人の心は通常、意識と無意識という二つの状態を中心にして考えられがちです。しかし、その中間に存在する意識の変容した状態、つまり変性意識状態のもつ心理的な作用も重要です。これは、例えば瞑想、熱中、催眠、アルコールによる酩酊、幻覚剤、恋愛感情、白昼夢、感覚遮断、リラックスなど様々な体験において現れる意識状態です。
これらの内にある体験には、日常の種々のストレスや葛藤を解消する臨床的な作用があります。また、別のものには、真に高度の健康、成熟、充実をめざして自己実現をしてゆくときの生命力が存在し、人間形成の過程に大きな影響を及ぼします。
本研究では、このような体験を分析、検討することで変性意識状態の心理的構造を明らかにし、その体験の持つ現象学的意義について考察します。
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