立命館大学文学部 ピタッと学ぶ

人間研究学域

伊勢 俊彦 教授

捨てられたイヌ・ネコ、人里に現われたクマなど、動物のいのちに対する関心が高まっています。なぜ動物を殺してはいけないのか。動物にも人間と同じような意識があるからでしょうか。私は、意識のあり方よりも、いのちそのものの共通性から出発して、人間以外の動物や、動物としての人間のあいだの関係について考察を進めています。そのとき、ヒントを与えてくれるのが、命あるものどうしの交遊や感情の交流に注目したヒューム(18世紀の英国の哲学者)など、哲学の歴史上のいろいろな考え方なのです。現代の問題を考えるときにも、歴史を土台とするということも、私が哲学の問題に取り組むときに大切にしている点です。

加國 尚志 教授

20世紀を代表するフランスの哲学者、モーリス・メルロ=ポンティ(1908-1961)の哲学を研究しています。彼の哲学は、サルトルやボーヴォワールと並んで、人間を具体的なあり方から探究しようとしました。とりわけ、人間を徹底して「身体」的な存在として見る点に、哲学者としての彼の独創性があります。私は、彼が晩年に、芸術や文学の中に哲学に代わる思想を求め、哲学と文学の関係を考え直した点に注目し、哲学的な思考と文学的な表現との深い関係を探ろうと考えています。なにごとかが「在る」と感じる経験と、それがたしかに言葉で言われていると感じる経験の交差点で何が起こっているのか、私の研究のテーマはそこにあります。

春日井 敏之 教授

1980年代以降、いじめ、不登校、校内暴力、学級崩壊、学力問題、少年事件等、子どもをめぐる課題が噴出し、学校や家庭における新たな対応が求められました。このような中で、臨床教育学は新しい学問として誕生し、教育実践と協働を図りながら発展してきました。私は、教育現場での勤務経験を生かしながら、学校現場や地域の「不登校親の会」等との共同研究を20年余り継続してきました。その中で、臨床教育学の研究内容として、次の三点を重視してきました。一つには、教育をめぐる諸課題の本質に迫る研究、二つには、教育課題の解決を図るための実践的研究、三つには、援助者としての教員、保護者、青年の自己形成・変容に関する研究です。

北尾 宏之 教授

現代社会では、価値観が多様化し、伝統的な倫理は自明とはいえなくなっています。各人の自由を尊重するならば、それを制限する倫理は邪魔なもののようにさえ映ります。ある人のいう正義は、他の人にとっては単なる偏見であったりもします。倫理なんて現代社会ではもはや成り立たないのかもしれません。他方また、凶悪事件や不祥事が生じると倫理観の欠如が嘆かれますし、クローンなどの新たな科学技術が生まれるとどう対処すべきかという倫理が求められもします。いったいいかなる倫理が求められ、またいかなる倫理が可能なのでしょう。答えは1つではなく、さまざまな可能性を提起することができます。ここに私の研究の面白さがあるのです。

日下部 吉信 教授

わたしの専門は古代ギリシア哲学です。それもソクラテス、プラトンといった古典期の哲学ではなく、ソクラテス以前の初期ギリシアの自然哲学を中心に研究しています。20世紀最大の哲学者、M.ハイデガーはソクラテス以前の初期ギリシア哲学を「存在の故郷」として望郷しました。ソクラテス・プラトンの「主観性の哲学」が立ち上がることによって、初期ギリシアにおいてはまだ露わになっていた存在の真理を隠蔽してしまったというのがハイデガーの見方です。それと同じ見地から隠蔽された存在の真理を発掘するべく、ヘラクレイトスやパルメニデスといった初期ギリシアの哲学者たちの断片を研究しています。

谷 徹 教授

現象学を核にして現代哲学を研究しています。現象学は、20世紀以後の世界全体に大きな影響を与えている哲学潮流です。これを基礎に据えて、私は「自然」・「自己(私)」・「他者」という三つの問題の根底に迫ろうとしてきました。しかし、今ではこれらの問題が「間文化性」という問題に発展しています。間文化性というのは、自分の文化と他の文化との関係です。ごく簡単に言えば、私たちは毎日多くの外国人に出会っていますが、それです。私たちは今や文化と文化が衝突し交雑する世界のなかで生きており、同時に、新たな生き方を模索せねばならなくなっています。しかし、誤った道も多いのです。私が取り組んでいるのは、この問題です。

鳶野 克己 教授

生まれ、育ち、老い、死にゆく私たちの生の歩みを、「人生物語」として語る語り口に注目し、その文化的社会的特性を批判的に検討しています。例えば「練習が辛くて何度もやめようとしたけど、頑張って耐えたから今の自分がある。厳しく指導されたからこそ成長できた。」よく耳にし口にする、有益だけど少し窮屈なこうした人生の意味づけ方は、いつからどうして私たちに馴染みのものになったのか。考えてみませんか。また「笑い」も研究関心です。笑うことは一見とても身近で日常的な経験ですが、実は知情意や心身の問題が複雑に絡みあうとても興味深い人間学的現象なのです。笑いはやはりどこか「おかしい」。笑いの不思議を一緒に探検しましょう。

中川 吉晴 教授

ホリスティックな観点は、機械論的な見方とは異なり、ものごとを生きた全体性のもとにとらえ、人間と世界を広く深くものとしてみます。それは人間も世界もその多元性においてとらえ、身体、感情、思考、魂といった人間の諸次元、社会、自然、宇宙といった世界の諸次元、および人間と世界のつながりをみていきます。これは単に理論的なことではなく、意識のなかでそれに気づくことが大切です。この意味では、古くからいわれる「自己を知る」ということが重要な意味をもっています。現在わたしはスピリチュアリティという名のもとで、人間の多元的なあり方を理論的および実践的な面から研究しています。とくにアジアの伝統的な宗教的人間観にひかれています。

服部 健二 教授

私たちの日常のものの見方を変えるという役割が哲学という学問にあります。たとえば「今は昼だ」という主張に対して、哲学は「いや今は夜だ」というかもしれません。それどころか「いや今は昼であり夜である」ともいうでしょう。最初の主張は東半球で、二番目の主張は西半球で成立します。三番目の主張は地球を全体的に見てはじめていえることです。東半球や西半球での部分的なものの見方では昼は昼ですし、夜は夜です。それが日常的なもののみかたです。しかし、全体的にみることによって、そうした部分的で日常的なもののみかたがはじめて乗り越えられます。哲学はこのように全体的なものをみようとする学問だといえます。

林 信弘 教授

上記の研究テーマの基本的課題は、「人間の底知れない欲望、人間のどうしようもない分裂・矛盾・葛藤状態とどうつきあっていけばいいのか」という根源的な人間学的問いに、既成の哲学や文学や教育学や臨床心理学や宗教思想などから学びつつ、教育研究をも包摂した意識研究の立場から応答することにあります。本研究テーマがはたして高校生の皆さん方にとって面白いかどうかはわかりません。ただ小生としては、面白かろうとなかろうと、人生最大の問題であり、研究せずにはおられないから研究しているまでのことです。因みに本研究テーマと同タイトルの自著『意識の人間学』(人文書院)を挙げておきますので、面白そうだ と思われた方は是非お読みください。

福原 浩之 教授

人生には、これまでの自らの歩みを振り返り、より深く自分を理解し、傷ついてきた自分の心を癒し、新しい自分を創造することが必要な時があります。新たな心の教育を模索する中で学生と共に創り上げてきた体験的教育人間学は、内なる促しに導かれつつ、自らの心と身体を通して体験的に自己の理解・癒し・再生に取り組んでいきます。当然、そのプロセスにはこれまで薄々感じていた認めたくない自分と直面したり、涙が枯れるほど泣いたり、今まで経験したことがないほど強い決断をしたりすることもあります。しかし、他人に依存することなく、自らの責任で取り組む主体的な自己変革こそ、青年期の心の教育の重要な課題であ り、新しい研究領域です。

山本 昌輝 教授

大学院に入学以来、長年心理療法を研究・実践してきましたが、1994年より開始した沖縄研究で大きな転換点を迎えました。現地の戦争の傷跡、人々と土地の傷つき、土着の宗教観などを探求するうちに、「信じる」という行為の持つ力に気づかされたのです。心理療法からみえてくる人間の生き様は、苦悩に打ち拉がれながらも、その状況を生き抜く姿勢であり、その姿はときに神々しくもあります。私の研究の面白い点を挙げるとすれば、それは心理療法場面からみえてくる人間の生きる姿です。人の生涯は必ずしも当人の意思だけに依らない、もっと集合的な、多くの他者の想いを含みながら実現していく。このことを、臨床場面から観て解明していくところに、私の研究の面白みがあります。

神藤 貴昭 准教授

私は、教育場面でみられる、教員や児童・生徒・学生の相互行為と、それによって生じるフレーム(ものの見方や感じ方)変容やストレスを研究しています。さらに企業における教育場面についても研究しています。具体的には、①四国の小学生が歩き遍路体験で、他の参加者や地元の住民たちとどのような相互行為をし変容するか、②大学生が遠隔授業での相互行為を経てどのように変容するか、③企業で働く人たちのメンタリング(世話をしたりされたりすること)体験はどのような意義をもつか、④教員同士の学び合いの場をどのようにつくるべきか、などの研究を行っています。<人間が生きている場>の研究は面白いです。
ホームページは以下です。
http://www.ritsumei.ac.jp/~tshinto/index.htm