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第2回講座動画

第2回NHK講座 「大河ドラマ制作の舞台裏」
~一シーンごとにかけるこだわりが作品を生み出す~

不思議な出会いと想定外の配属でドラマ制作の道へ
NHK講座第2回目の講師は、現在放映中の大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」の制作統括をされている屋敷陽太郎チーフ・プロデューサー。屋敷さんは、「NHKスペシャル」などのドキュメンタリー制作を志望していたが、配属されたのはドラマ部であり、NHKに入ってドラマ制作の仕事を一から学んでいった。

ドラマのプロデューサーの仕事って?

 屋敷さんは、現在の仕事であるチーフ・プロデューサーとは具体的にどのような仕事なのかについて説明された。映画やドラマを実際に制作していくのは、ディレクターの仕事で、舞台なら演出家、映画なら監督と呼ばれる人たちだ。ディレクターは台本のシーンを基に映像を作っていく。俳優の演技指導や、カメラでどう撮るか、照明や音声はどうするかなどの撮影現場の指揮はもちろん、撮影したビデオを編集でどうつないでいくのか、BGMや効果音をどう使うかなども指示する。
 一方、屋敷さんの務めるプロデューサーは、どんな作品を作ればいいのかを決める企画や脚本の開発、配役のキャスティングと俳優さんへの出演交渉、番組予算の管理、そして、出来上がった作品をどうPRしていくかの広報を担当する。屋敷さんは、現在放映中の「江~姫たちの戦国~」を始め、これまでに多くのドラマ番組を担当してきた。人気ドラマを制作する極意を屋敷さんは、こう語る。
「歴史上の人物がどんな会話を交わしたかを閣議みたいにやったらつまらない。」
 そして、視聴者に面白いと伝わる作品を作るには、自分自身の体験が生かされるという。
「人を好きになったらこんな感情を持つだろうとか、様々な思いをいっぱい持っていることが映像作りに役立たないわけがない。」

大河ドラマの舞台裏~一つ一つのシーンはこだわりの積み重ね
 そして、ドラマ作りの裏側では、ほんの数十秒のシーンを撮るにも、一つ一つこだわりを持って作っている、スタッフたちの奮闘があるという。その積み重ねが、ひとつの作品となって放送されていく。たとえば「江~姫たちの戦国」で放映された一幕を見せながら屋敷さんはその舞台裏に何が隠れているかについて述べられた。主人公の江が、北ノ庄城から馬を走らせて飛び出していったシーン。そのなかでほんのわずか数十秒流れるワイドショットを撮影するために、実際スタッフたちはどんな準備をして撮影したのだろうか?まず、準備はかなり前から、その土地に相応しいロケ地選びからはじまる。(城下に足羽川が流れる場所をイメージして選択。そしてロケ地は撮影費用が嵩まないようアクセスの良さや、出演者の着替えなどで使う体育館ほどの広さのスペースが確保できることも必要なのだそうだ。)当時の農村風景を再現させるために、美術スタッフが田んぼに稲架掛けを用意し、舗装した道路には土を敷いて藁を撒き昔の道に見せるようにする。川に浮かんでいる小船を運び込み、本職の船頭さんに漕いでもらう。そして、このシーンはクレーンカメラで撮影したが、見栄えよくするために稲架掛け、小船、そしてエキストラの農民の位置を調整して、ようやく放送で使うカットが出来上がるのだ。

ドラマは嘘の世界。だから細部の本物にこだわる。

 とことん細部にこだわるのは理由がある。ドラマはそもそも嘘の世界であり、その虚構の世界にいかに見ている人に入り込んでもらえるか、嘘を本当らしく見せ、そして役者さんたちが本物になりきってもらえるようにするには、ディテールでいかに嘘をつかないかが大切であると指摘する。特に歴史ドラマでは、「考証」が制作のプロセスで重要になっているという。歴史学者に知識をもらいながら、その時代、土地に実際に使われた風俗であったり、言葉使いであったりするかどうかを確認していくのも、重要な作業という。そのうえでドラマを視聴者のイメージを裏切らずに作ることが大切であると言う。たとえば、予算がないからといって、桜田門外の変のシーンを雪なしでやったら、ものすごくクレームがくるという。そんななかで、歴史の史実と事実、そこの違いを想像して作っていくのが、ドラマの醍醐味であり面白さである。

ドラマ作りで一番重要なのは「チーム」

 大河ドラマの制作は、一滴一滴を集めて大河にしていくようなものと、屋敷さんは話す。ドラマ作りで一番重要なのは、「チーム」である。ドラマは、様々な専門家の知識、教養、そして、全部あわせれば何百人にも上るプロフェッショナルなスタッフたちの力を結集したチームワークの上で成り立っている。そのスタッフ一人ひとりの一滴づつのこだわりを「チーム」でまとめ上げていくことで、大河ドラマという大作が生まれてくる。そんな屋敷さんの夢は、映像コンテンツをもっと大きな産業にしていくこと。そして、世界に売れるコンテンツ、世界に評価されるコンテンツを作っていきたいと、最後に熱く語った。
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制作統括 屋敷陽太郎(やしきようたろう)
(ドラマ番組部 チーフ・プロデューサー)

 1970年、富山県生まれ。1993年NHK入局。番組制作局ドラマ番組部に配属。95年から山形放送局。98年に番組制作局(現・制作局)ドラマ番組部異動、現在に至る。途中、00年から1年間、海外派遣研修制度にて米国ロサンゼルスにて映画制作実務を学ぶ。 連続テレビ小説「私の青空」、土曜ドラマ「マチベン」、特集ドラマ「クライマーズ・ハイ」等を担当。 制作統括を担当した番組は、土曜ドラマ「君たちに明日はない」。 大河ドラマ歴としては、「八代将軍吉宗」と「元禄繚乱」にて演出助手。「新選組!」で制作主任、「篤姫」でプロデューサーをそれぞれ担当。
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映像を使って講義をされる屋敷先生


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産業社会学部 2回生 
上野菜摘美さん

 ドラマ作りの舞台裏ということで、今まで知らなかったことを沢山教えてもらった。90分間、全く飽きずに聞くことが出来た。個人的に一番面白かったのは、屋敷さんから見た向井理さんの話。ドラマ制作に多くの人が関わっていることは知っていたが、スタッフがどんな仕事をしているかを具体的に教えてもらって、ドラマの舞台裏の凄さを教えてもらった。

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映像学部 1回生 
出口優一さん

 大河ドラマ好き。きょう紹介されたシーンは、流して見ていたが、ワンカットの中に色々なスタッフの働きが裏であったことを知って興味深かった。次に大河ドラマを見るときは、これまでと違う視点で、一つ一つのシーンを大切に見ていきたい。
マスコミに興味があるので、今回はドラマだったが、次回以降も色々な人たちの話を聞いて、自分の進みたい方向を決めるのに役立てたいと思っている。

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