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  第4回NHK講座では、NHK編成局編成センターの白石信子さんを講師に迎え、「視聴者ニーズと編成」と題した話を伺った。民放各社では、視聴率はコマーシャル料金を決める際のデータとして使われるが、CMのないNHKでも視聴率調査は実施されている。視聴者にきちんと放送が届いているかどうか、つまり公共放送としての役割を果たしているかどうかをチェックするためだ。このほかNHK編成局では独自に、「番組を視聴してどれだけ満足度を感じたか」を調べる質的調査も実施している。

 白石さんが所属している編成局では、どのような番組を、どの時間に放送したら、より多くの視聴者に楽しんでもらえるかを、視聴率や視聴行動 などの調査を基にして検討し、番組の並び順を決める仕事をしている。たとえば、NHKは2010年春に朝の連続テレビ小説の放送時間をこれまでの8時15分から8時に切り替え、朝の大型情報番組「あさイチ」をスタートさせた。これは、NHKの朝の視聴率が全般的に元気がなくなってきたことから、ニュース・制作・編成みんなのちからで、活性化を図ろうと試みたものだ。この番組改編を実施する前に、まず、誰が朝8時にテレビの前にいるか、平日の朝30分ごとの起床在宅率を確認したという。そして 連続テレビ小説のコアな視聴者に、放送時間を8時に変更してもこれまでどおりに視聴するかどうかを尋ねたところ、多くの視聴者が変わらず視聴することが分かった。また新番組の「あさイチ」もパイロット版を制作し、グループインタビューをするなどして、視聴者のニーズを取り入れていった。そして、開始時間が変更された連続テレビ小説も、新番組の「あさイチ」も、改編前よりも高い視聴率で多くの方々に見て頂くことができ、朝全体が元気になったという。

 白石さんは、世論調査で「テレビの見方」の変化がみてとれるという。インターネットや携帯電話などのデジタル技術の出現で、テレビの視聴時間が減少していると思われがちだが、実は国民全体でみると視聴時間は下がっていない。 テレビを見る時間は、その人の自由になる時間の長さに大きく左右され 、増加する高齢者のテレビ視聴時間が増えていることが国民全体の視聴時間を支える要因となっているという 。一方、学生など若い世代は、もともと自由になる時間の少ないことがテレビ視聴時間 が他の年層より短い理由の1つである。その上、ネット・ケータイなど他のメディア行動やバイト、サークル活動など、自由時間も忙しいとし、 若者のライフスタイルにもその原因はあると分析している。また、若年層ではテレビを見ない人が増加する半面、テレビを長時間見る人も依然存在するという両極化がすすんでいるという。

 白石さんはテレビを見る「風景」の変化にも注目している。若者のテレビと携帯電話の使用時間を調べたところ、小中学生はテレビの時間が多いが、高校生になると圧倒的に携帯電話を使う時間が長くなる。だからといって、高校生が全くテレビを見なくなったわけではないという。携帯電話でメールしながらテレビを見ている高校生は74%、中学生でも40%にのぼる。テレビを見るという行為は、ただテレビだけを見ているのではなく、携帯電話やネットなど、色々なことを平行しながら見るという新しい視聴「風景」が出現しているのだ。

 情報源としてテレビは他のメディアに比べて大きな影響力を持っている。世の中の出来事・動きが一番良く分かる、関心のない分野のことでも知識が得られる、人と共通の話題が得られる、の3つの分野で20代の回答者も第一にテレビを挙げている。また、娯楽面でも、気楽に楽しむ、時間つぶし、感動できる、多くの人と同じ気持ちや考えになるという各分野で、テレビを第一に挙げている。白石さんは、ネット社会とはいえ、テレビには多くのことが視聴者から求められているが、果たしてテレビが人々の期待に応えきれているのかどうか。いまそのことがとても重要になってきていると指摘した。

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白石信子(しらいしのぶこ)
NHK編成局編成センター担当部長
 
  1981年 NHK入局、NHK放送文化研究所などを経て、現職。著書に、『テレビ視聴の50年』(共著)(2003 NHK出版)/『放送を学ぶ人のために』(共著)(2006 世界思想社)。 論文では、「現代の視聴者~メディア利用における世代差からみて~」(2006.5『情報通信学会誌』)/「人々は「番組」をどのように評価しているか」(2008.2『放送研究と調査』)など


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映像学部1回生 
吉村侑太さん

 同年代の人たちが日々どんなメディアを使っているのか、今まで気にしたことがなかったが、今回の講座で携帯の使用時間が突出していることを知り、勉強になった。NHKの視聴率調査で、年齢層などを細かく調べて番組に反映させていることを知り、NHKは凄いと改めて思った。

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政策科学部3回生 
新井麻里さん

 視聴率という言葉は知っていたが、その仕組みを知ることが出来たのが新しい発見だった。朝ドラの時間を15分動かしただけで、視聴率が大きく変わったことに驚いた。高齢者が6時間以上もテレビを見ていると知り、自分の両親もいつかテレビが大切な娯楽になるのだと思うとテレビの大切さが実感できた。
  自分は部活などがあって、テレビを見る時間は少ないが、きょうの講座で見たような、かっこいいワンセグの番組をこれからもっと見てみたいと思った。

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