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二村伸/解説委員室 解説主幹 講師:二村伸/解説委員室 解説主幹

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記者紹介

記者 荻野一樹 立命館大学産業社会学部
現代社会学科
現代社会専攻

D-PLUS
マネジメントチーム
2回生 荻野一樹
5月23日(金)

第6回 NHKの国際報道

 本年度第6回のNHK講座は、解説委員室解説主幹であり、国際ニュースを担当しておられる二村伸さんをお迎えした。二村さんには今回、「NHKの国際報道」についてお話し頂いた。

講義概要

 「国際報道と聞いてもあまり関心がない人が多いのではないでしょうか」と切り出した二村さん。普段の生活で海外のことが関係してくることはあまりなく、ニュースを聞いても私たちはピンとこない。そんなことを思っての切り出しであったのだろう。確かに日本で暮らしていて、海外で起こること自体はあまり関係がない。しかし現在、海外に支社や工場を置く日本企業は多く、海外で働く日本人も多い。自分は違っても、知り合いにそのような人がいるかもしれない。また、海外から日本に来る人も近年とても多くなっている。海外の人たちとやり取りをすることはもはや日本人にとって避けられないことであり、外国人との相互の理解を図るためにも、海外の情報は必要なのである。だからこそ海外の情報に目を向けてほしいと二村さんは言う。
まず二村さんは国際報道に取り組むNHKの体制について話した。国際報道には海外のニュースを国内に伝える側面と国内やアジアの情報を世界各国に伝える側面がある。
 NHKでは約80人の日本人スタッフが、その倍ほどの現地スタッフと共に海外で働いている。また日本では約50人のスタッフが海外からの情報を24時間体制でチェックし、海外への情報の発信を行ったりしている。
 そして、NHK WORLDのWORLD TVという活動では24時間、英語で日本やアジア、そして世界の情報も発信している。テレビ放送の影響力は大きいため、この放送は世界に日本の立場を伝えるという意味でとても重要なことだと二村さんは言う。しかし、あくまでこの放送の目的は世界に日本のことを知ってもらってお互いに理解を深めることであり、政府の宣伝機関ではないということを強調していた。
 次に二村さんは海外の情報の取材について話した。国際報道だからといって国内の取材と大きく違うわけではなく、あらゆる事柄を「正確にわかりやすく」かつ「迅速に」伝えることが基本だという。しかし、日本ではNHKの名前を出せば割とすんなり取材ができるが、海外ではNHKの名前が通じないことも多い。場合によっては「どうして日本人が取材をしているのだ」というやりとりから入ることも多く、取材や入国の許可すら下りないこともあるという。また、入国した後は長い間滞在し、取材を続けなくてはならない。このように高い取材力、ひいては交渉力、そして体力が必要になってくる点は国内とは違うと言えるとのことだった。
 続いて、デジタル化の進歩による国際報道の変化に関する話へ移った。かつては電話などで行っていたニュース原稿の送受信が、現在ではパソコンで行うことができる。多くのデータを短時間で、間違いも少なくやり取りできるようになったことが、まず一つ大きな変化だという。そして映像の送受信に関してだが、海外の映像を日本に送ることは、通信衛星など、様々な設備を介さなくてはならず、手間がかかる上に莫大な費用がかかっていた。しかし現在、光ファイバーやインターネットといったものが使えるようになり、速くて費用もかけずに映像の送受信を行うことが可能になった。また、映像の送受信が簡単になったことにより、映像の発信者に誰でもなることができる。ここ数年、そのような画期的な時代になっていると二村さんは強調した。
 二村さんは、「ニュースの優先度」の話もした。優先度の判断基準には、起こった事件の「日本からの距離」「日本と関係があるか」「事件性があるか」といったことがあるらしい。日本は国内の報道に比べて国際報道の注目度が低く、世界のトップニュースであっても、日本ではほとんど放送されない、といった問題があるという。
 「戦争の最初の犠牲者は真実」、この言葉を皮切りに二村さんは戦争報道にも触れた。戦時中の国は情報操作をすることが多く、公正な報道が難しい。「異なる意見がある時は、双方の立場を伝える」、このことにより中立を保っているという。
 最後に、「アラブの春」と呼ばれる「民衆による革命」が起こっている地域を例に、情報を伝えなくてはいけないけれども、現場が危険なこともある。安全をいかに確保しながら正確な情報を送るか、ということが国際報道の一番の課題であると述べ、講義は締めくくられた。

感想

 私は海外のニュースに対して、関心を持っている方だと思っている。海外は、文化、法律をはじめ、何もかもが日本とは違う。日本では起こりえないようなことも海外では普通であったりする。国際報道を通してそのような情報を知ることができることに対して面白さを感じずにはいられない。
 今回の講義を受け、そのような気持ちが増したと同時に、国際報道が知的好奇心のためだけのものではないと認識を新たにした。現代の日本は海外との関わりなしに成り立たないと言って間違いないだろう。たとえ海外に自分から行くことがなくても海外から人が入ってくる。そういう時代である。経営などの直接的な目的でなくても、コミュニケーションのために海外の情報が必要になってくるに違いない。
 また、国際報道の手間や危険性についても今回の講義で学ぶことができた。海外の情報を日本に発信するのは決して簡単なことではない。海外のニュースに興味関心を持つ。そしてできることならそれらの情報を海外との関わりに役立てていく。このことが国際報道に携わる方々への最大の敬意であり、感謝であると思う。

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