レポートの書き方


文学部の学習・研究の集大成は、いうまでもなく4回生12月に提出される卒業論文にあります。
卒業論文では、自分の設定したテーマに基づき、その検討のために必要となる史料を全て蒐集・分析し、さらにそのテーマに関する文献・論文を全て渉猟して論点・問題点を摘出し、独創性に富む学術的価値のある論文の作成が求められています。また、枚数も本文で400字詰原稿用紙30枚以上50枚以内、註を加えると100枚前後に及ぶことになります。このためなるべく早い段階から、切磋琢磨して多くの文章を論理的かつ学術的に書く訓練を積む必要があります。
2回生の基礎購読T・Uでも、通例は夏季・冬季に10枚前後のレポートが課されます。また、日本史学総説や史料講読演習、日本史特殊講義などでも、それぞれボリュームのあるレポートが課されることが珍しくありません。これらは、全て卒業論文作成のための予行演習と位置づけられていますから、可能な限り論文形式の文章で書く必要があります。他人の見解を出典を示さずに丸写ししたり(剽窃)、あるいは自分で確かめていない史料を他人の著作から抜き出してくること(孫引き)は、直ちに落第(F評価)の対象となります。したがって、1回生のうちから他人の見解と自分の見解を厳格に区分して文章を書くことが求められます。


レポートのテーマ設定

多くの場合は、基礎購読のレポートの論題は担当教員によって指定されています。ただし、その場合も「前期に取り上げたテーマから一つを選ん で自由に論じよ」といった具合に、かなりの程度自分たち自身でテーマを決めなければなりません。どのようにテーマを決定するかは各自の興味、 関心次第ということになりますが、テーマをできるだけ広い視点から考えるためには、できるだけ早い段階に多くの通史を読んでおくことをお勧めし ます。高校時代よりは踏み込んで記述してある一般向け通史としては、以下のものに定評があります。

『日本の歴史』全26巻(中央公論社[中公文庫]、1965〜67年)
『日本の歴史』全33巻(小学館、1973〜77年)
『日本民衆の歴史』(三省堂、1975〜76年)
『日本通史』全3巻(山川出版社、1986〜87年)
『大系日本の歴史』全15巻(小学館[小学館文庫]、1987〜89年)
『日本の歴史』全22巻(集英社、1991〜93年)
『週刊朝日百科日本の歴史』全133巻・別巻10(朝日新聞社、1986〜90年)
『日本の歴史』全26巻(講談社、2000〜03年)

また、少し専門的にはなりますが、以下のものが現在までの日本史研究上の通説、研究史、課題などを知るためには基本シリーズといえます。

『岩波講座日本歴史』全23巻(旧版、岩波書店、1962〜64年)
『講座日本史』全10巻(東京大学出版会、1970〜71年)
『シンポジウム日本歴史』全23巻(学生社、1971〜73年)
『歴史科学大系』全34巻(校倉書房、1972年〜刊行中)
『岩波講座日本歴史』全26巻(新版、岩波書店、1975〜77年)
『講座日本歴史』全13巻(東京大学出版会、1984〜85年)
『日本歴史大系』全6巻(山川出版社、1984〜90年)
『岩波講座日本通史』全25巻(岩波書店、1993〜96年)
『新視点日本の歴史』全7巻(新人物往来社、1993年)
『日本史講座』全10巻(東京大学出版会、2004〜05年)
『岩波講座日本歴史』全22巻(最新版、岩波書店、2013年〜刊行中)    

さらに、山川出版社の『〜県の歴史』(新版が刊行中、旧版は完了)、吉川弘文館の『人物叢書』(刊行中)、ミネルヴァ書房の『日本評伝選』などは、地方史や歴史的人物を理解する上では基本文献であり、自分自身の出身地、興味を抱いていた人物などを中心に、順次読み進めることが望ましいでしょう。
これらは大部のものが多いので、計画を立てて(文庫であれば一週間に一冊とか)読破していくことをお勧めします。こうした通史に裏打ちされるならば、レポートのテーマ設定は、はるかに容易になりますし、何よりも研究史・研究状況を前提として日本史を捉える眼が養われます。また、どのようなテーマを設定するにせよ、自分自身の問題関心を不断に見つめることが、一つのテーマからさらにさまざまテーマへと自分の興味を膨らませていくためにもきわめて重要なことがらです。何故、自分がこのテーマを考えついたのかについて、単に思いつきということですまさずに、じっくりと振り返って検討することで、現在の自分の関心・こだわりや問題意識を明確にするように努めてほしいと思います。必ずや、自分の研究テーマは一段と広がりをもってくるはずです。



レポートの書き方

レポートの書き方にこれといったマニュアルはありません。ただし、一般的にはテーマが決まれば、次のような作業をする必要があります。

1.テーマに関わる文献リストの作成
最初は、文献リストを載せた『日本古代史研究事典』『日本中世史研究事典』『日本近世史研究事典』『日本近現代史研究事典』『戦後歴史学用語辞典』(いずれも東京堂出版)や『日本歴史学界の回顧と展望』(山川出版社、1987〜88年)、あるいは『日本史研究事典』(集英社版『日本の歴史』所収、前掲)、『日本史論文の書き方』(吉川弘文館、1992年)、『岩波講座日本通史別巻1』(岩波書店、前掲)などを見るのが便利です。ただし、これらは他人が作成した文献リストであり、重要文献が漏れている場合や自分自身の関心分野について丁寧に書いていない場合もあります。そうした場合には、これらの文献リストから想定される重要文献を先ず一冊は入手する必要があります。重要文献に付された註や巻末参考文献一覧などを参照することで、自分自身の文献リストを作成することができます。また、もう少し専門的に調べたい場合には、毎年4回国立国会図書館から刊行されている『雑誌記事索引』(人文科学編)を図書館で検索してみてください(パソコンでも検索できます)。時間はかかりますが、詳細な論文リストを作成することができます。この他、最近は多くの文献リストがジャンル別・地域別に刊行されていますので図書館のレファレンスカウンターの周辺を「探検」してみてください。また、インターネットでも、さまざまな文献リストを検索することができますが、これについては情報処理の授業で詳しく学ぶと思いますので省略します。

2.テーマに関する文献・論文を蒐集し、精読する
リストができたら、著書についてはランナーズ(立命館大学図書館蔵書検索システム)で検索し、また論文については各図書館・資料館の『所蔵雑誌分類目録』で検索します(インターネットでも検索できます)。所在場所が分かったら、図書を借りだし、あるいは論文をコピーするなどして、精読の準備を進めます。この際に、できるだけ刊行年の新しいものから精読していくとよいでしょう。最新の研究成果や研究状況が分かるだけではなく、新しいものにはそれ以前の文献・論文リストが註記されていますから、それ以前に発表された文献を知ることができます。なお、できるだけメモをとりながら(パソコン・ワープロに向かいながら)精読することをお勧めします。とくに重要文献や重要史料などは、その出版社、刊行年、所蔵機関などを必ず記録しておくようにしてください。レポート作成やこの後の研究に役立つことになるからです。

3.史料を蒐集する
テーマに関する文献・論文を精読していく内に、それらが歴史学研究・日本史研究の論文である以上、どのような史料に基づいて立論されているかが理解されてきます。次に重要なのは、これらの史料をできるだけ蒐集し、実際に目を通してみることです。無論、未刊行史料、原文書に基づいて論じられているものも多いので、それらを蒐集・コピーすることは容易ではありません。その際は、せめて所蔵機関などについては留意しておきましょう。2回生の内は、活字として刊行されている史料について、とくに立命館大学で閲覧できるものはできるだけ蒐集・読解したいものです。

4.レポートを書く
レポートを書く際の注意。上記の作業を経て、じっくり構想し、いよいよレポートの執筆となりますが、ここでは、執筆に際しての細かな注意を記しておきます。なお、小集団クラスのレポートについては、卒業論文の書式に準じて書くことが求められています。
【手書き・ワープロ】
手書き・ワープロともに可です。手書きの場合はA4版400字詰原稿用紙、ワープロの場合はA4版に40字×30行で印字してください。レポートの表紙は事務室で受理し、必要事項を書き込んでください。
【縦書き・横書き】
卒業論文では、日本史学専攻では縦書きで書くことになっていますので、それにならってください。
【章立て】
序文にテーマ設定の理由、問題の所在、研究状況などを記します。第1章第1節第1項・・・・・・・・第3章第3節第3項など。最後に結論として、新たに得られた知見、問題点、今後の課題を記します。この後に、註記、参考文献などが続きます。
【文体】
「〜である」「〜であった」を用い、「です」「ます」体は避けます。
【文字・仮名遣い】
地の文は、常用漢字(当用漢字)・現代仮名遣いを用います。引用文は、原仮名遣いを尊重し、引用史料の旧漢字・異字体・変体仮名遣いなどについては、原則的に尊重するようにします。また、漢文史料については、勝手に読み下し文にせずに、原文と句読点・訓点などを付すようにします。句読点・「」()も一字一マスをあてます。また、平出・闕字は省略可ですが、その場合は[平出][闕字]と記すようにしてください。
【改行】
章節のはじめの書き出し、及び改行のときは一字下げて書き出します。
【引用・史料文】
引用・史料文は「」をつけ、註で出典・典拠を明示します。自分の文章に書き直したときにも必ず註で出典・典拠を示さなければなりません。長い引用文については、行を改め本文より全体を1〜2字下げて書くようにします(この場合は「」は不要です)。なお、レポート(論文)中の研究者の名前は敬称を省略してもよいことになっています。「〜氏」は使用してもいいですが、「〜先生」「〜教授」などは用いないことになっています。
【註】
註は本文の該当個所に@Aなどの番号をつけ、レポート(論文)の最後にまとめて番号を再掲して、そこに註記します。
【図表・地図】
もし必要な場合は、適当な用紙を使って、レポートに貼付したり折り込んだりしてください。
【推敲】
レポートを書き上げたら、必ず推敲してください。誤字・脱字、主述関係の一致、接続詞の適否、史料引用の正確さなどは必ずチェックするようにしましょう。



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