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講師紹介

宇治橋裕之/主任研究員 文研・メディア研究部 講師:宇治橋祐之/放送文化研究所 主任研究員

宇治橋裕之/主任研究員 文研・メディア研究部講師:宇治橋裕之/主任研究員 文研・メディア研究部講師:宇治橋裕之/主任研究員 文研・メディア研究部

記者紹介

記者 松本実 立命館大学産業社会学部
現代社会学科
メディア社会専攻

受講生記者
1回生 松本実
6月13日(金)

第10回 メディア研究の視点から

 NHK講座第10回は「メディア研究の視点から」と題して、NHK放送文化研究所の宇治橋祐之さんを講師にお迎えした。宇治橋さんからは、NHK放送文化研究所において行っていられる調査研究と、もともとの専門である教育番組をテーマに、「送り手」と「受け手」の関係についてお話しいただいた。

講義概要

 宇治橋さんは初めに、講義の目的として、‘メディア研究がわかること’、‘「NHK放送文化研究所」の活動と「NHKの学校放送番組」の内容を知ること’、‘「送り手」と「受け手」の関係について考えること’の3つを提示した。

 まず、宇治橋さんはテレビの定義について触れた。「テレビ」という言葉には、辞書で取り上げられている語義だけではなく、「テレビを見た」と言う時の「テレビを通して配信された情報」という意味合いも持ち、さらに放送業界では「電送路」という意味で使用されるという話をした後、テレビは「送り手」である放送局と「受け手」である視聴者の間に成り立つものであると述べた。

 次に、宇治橋さんはNHK放送文化研究所を、「豊かな放送文化を創造する」という公共放送の目的の実現に向けて必要な調査研究を行う機関だと説明し、その調査研究の内容について紹介した。
 世論調査に関しては、昨年度放送された『あまちゃん』に関するツイートを全て集計・分析し、視聴者の傾向を探ったことや、「生活時間調査」を行い、朝早く起床する人の増加に伴い、朝のニュースや子供番組の放送時間を早めたという、調査内容を番組放送に反映した実例を話していただいた。ここで宇治橋さんは、「個人の狭い交友関係のなかでデータをとるのではなく、広い調査をベースに物事を考えること」が大切と説いた。
 また、メディア研究の一環、「放送の表現とことば」についての研究では、正しいことば、多くの人に伝わることばを放送に用いるために調査を行っている。宇治橋さんは、受講生に「たまごやき」「からあげ」の表記の仕方を尋ねてから、同様のアンケートを研究所のホームページで行い、その結果も放送用語に反映していることを話した。
 何かを伝えようとするとき、伝える相手が「どのような生活を送っているか」「どのような言葉を使っているか」を踏まえると、より内容が伝わる。宇治橋さんは調査の意義をそう述べた。

 続いて、宇治橋さんは教育番組の内容は教育課程の基準に準拠していることが必要とされることを説明した後、NHKの教育番組の例として『ざわざわ森のがんこちゃん』『考えるカラス~科学の考え方~』を取り上げられた。
 『がんこちゃん』は、幼稚園・保育所の園児から小学校低学年の児童向けの道徳番組である。番組に登場するキャラクターは、視聴する子ども達全てが感情移入できるように様々な個性が設定されている。また、昨今の国際情勢の時流を汲み、異文化の生活圏からやってきた新キャラクターを導入するなどの工夫が見られる。登場人物達が織りなす物語を見せることで、子ども達の中に道徳的素養をつくることが目的だ。
 一方、『考えるカラス』は理科を扱った教育番組である。毎回、「考える練習」として番組内で問題が出される。受講生も、番組VTRに従って「長短2本のろうそくに火をつけて、ビンをかぶせる。先に消えるのはどちらか」という例題について考えてみた。宇治橋さんは、受講生が解答とその理由を予想する時間をとってから、動画の続きを再生された。しかし、長いろうそくの火が先に消えたところで、唐突に番組は終わる。番組内では、解答は出すが、理由の説明はしない。この番組の目的は視聴者に考える時間を持たせることなのだ。
 宇治橋さんは、テレビは「送り手」と「受け手」の間に成り立つものであるということは、番組が視聴者にどのように観られているかを調べ、それを反映した番組を作り、発信することであると説明し、講義を終えた。

感想

 小学校の長期休みには、毎日のように見ていたNHKの教育番組。当時は、ストーリーや番組の中のクイズをただ楽しんでいただけだったが、今回の講義を聴き、幼い小学生低学年でも楽しめる、わかりやすい番組の裏に学習指導要領に則った綿密な構成と、番組の視聴者層の生活スタイルから、番組内で使うための多くの人に伝わりやすい言葉まで、広きに渡る調査の反映があったことを知った。
 また、宇治橋さんが何度かお話の中で、物事を伝える時はその対象についての情報を踏まえることで、より内容が伝わりやすくなるということを述べていらっしゃったが、それは私たちの今後の生活にあたり、意識するべきことでもあると感じた。これからの大学生活、レポートや発表などで他者に情報を発信することが幾度となくあるだろう。その際、「誰」に「どのように」伝えるのか、それを考える姿勢を身につけていきたい。講義を受けて、そう思った。

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