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『国富論』
Smith, Adam 1776 An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations
=20000516 水田 洋(監訳・杉山 忠平訳,『国富論』,岩波文庫



Smith, Adam 1776 An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations=20000516 水田 洋(監訳・杉山 忠平訳,『国富論』,岩波文庫

<目次>

・凡例

・第三版の読者に

・第四版の読者に

・序文および本書の構想

第一編 労働の生産力の改良、および労働の生産物が国民ののさまざまな階層のあいだに自然に分配される順序について

 第一章 分業について

 第二章 分業を生む原理について

 第三章 分業は市場の広さによって制限されるということ

 第四章 貨弊の起源と使用について

 第五章 商品の実質価格と名目価格について、すなわちその労働価格と貨弊価格について

 第六章 商品の価格の構成部分について

 第七章 商品の自然価格と市場価格について

 第八章 労働の賃金について

 第九章 貯えの利潤について

 第一〇章 労働と貯えのさまざまな用途における賃金と利潤について

  第一節 職業の性質自体から生じる不平等

  第二節 ヨーロッパの政策によって引き起こされる不平等

 第一一章 地代について

  第一節 つねに地代を提供する土地生産物について

  第二節 地代をときには提供し、ときには提供しない土地生産物について

  第三節 つねに地代を提供する種類の生産物と、ときによって地代を提供したりしなかったりする種類の生産物との、それぞれの価値のあいだの割合の変動について

   過去四世紀間の銀の価値の変動についての余論

    第一期

    第二期

    第三期

    金銀の比価の変動

    銀の価値は依然として減少しつづけているという疑念の根拠

    改良の進行が三つのことなる種類の原生産物に及ぼすさまざまな効果

     第一の種類

     第二の種類

     第三の種類

    銀の価値の変動にかんする余論の結論

    改良の進行が製造品の実質価格に及ぼす影響

  本章の結論


第二編 貯えの性質と蓄積と用途について

  序論

 第一章 貯えの分類について

 第二章 社会の貯え全体の一特定部門と考えられる貨幣について、すなわち国民資本の維持費について

 第三章 資本の蓄積について、あるいは生産的労働と不生産的労働について

 第四章 利子つきで貸しつけられる貯えについて

 第五章 資本のさまざまな使用について


第三篇 さまざまな国民における富裕の進歩のちがいについて

 第一章 富裕の自然的進歩について

 第二章 ローマ帝国没落後のヨーロッパの旧状での農業の阻害について

 第三章 ローマ帝国没落後の諸都市の発生と発達について

 第四章 都市の商業はどのようにして農村の改良に寄与したか


第四編 政治経済学の諸体系について

  序論

 第一章 商業的あるいは商人の体系の原理について

 第二章 国内で生産できる品物の外国からの輸入にたいする制限について

 第三章 貿易差額が不利と想定される諸国からの、ほとんどすべての種類の品物の輸入にたいする特別の制限について

  第一節 商業主義の原理からみてさえそれらの制限が不合理であることについて預金銀行、とくにアムステルダムの預金銀行にかんする余論

  第二節 他の諸原理からみてもそれらの特別の制限が不合理であることについて

 第四章 戻し税について

 第五章 奨励金について

   穀物貿易と穀物法にかんする余論

 第六章 通商条約について

 第七章 植民地について

  第一節 新植民地建設の動機について

  第二節 新植民地の繁栄の諸原因

  第三節 アメリカの発見と、喜望峰経由の東インド航路の発見から、ヨーロッパが引き出した利益について

 第八章 重商主義についての結論

 第九章 農業主義について、すなわち、土地の生産物がすべての国の収入と富の唯一または主要な源泉だとする政治経済学の諸体系について


第五編 主権者または国家の収入について

 第一章 主権者または国家の経費について

  第一節 防衛費について

  第二節 司法費について

  第三節 公共事業と公共施設の経費について

   第一項 社会の商業を助長するための公共事業と公共施設について

    そして第一に、商業一般の助長に必要な公共事業と公共施設について

    商業の特定部門を助長するのに必要な公共事業と公共施設について

   第二項 青少年教育のための施設の経費について

   第三項 あらゆる年齢の人びとの教化のための施設の経費について

  第四節 主権者の尊厳を保つための経費について

  本章の結論

 第二章 社会の一般収入あるいは公収入の源泉について

  第一節 主権者または共同社会の専属でありうる原資すなわち源泉について

  第二節 租税について

   第一項 賃料にたいする税、地代にたいする税

    地代にではなく土地の生産物に比例する税

    家賃にたいする税

   第二項 利潤、すなわち貯えから生じる収入にたいする税

    特定の職業の利潤にたいする税

    第一項と第二項への付録。土地、家屋、および貯えの基本価値にたいする税

   第三項 労働賃金にたいする税

   第四項 すべての種類の収入に無差別にかかることを目的とする税

    人頭税

    消費財にたいする税

 第三章 公債について


・解説(水田 洋)

・索引(引照文献/人名・地名・国名/事項)

<岩波文庫の帯>

・第一冊
経済学最初の体系的叙述として、古典中の古典と称せられる不朽の名著。いわゆる「見えざる手」による予定調和的自由放任政策を主張した本書は、その実質において近代市民社会の科学的分析であり、後のあらゆる諸学説はここに源を発する。新訳。

・第二冊
いったん分業が完全に導入されると、1人の人間の労働の生産物は、その時々の自分の必要の極めてわずかの部分しか満たすことができない―第2編「貯えの性質と蓄積と用途について」から第4編「政治経済学の諸体系について」の第4章「戻し税」まで。

・第三冊
第三冊には、第四編「政治経済学の諸体系について」の第五章から第五編「主権者または国家の収入について」の第一章までを収める。主として、重商主義の貿易独占と植民地支配への批判で、アダム・スミスのアメリカ革命への支持を予知させる。

・第四冊
第五編第一章第三節「公共事業と公共施設の経費について」の続き。国家財政の収入・支出の諸項目を検討、適正な支出の範囲、課税の原則、公債の削減方法について述べる。一九世紀の自由主義時代、世界諸国の経済政策の基調となった経済学の古典。


<リンク>

・「国富論」の新訳に取り組んでいるページ(原著が読める)
http://homepage3.nifty.com/hon-yaku/tsushin/koten/

・山形浩生さんの新訳の試み
http://www.genpaku.org/smith01/smith00.pdf


<全体の見取り図>(「序文および本書の構想」を基に作成)

☆☆労働(=原資)→消費(生活の必需品や便益品):労働により直接生産物がつくられるか、その生産物で他国からの生産物を購入するかによって、供給される

「したがってこの生産物と、またはこの生産物で購入されるものと、それを消費するはずの人びとの数との割合が大きいか小さいかに応じて、その国民が必要とするすべての必需品および便益品の供給を受ける度合がよかったり、悪かったりすることになる。」(p19)

・上記の割合を規制するもの:1.その国の労働者の熟練、腕前、判断力 2.有用な労働に従事する人々とそうでない人々の割合

「この供給が豊かであるか乏しいかはまたさらに、その二つの事情のうちの後者によるところが大きいように思われる。猟師や漁夫からなる未開民族のなかでも、働くことができる個人はすべて、多かれ少なかれ有用労働に従事して、自分自身、あるいは彼の家族または種族のうちで、狩猟や漁獲に赴くには高齢すぎたり、若すぎたり、病弱にすぎたりするような者を扶養することにつとめる。しかしながら、そのような民族は極度に貧しいために、彼らの幼児や高齢者や長びく病気にかかっている者を、ときには直接に殺害したり、ときには捨てておいて飢え死にさせたり、野獣に食われるままにする必要に、しばしば迫られるし、あるいはすくなくとも、その必要に迫られていると考える。これに反し、文明化し繁栄している民族のあいだでは、多数の人びとは全然労働しないのに、働く人びとの大部分よりも一〇倍、しばしば一〇〇倍もの労働の生産物を消費する。しかしその社会の労働全体の生産物がきわめて大量であるため、しばしばすべての人が豊富な供給を受けるし、最低最貧の職人ですら、質素かつ勤勉であれば、どんな未開人が獲得しうるよりも大きな割合の、生活必需品や便益品を享受することができる。」(p19〜20)

☆第一編:労働の生産力のこの増大の原因、および労働の生産物が自然に社会ののさまざまな階層や状態の人々に配分される順序が主題

・上述の1が同じであるならば、2は、彼らを働かせる元本の量と、それが用いられる特定の仕方とに比例する

☆第二編:元本の性質、それがしだいに蓄積されていく仕方、そしてそれの用いられかたの相違に応じてそれが作動させる労働の分量の相違を扱う

・1が進歩した諸国では、労働の一般的な指揮または管理の上で非常にさまざまな計画がなされた(例:農村の産業に対する奨励や、町の産業に対する奨励といった政策)

☆第三編:ローマ帝国没落以来のヨーロッパの政策(手仕事・製造業・商業>農業)を導入し確立したと思われる事情

「それらのさまざまな計画は、まず特定層の人びとの私的な利害関心や偏見によって、おそらく、社会の全般的福祉にたいする影響について予見も顧慮もなしに、導入されたのであった。」(p21)

・上述の計画→様々な理論→学識者の意見、王侯や主権国家の政治方針

☆第四編:そうした様々な理論や、それらが様々な時代や国民に及ぼした主要な影響の説明

・第二編第五章:資本のさまざまな使用について
→第三篇:ヨーロッパ政策=町>田舎
→第四編:ヨーロッパ政策=中継貿易>農業

・第一〜第四編:国民大衆の収入は何であるか、様々な時代と国民において彼らの年々の消費をまかなった原資がどのような性質であったかの説明


☆第五編:主権者または共同社会の収入について

1.主権者または共同社会の必要な費用は何か、またその費用のうちどれがそれの全体の一般的拠出によって支払われるべきか、またそのうちのどれが社会のある特定部分だけの、つまりある特定の成員たちの拠出によって支払われるべきか。

2.社会全体が負担すべき費用の支払いを社会全体に負担させうるには、そのような方法があるのか、またそれらの方法の長所と短所は何か

3.ほとんどすべての近代の政府がこの収入のある部分を抵当にいれるに至った、つまり債務契約を結ぶに至った理由や原因は何か、また真の富すなわち社会の土地と労働の年々の生産物にたいするそうした債務の影響はどのようなものであったか


<第一編の流れ>
人間本性のある性向(ある物を他の物と取引し、交換し、交易する性向)→分業→交換→貨幣:第一〜第三章
→貨幣:第四章
→貨幣を使う時のルールについて:第五〜第七章
→自然価格を決定する自然率を決めるものは何か?:第八〜第一一章


<気になるところのメモや引用(かっこ内の数字は、その巻のページ数)>

・読む前の疑問点
1経済とは何か、資本の論理とは何か
2豊かさとは何か
3成長の持続と失業の関係

・読後の感想
体系的なので読みやすい。具体例が豊富。大学教育批判などは痛烈で面白い。

第一巻

☆「各人の貧富は人間生活の必需品、便益品、娯楽品を享受する能力がどの程度あるかによる。しかしいったん分業が徹底的に行われたのちは、人が自分の労働でまかないうるのは、これらのうちのごくわずかな部分にすぎない。その圧倒的大部分を彼は他の人びとの労働にまたねばならず、彼の貧富はかれが支配しうる労働、つまり彼が購買しうる労働の量に対応する。したがってある商品の価値は、その商品を所有し、かつそれを自分で使用するつもりも消費するつもりもなく、他の商品と交換しようと思っている人にとっては、それによって彼が購買または支配しうる労働の量に等しい。したがって労働がすべての商品の交換価値の真の尺度なのである。」(p63)


☆「実際には、鋳貨のなかのさまざまな金属のそれぞれの価値のあいだに、ある一つの法廷割合が存続するあいだは、もっとも貴重な金属の価値が全鋳貨の価値を規制する。」(p81)

☆「貯えの利潤はある特定種類の労働、すなわち監督および指揮という労働の賃金の別名にすぎないとおそらく思われるだろう。しかし利潤はまったくちがうものであって、まったく別の原理によって規制され、監督および指揮というこの想定された労働の量やはげしさや創意には少しも比例しない。それは使用された貯えの価値だけによって左右され、その大小はこの貯えの大きさに比例する。」(p93)

☆「文明国では、交換価値が労働だけから生じる商品は少ししかなく、圧倒的大部分の商品の交換価値には地代と利潤が大いに寄与しているのであるから、その国の労働の年々の生産物はつねに、それを産出し、加工し、市場にもってくるのに用いられる労働よりもはるかに多量の労働を、購買または支配するのにたりるだろう。もし社会が、年々購買できるすべての労働を、年々用いるものとすれば、労働の量は毎年大いに増加するだろうから、後続のどの年の生産物も前年の生産物よりもはるかに大きな価値をもつことになるだろう。しかし年々の生産物全体が勤勉な人びとを維持するのに用いられるような国は存在しない。どこでも働かない者がそのかなりの部分を消費する。そして生産物がそれら二つのことなる階層の人びとのあいだで年々分割される割合の相違に応じて、その通常あるいは平均の価値は、年から年へ増加するか、あるいは減少するか、あるいは同一でありつづけるかのいずれがかであるにちがいない。」(p102)

☆「しかし、それぞれの個別商品の市場価格がこのようにしてたえず自然価格にむけて引きよせられているといっていいだろうが、ときには特定の偶発事が、ときには自然的原因が、またときには特定の行政上の規制が、多くの商品の市場価格を長期にわたって自然価格よりかなり高く引き上げておくことがある。」(p111)

☆「独占価格は、どのばあいにも、獲得できる最高の価格である。逆に、自然価格、すなわち自由競争価格は、たしかにすべてのばあいにではないにしても、かなりの期間にわたって獲得できる最低の価格である。一方は、どのばあいにも、買手からしぼりとることのできる最高の価格、すなわち買手が与えることに同意すると思われる最高の価格である。他方は、売り手が不満なく受けることができ、また同時に自分たちの仕事を継続することのできる最低の価格である。」(p114)

☆「労働の賃金の上昇を引き起こすのは、国富が実際に大きいことではなく、それがひきつづき増大していることである。したがって労働の賃金がもっとも高いのは、もっとも富裕な国ぐににおいてではなく、もっとも繁栄しつつある国ぐにに、すなわちもっとも急速に富裕になりつつある国ぐににおいてである。」(p127)

☆「一国の富がきわめて大きくても、もしその国が長いあいだ停滞的であるならば、われわれはその国で労働の賃金がきわめて高いことを期待してはならない。賃金の支払いにあてられる原資、すなわちその国の住民の収入と貯えは最大の大きさであるかもしれないが、もしそれが数世紀ものあいだ同一または同一の大きさであるなら、毎年の就業労働者数は翌年必要とされる労働者数を容易に満たしうるだろうし、それを超えさえもするだろう。人手の不足はめったにありえないだろうし、親方たちが人手を獲得するためにたがいにせりあわざるをえないということも、ありえないだろう。・・・」(p129)

出生率の低下という状況でもあてはまるのか?

☆「・・・。このようなしかたで、人間にたいする需要は、他のどんな商品にたいする需要とも同じように、必然的に人間の生産を規制し、その進行があまりにゆるやかなときには促進し、あまりにも急速なときには停止させるのである。」(p145)

☆「食物生産についての土地の肥沃度の増加は、どんなものでも、改良が行われた土地の価値を増すばかりでなく、他の多くの土地生産物にたいする新しい需要をつくりだすことによって、それらの土地の価値の増大にも同様に寄与する。土地改良の結果、多くの人びとが自分たち自身の消費しうるところを超えて自由にできるようになった豊富な食物は、貴金属や宝石にたいする需要を、衣服、住居、家具、身のまわりの品物という他のすべての便益品や装飾品への需要とともにつくりだす、大きな原因である。食物は世界の富の主要部分をなすばかりでなく、他の多くの種類の富に価値の主要部分を与えるのも食物の豊富さである。キューバやサント・ドミンゴの貧しい住民は、スペイン人によってはじめて発見されたとき、自分たちの髪や衣服の諸部分に金の小片をつけるのをつねとしていた。彼らはそうした金片を、われわれがふつうよりいくらか美しい小石を評価する程度にしか、評価しなかったようであり、拾うだけには値するが、それをほしがるだれにたいしても拒むに値するほどのものではないと考えたようでる。彼らは新来の客が望めばすぐそれを与え、なにか効果な贈物をしたと思っているようにもみえなかった。彼はスペイン人がそれを獲得しようとする熱狂ぶりをみて驚いた。そして自分たちのあいだではつねにかくも乏しい食物を、多数の人びとがありあまるほど自由にできる国が、どこかに存在しうるとは、そして彼らがこの安っぽいひかりものの、ごくわずかとひきかえに、多数の人びとが家族全員を多年にわたって維持できるほどの食物をよろこんで与えるとは、考えたことがなかった。もし彼らがこのことを理解させられていたならば、スペイン人の熱狂も彼らを驚かせなかっただろう。」(p304〜305)

☆「・・・、われわれは、どの社会状態でも、どの改良段階でも、等量の穀物は、等量の他のどのような土地原生産物よりも近似的に、等量の労働を代表するだろうし、つまりそれと等価だろうと、確信していいだろう。」(p327)

商品の価値にたいする割合よりも大きいのがふつうであるにちがいない。」(p368)
☆「自分たちの利害についての知識のこの優越によって、彼らはしばしば彼の寛大さにつけこみ、郷士の利害ではなく自分たちの利害が、公共の利害なのだというまことに単純ではあるが正直な信念から、郷士を説得して彼の利益をも公共の利益をも放棄させてきたのである。」(p434)

アクターとインタレストが意識されている

第二巻

☆「分業がなく、交換がめったに行われず、だれもが自分ですべてのものを調達する未開状態の社会では、社会の仕事を遂行するために、貯えがいくらかでもまえもって蓄積されたり貯蔵されたりする必要はない。だれでも自分自身の勤労で、そのときどきに生じる必要を満たそうとつとめる。彼は、空腹のときは狩をしに森へ行くし、衣服がすりきれれば、最初に殺した大きな動物の皮を身につけるし、小屋がこわれかかれば、いちばん手近な木や泥炭でできるだけうまく処理する。
 しかしいったん分業が完全に導入されると、一人の人間の労働の生産物は、そのときどきの自分の必要のきわめてわずかな部分しか満たすことができない。そのはるかに大きな部分は、他の人びとの労働の生産物で満たされるのであって、彼はそれを彼自身の労働の生産物で、あるいは同じことであるが、その生産物の価格で購買するのである。しかしこの購買は、彼自身の労働の生産物が完成されているだけでなく、売られてしまうまでは、行われることができない。したがって、すくなくともこれら二つのことがなしとげられうるときまでは、彼の生活を維持し、彼の仕事の材料と道具とを彼に供給するにたりるだけの、さまざまな種類の品物の貯えがどこかに貯蔵されていなければならない。・・・」(p15〜16)

☆「しかしどの社会でも、その年々の収入は、つねにその社会の勤労の年々の生産物全体の交換価値と正確に等しい。あるいはむしろ、その交換価値と正確に同一物なのである。したがって、どの個人もできるだけ、自分の資本を国内の勤労を支えることとともに、そうすることでその生産物が最大の価値をもつようにこの勤労を方向づけることにも、つとめるのであるから、どの個人も必然的に、その社会の年々の収入をできるだけ大きくしようと、骨を折ることになるのである。たしかに彼は、一般に公共の利益を推進しようと意図してもいないし、どれほど推進しているかを知っているわけでもない。国外の勤労よりは国内の勤労を支えることを選ぶことによって、彼はただ彼自身の安全だけを意図しているのであり、またその勤労を、その生産物が最大の価値をもつようなしかたで方向づけることによって、彼はただ彼自身の儲けだけを意図しているのである。そして彼はこのばあいにも、他の多くのばあいと同様に、みえない手に導かれて、彼の意図のなかにまったくなかった目的を推進するようになるのである。またそれが彼の意図のなかにまったくなかったとういことは、かならずしもつねに社会にとってそれだけ悪いわけではない。自分自身の利益を追求することによって、彼はしばしば、実際に社会の利益を推進しようとするばあいよりも効果的に、それを推進する。公共の利益のために仕事をするなどと気どっている人びとによって、あまり大きな利益が実現された例を私はまったく知らない。たしかにそういう気どりは、商人たちのあいだであまりよくあることではなく、彼らを説得してそれをやめさせるには、ごくわずかな言葉しかつかう必要はないのである。」(p303〜304)

第三巻

☆「成人に達すると、労働の高価格と土地の低価格とが、彼らの父親が彼らのまえにしたのと同じようにして、自立することを可能にする。」(p127)

☆「愚行と不正が、それらの植民地の当初の建設計画を支配し指導した原理であったように思われる。すなわち、金銀山をさがし求めた愚行と、ヨーロッパ人にかりにも危害を加えるどころが、最初の冒険者たちを親切と歓待のあらゆるしるしをもって迎えた無害な原住民の国土を領有しようと切望する不正義である。」(p169)

☆「したがって農業は、限られた市場という阻害状況のもとでも、製造業よりもはるかによく自立できる。」(p332)

第四巻

「女性教育のための公共施設は何もないし、したがって彼らの教育の通常の過程には無用なもの、ばかげたもの、奇怪なものは何もない。」(p48)

☆「しかし臆病者、すなわち自分を守ることも、復習をすることもできない者は、明らかに、人間の性格(※2)のもっとも基本的な部分の一つを欠いている。そういう人は、精神が不完全でありゆがんでいるのであって、肉体のもっとも基本的な部分のどれかを、失うかつかえなくなった人が、身体的に不完全で変形しているのと同じである。この二人のうちでは、明らかに前者のほうがあわれであり、悲惨である。なぜなら幸福と悲惨はまったく精神のなかにあって、必然的に、身体の状態よりも、精神の状態が健康か不健康か不完全か完全かに、多く依存するからである。国民の武勇の精神が社会の防衛にとってなんの役に立たないにしても、臆病さのなかにかならず含まれている種類の精神的な不完全さん、ゆがみ、みじめさが、国民大衆にひろがるのを防止することは、やはり政府のもっとも真剣な配慮に値するだろう。それは癩病(※3)あるいはその他なんであれいとわしく不快な病気が、致命的でもないにしても、彼らのあいだにひろがるのを防止することが、政府のもっても真剣な配慮に値するだろうのと同じである。そのような配慮が、それほどにも大きな公共的害悪を防正する以外には、おそらくなんの公共的利益をもたらしえないにしても、そうなのである。」(p58〜59)

「※2 人間の性格 the character of a man という言葉に、スミスが女性を含めているかどうかは、わからない。」(訳注、p59)

「※3 癩病 leprosy,lepra は、現在ではハンセン病とよばれ、伝染性はきわめて少ないことがわかっているが、中世ヨーロッパでは不治の伝染病として恐れられ、病人は市民権を奪われて隔離された。」(訳注、p59)

☆「しかし自発的寄進、信託権、その他の脱法行為によって、多くの地方で非国教徒の教師たちのために自立の生計費が与えられるようになったため、それらの教師たちの熱意や活動が大いに減退したようである。」(p62)

☆「・・・。その量は聖職者が自分で消費できる量をはるかに超えていたし、彼らがその超過分と交換できる生産物をつくる技術も製造業もなかった。聖職者がこの巨大な余剰から利益を引き出すには、大貴族たちが収入のうちのこれと同じような余剰を使用するのと同じやりかたで、贅沢のかぎりの接待や、きわめて広範な慈善にしようするしかなかった。したがって昔の聖職者の接待や慈善は、きわめて大きかったといわれる。」(p86)
☆「技術と製造業と商業のゆるやかな改良、つまり大貴族の権力を破壊したのと同じ原因が、同じようにして、ヨーロッパの大半をつうじて、聖職者の世俗的権力のすべてを破壊した。大貴族と同様に聖職者も、技術と製造業と商業の生産物のなかに、自分たちの原生産物と交換できるものを見いだしたのであり、それによって自分たちの全収入を、そのかなりの部分を他の人びとに与えることなく、自分一身に費やしてしまう方法を見いだしたのである。彼らの慈善はしだいに範囲を縮め、彼らの接待はしだいに気前のよさを減じ、惜しみなさを減じた。その結果、彼らの従者は数を減じていき、しだいにまったく消失していった。大貴族と同様に、聖職者も、自分たちの領地からより多くの地代を手にいれて、それを同じように彼ら自身の私的な虚栄と愚行を満足させるのに費やしたいと考えた。しかしこのような地代の増加は、彼らの借地人に借地権を与えることによってしか手に入れられなかったのであり、そのことによって借地人は彼らから大幅に独立したのである。」(p89〜90)

☆「一、すべての国の臣民は、できるだけ各人の能力に比例して、すなわち、各人がそれぞれの国家の保護のもとで享受する収入に比例して、政府を支えるために拠出するべきである。統治の経費の、大国民のなかの個々人にたいする関係は、大領地での管理費の共同借地人にたいする関係に似ていて、すべての共同借地人は、その領地にたいするそれぞれの利害関係に比例して拠出しなければならないのである。いわゆる課税の公平または不公平は、この原則を守るか無視するかにかかっている。このさいはっきりと述べておかなければならないのは、上述の三種類の収入のうちで、終極的にはそのうちの一つだけにかかる税は、すべて、他の二つの収入に影響しないかぎり、必然的に不公平だということである。」(p133)

☆「敷地代も通常の地代も、多くのばあい、その所有者が何も配慮や注意をしなくても、はいってくる種類の収入である。この収入の一部が、国家の経費をまかなうために彼から取り上げられるとしても、それによってどんな種類の勤労も阻害されはしないだろう。その社会の土地と労働の年々の生産物、すなわち国民大衆の真の富と収入は、そうした税が課されたあとでも、まえと同じだろう。したがって敷地地代と通常の地代とは、おそらく、それにたいする特別の税を課されても、もっともよく耐えうる種類の収入である。」(p167〜168)

☆「必需品という言葉で私が理解するのは、生活の維持に必要不可欠な商品だけでなく、その国の習慣がどうであっても、それなしには最下層の人びとでも、まともな人として失礼とさせるような、すべてのものを含んでいる。」(p217)

cfセン

☆「しかしつねに記憶しておかなければならないのは、とにかく課税されるべきだとすればそれは、下級諸身分の人びとの奢侈的な支出であって、必要な支出ではないということである。彼らの必要な支出にたいする税は、どれもその最終的な支払いは、すべて上流諸身分の人びとに、すなわち年々の生産物のうちのより大きな部分にではなく、より小さい部分にかかるだろう。」(p248)

UP:20030918 作成:小林 勇人 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db1700/7600sa.htm 0927
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