2015年度 音楽関連団体共同寄附講座

エンタテインメント・ビジネス産業論

第3回 10月16日

アニメーション・プロデュースの全体像と

企画・マーケティングの重要性

大澤信博(おおさわ・のぶひろ)先生

  株式会社EGG FIRM 代表取締役

プロデューサー

 プロフィール

1964年生まれ。長野県出身。

早稲田大学第一文学部卒業。

株式会社東北新社を退社後、アニメーションの企画・プロデュースを主とする株式会社ジェンコ執行役員 第一プロデュース部部長となる。

TVアニメを中心に企画立案から作品の資金調達、制作工程管理、ビジネス展開まで数多くのアニメーションのプロデュースを手がける。またプロデューサー講座など講演なども行う。

2015年3月、株式会社EGG FIRM を設立、代表取締役就任。

 

【主なプロデュース作品歴】

1988年 『機動警察パトレイバー』 アシスタントプロデューサー

1999年 「スーパードール★リカちゃん」 プロデューサー

2002年 『あずまんが大王』 プロデューサー

2005年 『ハチミツとクローバー』 プロデューサー

2006年 『ゼロの使い魔』 プロデューサー

2007年 『のだめカンタービレ』 プロデューサー

2008年 『とらドラ!』 企画

2012年 『ソードアート・オンライン』 チーフ・プロデューサー

2013年 『きんいろモザイク』 チーフ・プロデューサー

2015年 『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』

プロデューサー

2015年 『GATE  自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』 プロデューサー

 

 講義概要

 数多くのアニメのプロデュースに携わってきた株式会社EGG FIRMの大澤信博氏が「アニメーション・プロデュースの全体像と企画・マーケティングの重要性」と題して講義を行った。アニメ製作の過程とその根幹となる企画・立案について詳細にお話しいただいた。

 講義ではまず、アニメーション・プロデュースの全体像を示し、プロデューサーは制作現場と出資者、双方のビジネス展開を調整する業務であると話した。アニメーションは制作期間が1年~1年半かかるため、まず企画立案が重要となる。企画立案のための情報収集や市場調査によって作品の人気度合いや時流を掴む。大澤氏は経験の中から様々な企画が社内エントリーされるが、実際に成立するのは全体の1割しかないと話した。

 アニメ企画書作成の実践としては、コンテンツプラン・メディアプラン・ビジネスプランが重要である。企画書の具体例も提示され、企画・立案はプロデューサー業務の20%ほどを占めるが、実際には終始企画について考えを巡らせていると述べた。

 アニメのプロデュースには、スキル・経験・センス・人脈が必要である。しかし、これらを持ち合わせていない新人や若手でもコンテンツの企画は可能であり、講義課題として「コンテンツの企画段階において重要だと思うこと」を提示した。受講生からは熱意、消費者のニーズの把握やニーズに応えることなどの意見が挙がったが、大澤氏は自身の考えとして、欲望を挙げた。「~したい」「~を見たい」などの自分とユーザーサイドの欲望を満たすことが、ヒット・コンテンツの制作に繋がると言及した。ヒットとは、人々の様々な欲望が詰まっている。この発露を燃やして世に出てほしいと受講生を激励し、講義を終えた。

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