第1回講座動画
 第1回目の講座は、NHK京都放送局の小林千洋局長が25年来の友人で仕事仲間でもある俳優の辰巳琢郎さんを特別ゲストに迎えて対談形式の講義。情報が溢れている現代社会において欠かすことの出来ない能力「メディアリテラシー」の大切さについて熱のこもった講義が行われた。

 お二人は「メディアリテラシー」力をつける上で、まず知ってもらいたいのが、テレビというメディアの本質だと言う。例えば、お芝居のライブ中継ではステージをフルショットでずっと映していることはない。主役のアップを映したり、脇役を撮ったりと、カットを切り取るディレクターの感性で舞台ライブを制作していく。つまり、ディレクターやカメラマンの判断によって、映像はどんな風にも作り込むことが出来るのだ。テレビ画面で放送される番組はドラマもニュースも全て、作り手の選択・判断が入っているということを、まず知って欲しいと指摘した。 

 小林局長は、同じ事件を扱ったニュースでもNHKと他の局では、同じニュース、同じコメントにはならないと言う。どこから取材したか、どのような映像を撮ったのか、どのようなコメントを使うのかで違ったニュースになるからだ。コメントも10人の一般市民に聞くのか、一人の関係者に聞くのかで、出てくるニュースが違ったものになる。ニュースソースが違うとニュースの切り口も変わってくるのだ。    

 では情報の受け手である私たちは、多くの情報をどのように受け取っていけばいいのか?NHK講座の受講生も、日々の情報はネットで得るという人が多かったが、果たしてネットだけで十分といえるのか?お二人は、各メディアで何ができて、何ができないかを知って使うことが大切だと言う。小林局長は、ネットを使って自分で検索した情報というのは、どうしても自分の好きなものに偏ってしまうと指摘。一方、マスメディアがやっていることは、色々なおかずが盛りだくさんの定食みたいなもので、一通り目を通すことで必要な情報を網羅することが出来ると言う。小林局長は、自分の嫌いなもの、未知なる物も食べていかなければならないと述べ、新聞やテレビニュースなどマスメディアから情報を得る必要性を強調した。そして、新聞の社説を読むことで、どんな意見があるかを知り、それを踏まえて自分の中に批判精神を養って、情報を選択する目を育てていくことが大切だと述べた。

 ツイッターやブログなどネットや携帯電話を使った情報発信について、辰巳さんは、東日本大震災で実際に体験したことを語られた。被災地・石巻の友人から電話で聞いた言葉、「死体がゴロゴロ」、「子供が餓死」などをそのまま自身のブログに書いたところ、あまりにショッキングな内容と受け止められ、過剰な反応をした人も多く、何百万ものアクセスがあった。情報を伝えることの難しさを目の当たりにされたという。 辰巳さんは、ツイッターやブログは、情報を広める上でよく出来たツールだけれども、使い方を間違うと本当に怖いと、ご自身の体験から実感したという。    

 私たちは、日々溢れ出る情報を浴びながら生活しているが、その情報の信憑性や価値を自分の力で判断できる「メディアリテラシー」力をつけていくことの大切さを、大いに教えられた第一回目のNHK講座となった。メディアの受け手として、もう一つ上のランクにあがるために、この「メディアリテラシー」という概念を気にするだけでも違ってくると、お二人は言う。辰巳さんは、テレビニュースや新聞で言っていることを、すべて正しいと鵜呑みにするのでなく、時に疑ってかかかる気持ちが必要で、自分で何が正しい情報なのかを組み立てていく力が本当の意味でのメディアリテラシーだと訴えた。

辰巳 琢郎(たつみ・たくろう)先生 
俳優。京都大学文学部卒。1958年8月6日生まれ。大阪府出身。芸能界きっての秀才として有名な頭脳派の俳優。しかしながら、親しみやすい雰囲気を持ち、CM、ドラマ、舞台、バラエティーで活躍している。

左:NHK京都放送局小林千洋局長、右:辰巳琢郎さん



映像学部 1回生 
大本大祐さん

 メディアリテラシーについて考えさせられた。東日本大震災が起きたときに、友人から、関西電力の節電をお願いする内容のメールが送られて来た。それが実はチェーンメールだったことが後で分かったが、その時は知らずに他の友人たちに回してしまった。情報の中には、間違ったものもいっぱい溢れている。それをちゃんと、自分で読み取って情報を正しく認識して、自分も発信していかなければならないと実感した。

産業社会学部2回生 
宮下朋子さん

将来メディアに勤めたいと思っている。小林先生の話の中で、主体的に感動することが大切という話があったが、これからの大学生活の中で、いろいろな所にアンテナを張って、今日聞いたことを役立てていきたい。

このホームページに含まれるいかなる内容も無断で複製・転載を禁じます。
ホーム