NHK講座
NHK講座とはスタッフ紹介平成24年度講義レポート平成23年度講義レポート
 
 
第4回 ドキュメンタリー番組におけるカメラマンの役割

 

ピックアップ動画

第4回講座動画

 

第4回 NHK講座第4回は、世界各国にカメラを持って出向き、ものごとの真実に迫る、取材を続けるなど、第一線で活躍をしている放送技術局カメラマン持田立先生を講師にお迎えした。ドキュメンタリー番組におけるカメラマンの役割をはじめ、どの現場でカメラマンがどういう役割のもとで映像を撮っているかについて講義して頂いた。

 

<講義概要>
 まず始めに、ドキュメンタリー番組の撮影方法についてお話をうかがった。ドキュメンタリーとは事実の描写、つまり、社会で起きている出来事をありのままに記録して編集したものである。ドキュメンタリーを撮るチームは、ディレクター、カメラマン、音声の3人で構成されることが多く、それを「ロケクルー」という。


 ドキュメンタリー制作現場におけるカメラマンの役割は、カメラを使って映像を記録することだが、番組の構成にも深く関わっていると持田さんは言う。ドキュメンタリーには筋書きがないため、ディレクターが思っていたとおりには取材が進まない。そのため、ロケクルーは現場での一期一会を大切にし、判断する必要がある。現場で出会った一人一人の喋り方や想いの熱さで、そのドキュメンタリーの主人公を決定しているそうだ。しかし次の日、取材に行くと、その方の意見が変わっていることがある。ディレクターは焦るが、ロケクルーで話し合うと、言葉の裏に隠された想いに気づくこともある。ディレクターだけでは表面的な理解で終わってしまうこともある。


 個人的な想いが入ってしまったらドキュメンタリーではないという考え方もある。ただ、人間が作る以上、想いも入っていいと持田さんは語った。クルー3人の意見はそれぞれ違うため、たとえば熱い1人と、それを冷静な目で見る2人がいて、初めてドキュメンタリー番組が出来るのだそうだ。

 

 続いて、カメラマンが構成にかかわらなければならない理由についてお話しいただいた。
 カメラマンは、カメラを持つことで被写体に一番近い場所にいる。そのため最前線で、小さなしぐさを読み取り、裏の心を感じ取ることができる。実際に撮影をしながらロケ現場で感じたことを発言するポジションである。カメラマンの感情を映像におりまぜることで、現場での臨場感が番組に入る。また、カメラというのはとても大きいので、ドキュメンタリーを撮る際に、どうしても自然な映像が撮れなくなってしまう。その際に、より素直な映像をとるにはカメラを向けて話すのでなく、カメラを向けながら相手の目を見て話すように心がけている。また、小さい子供にはカメラをのぞかせてあげて、こういうふうに見えていると教えてあげると、子供たちもなつくようになる。だが、あまり近づきすぎてもいい映像は撮れないので、距離感を大事にしているとのことだ。


 そして最後に、「映像はカメラマンの心を映し出す鏡である。」と持田さんは言った。
撮った映像を観るとその時々の気持ちが思い出されるし、そこに反映されている気持ちは他人が見ても分かるものだとおっしゃっていた。

 

<講義の感想>
 実際に現場で使用されているカメラを講義に持ってきてくださったり、学生からの質問に自ら本人の席まで出向き、マイクを向けてお話をされたり、終始にこやかな表情で教壇に立っていた持田さん。人との距離を大切にしているとお話しされていたとおり、本当に人との関わりを心から大切にしている方であり、持田さんが制作したドキュメンタリー番組に映る景色や人たちの表情には、持田さんの人柄が表れていたと感じた。


 私たちは、実際に現場に行き、その景色を見ることは出来ない。しかし、ドキュメンタリー番組を見ることで世界が広がる。こうして世界を切り取る仕事をなさっている方の話を実際に聴けたことで、さらにドキュメンタリー番組を見る楽しみが増えた。  

 

記者 立命館大学産業社会学部 田中葵

 
 
PastNext
 
 
copyright
home