判の終了までの委託発注の遅延の不利益的効果がそれと結び付いた便益に優越するときもまた、委託先決定を許容することができる。
(2)  申請は、文書でこれを行い、同時に理由を付するものとする。申請の理由付けのために主張される事実および緊急を要する理由は、信ずるに足りるものでなければならない。申請についての決定まで、抗告についての手続は、これを中断することができる。
(3)  決定は、遅滞なく、遅くとも申請の提起後五週間以内にこれを行いかつそれには理由を付すものとし、特別の事実上または法的な困難が存する場合には、裁判長は例外的事案において、参加人への理由を付した通知により必要な期間だけ期間を延長することができる。決定は、口頭弁論なしで行うことができる。その理由付けには、委託発注手続の適法性または違法性を説明する。第一二〇条は、これを適用する。
(4)  本条の規定による決定に対しては、法的救済手段はこれを許容しない。
  〔抗告裁判所の決定による委託発注手続の終了〕
第一二二条  委託発注者が、抗告裁判所における第一二一条による申請について棄却の決定を受けたときは、委託発注手続は、委託発注者が決定から生じる手続の適法性の回復の措置を取らないときは、決定の送達後一〇日経過後に終了したものとみなされ、手続は、これを継続してはならない。
  〔抗告決定〕
第一二三条  裁判所は抗告に理由があるとするときは、委託発注審査部の裁決を取り消す。この場合においては、裁判所は、事案についての決定を自ら行うか、または裁判所の法的見解を斟酌して新たに事案についての決定を行うよう委託発注審査部に義務を課する。裁判所は、申請に基づき、事後審査を申請した企業が委託発注者によりその権利を侵害されたかどうかについて確認する。第一一四条第二項は、これを準用する。
  〔拘束力および移送義務〕
第一二四条  委託発注規定違反を理由として損害賠償が求められかつ委託発注審査部における手続が行われたときは、通常裁判所は、委託発注審査部の存続効を持つ裁決および抗告についての上級通常裁判所の決定ならびに場合によっては第二項により上告された連邦最高通常裁判所の決定に拘束される。
(2)  上級通常裁判所が、他の上級通常裁判所または連邦最高通常裁判所の決定と異なる判断をしようとするときは、上級通常裁判所は、事件を連邦最高通常裁判所に移送する。連邦最高通常裁判所は、上級通常裁判所に代わり裁判を行う。移送義務は、第一一八条第一項第三段および第一二一条による手続には、これを適用しない。
  第三節  その他の規定
  〔権利濫用の場合における損害賠償〕
第一二五条  第一〇七条による申請または第一一六条による即時抗告が、当初より正当化されないものであったときは、申請者または抗告人は、被告および参加人に対しそれらに申請権または抗告権の濫用により生じた損害を賠償する義務を負う。
(2)  特に次の各号に該当する場合は、濫用である。
一  故意または重大な過失により主張した虚偽の摘示により、委託発注手続の執行停止またはさらなる執行停止を求めること
二  委託発注手続を妨害しまたは競業者に損害を加える目的で審査を申請すること
三  事後的に金銭またはその他の便益を取りもどさんとの意図で申請を行うこと
(3)  第一一五条第三項による特別の申請に対応する委託発注審査部による仮処分が当初から正当化されないものであったときは、申請者は、委託発注者に対し、命じられた処分の執行から生じる損害を賠償しなければならない。
  〔信頼損害賠償請求権〕
第一二六条  委託発注者が、企業の保護を目的とする規定に反したときで、かつ企業がこの違反がなければ申込みの評価に際し委託先として決定される真のチャンスで法令違反により侵害されたものを持っていたであろうときは、企業は、申込みの準備または委託発注手続の参加の費用につき損害賠償を請求することができる。損害賠償を求めるさらなる請求権は、影響を受けない。
  〔授権〕
第一二七条  連邦政府は、連邦参議院の同意を要する法規命令により、次の各号についての規定を定めることができる。
一  公共委託発注手続の調整に関するヨーロッパ共同体の指令の限界額のドイツ法への受容につき
二  ヨーロッパ共同体の指令から生じる義務の履行に必要な限りで、上水道供給およびエネルギー供給、交通および通信の分野における活動の細目規定につき
三  上水道供給およびエネルギー供給、交通および通信の分野で活動する委託発注者に対するそのサービスがヨーロッパ共同体の指令により本章が適用されないサービスを行う結合企業の細目規定につき
四  ヨーロッパ共同体の指令により本章が適用されない上水道供給およびエネルギー供給、交通および通信の企業の委託の細目規定につき
五  連邦および州の委託発注審査部ならびに州の委託発注審査部相互の管轄の精確な区分につき
六  公共委託発注者が独立の検査人により、その委託発注手続が本法の規律および本法に基づき発せられた規定に適合することの証明を得ることのできる手続につき
七  一九九二年二月二五日のヨーロッパ共同体理事会の指令92/13/EWG(ABl. EG. Nr. L 76 S. 14)の第三章による修正システムおよび第四章によるヨーロッパ委員会の任意の調停手続につき
八  ヨーロッパ共同体の理事会の指令から生じる義務を履行するための、委託発注者、委託発注審査部および抗告裁判所により連邦経済省に通知されるべき情報につき
  〔委託発注審査部の手続費用〕
第一二八条  委託発注審査部の職務活動については、行政支出を賄う費用(手数料および立替金)を徴収する。行政費用法を適用する。
(2)  手数料の額は、事後審査手続の対象の経済的意味を考慮して、委託発注審査部の人的および物的支出により決定する。手数料は、最低五〇〇〇ドイツ・マルクとし、この額は、妥当性に応じて一割までこれを免除することができる。手数料は、五〇〇〇〇ドイツ・マルクを越えないものとし、しかし個別の事案においては、支出または経済的意味が著しく高いときは一〇〇〇〇〇ドイツ・マルクまで額を引き上げることができる。
(3)  関係人は、手続において敗訴した限りにおいて、費用を負担しなければならない。複数の費用負担者があるときは、連帯債務者として責任を負う。委託発注審査部の裁決の前に申請が撤回されまたはその他の方法により終結したときは、手数料の半額を収めるものとする。妥当性に応じて、手数料の徴収は、これを全部または一部免除することができる。
(4)  委託発注審査部への申立てが認容された限りにおいて、または委託発注審査機関により申請に即し是正されたときは、目的に応じた権利追求に必要な支出の償還を行う。関係人が手続において敗訴した限りにおいて、関係人は、目的に応じた権利追求または権利防衛に必要な申請相手の立替金を負担しなければならない。行政手続法第八〇条および州の行政手続法の対応規定は、これを準用する。
  〔委託発注審査機関の費用〕
第一二九条  第一〇三条第二項第一段に掲げた審査活動およびそれと関連する委託発注審査機関の措置を越え出る連邦の委託発注審査機関の職務活動については、行政支出を賄う費用を徴収する。第一二八条は、これを準用する。手数料は、第一二八条第二項による最低手数料の百分の二〇の額とし、個別の事案において支出または経済的意味が著しく高いときは、手数料は、その最低手数料全額までこれを引き上げることができる。」