NHK講座
NHK講座とはスタッフ紹介平成24年度講義レポート平成23年度講義レポート
 
 
第12回 歴史番組の挑戦「歴史にドキリ」

 

ピックアップ動画

第12回講座動画

 

第12回 第12回のNHK講座では、NHKエデュケーショナル教育部専任部長の稲垣直紀さんをお迎えし、現在水曜9:30よりEテレで放送中の「歴史にドキリ」についてお話しいただいた。

 

<講義概要>
 「ただの飛行場の中継映像に、あることをすると視聴率が30%になります。わかりますか?」「“発想の転換。違う角度からものを見る、考える。”そんなことを考えてみてほしい」と、稲垣さんは受講生に問題を出した。答えは「番組の予定を変更して、ハイジャック事件の模様を中継でお伝えしています」というテロップを挿入するというもの。受講生は冒頭から講義に引き込まれた。


 もっとも、Eテレで制作されている教育番組は、視聴対象が明確であり、観る人が限られる。そのため、低視聴率・低予算となる特徴がある。しかし、だからこそ自由にやりたいことができ、様々なことに挑戦しやすく、作っていて楽しいと稲垣さんはおっしゃっていた。


 小中学校の授業内利用を目的に制作されている学校放送番組は、先生が授業で使いやすく、子供の興味を引き付けられる、真面目かつおもしろい番組である必要がある。将来的にやってくるであろう、教室で1人に1台タブレット端末が行き渡る時代も念頭に置き、NHKは授業で使うコンテンツを先生とも話し合って制作している。


 稲垣さんが制作に携わっている「歴史にドキリ」は、初めて歴史を授業で学ぶ小学校6年生を対象とした社会科番組である。中村獅童さんが各回学習する偉人に扮し、歌とダンス、ギャグなどを交えながら、番組は展開する。歴史の重要ポイントを押さえた歌の作曲はヒャダインさんが、ダンスの振り付けは、ポッキーのCMの振り付けなどで話題のair:manさんが、それぞれ担当している。稲垣さんはこの番組がいかにして生み出されたのかを、詳しくお話ししてくださった。


 歴史番組に歌とダンスを盛り込むなど、様々な挑戦を試みた。しかし、教育番組であるため「ふざけている」と言われることは恐れたという。そのためコンセプトをしっかり固め、内容の確かさを選定し、またギャグのさじ加減にも注意を払ったそうだ。


 最後に、「遊び⇔真面目、自分の好み⇔視聴者の好み、楽しむ⇔苦しむ、ギャグ⇔情報」の間を行ったり来たりしながら、番組や企画を制作することが大切だとおっしゃっていた。自分が好きなもの、楽しいことを、それを補強する知識で肉付けすることでよりよいものが生まれる。


 充実した90分が幕を閉じた。

 

<感想>
 「歴史にドキリ」の説明をするにあたって、「まずは番組を見てください」と流してくださった映像に、大きな衝撃を受けた。中村獅童さんの言動や、歌とダンス、その全てが予想の範疇を超えていた。しかし、10分間の中に沢山の情報がギュッと詰まっていて、キャッチーなメロディーにのせられた歌は耳に残り、思わず口ずさみたくなる。「小学生の時にこれが見たかったなぁ」と、素直に今の小学生をうらやましいと思った。


 稲垣さんがこれまで携わった番組のひとつに「ざわざわ森のがんこちゃん」がある。小学校低学年のある日、1時間目に先生が「今日はがんこちゃんを見るよ」と教室の小さなテレビを付けてくれた日のことを思い出した。みんな大喜びで、食い入るようにテレビを見つめた。観終わった後、どのような議論が行われたかまでは覚えていないが、がんこちゃんを観たことは、私の中でとても印象に残っている。


 また、小学生の頃、私が好んで観ていたEテレの番組に「にほんごであそぼ」がある。私が現在知っている俳句や短歌、詩のほとんどは、この番組で覚えたといっても過言ではない。深い意味を理解していたかは別として、歌いながら知らず知らずのうちに覚え、今でも暗唱しているものが多いのである。


 自分でも、映像コンテンツは頭に入ってきやすく、同時に記憶に残りやすいという実感があったため、この講義で触れられていた学校放送番組に興味を持ち、講義後「NHK for School」にアクセスした。トップページには教科や学年で分けられたデジタル教材がずらりと並ぶ。勉強に興味を持つきっかけとしてこれほど良いものはない。また、資料も整理されていて、先生たちも使いやすいように工夫されていることを感じた。


 これから今以上に、授業でこのようなコンテンツの活用の場が増えていく。自分たちの子どもの世代は、どんな教材で学習するのだろうか。将来、子どもの口から授業の様子が語られる日には、どんな驚きが待っているのか楽しみである。

 

「歴史にドキリ」公式HP:http://www.nhk.or.jp/syakai/dokiri/
「NHK for School」HP:http://www.nhk.or.jp/school/

 

記者 立命館大学産業社会学部 松島理菜

 
 
PastNext
 
 
copyright
home