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井上樹彦 理事 講師:井上樹彦 理事

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記者紹介

記者 西村理紗 立命館大学産業社会学部
現代社会学科
メディア社会専攻

D-PLUS
クリエイティブチーム
2回生 西村理紗
7月12日(土)

第15回 豊かで安心、たしかな未来へ~放送の歴史と“これから”を考える~

 第15回、最終回となったNHK講座には、日本放送協会理事の井上樹彦さんにお越しいただき、今年度のNHK講座の総括をしていただいた。

講義概要

 まず一つ目に、放送の歴史を技術の進歩と併せて振り返った。
NHKの放送の歴史は来年で90年を迎える。1925年に開始されたラジオ放送は多くの人々に受け入れられ重宝された。というのは、1923年に起きた関東大震災を経て、人々が正確かつ迅速な情報を求めていたからである。
 その後1953年にはテレビ放送が開始され、皇太子ご成婚を機に一般家庭にも受像機が普及し始める。1964年の東京オリンピックに合わせてカラー放送が開始され、その後も放送技術研究所の研究成果が放送技術を発達させ、2007年には月周回衛星にハイビジョンカメラを搭載して地球や月面をハイビジョンで撮影することにも成功した。
 そして2011年3月11日に起きた東日本大震災でも、NHKはその技術を駆使して被災地の様子を報道した。全国各地に配置されたロボットカメラやヘリコプターからの映像をリアルタイムで世界中に報道するなど、多くの映像を迅速に人々に伝えたのだ。そして現在、NHKはこの震災で得た教訓を活かし、本部のバックアップ機能の整備やロボットカメラの機能強化などを進めている。
 このように放送の歴史は、技術の進歩に支えられ、大きな出来事に合わせて進歩してきたのだ。

 次に視聴者の変化について振り返った。
テレビが普及した当初、テレビは一家に一台、家族全員で観るものであったが、経済発展や技術的進歩によりテレビが一家に複数台にまで普及し、ビデオデッキの使用も一般化したため、テレビは家族で楽しむものから個人で楽しむものとなった。また、パソコンやスマホの普及により、テレビ業界はインターネットの存在を無視できないようになった。
 その影響か、近年テレビの個人視聴傾向が強かったのだが、2012年にその傾向が止まった。現代のテレビ視聴は録画番組やインターネットでの動画視聴といった個人視聴と、家族との会話やSNSでの交流を目的としたコミュニケーション重視の視聴を両立させた視聴形態が主流となったのだ。

 最後にNHKの制度について振り返った。
多くの人々がインターネットで動画を観るようになった現代。それに合わせてNHKでも動画配信を行っている。
 NHKが常時展開しているサービスは二つである。受信料を財源とする「NHKオンライン」では既放送番組を基本とし、災害危機管理情報や外国人向け情報、広報に関する動画を配信している。一方、利用者負担によって運営されている「NHKオンデマンド」では、見逃した番組の視聴や、オンデマンド限定の動画を配信している。
 また、これ以外にも総務大臣に特認を受けたものや、災害時の臨時対応をインターネット上で行うこともある。ロンドン五輪のライブストリーミングや、東日本大震災の発災時に「ニコニコ動画」等で番組をライブ配信したことなどがそれに当てはまる。
 このように、現在インターネットでの動画配信にも力を入れているNHKであるが、NHKは公共放送であるがゆえに、様々な制約を国から与えられている。二つの動画配信サービスを分けて運営しているのもそのためである。NHKはテレビ放送であろうとインターネット配信であろうと、常にその公共性が問われているのだ。

 放送技術や通信技術の発展を活かした放送、日本の良さを世界に発信する放送を目指していきたい――力強い言葉で最後の講義は締めくくられた。

感想

 テレビの技術は恐ろしい速さで進化し続けていると思う。私が特にそれを感じるのは、レンタルショップで借りたDVDを観ているときだ。私は昔からテレビが大好きで、子供の頃は一日の大半をテレビの前で過ごしていた。当時はテレビの画面に何の不満もなかったのに、今その頃の作品をDVDで観なおしていると、画面の暗さや画質の粗さなどがどうしても気になってしまう。これは、十数年の間にテレビ技術が進歩した証でもあるのだろう。

 最近特に進歩しているのが、テレビとインターネットを取り囲む技術ではないか。どの番組もホームページを持っているのが当たり前、番組のデータ放送連携も当たり前となった現代。今ではSNS連動の番組も増えてきているし、連動していなくても番組放送中にSNSが盛り上がることも珍しいことではなくなった。また、インターネット上にアップされた番組の感想が注目を集め、その番組の視聴率が上がる、というのもよく聞く話だ。
私が最近、特に面白いと感じたのは『軍師官兵衛』第28回「本能寺の変」の放送時にTwitterが大盛り上がりであった、という記事がネットニュースに上がっていたことである。これは一つの番組を通じて多くの人々がTwitter上でつながっていた証であり、SNSが普及したからこそのテレビの楽しみ方であるとしみじみ感じた。

 私は子供の頃からテレビっ子で、それが高じて大学でもテレビをはじめとするメディアについて学んでいる。そんなテレビっ子の私としては、テレビがさらに面白くなるのは大歓迎だ。私は一視聴者として、その絶え間ない進化を応援し続けたい。

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