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  第14回NHK講座は、講師にNHK京都放送局の放送部長・田島徹さんを講師に迎えて、NHK講座の受講生が課題として提出した番組の提案について批評をしていただく双方向授業形式で行われた。受講生全員が提出した課題は、NHKのディレクターの方たち10数人が手分けして、全てに目を通してコメントしていただいた。田島さんは、番組の制作経験がないなかで、受講生たちの提案はとても真面目に書かれていて驚いたそうだ。

 豊富な番組制作経験を持つ田島さんは、「いい提案」は、ねらい(テーマ)と映像表現(シーン)の新しさ、深さで決まってくるという。「ねらい(テーマ)」とは、ディレクターが何に感動し、何を視聴者に伝えたいのか。そして「映像表現(シーン)」とは、それを伝えるために、どのような具体的事実があり、どんな映像が取れるのかである。その2つを簡潔に的確に伝えることが「いい提案」の条件となる。

 講座では、田島さんの目に留まった6人の生徒の提案が発表され、各提案者が自分の提案内容をプレゼンテーションして、その後に田島さんからコメントしていただいた。トップバッターは「柔らかくなるコンビにおにぎり」を題材にした提案だ。この提案の良い点は、取り上げる「ねらい」がはっきりしていることだ。世の中の現象を見つけて「なぜ」を調べて行くプロセスが番組になるという。生徒の提案は、「なぜ」を解明して行くプロセスを多角的に検証している点が評価された。

 2番目の提案は、映画化されて話題になっている「ジュリエット・レター」を題材にした番組だ。評価されたのは、誰でも知っている「ロミオとジュリエット」という物語に、今起きている新しい現象を捉えている点だ。この提案では、物語の舞台のヴェローナの魅力を伝えることと、ジュリエット・レターを受け取っている「ジュリエット・クラブ」とは何かという 2つの「ねらい」が挙げられていたが、2つ入れるとどちらも中途半端になってしまうので、「ねらい」は一つに絞るほうがいいそうだ。また、「ジュリエット・クラブ」にどんな人たちが、どんな手紙を寄せているのかが、この提案のもっとも面白い部分になると指摘した。実際に手紙を出した人たちを追跡取材して行くことで、男女の愛の形や別れといった人間の営みや人生が滲み出る、いい番組になる可能性を秘めているという。

 3番目の提案は「Twitterで自爆する若者たち」を描いた番組だ。我々の身近にあるメディアTwitterで軽率なつぶやきをしたばかりに、内定取り消しや、職を奪われたりする若者が出ている社会現象を取り上げ、ネットの怖さに警鐘を鳴らす内容だ。田島さんは、この提案の着眼点を評価した。世間に知られていない事実を掘り起こし、それを取材して「からくり」を検証していく番組は、ジャーナリズムとして大切だという。社会的視線を常にもって、制度やシステムの中で理不尽に行われていくことを取り上げ、それで苦しんでいる人々の声なき声を救い上げ、問題解決のきっかけを作って行くこともテレビ番組の使命の一つなのだ。

 田島さんはこの他の提案についても、有益で分かりやすい解説をしてくださった。字数の関係で全てを紹介できないが、とにかく「よい提案」はHow toのテクニックではなく、A4一枚のなかに企画者の「思い」が伝わるかどうかが一番大事なのだという。そして、情報や知識はインターネットでいくらでも入手できるものの、実際に人に会って見なければ、本当のことはなかなか分からないのだというお話は、番組制作に限らず、私たちの日常生活にも言えることだと考えさせられた。番組提案を考えることで、学校のプレゼンでの発想の仕方や、日々の生活での情報との向き合い方など多くのことが学べた講座となった。




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田島 徹(たじま とおる)
京都放送局放送部長

 昭和61年入局。平成23年より京都放送局放送部長。これまで関わった作品に、NHKスペシャル「海に浮かぶ富士 ~北海道利尻島~」、にんげんドキュメント「北の大地に詩が生まれる」、NHKスペシャル「巨樹~生命の不思議 緑の魔境・和歌山魂~」などがある。


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法学部3回生
有塚理恵さん

 NHKの講師の先生が、学生一人一人のプレゼンに、とても丁寧に答えてくれていたことが心に残った。先生のコメントを聞いていると、番組一つを作り上げるのは、とても大変なことだということが良く分かった。番組の提案は志が高いものが良いと、先生がおっしゃっていたのが印象的だった。自分の提案に対しても、適切なアドバイスがあったので、さすがだなと思った。これから、自分の発想の仕方やプレゼンの時などに役立てたい。

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法学部3回生
松尾拓さん

 田島先生が、生徒たちのプレゼンに対して、ちゃんとコメントしてくれたのが凄いと思った。先生自身が、とても知識があって、深く学んで調べて下さっていたので、受講する僕ら学生にとって、とても信頼できる講義となった。これからNHK講座を受けたいという学生に、NHK講座の講師陣はしっかりしているということを伝えたい。自分の提出した提案にも、自分でも本当にそのとおりだと思えるコメントをいただいた。提案を番組にするのに、何が必要なのかが理解できた。自分の提案は、自分の個人的な意見に偏っていたので、みんなにもっと共感してもらえる視点が必要だというアドバイスをもらった。これは、番組だけでなく、今後、色々な提案を書く時や、プレゼンする時にも役立つ貴重なアドバイスだと思う。


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