2015年度 音楽関連団体共同寄附講座
エンタテインメント・ビジネス産業論
第11回 6月19日 音楽配信の今後
加藤 裕一(かとう ゆういち)先生
株式会社レコチョク 代表執行役社長
プロフィール
【略歴】
昭和35年 1月6日生
株式会社レコチョク 代表執行役社長
昭和57年 4月 日本ビクター株式会社 入社
平成14年 4月 ビクターエンタテインメント株式会社
経営企画室部長兼ネットビジネス推進室長
平成19年 6月 同社 代表取締役社長
平成22年 6月 株式会社レコチョク 代表執行役社長
講義概要
音楽配信事業の第一線を走る株式会社レコチョク代表執行役社長の加藤裕一氏が「音楽配信市場の現状と今後」と題して講義を行った。スマートフォンの登場によって大きく様変わりした音楽配信市場について詳細な解説が行われた。
講義ではまず、音楽配信市場の概要について話した。ガラパゴス携帯でデジタル市場を大きく占めていたのは着うたであったが、スマートフォンの登場により、音楽ダウンロード・配信が急伸長した。その反面違法ダウンロードも横行するようになり、音楽配信へ大きな影響を及ぼしている。近年は、ダウンロードからストリーミングが主流となりつつあり、特に定額制ストリーミングが増加している。
音楽配信は、様々なサービスが展開されており、無料・有料、ラジオ型・聞き放題型など競争が激化している。2015年度に入り定額制ストリーミングサービスが増加し、次世代の主流となりつつある。その背景には、モバイル利用者の増加によりCD購入やレンタルが減少し、無料アプリなどを利用する視聴層の増加を挙げた。
2013年に違法ダウンロードが刑罰化され、取締りが強化されたが、その全てを網羅できていない状況である。無料の音楽視聴サイトは、無名のアーティストにとって自己をアピールする場であり、視聴者は新しいアーティストとの出会いの場である。しかし無料のみに人々が傾聴してしまうと、アーティストの減少、音楽文化の衰退に繋がる。音楽にお金を払うことは、アーティストに対して対価を支払うことであると強調した。
新人アーティスト発掘のための「EGGS」プロジェクトなど、配信によるスター作りのプラットフォームは、新しい楽曲との出会いの創出や、SNSとの連携が期待できる。音楽配信は多様化し、個人が自分に合うサービスを選べる時代になったと、講義を締めくくった。
講義課題として「無料で音楽を聴けることをどう思うか」と受講生に投げかけた。受講生からは、無料で音楽を聴けることに対して歓迎する意見が多く挙がったが、合わせて「無料」であることで音楽文化の衰退に繋がることも本日の講義を通して実感し、SNSや「無料」配信との付き合い方を考える意見が多く挙げられた。
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