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第5回 NHKの国際報道

 

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第5回 

 本年度第5回のNHK講座は、解説委員室解説主幹の二村伸さんにお越しいただき、「NHKの国際報道」についてお話しいただいた。

 

<講義概要>

 二村さんは初めに、海外報道に取り組むNHKの態勢について語った。海外報道といえば、一般的に、国際ニュースを国内に伝える報道を指す。NHKはそれに加えて、国内やアジアの情報を世界各国に伝える取り組みも行っている。


 次に二村さんは、あらゆる海外報道の源泉となる海外取材について述べた。ここ二十年のデジタル化によって、海外取材のあり方も大きく変化した。以前は映像や原稿の送信のためだけに多くの機材を必要としたが、今やPCがあれば事足りる場合さえある。もちろん、海外取材が困難であることは今も変わらない。その担い手である海外特派員が僅かであるため、あらゆる分野の取材を、ごく少数で担当しなければならないからだ。このため海外特派員には「取材力」と「交渉力」、そして、常に万全の体調を維持する「体力」が要求される。


 さらに二村さんは、国際ニュースに関する様々な葛藤に触れた。一つ目は国際ニュースの、ニュースとしての価値だ。国際ニュースは国内のニュースに比べて、日本人に興味の対象として認識されにくい。つまり、日本国内における国際ニュースの価値は、相対的に低いのだ。しかし国際社会から見たとき、ニュースの価値が高いのは、どちらかといえば国際ニュースである。このようなニュースの価値の齟齬が、報道する側の葛藤となっている。


 葛藤の二つ目は戦争報道だ。「公正かつ正確」であることが戦争報道の理想だが、それを完全に実行するのは、非常に難しい。なぜなら、主な情報源となる軍と国が頻繁に情報を操作するからだ。「戦争の最初の犠牲者は真実」と言われる所以である。それだけにNHKは対立する両者の主張を伝えている。情報操作に影響されない、中立で公正な報道を実現するためだ。


 最後に二村さんは、海外取材について手短に総括した。戦争取材はもちろん平常時でも、海外取材にはリスクが伴う。海外取材を担う海外特派員は、安全を最優先に取材を行う必要がある。

 

<感想>
 私は国際ニュースに対して、さほど強い関心を抱いていなかった。テロが起きても政変が起きても、それらは「遠い異国で起きている出来事」という認識に留まった。なぜならそれらの出来事は、その国で暮らす人々にとっては深刻な問題に違いないだろうが、この日本で暮らす私の生活には、直接的な影響をほとんど与えないからだ。やはり、私自身の生活と、何かしらの接点を持つ事柄でないと、なかなか興味というものは持ちづらい。


 しかし、この講義を受けたことで、その意識が揺らいだ。海外に派遣された海外特派員が、情報の取得と送信のために払う困難の大きさを知ったからだ。二村さんが語っていた通り、海外での取材には危険が付きまとう。戦争取材であれば尚更だ。いくら安全第一を心掛けていても、リスクが完全に解消されることはあり得ない。彼らは常に危険と隣り合わせのところから、平和な日本で安穏と暮らす私たちに情報を届けているのだ。
 そうした経緯をたどって送り届けられる情報の数々を、「自分に直接的な関係がない」というだけの理由で無視をすることはできない。少なくとも私には出来ない。過酷な環境で体を張った取材をしている海外特派員の方々に対して、そのような振る舞いは失礼極まりないからだ。


 もともと海外の出来事というのは、私たちの生活に無縁のものではない。間接的にではあるが、大多数は何かしらの影響を日本国内に与えている。つまり、それらに関する情報である国際ニュースを知ることは、国内から出る見込みのない人にとっても有意義なことに違いないのだ。それならば、なるべく国際ニュースに触れ合ってみるようにしよう、と私は思った。そうすれば、海外特派員の方々の取材にかける情熱もますます上昇する上に、私自身も知識を向上させることができる。

 

 今回の講義は、国際ニュースに対する私の関心を、大きく膨らませてくれた。

 

記者 立命館大学産業社会学部 植田真弘

 
 
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