JASRAC寄附講座 コンテンツ産業論2 コンテンツビジネスの現在と未来


1月8日

木津川 計 「音楽感性の二分(中高年と若者)はなぜ起こってきたのか −歌とメロディと地方文化−」

1年間の講義の最後を飾ったのは立命館大学産業社会学部の木津川教授。講義ではまず大阪・京都・神戸の3都市の違いを検討するところから始まった。木津川教授は「京都を例えるなら『はひふへほ』。やわらかくてまろやかな感じ。神戸は『パピプペポ』。いきいきとはずんで心地いい。対して大阪は『ばびぶべぼ』。どうしても汚いイメージがつきまとう」と3都市の特徴を表現した。

続いて木津川教授は地方・地域の文化と地域語(方言)の関係について語った。「東京弁は勇壮でぶっきらぼう、硬い、明晰、歯切れがよい。大阪は地方の人を受け入れるよう、あいまいでやさしい。鈍重、間が抜けてしまりがない」と語り、東京と大阪の文化の違いが言葉の違いとなって表れていることを指摘。例えば啖呵を切るにも東京と大阪では全く違うことを歌舞伎の「助六」と「桂春団治」のワンシーンを演じながら説明した。また、文学においても「地方文学は地域語で描かれていてこそ地方文学である」と述べ、例として『長崎ぶらぶら節』の一節を紹介し、長崎弁で語られていることを確認した。また「大阪弁の川柳『命までかけた女がこれかいな』を標準語にすると、味がなくなってしまう」とも述べた。

そして講義は日本語と音楽の関わりへと展開していく。「旋律はアクセントにしたがっている」という金田一春彦氏の業績を紹介し、「英語の強弱アクセントに対し、日本語は高低アクセントの言語。日本の歌は日本語の高低アクセントをそのままメロディーととらえるのが原則」と述べた。そして、山田耕作の「赤とんぼ」や中田直喜の「雪の降る町を」などを木津川教授が歌い、日本語のアクセント通りのメロディーであることを確認した。また木津川教授は「ご当地ソングや民謡は地域語のアクセントで作曲されている」ことにも触れ、秋田音頭を教室で流して紹介した。さらに、日本語アクセントに従っているCMソングは耳になじんで入ってきやすいことを説明し、その例としてアート引越しセンターやBS1などを紹介した。その一方で、わざと日本語アクセントをはずすことで強調するやり方もあることを説明し、その例としてタケモトピアノの「ピアノ売ってチョーダイ♪」というCMなどを挙げた。

それから木津川教授の話は中高年と若者の間で音楽感性の二分がなぜ起こったのかについてへと続く。その理由を木津川教授は「ビートルズの上陸以来、若者は日本語アクセントを無視、破壊した音楽を聴くようになった。しかし、これが中高年にはなじめない」と説明した。また「昔は男性優位の時代で女は耐え忍ぶという時代だったが、今はそんな歌は1つもない。またニューミュージックには英語が頻出し、サウンド志向で歌詞にはっきりした意味がない。それに中高年はついていけない」と述べた。

最後に木津川教授は滅び行く伝統文化について、次のように語った。「伝統文化には茶道・華道などの合理的な伝統文化と、家制度などの非合理的な伝統文化がある。非合理的な伝統文化はむしろ消え行くべきだが、合理的な伝統文化は残さないといけない。そして、地域文化を守るために地域語を守ってほしい」

 

木津川計教授 写真

「関西は都市的特徴がはっきりしている」

「言語の違いが文化の違いを生む」

「地方文化は地域語と密接な関わりがある」

「伝統文化は滅びにまかせていいのか?」

「地域語を守ることは地域文学を守ること」


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