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性犯罪の再犯防止を
『教育新聞』平成17年(2005年)3月3日(木曜日) 第2523号
小宅理沙


 アメリカでは、1994年に当時7歳であったメーガン・カンカちゃんが、向かいの家に住む前科2犯の幼児虐待歴を持つ男に強姦され、殺害されるという事件があった。カンカ一家は向かいの家に住む犯人の幼児虐待歴を知っておらず、もし前科歴の事実が分かっていれば悲劇は事前に防げたはずだということから、1996年には再犯の恐れがある性犯罪前歴者の氏名や住所を、地域住民に知らせるという「メーガン法」が連邦法として成立した。
 そして、2004年11月に奈良市で小学1年生女児が誘拐され、強姦されたあげくに殺害されるという事件が起きた。メーガンちゃん事件と同様に、昨年の12月30日に逮捕された小林薫容疑者(36)に過去2度の幼女への性犯罪歴があることを、地域住民、そして奈良県警までもが知ることはなかった。これをきっかけとし、日本でも性犯罪者の「再犯率」が注目を集め、再犯防止目的と考えられる性犯罪者の居住地情報開示について様々な議論がなされるようになった。
 日本における性犯罪者の再犯率を、警察庁ウェブサイトの統計資料「平成15年の犯罪」の「43 罪種別 初犯者・再犯者別 再犯者の前回処分別 検挙人員」にて確認してみた。すると、「強姦」で逮捕された場合なら、総数1342人のうち初犯者が676人、再犯者が666人、つまり再犯者の割合は49.6%、また、「強制わいせつ」であれば、2273人のうち再犯者は935人であり、再犯率は41.1%となる。ただし、ここでいう「再犯」とは刑法犯や特別法犯の別を問わないため、過去に強姦で逮捕された者が再び強姦で再逮捕される割合が49.6%ということを意味するわけではない。また、「性犯罪」とひとくくりに語られがちだが、成人に対する性犯罪者と子どもに対する性犯罪者の再犯率では違いがあると予想される。実際「Child Abuse And Neglect」(Greenberg, 2000)によると、アメリカでは子どもに対する性犯罪においても、他人の子どもへの性犯罪加害者と、自分の子どもへの性犯罪加害者(親)とでは、再犯率に違いが確認されている。
 ともあれ、13日に行われた警察庁と法務省の第1回協議では、法務省が警察側に居住地情報を提供することで合意した。ただし、地域住民への情報開示は保留された。法務省によれば、情報開示が元受刑者の更生や社会復帰の阻害になるため反対したとのことであるが、プライバシーが侵される危険にあるのは元受刑者だけではない。家制度を強烈に重視する日本においては、情報開示により元受刑者の家族や親戚までもが社会から阻害されることになろう。そして、元受刑者の情報開示により被害者が特定されたとなれば、まだまだ「被害者に落ち度がある」と言われがちなこの日本社会において、被害者はプライバシーを侵害されたあげく、社会からの偏見の目にさらされることになりかねない。
 アメリカでは、性犯罪者の住所、氏名、犯罪内容、そして顔写真までもがインターネットで検索できる州が多い。韓国でも2001年から、量刑や被害者の年齢にもよるが、アメリカと同様、性犯罪者の氏名や住所、犯罪内容などをインターネットや官報から知ることができる。また、英国では、幼児ポルノサイトを見た場合でさえも指紋やDNA採取がなされ、性犯罪者リストに5年間登録される。一般公開はされないが、地域の学校などへは関連情報を通知し、また対象者は、子どもと接する仕事や行事参加を禁止されるという。さらに、英国やアメリカでは、子どもへの性犯罪常習犯者などを全地球測位システム(GPS)にて監視し、常に所在地確認が可能となるシステムも導入されつつあるということだ。
 日本においても性犯罪者の情報開示については様々な意見もあるが、すでに情報開示システム等が成立している他国の例を慎重に研究し、特に性犯罪者の家族や被害者側の人権が侵害されないための仕組みを検討する必要がある。まずは、正確な「性犯罪再犯率」、それも他人の子どもへの性犯罪と自分の子どもへの性犯罪、そして成人への性犯罪、これら性犯罪別の再犯率を明確にすることが当面の課題である。あるいは、(性)犯罪から子どもを守るための啓発活動や教育への取り組みもまた不可欠となろう。そして何よりも、他国の性犯罪者への「更正プログラム」研究をただちに始め、性犯罪者が更正されないままの社会復帰をけっして認めてはならない。

警察庁http://www.npa.go.jp/toukei/keiji19/h15_toukei.htm

立命館大学大学院 小宅理沙


UP:20050603 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/2005/0303kr.htm
小宅理沙 

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