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長村中/営業局専任局長 講師:長村中/営業局専任局長

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記者紹介

記者 松島理菜 立命館大学産業社会学部
現代社会学科
メディア社会専攻

D-PLUS
マネジメントチーム
3回生 松島理菜
7月4日(金)

第13回 公共性・公共放送を考える~より豊かな未来のために

 第13回目のNHK講座は、NHK営業局専任局長の長村中さんをお迎えし、「公共性・公共放送を考える~より豊かな未来のために~」というテーマでお話をいただいた。

講義概要

 日本ではよく「公共性」という意味合いで用いられる”Public”。英語では本来、3つの意味がある。1つ目は”Official”で、国家に関係する公的なものを指す。2つ目の”Common”は特定の誰かにではなく、すべての人々に共通のものという意味である。そして3つ目の重要な意味は”Open”だ。誰に対しても開かれていることを指す。
 続けて、放送の公共性の特徴に触れたうえで、NHKの役割として望まれている、以下の4つの要素について説明した。

①普遍性 ~あまねく全国への放送普及
②独立性 ~非営利性、非国家性(利害とは関係ない形でサービスを展開する、国の機関ではない)
③多様性・均衡性 ~番組調和、少数対象の主題
④先進性 ~放送界の先導、調査研究開発

 NHKでは視聴者から集める受信料を財源としているが、世界には広告収入を財源としている公共放送もある。ここで「お金を負担することと公共サービス受益との関係について考えるきっかけにしてほしい」と述べた。

 長村さんは続いて、ドイツ、韓国、ギリシャなど、現在海外の公共放送で起こっている動きについて触れた。また、広告が放送とどのような関係を持ってきたのかにも言及した。近年、好きな番組を好きな時に見る「タイムシフト視聴」が増えてきたことなどによりテレビ広告の機能が低下してきている。そこで番組の中に商品を出すなどといった対策が取られ、広告と媒体の垣根がなくなってきているそうだ。
 続けてネットがテレビに与える影響について、イギリス、アメリカ、日本の3国の実践を取り上げた映像で紹介した。法が整備され、ネットを使ってサービスを展開できるようになってきた。ネット時代に入ってきた現在、公共性がどのように担保されるのかについて考えていかねばならないと述べた。
 そして長村さんは、NHKの歴史について話した。戦後、GHQの主導で放送体制が見直され、「受信料」という呼び方もこの時に決められた。これを機に受信料未払者への罰則は廃止され、受信料の細かな制度が定められた。昨年度末、全国のNHK受信料支払率は74.8%。これをNHKへの支持率ととらえて、毎年あげていこうとしている。罰則がない中で、いかにして受信料を集めるのか追求していくのがNHKの役割であるという。
 最後に、あまねく「普及」、多くの人が必要とする情報に加え、少数であっても必要とされる情報を扱う「質的」あまねく、あまねく「負担」という3つのあまねくがNHKの宿題と述べ、講義を閉じた。

感想

 “Public”と聞いて、一番に”Open”の意味を考える人は少ないであろう。しかしこのOpenこそが公共放送にとって重要であるということを、授業を通して理解することができた。全国どこに暮らしている誰に対しても、同じようにサービスを提供するというのはたやすいことではない。しかしいかに電波をとどけるのが難しい場所であっても、公共放送である限り、工夫を凝らしてなんとしても届けなければならない。努力義務の民間放送とはわけが違う。電源を入れたらテレビがつく。それは当たり前ではなく、テレビ局の努力がなし得ていることだと感じた。そして公共放送であるNHKは特にそれを成さねばならない。

 また受信料の未払いに対して罰則がないことも当たり前ではないと知り、受信料に対する考え方も変わった。一人暮らしを始めて数日後、急に鳴ったインターホンに驚き、恐る恐る出てみると、NHK受信料支払いの手続きであったことを思い出した。NHKを視聴するために受信料を支払う。もちろん知っていたことであったが、公共放送と民間放送の違いを実感した瞬間であった。安定した財源なくして、公共放送は成り立たず、視聴者がきちんと受信料を負担していくことが、NHKのサービス向上につながっていく。長村さんが「支払率を支持率ととらえる」と話していたように、国民が信頼し、頼りにしている放送局だからこそ、国民が支える意識を持たねばならないと感じた。
 私自身、地震等の災害が起きた時はまずNHKにチャンネルを合わせる。それはやはりNHKに信頼を置いている証拠だろう。他のテレビ局でも報道されるが、「NHKが一番確実」というような思いが少なからずある。「日本には唯一の頼れる公共放送を、支えているひとりが自分である」ということを忘れずにいたい。

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