※講演の内容に関しては、主な内容の抜粋となっております。また、用語に関しては担当者が適宜注釈を付けていることがあります。

第14回 講義概要

講師紹介

反畑 誠一氏(音楽評論家・立命館大学産業社会学部客員教授)

講義:「後期総括」

はじめに

数多くあるコンテンツの中からミュージカルに絞って、コンテンツの概念や著作権、支分権、グランドライツなどの権利を学ぶことを目的に、後期総括の授業としたいと思います。またミュージカルの魅力を通じて、コンテンツにおける「オリジナル作品」の重要性を学んでほしいと思います。

1.支分権・グランドライツ

著作者は複数の権利の集合で、権利の束で構成されていると言えます。この束となる権利の1つ1つを「支分権」と言います。「グランドライツ」とは、オペラ、ミュージカル、バレエ作品の歌詞・楽曲を上演する場合に、音楽を「演劇的」に演奏する権利を言います。欧米では、その権利は音楽出版社、作詞・作曲家本人、あるいは専門の団体(オリジナル・パブリッシャー)にあります。海外の作品を日本で演劇的に上演する場合、その権利「グランドライツ」はそれら海外の音楽出版社などが管理しており、JASRACの管理外である可能性が高くなります。この場合、権利の管理先を捜し当て外国の権利者との契約交渉をしなければなりません。

2.日本発アジア行き創作ミュージカル 「NAGRALAND(1992年)」「香港ラプソディー(1993年)」「李香蘭(1992年)」の魅力と成果

英米のグランドライツ作品とは異なる、「アジア人によるオリジナル作品」という点がこれら3作品共通の魅力です。台本、音楽、歌詞、演出、スタッフ、キャスト全てがアジア人による作品で、製作、運営、資金、上映劇場もアジアという、民族や言語の障害を越えた総合舞台芸術であるという点で大変評価に値する作品だと思います。

3.アジア・ミュージカル市場の課題

今後アジアのミュージカルがブロードウェイやウエスト・エンド進出の可能性を展望する場合にはまだ様々な課題があります。まずプロデューサー、音楽家、作詞家、台本家の人材が不足していること。日本は人材の層は厚くなりましたが、韓国人は歌唱力、中国人は身体能力に優れており、より積極的な交流が望まれます。しかしその交流やアジア地域の巡回上演の場合には、多民族や多言語が壁となるでしょう。また興行収入システムの確立という点で、欧米で多く行われているロングランの必要性を感じます。製作・運営計画の立てやすい同一演目、同一キャスティングによるロングランができる作品作りが重要だと思います。 そういった作品をプロデュースできるような、またプロデュースに関わらずいろいろな形で、みなさんにはぜひオリジナル・コンテンツの創出に携わる人材になってほしいと思います。

関連情報

李香蘭」(劇団四季ホームページ)

JASRAC寄附講座「コンテンツ産業論」(Home)