2015年度 音楽関連団体共同寄附講座

エンタテインメント・ビジネス産業論

第13回 7月3日 今、求められている音楽制作とは?

松武 秀樹(まつたけ・ひでき)先生

 株式会社ミュージックエアポート 代表取締役社長

 一般社団法人演奏家権利処理合同機構MPN 副理事長

 プロフィール

 1951年生まれ。1970年の大阪万博アメリカ館で、シンセサイザーとコンピュータを組み合わせて演奏されていた「スイッチド・オン・ バッハ」を聴き、新しいフィールドに大いなる興味と関心を抱く。

 20歳から冨田勲氏のアシスタントとして、当時日本には数台しかなかった“モーグ・シンセサイザー“による音楽制作のスタッフを経験。

 独立後もシンセサイザー・ミュージックの可能性を追求、モーグ・シンセサイザー・プログラマーの第1人者としてロック、ポップス、CM音楽のレコーディングに参加する。

 1978年、矢野顕子のアルバム『トキメキ』のニューヨーク・レコーディングにおいてデジタル・シーケンサーを使用。坂本龍一のソロ第1作『千のナイフ』 への参加をきっかけに、1978年~1982年にかけて、サウンド・プログラマーとしてYMO作品に参加し、数々の伝説的なレコーディングを経験。

 また、ワールド・ツアーを含めたYMOライブにも帯同。

 通称”タンス・シンセ”と呼ばれる巨大シンセを操りながら世界に大きな衝撃を与え、「YMO第4のメンバー」と称される。

 1981年には自身のユニットであるLOGIC SYSTEMを結成し、現在までに15枚のアルバムを発表し、その内の2枚は世界8ヶ国でリリースされ、各地に熱狂的なファンを生み出した。

 2011年に入り、再びLOGIC SYSTEMの活動が活発化。

 DJ HARVEYを筆頭に豪華リミキサー陣が参加したEPシリーズ第1弾『RMXROGIX』のリリースに合わせて、エレクトロニック・ミュージックにフォーカスを当てた新レーベル<MOTION±(モーション・プラス/マイナス)>を始動させる。

 5月の“FREAKS MUSIC FESTIVAL”、6月にUNITで行われたライブ・イベント“SPECTACLE”では会場を大いに沸かせ、アナログ・シンセのブッ太いサウンドでオーディエンスの体を見事に揺らし続けた。

 講義概要

 シンセサイザープログラマーとして第一線を走る株式会社ミュージックエアポート代表取締役社長の松武秀樹氏が、「今、求められる音楽制作とは?」と題して講義を行った。実演家の権利を解説した後、シンセサイザーの実演が行われ、受講生にとっては音楽制作の現場を垣間見る機会となった。

 講義ではまず、実演家の権利について説明された。音楽ビジネスにおいては、著作者の権利「著作権」と実演家の権利「著作隣接権」がある。両者は混同しがちであるが、実演家は著作物を独創的に表現する者であり、ミュージシャンを始め役者、放送局などが該当する。実演家には、著作隣接権のほか、氏名表示権・同一性保持権や実演の録音・放送・送信についての権利も有しており、特にインターネットを介した送信可能化権については、今後の進化が重要なポイントとなる。著作権法内には実演家の権利が明記されており、これを理解することで音楽ビジネスが円滑に進む。音楽ビジネスを行う上では権利を守ることが重要ではあるが、契約によってビジネスが進むこともあると強調した。

 講義後半では、現在の音楽制作の現場が再現され、氏家克典氏(シンセサイザー奏者)も登壇の下、シンセサイザーの実演が行われた。松武氏は「楽器は道具であり、使い方次第で個性を表すことが出来る」と話し、シンセサイザーも準備されている音に手を加えることによって個性が表現できると述べた。氏家氏がリズム・音色に手を加えながらシンセサイザーについて解説した後、松武氏と氏家氏の合同演奏が行われ、ボーカロイドを使用した楽曲に即興で演奏が加えられた。

 最後に近未来の音楽ビジネスとして、音楽を聴く環境に合わせたサービスの提供や高品質な音の提供、実演家育成のための新たな法改正の必要性を挙げ、講義を終えた。

 講義課題として「今後の日本における音楽文化発展のために必要なものは」を提示した。受講生からは、海外進出の必要性やアーティストの育成のほか、音楽を聴く側の育成として実演に触れる機会の創出が挙げられた。

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