JASRAC寄附講座 コンテンツ産業論2 コンテンツビジネスの現在と未来


11月6日

五味俊和 「出版界の現況と課題」

(社)日本書籍出版協会相談役を務める五味俊和氏の講義は、まず出版業界の概要を数字で捉えることから始まった。書籍や雑誌の売り上げや出版数・額の推移などを把握し、また大手電機メーカーの販売額などを引き合いに出しながら、出版は産業規模が比較的小さいことを明らかにした。その一方で新刊の発売数は世界的に見て非常に多く、日本が出版大国であると語った。

出版界をめぐる著作権の問題について、まず再販制度について触れた。一時は再販制度を維持するかどうかで議論があったが、現在は文化・教育・学術を守るために維持するという流れになっている。だが、インターネット時代に対応し、弾力的な運用・変革が迫られており、出版業界の大きな課題となっていると語った。
 また、出版業会は図書館との関係が非常に重要であり、出版した本は必ず国会図書館に納本する義務がある。だがその一方で「図書館が無料貸し本屋になっている」と問題点を指摘した。しかし、現在では本の賃貸権を認め、著作権利者にお金が入る方向へ進んでいることを述べた。

出版業界は本に親しみを持ってもらおうと、様々な活動を行っている。ブックフェアで著者と読者が触れ合う機会を作ったり、赤ちゃんの時から本になじんでもらえるよう、生まれた時に本をプレゼントするブックサービスを行ったりしている。また4月23日は日本では「子ども読書の日」であり、スペインでは「サンジョルディの日」と言って、男性は女性にバラを、女性は男性に本をプレゼントする日であるということなどを紹介した。また「朝の10分間読書は全国の小学校1万5千校で実施されている」と読書活動の広がりについても触れた。

また五味氏は出版の自由と倫理の問題や有害図書問題についても言及。出版倫理綱領を作成するなど、業界の自主規制が進んでいることを紹介した。

最後に五味氏は「出版は変革の時代。活字メディアから電子メディアに変わり、オンデマンドパブリッシングが進んでいる。その中で、教育・学術・文化の発展のため、出版社がどういう役割を果たすか問われている。知的財産の保護、流通の変革、読書の推進を進めなければならない」と語り、出版業界への提言で締めくくった。

五味俊和氏写真

「新刊の発売は世界的に見て非常に多い。日本は出版大国」

「日本の本はきれいで丈夫で安く、工業製品としては一級品。だが風合いがなくなってきている」

「マルチメディアは「聞く」「見る」。「考える」はない。本には「考える」がある」

「本との出会いを大切にし、考えることを大切にしたい」

「読書は知的創造の源泉」


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