2015年度 音楽関連団体共同寄附講座

エンタテインメント・ビジネス産業論

第9回 11月27日 地方メディアとしてのラジオ

片岡尚(かたおか・ひさし)先生

  株式会社エフエムナックファイブ

 常務取締役 放送部長

 プロフィール

1955年生まれ、60歳。

 埼玉新聞記者を経て、1989年2月、報道担当として開局直後のエフエム埼玉(現・FM NACK5)に入社。

 編成制作部で国内のFM局では初めてとなるプロ野球「西武ライオンズ戦中継」の立ち上げに携わる。同年4月のプロ野球開幕以来、毎週土日の中継以外にもチームに同行し、月~金曜日に放送していたライオンズ情報番組の制作にあたる。翌90年からは一般の音楽番組などの制作を担当。

 97年10月、編成部長兼報道情報センター部長に就任し、番組編成に関わるすべての部門の現場統括とニュース、情報番組、スポーツ取材の統括や放送権交渉などを担当。さらに広報窓口としてNACK5のPRにつながる題材の企画立案なども担当した。

 2006年7月、営業部長に異動となり、約4年間、番組などのセールスを担当。

 2010年6月、取締役放送本部長に就任。さらに2011年6月からは子会社の音楽出版社パワーミュージックの代表取締役社長も兼務している。

 2014年6月~現在、常務取締役放送本部長。

 講義概要

 埼玉県を基幹としたラジオ局FM NACK5を運営する株式会社エフエムナックファイブ常務取締役の片岡尚氏が、「地方メディアとしてのラジオ」と題して講義を行った。地方ラジオであり、首都圏に広く放送されるFM放送として、自局の取り組みをお話しいただいた。

 講義ではまず、ラジオの現状と課題を話し、ラジオ局のネットワークグループを紹介した。また、近年はパソコンやスマートホンを通じて全国のラジオが楽しめるIPサイマルラジオの利用者拡大、AMラジオ局が難聴対策としてFM補完放送を開始するなど、新たなラジオ聴取方法の一翼を担っている。

 地方メディアとしてのラジオについてFM NACK5を例に話した。昭和63年に開局したFM NACK5は、当時のFM放送の主流であった『Less talk  More music』の風潮に反し、面白く楽しいラジオ放送を目指した。他局の洋楽中心の楽曲オンエアに対しJ-POPを中心に置き、民放FM局初のプロ野球中継や小劇団の俳優・ものまねタレントをパーソナリティーに起用するなど他局との差別化を図った。埼玉県に軸足を置いた番組編成は現在も変わらず、“FM界のコンビニ”を目指し、首都圏エリアに根ざして多様なリスナーの趣向に応える編成を行っている。

 ラジオとは地域社会の欲求に応じリスナーと共に「今」を共有するメディアである。メディアが多様化する中で、身近な情報ツールとして良質な番組の提供を行うことが行き残りの鍵となる。インターネットとの親和性も高く、あらゆる場所で聞けるラジオを楽しんでほしいと話し講義を終えた。

 講義課題として「今後のラジオに何を望みますか」を上げた。受講生からは、受信環境や番組編成など聴きやすさに関する意見が多くあげられた。また、ラジオを普段全く聴かないという受講生も多くいたが、片岡氏の講義を通じてラジオの魅力を感じたという声が多く上がった。

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