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気流の鳴る音
真木悠介 19770530
筑摩書房



真木 悠介 19770530 『気流の鳴る音──交響するコミューン』,筑摩書房,192p.→20030310 『気流の鳴る音』(ちくま学芸文庫),筑摩書房.

目次
■気流の鳴る音
序 「共同体」のかなたへ
I カラスの予言――人間主義の彼岸
II 「世界を止める」――〈明晰の罠〉からの解放
III 「統禦された愚」――意志を意志する
IV 「心のある道」――〈意味への疎外〉からの解放
結 根をもつことと翼をもつこと

■旅のノートから
骨とまぼろし(メキシコ)
ファベーラの薔薇(ブラジル)
時間のない大陸(インド)

■交響するコミューン
彩色の精神と脱色の精神――近代合理主義の逆説
色即是空と空即是色――透徹の極の転回
生きることと所有すること――コミューン主義とはなにか
出会うことと支配すること――欲求の解放とはなにか
エロスとニルヴァーナ――始原への回帰と未踏への充溢
プロメテウスとディオニソス――われわれの「時」のきらめき

あとがき
文庫版あとがき
初稿発表覚書き

「共同体」のかなたへ――コミューン構想のための比較社会学・序説

●ラカンドンの耳

文明の外の諸世界から未来のための構想力の翼を獲得.

→〈近代〉をも来るべき未来の世界のための1つの素材として相対化するため.

●紫陽花と餅

ラディカルな社会構想:
人間と人間の関係のあり方と問うばかりでなく,人間と自然との関係が根本から変わらねばならない.

共同性の存立の2つの様式 →集団の自己規定:
〈話合い〉 →一体性
〈感覚〉 →多様性

唖者のことばをきく耳を周囲の人がもっているとき,唖者は唖者ではない.唖者は周囲の人びとが聴く耳をもたないかぎりにおいて唖者である.
→唖者とはひとつの関係性

●マゲイとテキーラ

〈近代〉=特殊性/〈土着〉=普遍性
∵土着の多様性=自然存在としての人類の意識の原構造のような地層で通底しているはず.

〈コミューン論を問題意識とし,文化人類学・民俗学を素材とする,比較社会学〉
=人間の生き方,生き方を充たしている感覚の発掘.
カラスの予言――人間主義の彼岸
「世界」/〈世界〉:
われわれは「世界」の中に生きている.けれども「世界」は1つではなく,無数の「世界」が存在.「世界」は〈世界〉の中に浮かぶ島のようなもの.でも「世界」は自己完結している.
(*詳しくは以降の章で)

「世界」からの超越(彼岸化)/「世界」への再・内在化(此岸化)
〈世界〉からの超越(主体化)/〈世界〉への再・内在化(融即化)

「世界」からの超越
(彼岸化)
〈世界〉からの超越
(主体化)
II:「世界を止める」
――〈明晰の罠〉からの解放
I:カラスの予言
――人間主義の彼岸
〈世界〉への内在
(即融化)
III:「統禦された愚」
――意志を意志する
IV:「心のある道」
――〈意味への疎外〉からの解放
「世界」への内在
(此岸化)

I:カラスの予言――人間主義の彼岸
II:「世界を止める」――〈明晰の罠〉からの解放
III:「統禦された愚」――意志を意志する
IV:「心のある道」――〈意味への疎外〉からの解放

●草のことば・魚のことば

動物(植物)たちの「警告」「予言」(e.g. 前兆動物をめぐる言い伝え)
→人間という種族に直接感覚しえない変化を,見える形に増幅=感性と理性の延長.

テクノロジーの発達=「拡大された感覚器」?
→共存する全体性へのバランス感覚を補償しない.(e.g. 水俣病)

人間主義(ヒューマニズム)は,人間主義を超える感覚によってはじめて支えられうる.

●おそれる能力

全体の流れにたいする感受性,個物にたいする〈畏れる能力〉,エコロジカルな平衡感覚
(→動物・植物の「予兆」へと技術化された知識の母体)

人間の共生(convivality)の相手とする感覚.(合理性の質の相違)

●「擬人法」以前

「人格視」「擬人法」:
「世界」を「人格」と「物格」という,排他的カテゴリーへ裁断したうえで,「物格」を「人格」であるかの如くに考える考え方.

⇔ヒトとモノへの存在の排他的区分以前の,自然と人間とが透明に交流する世界.

●バベルの塔の神話

言語という媒介された方法によってしか共同性を存立させえない.

→すべての〈ことば〉を言語として聞く=言語化しえないことばは,聞こえない.

梢や風のメッセージを言語化するのは耳.

●〈トナール〉と〈ナワール〉

〈トナール〉:間主体的(言語的・社会的)な「世界」の存立の機制.
→われわれの生きる「世界」は,「言葉」によってはじめて構造化された「世界」として存立.

〈ナワール〉:〈トナール〉という島をとりかこむ大海のようなもの.
→われわれ自身の本源性
「世界を止める」――〈明晰の罠〉からの解放

●音のない指揮者

〈外の世界〉から来たものや帰ってきたものが,その内面世界を共有することなしに外面から眺められる.
→この世界の秩序へのたんなるスキャンダル・欠如・違和.(e.g. 痴者・狂者)

=ながめるわれわれの視力がとざされていることの陰画像.

●ドン・ヘナロが頭で坐る

異なった2つの「世界」の関係の問題:外面性に還元 →矮小化
(e.g. 近代社会の人間がインディオの生きる社会を矮小化する)

→世界を絶対化しない.

●呪者と知者

〈見る〉/〈ながめる〉:
普通の人間の視覚は〈ながめる〉ことができるだけ →〈見る〉ことを学んで〈知者〉となる.

「呪術師の世界」=「ふつうの人の世界」の自明性をくずし,そこへの埋没から解き放つ.
(*「呪術師の世界」を絶対化 →その世界の囚人)

●世界を止める

世界を止める:自己の生きる世界の自明性を解体する.
cf 現象学的判断中止(フッサール),人類学的判断中止(レヴィ=ストロース),経済学的判断中止(マルクス)

  ↓
I:異世界を理解する
II:自世界自体の存立を理解する
III:実践的に自己の「世界」を解放・豊饒化することが可能となる=自己自身の生を解放・豊饒化

●明晰の罠

理想の人間像=「知者」

知者になる途上の4つの自然の敵:
(1)恐怖,(2)明晰,(3)力,(4)老い

「明晰」=自分の現在もっている特定の説明体系の普遍性への盲信.

〈耽溺〉indulgence=自己の惰性に身をゆだねる.(→「世界」の自己完結力に身をゆだねている)
⇔〈意志〉will=惰性化する力に抗して,反惰性化し主体化する力.(cf 統禦された愚)

●対自化された明晰さ

「明晰さ」を使いこなす.

ふつうの人の「世界」も呪術師の「世界」もカッコに入ったもの=どちらも「現実」.
→このことを〈見る〉力が真の〈明晰〉.

「明晰」=「世界」に内没,indulgence.
〈明晰〉=「世界」を超える,ひとつの〈意志〉,対自化された明晰さ.

●目の独裁

目の世界=客観的な世界という偏見 →目に依存する文明.

触覚による認識=「知ること」と「生きること」がほとんど未分化.
視覚による認識=「生きること」と「知ること」の乖離が最大限.

●焦点をあわせない見方

〈焦点をあわせる見方〉:〈図〉と〈地〉の明確な分化.
→あらかじめ手持ちの枠組みにあるものだけが見える=〈地〉となった部分を無視.

〈焦点をあわせない見方〉:〈図〉と〈地〉の分化以前をたもつ.
→予期せぬものへの自由な構え=世界の〈地〉の部分に関心を配り,「世界」を豊饒化.

●「しないこと」

「世界を止める」:
言語性の水準から身体性への水準の移行 →「しないこと not-doing」

e.g.
〈図柄〉に焦点をあわせる見方=「すること」.
〈地〉であった図柄の〈あいだ〉に関心をあてていく=「しないこと」

●窓は視覚を反転する

言語性の水準におけるaus-schalten(スイッチを切ること)……〈世界を止める〉
身体性における対応物……〈目の独裁からの解放〉〈焦点をあわせない見方〉
行動の分野におけるaus-schalten……〈しないこと〉
生き方のaus-schalten……〈生活の型をこわす〉〈履歴をすてる〉

→自己の「世界」の惰性的なindulgenceからの自己超越・自己解放.

世界をラディカルに解釈する →世界をラディカルに変革する.

1970s以降の「新しい社会運動」:市民社会の自明の前提をつきくずしてきた.(e.g. 徴兵カードの焼却)
→自足する「明晰」の世界から真の〈明晰〉.
「統禦された愚」――意志を意志する

●意志は自分に裂け目をつくる

〈意志〉will:〈耽り〉indulgenceに拮抗すする概念.

→「世界」common senseからの超越の契機,「自己」超越or「脱自性」の契機.

●自分の力から身を守る盾

〈人のすること〉=日常生活での活動:普通の人間の「自分」(であること)を守る.

→呪術師は「自分」の壁が固くない →自己解体の危険

→裂け目を閉じられるようにする=〈自分の世界を作る項目を選び出す〉

●死のコントロール

生と死の基本的なイメージ:
〈生〉=実質materiaである宇宙が凝集して固体化した形態forma.
〈死〉=実質が形態をこえて拡散していくこと.

呪術師=凝縮力に裂け目 →解体の危険

→〈意志〉:自己の生命の凝集力の解体と再凝集を,主体的にコントロールする力.

●意志を意志する

意志:解脱と愛着,detachmentとattachment,degagementとengagement.

〈コントロールする愚かさ〉:意志の2つの側面をコントロールする能力.

→〈意志を意志する〉:自己の欲求の主体であること.

●舞い下りる翼

II:〈世界を止める〉=消極的な主体性の獲得.

III:〈コントロールされた愚かさ〉=「世界をつくる」=積極的な主体性の確立.

●風の吹く場所

世界をつくる →どのような場所?
「心のある道」――〈意味への疎外〉からの解放

●幽霊たちの道

「おまえは幽霊なのさ」……魂がここにないから.

行動の「意味」がその行動の結果へと外化してたてられる.
→行動それ自体はその意味を疎外された空虚なものとなる.
(行動そのものを意味深いものとするための媒介として把握されないければ)

生きることの「意味」が何らかの「成果」へと外化したてられる.
→生それ自体は意味を疎外された空虚なものとなる.
(生活の「目標」が生そのものを豊饒化するための媒介として把握されなければ)

●〈意味への疎外〉からの解放

〈心ある道〉:意志を意志する基準,〈世界をつくる項目をえらぶ〉規準.

成功 →外的な意味の蓄積(e.g. 地位・名誉)=生それ自体に充実があったわけでない.

知者の生活:「あふれんばかりに充実している」
←生活が,外的な「意味」による支えを必要としないだけの,内的な密度をもっている.

●4つの敵・4つの戦い

恐怖・明晰・力・老い

凝固させるもの
「奇妙」なもの
(ability)
(2)明晰 clarity (1)恐怖 fear 「自明」のもの
(disability)
(3)力 power (4)老い old age
拡散させるもの

I:「カラスの予言する世界」を知る →人間世界の彼岸への〈恐怖〉を克服 →〈畏れ〉を獲得.
II:「世界を止める」 →「明晰」の罠からの解放 →諸「世界」を見通す〈明晰〉を獲得.
III:「統禦された愚」による「世界」への再・内在化 →「力」ののりこなし →自在性としての〈力〉の獲得.
IV:「心のある道」による〈世界〉との即融 →「美しい道をしずかに歩む」真実の〈老い〉
根をもつことと翼をもつこと
根=家族・郷村・・共同体・市民社会・民族・人類?
→これらの存在の支えあって作る「世界」=日常意識の「明晰さ」にとってのみ磐石.

*根=〈神〉 ←信仰の共同性を支え.

⇒全世界をふるさととすること=実在の大地.

「所有」←客観的な「世界」のあり方を前提.

「どこにいようと,大地のおかげで生きていけるのさ」
→万人が全世界を所有すること=排他性をもたせない「所有」



製作:竹中聖人
UP:20031009 
真木悠介/見田宗介  ◇BIBLIO.  ◇WHO 

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