立命館大学文学部 ピタッと学ぶ

東洋研究学域

上野 隆三 教授

イタリア南部の都市ナポリ。「フニクリ・フニクラ」でおなじみのヴェスヴィオ火山を望む海沿いの図書館で、私は古い中国書『易経』(儒教の経典とされる、占いに関する本)を閲覧していました。すると、その『易経』の中に2枚の紙がはさまっているのを発見しました。その紙はなんと中国明代の小説『水滸伝』をちぎったものでした。さてこの『水滸伝』の切れ端は何故、どうやってナポリまでやってきたのか。その背景には当時の公務員試験である科挙制度が関係しています。さらには、フランシスコ・ザビエルのように、当時アジアで布教活動を行っていた欧州のキリスト教宣教師たちも関係した可能性があります。このようなことを考えるのが私の最近の研究です。

宇野木 洋 教授

同時代の、中国の文学や文化現象を、少しマクロ的に研究しています。中国は「社会主義」という体制を守りながら、それとは反すると考えられてきた「市場経済」システムを導入するという、人類史上かつてなかった壮大な「実験」の過程にあります。経済面では急激な成長を遂げることに成功していますが、文学や文化の面ではどうでしょうか。「矛盾」は存在しないのでしょうか。実は、奇妙な現象や極端な動向が生じたりもしています(その1つが「美女作家」ブームなどです。これ、何でしょう?)。でも、それ故に活力とダイナミズムに満ちて、日本とは異なる創造力も渦巻いています。東アジアの近代=モダニティの複数性の 探求にも繋がっていきます。

北村 稔 教授

1911年の辛亥革命で清朝が崩壊したあと、中国はどのような政治体制を選択すればよいのかをめぐり、大混乱に陥ります。この混乱の中から現在の台湾にいる国民党と中国大陸を支配する共産党が台頭したのですが、その理由を様々な面から考察します。日中戦争の勃発が共産党の政権獲得に決定的な影響を与えた事実を、国内的さらには国際的観点から詳細に検討します。中華人民共和国の実態をその建国当初に遡って分析し、社会主義を掲げている共産党政権が、その実態は伝統的な封建王朝と何ら変わらないことを様々な面から考察します。さらに中国人の基本的な思考様式を 分析し、中国といかに付き合っていくべきなのかを考えます。

佐々 充昭 教授

私は韓国近現代の宗教に関する研究を行っています。2005年に韓国政府が行った調査では、国民の半数以上である53%が「特定の宗教を持っている」と答えました。また、韓国が「宗教に熱い国」であることは、最近の韓流ドラマの中で主人公の信じる宗教やその信者仲間たちが、ストーリー展開の中で重要な役割を果たしていることからもわかります。私は、韓国での多年にわたるフィールドワークを通じて、特に韓国自生の新宗教、さらには個人主義文化の発展とともに登場してきた新種の霊性運動に関する研究を行っています。また、韓国の若者文化やB級グルメに関する体験的実践は、韓国での現地調査を牽引してくれる最も大きな 原動力になっています。

鷹取 祐司 教授

木簡などの出土文字資料からは、文献史料からは伺えない歴史の一面を知ることができます。例えば、長城遺跡から出土した木簡の中には、長城警備のため内地からはるばるやって来た農民兵士が、長城付近の町に住む民間人に衣類をかけ売りしたのでその代金を回収してほしいと長城警備司令部に依頼したものがあります。司令部ではその依頼をまとめて、買い手の住む町の長官に代金の回収を命令しています。このことから、長城警備に徴発された農民兵士は長城警備の役割を果たすだけでなく、内地から衣類などを長城地帯まで運んできてそこに住む民間人に売ることで、物資の乏しい辺境地帯への物資供給を担ってもいたというこ とが明らかになりました。

中川 正之 教授

最近収集した外国人日本語学習者の変な日本語を2件、紹介します。①(就寝間近ひとしきりメールのやり取りをした後の学生のメール)「先生、安らかにお眠りください」。②(集中講義の最終日、最寄りの駅まで見送るという学生が)「先生、最後まで見届けます」。いずれも日本語能力のかなり高い学習者が発したものです。こういった誤用例が日本語や日本人の特性や心性に思いをめぐらせるきっかけとなることが少なくありません。このように、身の回りのありふれた事例を、見逃さず、聞き逃さず、自らの言語観を日々修正し、より一般性の高い理論を構築 しようと日々、試みています。

萩原 正樹 教授

中国の唐宋時代に流行した詞の研究を行っています。詞は言べんに司と書き、言べんに寺の詩ではありません。カラオケの画面などによく「作詞:誰々」とありますが、これは言べんに寺の「作詩」とは書きません。つまり詞は歌詞を指しており、唐宋時代の詞も音楽に合わせて歌われていた歌謡でした。歌謡ですから形式も多様で、また内容もラブソングやセンチメンタルなものなどあって、詩とは異なるさまざまな特徴を持っており、その特徴について研究しています。またこの詞は日本にも古くから伝わっており、特に明治時代には盛んに作られました。その中でも最も傑出した詞人である森川竹磎についても研究しています。下記もぜひ御覧下さい。
http://www.ritsumei.ac.jp/~hagiwara/
http://twitter.com/ritsuchubun_mas

松本 保宣 教授

唐王朝の政治システムと権力構造。魏晋南北朝は、三国時代から始まる英雄の時代といえます。軍事・政略に秀でたカリスマ的皇帝の登場と死去により、国土は統合と分裂を繰り返し、短命な王朝の興亡が相次ぎました。6世紀以降全土を統一した隋唐王朝もその余韻が色濃く残っており、隋の煬帝・唐の太宗・則天武后など、個性の強すぎる面々が権力闘争の限りを尽くしました。しかし、唐王朝も半ばごろから、秀れた指導者に頼る政治から、制度を固めることにより安定した国家を維持する方向へ変質していきます。現在の私の課題は皇帝の御前会議を舞台に、そこで演じられた皇帝・宰相・官僚・宦官達による生々しいやりとりを 解明することにあります。

芳村 弘道 教授

李白などの盛唐詩人や、白居易の研究を行っています。白居易は中世から近世へと移行する時代に官人として生き、悲喜哀歓を詠い続けた詩人です。彼の人生に惹かれ、主に作品分析を通し生涯と文学的軌跡を実証的に探究しています。我が国には平安時代以来『白氏文集』が愛読され、白居易の原作に近い貴重な作品資料がのこっています。これらには中国では失われた作品を伝えたり、重要な異文を留めたりしており、資料面において日本の白居易研究者は中国の研究者より優位に立つといえます。また漢籍の調査研究も行い、最近では陽明文庫所蔵の朝鮮本『夾注名賢十抄詩』の価値の高さを学界に紹介し、近代中国の学者の来日漢 籍記録の訳註も行っています。

庵逧 由香 准教授

「人が人を支配する」という暴力が最も鮮明に「制度」として表れるのが、近代の植民地支配です。明治維新のあと、日本が近代国家として国際社会に出た陰には、朝鮮や台湾などの植民地支配がありました。しかし、何千万という人を植民地支配することは、それほど簡単なことではありません。どのような制度をつくり、どのような政策を実施したのか。その時、朝鮮の人々はどのように対応したのか。その結果、朝鮮社会はどのように変わっていったのか。当時の史料や証言を分析すると、思わぬ事実や構造が浮かび上がってきます。こうした客観的な分析を通じて、日本と韓国・朝鮮の間で未だに課題となっている植民地支配の問題解決を目指します。

井上 充幸 准教授

中国の近世、それも明清時代といっても、皆さんはあまりピンとこないと思います。ですが、『西遊記』や『三国志』などの物語をはじめ、私たちが「いかにも中国らしい」と感じる伝統文化や、中国人特有の思考方法・行動様式が生み出されたのは、まさにこの時代だったのです。私は、そうした時代そのものの面白さを伝えていきたいと思っています。 また、中国の環境問題にも関心を持っています。現在、中国の内陸部は、砂漠化の危機に見舞われていますが、それはいつ、どうして起こったのでしょうか?私は、さまざまな史料と現地調査を通じて、水資源をめぐる人と環境との関わりの歴史を解明し、現在の問題解決に役立てた いと願っています。

廣澤 裕介 准教授

中国の明代の文学・文化と出版業との関係について研究しています。日本人がよく知る『三国志演義』『西遊記』などの白話小説の成立について、本の形態や出版状況から考えています。21世紀の我々がさまざまな本を読むように、15〜17世紀の中国人も読書をし、学問のためだけでなく、娯楽としても楽しんでいました。そこには、現在のラブコメやホラー、サスペンス、セクシー、刑事もの、ホームドラマ、パロディに通じるものがたくさんあります。それらを500年前の人々はどのように読んだのか、文字や挿し絵からどんな感動や興奮をえたのかを考えています。また明代の文化や社会について、当時の人々の文章を読みな がら考えています。