2015年度 音楽関連団体共同寄附講座

エンタテインメント・ビジネス産業論

第2回 4月17日  日本の伝統音楽の基礎知識

藤本 草(ふじもと・そう)先生

 公益財団法人日本伝統文化振興財団 会長

プロフィール

1950年 東京都出身。青山学院大学経営学部卒業。

1976年 日本ビクター株式会社入社。

 伝統音楽、民族音楽、クラシックを専門分野とする音楽プロデューサー。

 

現在、公益財団法人日本伝統文化振興財団会長、公益財団法人全国税理士共栄会文化財団理事、一般財団法人合唱音楽振興会理事。

東京都文化発信プロジェクト委員、歴史的音盤アーカイブ推進協議会副代表幹事、東京・邦楽コンクール審査委員長等を歴任。

 

【主な作品】

  「アジア伝統芸能の交流」(小泉文夫監修、1979年)

  「阿部桂子全集」(平野健次監修、81年)

  「米川敏子全集」(平野健次監修、83年)

  「JVCワールドサウンズ・シリーズ」(全155タイトル、85年~2000年)

  「聴流-初代越野栄松名演集」

(岸辺成雄監修、83年、文化庁芸術祭賞優秀賞受賞)

  「箏曲地歌大系」(平野健次監修、87年)

  「宮城道雄作品全集」(93年)

  「アイヌ神話集成」

(萱野茂監修、98年、毎日出版文化賞、文化庁芸術祭賞受賞)

  「キリスト教音楽の歴史」

(皆川達夫、金澤正剛監修、2001年、音楽之友社レコード・アカデミー賞受賞)

  「琉球古典音楽集成」(01年、文化庁芸術祭優秀賞受賞)

  「虚無僧尺八の世界/中村明一」(05年、文化庁芸術祭優秀賞受賞)

  「肥後の琵琶弾き 山鹿良之の世界」(06年、文化庁芸術祭優秀賞受賞)

  「信時潔作品集成」(07年、文化庁芸術祭大賞受賞)

  「人間国宝 女流義太夫竹本駒之助の世界」

(08年、文化庁芸術祭優秀賞受賞)

  「尺八の神髄 明暗対山派全集」(14年、文化庁芸術祭大賞受賞)ほか。

 

著書に、

「アーカイブのつくりかた」(共著、勉誠出版、2012年)、

「アーカイブ立国宣言(共著、ポット出版、2014)

講義概要

 伝統音楽の後継者育成やSP版レコードのアーカイブ化に取り組む公益財団法人日本伝統文化振興財団会長の藤本草氏が「日本の伝統音楽の基礎知識」と題して講義を行った。受講生世代になじみの薄い伝統音楽について、種別や問題点、今後の伝統音楽継承について解りやすく話した。

 まず、受講生からの事前質問に「伝統音楽を知らない、触れたことが無い」という声が多くあったことに触れ、現在は伝統音楽に触れる機会が無く、また、何度も聞かないとそのよさが解ってこないこと、上手な演奏家が少なくなってきていることなどが日本人の伝統音楽離れにつながっていると話した。日本の伝統音楽の中で代表的な8ジャンルの演奏をDVD映像で紹介した。伝統音楽の成り立ちについて触れた。動物の骨や声を使った原始の楽器から、江戸時代には長唄・清元などの音楽文化が町人・商家を中心に花開いた。しかし、明治以降、西洋音楽教育の開始により日本の伝統音楽の受容者が減り、若い人が間近に伝統音楽を聞くチャンスが減った。

 後継者についても、家元制度はあるものの演奏者の人数は減少している。そこで今後の日本文化の継承と発展に必要な具体策として、“日本文化”を教育カリキュラムに組み入れ、学ぶ機会の創出を提案した。日本人が海外に行ったときに「日本文化とは」という問いに答えられないのは、明治以降の西洋化教育により自国の文化教育を疎かにしてきたからである。現在のままでは、「お金にならない」伝統音楽文化は若手奏者の育成がままならず、伝統音楽は衰退する。そこで、受講生に「日本文化の教育カリキュラム化の賛否とその理由」を課題として問いかけ、講義を終えた。

 受講生からは、初めて触れた伝統音楽に感嘆する声が多く挙がり、また、藤本氏からの課題に対しても、賛成・反対それぞれの意見が多く出された。

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