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  第5回NHK講座は、NHK営業局計画管理部の長村中部長を講師に迎え、これまで私たちの多くが知らなかった「受信料」と「公共放送」について考えるきっかけにしてもらいたいと「受信料と公共放送について考えてみませんか?」と題したお話を伺った。

 まず公共放送における"公共性"とは何かというところから話を始められた。公共性"という概念には、(1)国家に関係する公的(official)なもの、(2)全ての人々に関係する共通(common)のもの、そして(3)誰に対しても開かれている(open)なもの、という3つの意味があると言う。そして長村さんは、公共放送のNHKにとって3つ目の「開かれていること」がとても重要だと指摘した。誰でもどこからでもアクセスできるという条件を閉ざしてしまったら、公共放送とは言えないと考えるからだ。

 そして、"放送の公共性"については、みんなの役に立つ(公益性)、みんなが知っている(公然性)や、誰もが利用できる安い料金設定(非商業性)などが、その特性として挙げられるが、「公共放送」には明確な定義はないのだという。そんななか長村さんは、(1)普遍性=あまねく全国への放送普及、(2)独立性=非営利性、非国家性、(3)多様性=番組調和、少数対象の主題、(4)特殊性=放送界の先導、調査研究開発という4つの要素を併せ持つ放送機関として「公共放送」を説明することが出来るという。

 NHKの財源は受信料だが、世界の公共放送では様々な形態があり、CMが流れていないから公共放送だとは言えない。韓国やフランスの公共放送では広告収入が財源の一部となっているし、国によっては寄付金、交付金、税金などが財源になっているという。日本では、昭和25年に放送法でテレビ受信機を持つ世帯は受信料を払うよう規定されてから現在までおよそ60年が経過している。またドイツでは受信機の有無に関わらず全世帯が受信料を支払い、公共放送の財源を負担するという制度改革が最近合意されたという。

 長村さんは、なぜ私たちが公共放送に受信料を払っているのか?ということを、視野を広げて考えてもらいたいという。講義で見たNHKスペシャル『日本人はなぜ戦争へと向かったか?~第3回"熱狂"はこうして作られた』が伝えていたように、「メディアがおかしくなれば、本当に短時間で国家は狂ってしまう」と長村さんは言う。そして、メディアの「非国家性」がなければ、国による世論操作の道具に使われてしまう危険性も出てくるのだ。

 また「非営利性」についても、受信料を財源とするNHKはリーマンショック後の広告費減少の影響をあまり受けずにいられたという。一方、広告費が主要財源の民間放送局は、経済状況によって広告収入が不安定なことや、インターネットへの広告費の流出などで、制作費や人件費のカットを余儀なくされているという。
受信料を払うということは、電気・水道などの公共料金を払うのとは違い、社会の一員として公共放送を支えるという、社会を支えるひとつの方法なのではないかと長村さんは言う。そして、NHKは預かった受信料を最大の価値にして、放送サービスという形で皆さんに返すという役割なのだと指摘した。そして受信料の未払い者にも、本当の公共性とは何かを分かってもらえるよう、繰り返しコミュニケーションを続けることもNHKの役割だと述べた。

 東日本大震災など非常災害時におけるNHKの果たす役割はとても大きい。そして今回の被災世帯には、受信料の支払い免除の特別措置も取られているという。私たちが受信料を払うことが、こうした公共放送の役割を支えていることにも繋がっているのだ。


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NHK営業局計画管理部
長村中(おさむら みつる)部長

 1982年NHK入局。静岡、名古屋、横浜放送局を経て現在は、NHK営業局計画管理部部長。
 全国に75拠点ある営業職場の管理、人事業務、労働組合の対応など営業セクションの人・モノ予算管理全体を統括。 また5年前まで労働組合役員を務め、その間日本マスコミ労組の代表となり「国際ジャーナリスト連盟(IFJ)」の世界執行委員を3年間務めた。 この間世界のテレビ局を訪問、意見交換を重ねた。



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産業社会学部1回生 
浅野恭平さん

  こちらに越してきて間もない。テレビの購入を検討しているが、受信料の支払いについて意識されていない所があったので、きょうの講義で自分の知りたいことが分かって非常に良かった。
 NHKの公共的な役割については、大規模な取材や調査をするメディアの必要性というところから理解することが出来た。情報収集の質が保てなくなると、私たちに必要な情報を得ることが出来なくなってしまうと思う。NHKは日本の情報収集の水準を保つためも必要な機関である、という事をもっとアピールして一般に知ってもらう必要があると感じた。

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映像学部2回生 
小川真有紀さん

 NHKは公共放送ということで災害放送に対して柔軟な対応をしていることが良く分かった。被災者の受信料免除などNHKにもっと積極的に対応してもらいたい。また、今だからこそ、他の地域の人たちの受信料が被災者支援に役立っているのだということを、広く放送していったらいいと思う。
 民放の番組は見て楽しむだけで後に残らないものが多いが、NHKは心に残る番組、ためになる番組が多いと思うので、そこをもっと推していって欲しい。

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