ピックアップ動画

講師紹介

河内秀則/NHK京都放送局局長 講師:河内秀則/NHK京都放送局局長

松原翔/NHK京都放送局ディレクター 講師:松原翔/NHK京都放送局ディレクター

河内秀則/NHK京都放送局局長 松原翔/NHK京都放送局ディレクター

記者紹介

記者 松島理菜 立命館大学産業社会学部
現代社会学科
メディア社会専攻

D-PLUS
マネジメントチーム
3回生 松島理菜
4月11日(金)

第1回 今年のNHK講座のポイント 番組提案に求められるもの(双方向①)

 今年で13年目を迎えるNHK講座。第1回目の講義にはNHK京都放送局から河内秀則局長と松原翔ディレクターをお迎えした。河内さんは今年のNHK講座の全容について、松原さんは双方向授業の1回目として「番組提案に求められるもの」というテーマで、それぞれお話ししてくださった。

講義概要

 河内局長は、NHK講座のポイントとして以下の3点を挙げられた。
①テレビジャーナリズムの仕事の内容と役割を知ること
②番組制作の流れを知ること
③最新の放送技術を知ること
各回、NHKの様々な分野で活躍するゲストスピーカーを迎え、授業を展開していく。

 講義は河内局長からディレクターの松原さんに引き継がれ、番組提案についての話へと移る。
「番組提案のもとにディレクターというのは平等であること」は、松原さんがNHKに入って魅力を感じた点のひとつだという。入局1年目も10年目も関係なく、面白い提案が採用される。
 松原さんは、「番組提案は、組織の中で自分がジャーナリストとして自分自身であり得る手段」と語り、自らが制作した番組と、その提案書を4つ紹介してくださった。

 まず1つ目の提案は「今、一番出逢いたい人は誰?から始まる提案」である。この場合の「逢いたい」というのは、ただ単に人と対面するだけでなく、もっと深く知りたいという意味である。松原さんは、60歳を過ぎてから大学へ通い始めたという自分の母に「出逢う」番組を制作した。普通だったら、いきなり聞けないようなことも、カメラがあることで背中をおされ、核心に入りやすいという。

 2つ目は「関心を持ち続けていることを、変化球で具体化する提案」だ。松原さんは大学時代シリアに留学経験があり、シリア情勢について伝えたいという思いが強かったそうだ。しかし、松原さんが伝えたい思う内容についてまっすぐに伝える番組を作ることは難しかった。そこで番組では、シリアの隣、ヨルダンで活躍する女性に焦点をあて、その女性とシリアからヨルダンへ逃れてきた人々との関わりを取り上げている。

 3つ目の「テレビの‘あたりまえ’を打ち破る提案」は、提案をまず目に留めてもらうために、型にとらわれず手紙形式で提案書を作成したものであった。「縁切り神社」として有名な安井金比羅宮を訪れる人たちにインタビューをしたドキュメンタリーである。「縁切り神社」の独特の空気感を伝えたいと思い、手紙形式をとったという。

 4つ目は「ライフワークとして、ひとつのテーマを深める提案」。松原さんは「看取り」をテーマに番組を制作した。この提案書は写真を入れることで、文字だけで伝えにくい部分を補っている。ひとつのテーマを取材し続け、複数回の放送となると、番組を見た人とのつながりが出てくるのがいいところだという。

 4つの番組を紹介し、松原さんは最後に、提案を書いたりテレビを作ったりする中で、一番大事だと考えていることを教えてくださった。それは「一緒にやれる仲間がいるか、チームを作れるか」だという。番組制作には様々な人が関わっている。それが多くの視点を盛り込むことにつながる。

 双方向授業ということで、今回の授業内容も参考にしながら、受講生は各自で番組提案書を作成し提出する。そして、2回目の双方向授業である14回目の講義で、自分が書いた提案書が評価コメントとともに返却され、番組提案について再度学ぶこととなる。
 松原さんは、今回提案を作る際にも、提出する前に一度誰かに目を通してもらい意見をもらうと、書く内容や番組内での視点が、また少し変わってくるかもしれない、と受講生へのアドバイスをし、講義を締めた。

感想

 普段よく観るテレビ番組について考えてみた。バラエティ、ドラマ、情報番組、音楽番組や、アニメ。自分が観る番組の選択肢の中に、ドキュメンタリーという枠が、ほぼ存在していないという事実に気が付いた。
 4つ目の提案の話の中で松原さんは「ドキュメンタリーというのは暗い気持ちになる(ものもある)から観る気にならないという人がいる」というお話をしていた。ドキリとしたのは、自分にもその気があったからだ。「ドキュメンタリーは重い」。そんな何となくの、勝手なイメージを持っていたのである。
 しかし授業の中で視聴した番組はどれも興味深く、「ドキュメンタリーってこんなに面白かったっけ?」ふとそんなことを思った。番組の作り手がその場にいて、どのような経緯でその番組ができたのか知ることができたため、興味を持ってみることができたという面もある。しかし、それを抜いても番組を観て感じることは多かった。
 また、2つ目の提案紹介で松原さんが話してくれた「自分が関心のあることを、なぜ今伝えるべきか考え、時には別の要素を織り交ぜることで具体化する」という話が印象的であった。ストレートがだめだったから諦めるのではなく、変化球でも視聴者に届ける。自分が伝えたいことを形にする方法はいくらでも存在し、発信することができれば、受け手に伝わるものは少なからずあるはずだ。
 テレビは娯楽。家でリラックスしながら楽しむもの。その考えも間違っていない。しかし同時に、多くの人に情報を届けることができるマスメディアの代表格である。
 この番組で作り手たちは視聴者に何を届けたかったのか、何を伝えたかったのか。これまでとは違う視点でテレビ番組について考えるきっかけとなる授業であった。

  HOME   NEXT