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 第13回NHK講座は、今年で入局3年目というNHK京都放送局のディレクター磯田美菜さんを講師に迎えて、これまでのベテラン講師とは違った、受講生たちと同年代の視点からNHKでの仕事の体験談を語っていただいた。

 NHK講座の受講生から磯田さんに事前に寄せられた質問で一番多かったのが、なぜディレクターになったのかということ。磯田さんは、きっかけはまずテレビに対するミーハーな憧れ、そして、自分の好きなことを皆でやって周りにいる人たちと共有したいという気持ちだったという。そして「働く」って何だろう?と考え始めたとき、テレビは誰のためのものか?を突き詰めていったら、スポンサーや視聴率のためではなく視聴者のための番組を作りたいと思って公共放送のNHKを目指そうと決心したそうだ。

 民放では入社後番組制作に配属されても、その後、人事部や営業部などに異動することは珍しくないが、NHKでは、ディレクターとして採用された場合は基本的に異動がない。そして、俗に言うAD(アシスタント・ディレクター)の期間もなくて1年目からPD(プログラム・ディレクター)として番組作りを任されるそうだ。作る題材は、京都府内か京都に関係あるものなら何でもよく、特に若手ディレクターはジャンルも問われない。実際、磯田さんが手がけてきた番組は、福祉、スポーツ、旅もの、ニュース内の企画コーナーなど実に幅広い。

 講座では、磯田さんが初めて自分で探してきたネタで制作した、『百歳バンザイ! 100でも飛べるよ ~京都・宮﨑秀吉さん~』を見せていただいた。100歳を迎えようとしていた宮﨑さんのことは新聞で知ったそうだが、知り合ってから半年ほど、ご飯を一緒に食べたり、散歩したりしながら取材を進めて番組としての材料を揃えていったという。提案が通った後は、番組の構成をNHKで「ぺタ」と呼ばれている「ポストイット」を使って色々な順番に並び替えていく作業で、どうやったら面白く、そして100歳のおじいちゃんを魅力的に伝えることが出来るかを考えていったそうだ。

 磯田さんが実際に自分で番組を作って感じたことは、まず、一つ一つの番組がもの凄く深く考えて作られているということ。次に、取材相手を知ることの大切さだ。時には専門家からも教えてもらって勉強し、番組には10知って1出るくらいの割合だという。そして、番組の全てがPDに委ねられるため、何をどう伝えたいのか常に問われ続けられるという。磯田さんも、これまでに自分の価値観が揺さぶられる瞬間が数多くあったそうだ。

 『きらっといきる 大学に必要な支援って?~頸髄損傷・中村周平さん~』を制作した時にも、磯田さんは、自分の価値観は間違っていないか、そして取材相手を傷つけたりしていないだろうか悩んだという。この番組で何を伝えるのか、取材相手と同じ意思を持っていないと番組は作れないとつくづく感じたそうだ。

 テレビを取り巻く環境は厳しさが増しているが、そんななか磯田さんは、若手としてNHKに色々と発案していきたいと意気込みを語った。まずは、「硬い」「ニュースばっかり」というNHKへのイメージを覆し、NHKっぽくない番組を提案していきたいという。そして、視聴者が情報提供したり、出演・制作に携わる、皆が参加できる番組を作っていきたいという。また、京都の人たちが身近に思える番組作りもしていきたいそうだ。学生から替え歌を集めて番組にしようという企画は、現在OAの機会を待っているほか、Twitter を使ってNHK京都放送局のことを知ってもらおうという試みはすでに走り出している。磯田さんたち若手がNHKをどんな風に進化させていくのか、これからが楽しみだ。



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磯田 美菜(いそだ みな)
京都放送局ディレクター

 2009年3月慶應義塾大学環境情報学部卒業。同年4月、NHKに入局し、京都放送局に配属。PDとして関わった番組に「きらっといきる 大学に必要な支援って?~脊髄損傷・中村周平さん~」「百歳バンザイ! 100でも飛べるよ~京都・宮﨑秀吉さん~」「産地発!たべもの一直線 京都市発すぐき」などがある。そのほかニュース内の企画やスポーツ中継なども務める。

 



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京都ノートルダム女子大学
人間文化学部3回生
宇野美奈子さん

 100歳のおじいちゃんを取り上げた番組で、練習での様子や過去の成績、大会当日のレース風景と、それぞれの場面での撮影の仕方や、映像をどのような順番で構成していくかで、どれだけ魅力的におじいちゃんの姿を伝えることができるかが変わってくるということがよくわかった。自分がどう伝えたいのか、突き詰めて行く中で、自分の価値観が揺さぶられるという話に共感をおぼえた。 テレビ番組を作るのは、すごく楽しそうだが、取材相手一人一人をどう輝かせて番組にするのか、とても難しそうだと思った。

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経済学部1回生
薬師神みゆきさん

 とても楽しい講義だった。普段は何気なくテレビを見ているだけなので、番組を作る側からのお話はとても興味深かった。今日の講師の方は、私たちと年齢も近いので、話に出てきた番組名など馴染み深くて、懐かしかった。

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