2015年度 音楽関連団体共同寄附講座

エンタテインメント・ビジネス産業論

  • 第1回   10月2日   三枝 照夫 先生    開講オリエンテーション

    三枝 照夫(さえぐさ・てるお)先生

     

      株式会社フリーダム 代表取締役

      立命館大学 客員教授

     プロフィール

     1951年4月 神奈川県横浜市生まれ

     1975年3月 早稲田大学商学部卒業

     1975年4月 日本ビクター株式会社入社 後 ビクター音楽産業株式会社出向

                  (現在は各々、「JVCケンウッド」「ビクターエンタテインメント」に改称)

     1999年6月 取締役に就任 第1制作宣伝本部長

     2002年6月 代表取締役に就任 専務取締役に就任

     2004年1月 代表取締役専務取締役 兼 JVCエンタテインメント・ネットワークス株式会社CEO(代表取締役)

     2007年6月 取締役会長 就任

     2008年4月 取締役会長 担当 邦楽制作統括

     2009年1月 取締役会長 兼 ビクターミュージックパブリッシング株式会社 代表取締役社長

     2010年1月 アドバイザー(相談役)就任

     2010年7月 株式会社フリーダム設立 代表取締役就任~現在に至る

     

    担当したアーチスト

     松本伊代、小泉今日子、荻野目洋子、酒井法子、SMAP、Kiroro、19、広瀬香美、 LOVE PSYCHEDELICO他、現在は石井聖子

     講義概要

     開講オリエンテーションは、立命館大学産業社会学部の竹内謙彰副学部長の挨拶から始まり、外部より著名な講師が来校する授業であるので、集中して臨んでほしいと奨めた。続いて、立命館大学産業社会学部の粟谷佳司准教授より、受講に当たっての注意事項などガイダンスが行われた。

     本講座のコーディネーターである三枝照夫氏が登壇し、後期講座ではエンタテインメント・ビジネスの様々な分野の方が 来校し、講義を行う。三枝氏はレコード会社の中で様々なアーティストを担当し共に喜びを分かち合ってきた経験から、講義を通じ受講生がエンタテインメント・ビジネスに興味を持ち、将来この業界に来てくれることを、望むと話された。

     10月は、まず講座の導入として、アニメ・漫画に関わる講師が来校する。11月以降は、プロダクション、映画、ラジオ、伝統音楽など多彩な分野の方が講義を行う。音楽産業興隆に必要な“スーパースター”についても話は及び、多岐にわたるエンタテインメント・ビジネスの講義によって、多角的に産業構造について学ぶ。

     講義課題として、この講義を受講するにあたり何に興味を持ち、何をしたいか。講義内で関心のある点について記入するよう促した。受講生からは、アニメ・マンガの裏側やプロダクションの役割について声が上がったほか、カラオケ業界の今後や著作権についてなど、多様な関心の声が上げられた。

  • 第2回   10月9日     佐々木 史朗 先生     アニメ音楽のプロデュースとビジネス展開

    佐々木 史朗 先生

     

      株式会社フライングドッグ 代表取締役社長

     

     プロフィール

    株式会社フライングドッグ 代表取締役社長

     

    1982年 ビクター音楽産業株式会社(現 ビクターエンタテインメント) 入社

        3年の大阪営業所勤務を経てアニメ音楽制作ディレクターとなる。

     

    以降「AKIRA」「トップをねらえ!」「マクロスプラス」「マクロス7」「逮捕しちゃうぞ」「MEMORIES」「勇者シリーズ」「天空のエスカフローネ」「カウボーイビバップ」「X」「カードキャプターさくら」「ラーゼフォン」「人狼JIN-ROH」「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」「創聖のアクエリオン」「マクロスF」「Panty & Stocking with Garterbelt」等の音楽プロデュースを担当。

     

    2009年1月 株式会社フライングドッグ 設立

     講義概要

     数多くのアニメ作品の音楽制作を手がける株式会社フライングドッグ代表取締役社長の佐々木史朗氏が「アニメ音楽のプロデュースとビジネス展開」と題し、講義を行った。テレビアニメに使用される音楽がどのように作られるのか、アニメ制作の裏側を垣間見る講義となった。

     講義ではまず、ターゲットとする視聴者別にテレビアニメがどのような狙いを持って製作されるかを解説し、OP曲・ED曲もアニメ視聴者を意識した楽曲制作が行われると話した。子ども向けアニメや深夜放送枠のアニメに多いオーダーメイドによる楽曲は、番組ありきで制作されるため、固有名詞を歌詞に入れるなどアニメの顔となるような楽曲が制作される。タイアップによる楽曲は一般向けアニメに多く、放映時期に合わせJ-POPのアーティストを中心として曲が決められる。音楽制作には、番組内で流れるBGMや挿入歌も含まれる。BGMは1話(30分)内で15~20曲流れ、主人公やシーンに合わせて複数パターンが用意されており、表情や雰囲気の機微による間の補強や場面に応じた感情を表す役割がある。

     また、ライブの興隆に伴い、アニメに出演する声優のコンサートやバーチャル・アイドルのライブが行われるようになり、新しい形のライブに可能性を見出しつつある。

     ヒットはクレバーさとクレイジーさをバランスよく兼ね備えることで生まれる。制作の現場においては“熱(熱さ)を持っている人”を希望すると話した。アニメは今やワールド・ワイドであり、長期間商売ができる仕事であると言及し、講義を終えた。

     講義課題として「現在、アニメだけに係らず、CDや配信という形で音楽をユーザーが有料で購入するというビジネスが成り立っていますが、これは将来的にどうなると考えますか?あなた個人としては、どうなって欲しいと思いますか?遠慮せずに忌憚のない意見を書いて下さい。」と提示した。受講生からは、配信への移行やCD再興に対する期待など様々な意見が上げられた。

  • 第3回   10月16日   大澤 信博 先生      アニメーション・プロデュースの全体像と

    企画・マーケティングの重要性

    大澤 信博 先生

     

      株式会社EGG FIRM 代表取締役

     

     プロフィール

    1964年生まれ。長野県出身。

    早稲田大学第一文学部卒業。

    株式会社東北新社を退社後、アニメーションの企画・プロデュースを主とする株式会社ジェンコ執行役員 第一プロデュース部部長となる。

    TVアニメを中心に企画立案から作品の資金調達、制作工程管理、ビジネス展開まで数多くのアニメーションのプロデュースを手がける。

    またプロデューサー講座など講演なども行う。

    2015年3月、株式会社EGG FIRM を設立、代表取締役就任。

    【主なプロデュース作品歴】

    1988年 『機動警察パトレイバー』 アシスタントプロデューサー

    1999年 「スーパードール★リカちゃん」 プロデューサー

    2002年 『あずまんが大王』 プロデューサー

    2005年 『ハチミツとクローバー』 プロデューサー

    2006年 『ゼロの使い魔』 プロデューサー

    2007年 『のだめカンタービレ』 プロデューサー

    2008年 『とらドラ!』 企画

    2012年 『ソードアート・オンライン』 チーフ・プロデューサー

    2013年 『きんいろモザイク』 チーフ・プロデューサー

    2015年 『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』プロデューサー

    2015年 『GATE  自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』 プロデューサー

     講義概要

     数多くのアニメのプロデュースに携わってきた株式会社EGG FIRMの大澤信博氏が「アニメーション・プロデュースの全体像と企画・マーケティングの重要性」と題して講義を行った。アニメ製作の過程とその根幹となる企画・立案について詳細にお話しいただいた。

     講義ではまず、アニメーション・プロデュースの全体像を示し、プロデューサーは制作現場と出資者、双方のビジネス展開を調整する業務であると話した。アニメーションは制作期間が1年~1年半かかるため、まず企画立案が重要となる。企画立案のための情報収集や市場調査によって作品の人気度合いや時流を掴む。大澤氏は経験の中から様々な企画が社内エントリーされるが、実際に成立するのは全体の1割しかないと話した。

     アニメ企画書作成の実践としては、コンテンツプラン・メディアプラン・ビジネスプランが重要である。企画書の具体例も提示され、企画・立案はプロデューサー業務の20%ほどを占めるが、実際には終始企画について考えを巡らせていると述べた。

     アニメのプロデュースには、スキル・経験・センス・人脈が必要である。しかし、これらを持ち合わせていない新人や若手でもコンテンツの企画は可能であり、講義課題として「コンテンツの企画段階において重要だと思うこと」を提示した。受講生からは熱意、消費者のニーズの把握やニーズに応えることなどの意見が挙がったが、大澤氏は自身の考えとして、欲望を挙げた。「~したい」「~を見たい」などの自分とユーザーサイドの欲望を満たすことが、ヒット・コンテンツの制作に繋がると言及した。ヒットとは、人々の様々な欲望が詰まっている。この発露を燃やして世に出てほしいと受講生を激励し、講義を終えた。

  • 第4回     10月23日   石塚 真一 先生      漫画の核心

    石塚 真一 先生

     

      漫画家

     

     プロフィール

    1971年生まれ。

    茨城県出身。中学生時代はブラスバンド部に所属し、大学生のときはバンドをやっていた。

    22歳から27歳まで米国に留学し、ロッククライミングや気象について学び、帰国後、会社員を経て28歳のときにマンガ家に転身。

     講義概要

     山岳救助を題材とした『岳』でデビューし、現在はジャズに熱中する若者を描く『BLUE GIANT』を連載する漫画家の石塚真一氏が、「漫画の核心」と題して講義を行った。自己の経験や忘れられない出来事からアイディアの根源を示し、漫画の実情を知る機会となった。

     講義ではまず、受講生から多く質問が上がっていた漫画のアイディアについて触れ、アメリカ留学中の経験の中で、忘れられない出来事について話した。アイディアとは経験と記憶の断片をつなげたものであり、外に出て経験したことが自分の漫画に繋がっている。20代は吸収力がスポンジのようで、新しい経験によって自身が変化する時期である。インターネット上やYoutubeでは感じることのできない匂いなど、一人旅や海外渡航など外に出て経験することの重要性を説いた。

     なぜ漫画家になったのか、という問いには、明確な理由は無いと述べつつも漫画をきっかけとして何かを始めたり、励まされた人がいることを示し、漫画は「実」な要素は無いが、気持ちで人に影響できるため、続けてゆきたいと語った。また、漫画家として業界が下降傾向にあっても、今も昔も変らない部分を描いてゆきたいという気持ちや仕事として漫画を描くことなど、様々な疑問点に答えていただいた。

     講義課題として「読んだほうがいいと思う漫画や小説、映画」と「こんな漫画を描いてほしい・読んでみたい」の2点を上げ講義を終えた。受講生からは、流行から名作まで、幅広いタイトルの漫画や・小説・映画があがった。また、読んでみたい内容についても、笑えるもの、泣けるもの、スポーツや日常生活を扱った内容など、多様な意見が上がった。

  • 第5回   10月30日   白井 勝也 先生    コンテンツのマルチ展開

    白井 勝也先生

     

      株式会社小学館 最高顧問

     プロフィール

    【生年月日】  1942年 生まれ

    【略歴】     昭和43年 3月 立教大学 文学部 卒業

           昭和43年 3月 株式会社 小学館 入社

                 昭和56年 5月 ビッグコミックスピリッツ 創刊編集長

                 平成06年 5月 株式会社 小学館 取締役 就任

                 平成11年 5月     同    社     常務取締役 就任

                 平成13年 5月     同    社     専務取締役 就任

                 平成21年 5月     同    社     取締役副社長 就任

                 平成26年 5月     同    社   最高顧問 就任

           現在に至る

     講義概要

     編集者として数々の作品に関わり、コンテンツの権利ビジネスに精通する株式会社小学館最高顧問の白井勝也氏が、「コンテンツのマルチ展開」と題して講義を行った。コンテンツの展開について、著作権を中心に多角的にお話しいただいた。

     講義ではまず、コンテンツ産業の現状が話された。コミックや出版物など、一つのヒット作品に対して、テレビ(アニメ・ドラマ)・映画・音楽・キャラクター商品など多角的なコンテンツが展開される。デジタルコンテンツの増加により、パッケージ品が落ち込み、海賊版も横行するようになり、出版産業は縮小している。縮小を止める施策として、海賊版や違法コンテンツの取締り、コミックの海外展開とスマホなどのデジタル対応、クロスメディアの促進を上げた。

     海賊版が著作者・出版社の権利侵害となるのはもちろんだが、コミックやアニメの海外展開においても、その国の文化や宗教に合わせて内容が改変されることもある。その際にも、著作者の許諾は必須である。権利を持つだけでなく、その権利を守り、ヒット商品を長く続けることが大切だと説いた。

     最後に今後は著作権の保護だけでなく、継承も課題となる。現在は、全ての人にビジネスチャンスがある時代である。読者が著作者に変ることもあり、その差はわずかである。インターネットのみに頼りきらず、本を読み、自分で考え、自分の言葉で表現できるよう、毎日をワクワクしながら取り組んでほしいと話し、講義を終えた。

     また、講義課題として「これから読みたい本、コミック」を上げた。受講生からは、具体的なタイトルのほか、伝記や自叙伝、感動できる本など、様々な内容が上がった。また、大学生になり本を読まなくなったという受講生もおり、白井氏の講義を契機に本を読みたいという声も多く上げられた。

  • 第6回   11月6日     堀口 瑞予 先生      実践! すぐに役立つ

    ビジネスコミュニケーション・スキル

    堀口 瑞予 先生

     

      COMMUNICATIONDesign 代表

     プロフィール

    1987年 日本航空株式会社に入社

    客室乗務員として約20年間に渡り国際線を乗務。

    10万人近い旅客への接客とおよそ30か国での滞在を経験する。

     

     客室乗務員訓練部教官時代には、主にヨーロッパ、アジア基地の新人外国人乗務員の主任教官として、国際的な社員教育・指導に携わり、ヨーロッパ9カ国から集まった新人クラス担当では、最高の成績を残したクラスとして評価された実績を持つ。

     邦人契約社員の指導・育成部署、タイ人乗務員のサービス・インストラクターとしてグループ会社への出向等を経験し、在職期間のほとんどを「サービス」と「安全」の指導・育成分野で活躍する。

     退職後は国際線で培った経験を活かし、世界に通用する外見の磨き方、プレゼンテーション力、コミュニケーションスキルを向上させる総合的なイメージアップ・コンサルティングや講座を提供する一方、ビジネスマナーや、最先端のコミュニケーションスキルを取り入れた接客、販売、営業力向上を目的とした企業研修を全国で展開している。

     その実績は、都市銀行、生命保険、ハウジング、小売業、鉄鋼業、病院、訪問看護事業、医薬品関連、教職員教育関連、飲食業、ホテル・旅館業、空港内物販事業、大型商業施設関連事業など、多種の事業、業界においてリーダーから新人育成まで幅広い研修実績となっている。

    また、日本コミュニケーション能力認定協会本部トレーナーとして、毎月東京・名古屋・大阪・福岡で開催されている資格認定講座「コミュニケーション能力2級認定講座」を担当し、学生から経営者まで様々な受講生のコミュニケーション能力向上をサポートしている。

     なお、2015年4月より、大学における生涯学習教育ビジネスカリキュラムの講座を新たに担当、キャリアアップ、起業、転職を目指す女性達を支援している。

     

     今秋からは、学生向け就活のためのビジネスマナーセミナーも担当する。

     講義概要

     長年航空会社の社員教育に携わり、現在はコミュニケーション・トレーナーとしても活躍するCOMMUNICATION Design代表の堀口瑞予氏が「実践!すぐに役立つ ビジネスコミュニケーション・スキル」と題して講義を行った。社会の中で基本となるコミュニケーションについて、実践も交えてお話しいただいた。

     講義ではまず、コミュニケーションは意思疎通と定義した。社会人になると価値観の異なる人とも共存し信頼関係を構築する必要がある。その際必要となるコミュニケーションスキルの実践として、アクティブ・リスニングを上げた。会話の中では、言語部分だけでなく非言語(表情、目線、態度など)部分が重要な要素となる。そのため、目線やあいづち・うなずきなど、自分が相手の話を傾聴していることを、態度で表すことについて説いた。また、相手と似た表情やしぐさをするラポール・スキル、相手の言葉を繰り返すバックトラッキング、語頭を否定から入らない「Yes、and~」方式も紹介した。人は自分の話を「聴いて」くれる人に信頼を寄せる。相手との距離を縮め、信頼関係の構築のためには、積極的な傾聴を行うことが重要である。

     言葉と行動のプロファイルであるLABプロファイルも紹介し、日常のコミュニケーションとビジネスコミュニケーションは同じものである。今から実践することで、社会に出たときに一歩抜きん出て、社会に貢献できると話した。

     講義課題として「今の日本人に一番必要なコミュニケーション能力は何だと思いますか。その理由は。その能力を得たら、どのような成果が得られますか、または何が改善されますか。」を提示した。受講生からは、傾聴や自分の気持ちを相手に示すなどの意見と共に、その結果として国際社会における日本の立場の向上や少数意見の汲み上げを上げた。また、講義を受け、今後の生活や就職活動に活かしたい、友人の聞く態度に不快な思いをした理由がわかったなどの意見が上がった。

  • 第7回   11月13日   堀 義貴 先生     プロダクションの事業展開

    堀 義貴 先生

     

      株式会社ホリプロ 代表取締役社長

     

     プロフィール

    1966年6月20日生まれ、東京都出身。

    1989年成蹊大学法学部政治学科卒業後、株式会社ニッポン放送入社。編成部企画担当として数々のラジオドラマ・CM・イベントをプロデュース。

    1993年株式会社ホリプロ入社。テレビ番組・映画・音楽の制作、宣伝、マネージメント等様々な部門を担当し、2002年代表取締役社長就任。

    2013年より一般社団法人日本音楽事業者協会 会長も務める。

     講義概要

     日本を代表する芸能プロダクションである株式会社ホリプロ代表取締役社長の堀義貴氏が「プロダクションの事業展開」と題して講義を行った。人を財とする芸能プロダクションの役割と事業展開について、エンタテインメントの未来も踏まえ述べた。

     講義ではまず、日米のプロダクションの違いを紹介し、日本のプロダクションの役割を話した。プロダクションとは、魅力的な人間を発掘し、魅力を引き出し、魅力を伝え、利益を生み出し、複製や代替えがきかない人間を商品とする究極の限界産業である。

     プロダクションの未来として、今まで内地生産・内地消費だった日本のエンタテインメントを、海外に売り出す必要性を説いた。クール・ジャパンとして、アニメや日本食が世界に紹介される中、双方善しの日本的ビジネスでは世界の国々と戦うことは出来ない。グローバルでエンタテインメント産業を行うには、強気で利益を生む方法に日本のビジネスをシフトする必要がある。また、現在、東南アジアでは母国語以外に英語で会話できる国が増えている。人口増加と相まった、東南アジアのマーケットに活路を見出すには、英語でビジネスが出来る必要がある。

     老朽化などで国内の劇場が減少する一方、東南アジアでは劇場が増加しており、海外でのミュージカル公演にも力を入れている。日本で製作したミュージカルを海外で継続して公演することで、日本製作の作品の上演だけでなく、日本の作品を現地のスタッフ・キャストによって製作し上演することにも繋がっている。

     最後に、今後はビジネスにおける英語のやり取りが必須となってくる。英語に加えてもう一ヶ国語を話せることで、将来の働き方が変ってくると話し、講義を終えた。

     講義課題として「世界マーケットの中で、あなたはどう働きますか」を問うた。受講生からは、将来の働き方や就職希望の業種を見据えた働き方のほか、就職先でどう活躍するかなど具体的な意見も多く挙がった。

  • 第8回   11月20日   二村 恒元 先生    著作権アラカルト

    二村 恒元  先生

     

      元JVCエンタテインメント株式会社 常務取締役

     プロフィール

    1969年 3月 中央大学経済学部卒業

    1969年 4月 ニッポン放送系株式会社パシフィック音楽出版 入社

    1985年     株式会社パシフィック音楽出版とフジテレビ系株式会社フジ音楽出版 合併

                     株式会社フジパシフィック音楽出版 業務部長 制作副本部長 兼 制作部長 歴任

    1995年      BMGビクター株式会社 入社  邦楽本部長第二制作宣伝部長

    1997年      株式会社BMGジャパン RCAアリオラ 常務

    1999年      ビクターエンタテインメント株式会社 入社  第一制作宣伝本部 部長

    2004年      JVCエンタテインメント株式会社 常務取締役

           一般社団法人音楽出版社協会(MPA)理事 就任

    2005年    定年退職

     

    以後、フリーのプロデューサーとして活動

     講義概要

     元JVCエンタテインメント株式会社常務取締役の二村恒元氏が「著作権アラカルト」と題し、講義を行った。音楽著作権と音楽出版社・JASRACの関係と、著作隣接権について、音楽著作権侵害の事例も踏まえ、お話しいただいた。

     講義ではまず、音楽著作権と音楽出版社、JASRACの関係について話した。作詞家・作曲家を始めとする著作者から著作権が音楽出版社に譲渡されると、音楽出版社は著作権者として音楽著作権の管理を行う。音楽出版社はJASRACとじょうと信託契約を締結し、JASRACは音楽出版社に替わって音楽使用の許諾や使用料徴収を行う。著作物の使用料は録音権・演奏権など多岐に渡り、使用目的ごとにその料金が定められている。

     著作隣接権とは、歌手・ミュージシャン・レコード会社・放送局など、著作物を公衆に伝達する者に与えられる権利である。その中で発生する使用料の中に原盤使用料があり、レコード会社との直接契約により、使用料が支払われる。

     著作権侵害の事例について争点となった実際の曲を交えながら紹介した。日本でも著作権侵害における裁判の事例はあるが、実際の音と文字が乖離していることもある。また、盗作や訴訟について、明らかなものを除けば感性の問題の部分もあり、権利者間で和解・妥協している面もある。しかし著作者が絡むものについては、はっきりとしなければいけないこともあると強調した。

     講義課題として「著作権と著作隣接権の違い」を提示した。受講生からは二村氏の講義を基に著作権と著作隣接権の違いについてそれぞれ記入がされた。また、著作権についてほとんど知らなかったという受講生も多く、二村氏の講義を通じて、著作権とは何か具体的に知ることが出来たという意見が多く挙がった。

  • 第9回   11月27日   片岡 尚 先生         地方メディアとしてのラジオ

    片岡 尚 先生

     

      株式会社エフエムナックファイブ 常務取締役 放送本部長

     

     プロフィール

    1955年生まれ、60歳。

     埼玉新聞記者を経て、1989年2月、報道担当として開局直後のエフエム埼玉(現・FM NACK5)に入社。

     編成制作部で国内のFM局では初めてとなるプロ野球「西武ライオンズ戦中継」の立ち上げに携わる。同年4月のプロ野球開幕以来、毎週土日の中継以外にもチームに同行し、月~金曜日に放送していたライオンズ情報番組の制作にあたる。翌90年からは一般の音楽番組などの制作を担当。

     97年10月、編成部長兼報道情報センター部長に就任し、番組編成に関わるすべての部門の現場統括とニュース、情報番組、スポーツ取材の統括や放送権交渉などを担当。さらに広報窓口としてNACK5のPRにつながる題材の企画立案なども担当した。

     2006年7月、営業部長に異動となり、約4年間、番組などのセールスを担当。

     2010年6月、取締役放送本部長に就任。さらに2011年6月からは子会社の音楽出版社パワーミュージックの代表取締役社長も兼務している。

     2014年6月~現在、常務取締役放送本部長。

     講義概要

     埼玉県を基幹としたラジオ局FM NACK5を運営する株式会社エフエムナックファイブ常務取締役の片岡尚氏が、「地方メディアとしてのラジオ」と題して講義を行った。地方ラジオであり、首都圏に広く放送されるFM放送として、自局の取り組みをお話しいただいた。

     講義ではまず、ラジオの現状と課題を話し、ラジオ局のネットワークグループを紹介した。また、近年はパソコンやスマートホンを通じて全国のラジオが楽しめるIPサイマルラジオの利用者拡大、AMラジオ局が難聴対策としてFM補完放送を開始するなど、新たなラジオ聴衆方法の一翼を担っている。

     地方メディアとしてのラジオについてFM NACK5を例に話した。昭和63年に開局したFM NACK5は、当時のFM放送の主流であった『Less talk  More music』の風潮に反し、面白く楽しいラジオ放送を目指した。他局の洋楽中心の楽曲オンエアに対しJ-POPを中心に置き、民放FM局初のプロ野球中継や小劇団の俳優・ものまねタレントをパーソナリティーに起用するなど他局との差別化を図った。埼玉県に軸足を置いた番組編成は現在も変わらず、“FM界のコンビニ”を目指し、首都圏エリアに根ざして多様なリスナーの趣向に応える編成を行っている。

     ラジオとは地域社会の欲求に応じリスナーと共に「今」を共有するメディアである。メディアが多様化する中で、身近な情報ツールとして良質な番組の提供を行うことが生き残りの鍵となる。インターネットとの親和性も高く、あらゆる場所で聴けるラジオを楽しんでほしいと話し講義を終えた。

     講義課題として「今後のラジオに何を望みますか」を上げた。受講生からは、受信環境や番組編成など聴きやすさに関する意見が多くあげられた。また、ラジオを普段全く聴かないという受講生も多くいたが、片岡氏の講義を通じてラジオの魅力を感じたという声が多く上がった。

  • 第10回   12月4日     野辺 優子 先生      映画と音楽 ~さまざまな角度から

    野辺 優子 先生

     

      合資会社エスポルト コーディネーター(映画)

     プロフィール

     講義概要

     東京外国語大学大学院、フランス国立東洋言語文化学院(INALCO)でベトナムを中心としたアジア映画を研究。在学中はフランス、イタリアのサッカーやラグビー等のスポーツメディアの通訳や翻訳も経験。映画プロデュースの大学院助手を経て、2008年より公益財団法人ユニジャパンで東京国際映画祭の運営を経て、国際事業部人材育成グループで、経済産業省の若手映像クリエイターの短編映像制作事業を手がける。そのうちの1本『ふたつのウーテル』(田崎恵美監督)が日本映画短編として46年ぶりに2011年カンヌ国際映画祭のコンペティションに出品された。2013年は『隕石とインポテンツ』(佐々木想監督)が再び同プロジェクトからカンヌ国際映画祭に出品、3年間で2度入選の成果を上げる。同年、日本初世界志向の短編映画を総合的にプロデュースするプロジェクト『JAPAN SHORTS』を立ち上げ、第一弾として新進気鋭の6監督の作品を新宿バルト9を始め全国6都市のシネコンで上映を実施。また、日本、アジアの短編映画の専門家として世界のプログラマーとネットワークをいかしたコーディネーターとして、海外の映画作品のキュレーションも行っている。本年のカンヌ国際映画祭短編部門出品の日本作品『八芳園』のコーディネーションを担当。現在は長編商業作品の海外映画祭コーディネーターの他、複数の短編作品のプロジェクト・プロデューサーも手がける。

     最近はベトナムの舞台芸術の調査研究も行い、昨年は国際交流基金の派遣で現地調査を担当。現在東京芸術大学大学院で博士論文の執筆中。

     コーディネーターとして様々な映画プロジェクトに携わる合資会社エスポルトの野辺優子氏が、「映画と音楽~さまざまな角度から」と題して講義を行った。映画における音楽の重要性について、実例も交え話した。

     講義ではまず、映画における音楽の役割について話した。映画には主題歌やBGMのほか、効果音など様々な音楽が使用される。映画に関する音楽は、監督や音楽ディレクターが決める以外にもタイアップや楽曲を元に映画が作られるなど多様なケースがある。

    映像が音楽によってどの程度変化するか、編集段階の音楽あり・無しの映像を見せ、解説した。映画は映像だけでなく付随する音楽で見る部分もある。映画音楽は、映画館のスピーカーから聴くことを前提に制作されており、音楽の力によって映像に迫力や心理描写を反映する。映像と同じ趣旨の音を付けると、映像の力が半減してしまうこともあり、映画祭出品など多くの人に見てもらうことを前提とした映画では、一定の映像レベルが担保されているため、音楽・音の質で評価されることも少なくない。

     また、映画ビジネスに携わる際には、音楽の権利が重視される。映画の上映やパッケージ化には、映像に関する権利とは別に音楽制作者にも権利が発生する。作品の買い付け時にも同様であるため、双方の権利をクリアにしなければならない。

     講義課題として、「映画にとって音楽は重要かどうか」を提示し、講義を終えた。受講生からは音楽によって映像の迫力や臨場感が増したなど、音楽の重要性を認識したという意見が多くあがった。

  • 第11回   12月11日   福原 徹 先生     日本の横笛 ―篠笛・能管の伝統と現在―

    福原 徹 先生

     

      邦楽囃子笛方

     プロフィール

    1961年生まれ。

    六世福原百之助(のちの四世宗家寶山左衞門・人間国宝)に入門、福原徹の名を許される。

    東京藝術大学音楽学部邦楽科卒業。

    邦楽囃子笛方として、長唄・筝曲などの演奏会、日本舞踊、歌舞伎の舞台、放送、海外公演等で古典演奏活動を続けると共に、笛を中心とした作曲に取り組む。

    2001年第1回演奏会「徹の笛」を開催、平成13年度文化庁芸術祭大賞(音楽部門)を受賞。

    2002~2003年、新作連続演奏会「徹の笛 in MUSICASA」を隔月で連続六回開催。2004年第2回、2006年第3回「徹の笛」を開催。

    2012年よりリサイタルシリーズを再開、以後毎年継続し2015年第7回「徹の笛」を開催。東京藝術大学、有明教育芸術短期大学、清泉女子大学等の非常勤講師を歴任。NHK文化センター(青山、浜松、名古屋、柏、岐阜)講師。また、東京、浜松、彦根などで指導にあたり「百笛会」を主宰。長唄協会会員、創邦21同人。

     講義概要

     歌舞伎や長唄など様々な場での伴奏だけでなく、クラシック曲の笛演奏にも積極的に取り組む邦楽囃子笛方の福原徹氏が「日本の横笛-篠笛・能管の伝統と現在-」と題して講義を行った。篠笛・能管の実演も行われ、受講生にとっては普段なじみの無い邦楽に触れる機会となった。

     講義は、篠笛による長唄「越後獅子」の実演から始まった。笛はその長さが音の調子の違いとなっており、半音刻みで作られる。西洋の楽器と違い、素材(篠竹)の音を生かす作りになっており、唄い手や他楽器の調子の違いにより何種類もの笛を使い分ける。近年は伴奏だけでなく、バンドと組んだりクラシックの演奏にも取り組み、笛で演奏する意義や新しい解釈を加えるにはどうしたらいいかを考えていると話した。

     能管についても紹介し、能で使用される楽器であるが、能の要素を多く取り入れる長唄でも使用されると述べた。篠笛同様に竹で作られるが、煤竹を使用しノドと言われる竹管を入れることや桜の皮を巻くなど製作には手間がかかる。楽譜の代わりにカタカナでメロディが書かれた「唱歌(しょうが)」によって伝承され、笛のパートだけでなく他楽器のパートも覚えることでアンサンブルが出来るようになっている。最後に能管による「獅子」の実演と、笛の三重奏である「樹々の密」を紹介した。

     講義課題として「①笛・邦楽に魅力を感じるとしたらどのような点か②笛・邦楽はこれからどのようになっていくのが望ましいか」の2題をあげ、講義を終えた。受講生からは、笛・邦楽に対する魅力として独特な音色や和・日本を感じる、笛・邦楽の今後について2020年開催の東京オリンピックを見据えたグローバル化や他ジャンルの音楽との融合などがあげられた。福原氏の講義にて初めて邦楽に触れたという受講生も多く、日本の伝統音楽を知る好機となった。

  • 第12回   12月18日   鈴木 しょう治 先生  クラブミュージックの変遷

    鈴木 しょう治 先生

     

      企画制作プロデューサー、DJ

     

     プロフィール

     講義概要

     高校2年在学中にディスコにてオーディションを受け、文化放送のアナウンサーによって研修を受けながらディスコDJのアルバイトを始める。

     その後、新宿のディスコ[Q&B]でディスコDJとしてキャリアをスタートし、[TOMORROW USA][XENON]といったディスコでDJを務めながら、ラジオのディスク・ジョッキーとしても活動を始める。

     併せて、リミックス・チーム【THE JG‘S】を結成し、音楽制作やプロデュースも手がけ、後に【SWITCH BACK】を創設。

    DJはもちろん音楽評論家としてダンス/ソウル系の作品を中心にライナー・ノーツや、音楽雑誌のレビュー記事を執筆する他に音楽制作やプロデュース等、幅広く活動中。

     

    【現在出演中の番組】

    FM大阪  「MUSIC+FRIDAY」 毎週金曜日 16:00~21:00

    FM横浜  「BEAT JAM」    毎週月曜日 深夜0:30~1:30

     ディスコDJを務めつつ、現在はラジオDJとしても活躍する鈴木しょう治氏が「クラブミュージックの変遷」と題して、講義を行った。ディスコ・クラブの変遷とダンス・ミュージック、風営法改正へと言及した。

     講義ではまず、ディスコ・クラブの変遷について話した。1960年代に次々とディスコが誕生したが、その音楽の中心は生バンドであった。1970年代に入り、ダンスフロアをライティングするなど、華やかな装飾が行われ、同時にバンドメインであった音楽が、DJによる選曲に変化した。洋楽中心だった楽曲に邦楽も加わるようになり、大手レコード会社もディスコ・ミュージックに注目し始める。1980年代に入り、ディスコの隆盛を極める「マハラジャ」の開店により、ユーロビートが全盛となり、大手レコード会社からはユーロビートをカバーした楽曲が次々に発売され、日本の音楽シーンを変えるまでになった。同時に小型店(クラブ)も出始め2000年前後には大型ディスコの相次ぐ閉店により、クラブが主流となった。

     ディスコやクラブは風営法による風俗娯楽施設であり、一部を除き深夜12時までの営業しか認められていない。2016年に風営法の改正が予定され、条件を満たせば深夜12時以降の営業が可能となる。これによってクラブから新たなヒット曲が誕生すると言及し講義を終えた。

     講義課題として「風営法が必要かどうか」をあげた。受講生からは、風営法の必要性や規制緩和に対する賛否のほか、鈴木氏の講義を受けディスコ・クラブに対するイメージが大きく変わったとの声があがった。

  • 第13回   12月25日   國津 洋 先生         カラオケビジネスの今後

    國津 洋 先生

     

      株式会社第一商興 執行役員 経営企画部長兼社長室長

     講義概要

     業務用通信カラオケの最大手であり、「うたと音楽」のエンタテインメント企業の株式会社第一興商執行役員の國津洋氏が、「カラオケビジネスの今後」と題して講義を行った。業務用カラオケ事業だけではなく、カラオケを通じた社会貢献事業についてもお話しいただいた。

     講義ではまず、カラオケビジネスの歴史について話した。8トラックテープ・レーザーディスクでは限られた曲数しか追加されなかったが、通信回線を利用した機器の登場により大量に楽曲配信が可能になり、カラオケは飛躍的に変化した。現在はアーティストとのタイアップやキャンペーン、インターネットを利用したオーディションなどを行い、他社との差別化を図っている。

     今後のカラオケビジネスに、インバウンドの取り込みとエルダー事業をあげた。海外での日本のカラオケビジネス成立の布石として、夕食後のアクティビティや文化としてカラオケに触れ、ファンとして取り込む必要性を説いた。

     エルダー事業では、高齢者が健康なまま歳を重ねるための方策として、カラオケと体操を組み合わせたプログラムを紹介した。インストラクターの育成にも取り組み、介護施設や地域の公民館などで実施することで、体の機能改善に役立つだけでなく、高齢者の外出機会の創出にもなる。講義ではインストラクターによってプログラムの一部が実践された。

     講義課題として「今後のカラオケに期待すること」を提示した。受講生からは、利用しやすいシステム(幅広い楽曲・アーティストMVの拡充・一人カラオケなど)の拡大や高齢者向け・訪日外国人事業の拡大の必要性があがった。

  • 第14回   1月8日     反畑 誠一 先生    2016年のスーパースター

    反畑 誠一 先生

     

      音楽評論家

      立命館大学 客員教授

     プロフィール

    上智大学文学部新聞学科卒。

    女性誌副編集長を経て、1983年より音楽評論活動に専従。一般紙音楽コラム「ヒットの周辺」は現在も執筆中で(時事通信配信)、31年目になる。

    ポピュラー音楽全般を視野に、メディアを主に執筆、コメント発信、出演等を継続している。

    日本の音楽文化・産業に関する分析の第一人者。

    この寄附講座には、2004年度より関わり、2006年度~2013年度まで、立命館大学客員教授として年間を通じて講座の運営・教育に従事した。

     

    立命館大学客員教授、(一社)日本音楽著作権協会理事、日本レコード大賞常任実行委員、(一財)音楽産業・文化振興財団諮問委員

     

    近著「ミック・ジャガーは保守主義者である!?(「正論」3月号)

     講義概要

     音楽評論家であり、音楽関連団体共同寄附講座の運営にも長年ご尽力いただいた反畑誠一氏が「2016年のスーパースター」と題して講義を行った。今後社会へ踏み出す受講生への激励が込められた講義となった。

     講義ではまず、受講生から質問のあった音楽評論家という仕事を紹介した。長年連載する音楽コラム「ヒットの周辺」の校正記事を見せ、定められた字数の中で感性に基づいた記事を書き、他者が知りえない情報を盛り込むこともあると話した。

    講義テーマであるスーパースターとは、世界的規模で評価される人と定義し、フィギュアスケート選手の羽生結弦氏や作家の村上春樹氏を例にあげた。ドイツの歌手マレーネ・ディートリッヒの「リリー・マルレーン」を紹介し、第二次世界大戦中の戦場で流行しラジオの放送時間になると敵味方問わず耳を傾けたというエピソードは、国を越える「歌の力」を表す。

    音楽とは時代感覚・時代性が重要である。自ら語ることの出来るようできるだけ新譜を聴きライブに出かけることは、ライフワークにもなっている。音楽を通じて冒険の旅をしており、様々な海外公演に同行したことは歴史の目撃者となった。観察力を養うことは、自分の記憶の中に留めることでもあると話した。

     最後に音楽関連団体共同寄附講座へ10年関わり、当時の受講生と仕事場で会うことが嬉しいと話し講義を終えた。講義課題として「あなたの中のスーパースター」を提示し、受講生からはアーティストのほか、スポーツ選手や両親など様々なスーパースターが上げられた。

  • 第15回   1月15日     三枝 照夫 先生      後期総括

    三枝 照夫(さえぐさ・てるお)先生

     

      株式会社フリーダム 代表取締役

      立命館大学 客員教授

     プロフィール

    1951年4月 神奈川県横浜市生まれ

    1975年3月 早稲田大学商学部卒業

    1975年4月 日本ビクター株式会社入社 後 ビクター音楽産業株式会社出向

          (現在は各々、「JVCケンウッド」「ビクターエンタテインメント」に改称)

    1999年6月 取締役に就任     第1制作宣伝本部長

    2002年6月 代表取締役に就任  専務取締役に就任

    2004年1月 代表取締役専務取締役 兼 JVCエンタテインメント・ネットワークス株式会社CEO(代表取締役)

    2007年6月 取締役会長就任

    2008年4月 取締役会長 担当 邦楽制作統括

    2009年1月 取締役会長 兼 ビクターミュージックパブリッシング株式会社 代表取締役社長

    2010年1月 アドバイザー(相談役)就任

    2010年7月 株式会社フリーダム設立 代表取締役就任~現在に至る

     

    担当したアーチスト

    松本伊代、小泉今日子、荻野目洋子、酒井法子、SMAP、Kiroro、19、広瀬香美、LOVE PSYCHEDELICO他、現在は石井聖子

     講義概要

     半年間の音楽関連団体共同寄附講座の総括として、立命館大学客員教授の三枝照夫氏が登壇した。13回に渡る多彩なゲスト講師の講義を振り返り、本講座の総括を行った。

     まず、10月の第2回~第5回講義は、本講座の導入としてマンガ・アニメ関連の講師を招聘した。出版の落ち込み、アニメがパッケージ・シュリンクする中で、ヒット作とコンサートが市場を支える状況が続いている。ヒットにつながる作品を生み出すには、その作品に対する情熱とコンテンツのマネタイズが必要であり、権利をどう生かすかが重要である。

     第6回以降は、音楽を基幹としたメディア産業や権利についての多角的な講師が招聘された。音楽産業の興隆のためには、日本国内の市場だけではなく積極的に海外市場に打って出る必要がある。相手と信頼関係を築き著作権やコンテンツの権利運用を行う際に鍵となるのがコミュニケーションである。また、音楽の流行・発展には大衆のリードが欠かせない。古くは祭りや芸能に使用され、ディスコやクラブ、カラオケなど文化とともに発展してきた。

     配信の台頭やコンテンツの重視など音楽を取り巻く環境は変化しており、作品至上主義の時代へと変化してきた。また、レーベルの再編が進みつつあり、総合商社的なレーベルよりも特色ある音楽を制作するレーベルが増加している。また、消費者が自ら情報収集できる時代となりマスメディアが一方的に情報を与える時代ではなくなっている。スマートホンやインターネットを利用すれば、多様な情報が得られる。その中で真実を見極めるには、自分の尺度を持ち、信用できる情報を得ることが大切である。人が生きる中で他者とのコミュニケーションによってどうつながるかが重要であると話し、講義を終えた。

     講義課題として「音楽ビジネスの世界でやってみたいか、魅力があるか」を提示した。受講生からは、音楽制作などに魅力を感じる声が多くあげられた他、斜陽産業であることを理由に魅力を感じないなど、様々な意見があがった。

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