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『正義の領分──多元性と平等の擁護』

Walzer, Michael(マイケル・ウォルツァー) 1983 Spheres of Justices: A Defense of Pluralism and Equality, Basic Books
=1999 山口晃訳,而立書房



・このファイルの作成:小林勇人
Walzer, Michael 1983 Spheres of Justices: A Defense of Pluralism and Equality,Basic Books. amazon=1999 山口晃訳,『正義の領分』,而立書房 ※ *

1.はしがき

・服従の経験→妬みや憤り→平等のヴィジョン
☆政治的平等主義の目的=優越から自由の社会へ≠差異の除去
・社会的な財のある種のセット→優越
☆本書の目的:「社会的財が優越の手段とならない、あるいはなりえない、そういった社会を叙述すること」(p9)
・自由と両立する平等
☆優越のために事物を利用することを禁止
@(配分的正義)財についての多元主義的概念−強
A(戦争における正義)人格についての普遍主義的概念−弱 cf J.S.ミル:生命や自由
「配分に関する正義は、おそらく功利主義や、統合された科学ではなくて、分化・差異の一つの技であることを論じることになろう。」(p12)

2.日本語版へのあとがき(1999年2月)

☆ウォルツァーへの重要な二つの批判
@楽観主義:人間の才能の非常な多様性と、その才能が人々の間にあまねく行きわたっていることについて
・「配分過程の自律が尊重されるかぎり、才能の広がりは配分の広がりを生み出すであろう。」(p516)
・「もし人がすべての領域でうまくいかないのであれば、それは自律をめぐっての組織的な失敗の証拠」(p517)「すなわち、或る才能あるいは一群の才能が、またある財あるいは一群の財が、他のすべて〔の才能、財〕に対して優越している状態」(p517)
A複合的平等理論の中での、国家の位置や政治についての受け取り方
・政治権力
a.一つの社会的な財
b.「国家の中に具体的に現れる政治権力は、すべての配分領域の境界線を維持し、改め、保護するための、必要な手段」(p517)
 →権力は他の財と異なるもの:国家は他のすべての社会的財の専制と防げる
・国家の専制を防げるのは?
→立憲主義、制限を受けている政府、能力がある参加する(エンゲイジド)一般市民
・国家権力の重要性と、複合的平等のあらゆる領域の内側からのディフェンス(p518〜)

3.第6章 辛い仕事

◆平等と辛さ
・二つのハード
@激しく、難しい
A厳しい、耐え難い:社会的に必要な仕事→これをする誰かを見つけなくてはならない
☆辛い仕事=負の(negative)財 ―→ 影の(negative)人々=地位の低い人々
:見合っているから押し付ける=配分される
・ 市民  : 「部内の」異邦人 | 部外者
・「負の財のために影の人々がいる」:根拠なし
☆辛い仕事=帰化の一つの過程→成員資格
⇔共同体では成員は辛い仕事に抵抗する(新しいメンバーもその抵抗へと適合していく)
・近代の民主主義 a.済成長  b.福祉の領域における複合的平等の(部分的)成功
:成員が一定の仕事を引き受けることに乗り気でない ≠福祉国家の問題 =成功の印
☆共同の備え(communal provision)の制度:物理的な必要の直接的拘束から解放
  不自由 → 辛い仕事  、 選択肢がある → NO 
・辛い仕事は誰がする? → オートーメーションか?
・市民間で分担、交代(受刑者は除く):単純平等 cf:徴兵
→辛さ(危険)の範囲から考えると擁護できない
⇒複合的な配分=個々人間と配分諸領域間
☆「負の財は個々人の間でのみならず、配分諸領域の間でも分散されねばならない。」(p259)
・いかなる人も適任ではない→全員が様々な仕方で様々な場合に行う
・「罰の場合を除いて、これらの配分を、財の社会的意味に適合させることは不可能」(p259)

◆危険な仕事 (兵役、炭坑、など)
・「徴兵制度の道徳面での目的は若い世代の人々にたいして戦争の危険を一般化する、あるいは無作為化すること」(p261)
・炭坑:普通の市民を徴用しない←公共的な敵による危険ではないから
⇒鉱山の国有化、事業規制
・「今日、坑夫は自由な市民であるが、鉱山がどのように所有されているにせよ、彼らを、国民のサーヴィスを仕事としている市民と考えてよいであろう。」(p262)
→救済の費用の分配を受けてもいい

◆へとへとに疲れる仕事 (道路建設?)
・市民の兵士(平和時の徴用):国内抑圧の道具になる可能性少ない
→他の辛い仕事も徴用?

・租税 vs 賦役:賦役がいいとしたらその範囲はどこまでか
・「男たち女たちはまさに自分たちの仕事を選ぶとき、自由である、というのが一般的な意見である。租税は選択の代償であり、労働奉仕を租税に交換することはいたるところで一般の人々にとって一つの勝利とみなされる。」(p264)
・ルソー 賦役:道路建設(象徴的な意味で)←旧体制では強制された労働
・「もしも一つの団体としての市民が自らそれを引き受けるなら、彼らは貧しい人々を肉体労働からのみならず、その汚点から−貴族主義的軽蔑と、その軽蔑のブルジョワジーの模倣から−も自由にするであろう。」
→負の財(辛い仕事)であることに変わりはないが、仲間の軽蔑:減、賃金:増
cf:イスラエルのキブツ
・シオニズム
a.働く者の力を高める、なんらかのマルクス主義イデオロギー
b.「労働者の力ではなくて仕事の威厳を高め、階級ではなくて共同体を創出しようとするもの」(p266、強調引用者)
→諸価値の転換=仕事の共有を通しての仕事の尊厳化
・ポイント
@集団共同社会=政治的共同体
:仕事、仕事についての決定→共有
→大きな共同体、複合的で分化した経済:部分的負担・共存(間接的に意思決定に参加)
A居住共同体での仕事と政治の密接な統合、多様な仕事現場での部分的な統合
☆負の財→正の財:メンバーシップのきっかけ?
・転換できない負の財 例)食後の片付け

◆汚れる仕事 (牛の屠殺、牛皮のなめし、ごみ集め人、掃除夫、ごみや下肥の運搬人)
・原則としては、本来卑しい仕事はない
→汚れ、ごみ、屑にかかわる活動は回避の対象
・私たち皆がそれをしなければならない:一種の家内賦役
・国民的サーヴィスの典型的主題 @戦争:危険 Aゴミ:不名誉
・なされることが必要な全ての汚れた仕事は全市民で分担すべき:社会政策としは不適切
→他の種類の仕事(同じように必要であったり、ただ有用)を根本的に妨げる
⇒部分的で象徴的な分担→汚れた仕事が軽蔑につながるのを減らす
・「しかし、私たちは依然として、辛い仕事をしている仲間の市民たちに、彼らをある種の囲い地に閉じ込めてしまうような行動のパターン、距離をおくというお決まりの方法をとっている。」(p271)「私たちは目を合わせない。彼は非人称になる。」(p271)
⇒各市民が最も辛い仕事をしている彼の仲間の労働の日々について生き生きとした知識をしっかり持つ
・「私たちは汚れた仕事は、汚れ、貧弱な支払いしか受けていない人々によってなされるのを見るのに慣れているので、それをするのは卑しいと考え、また汚れた卑しい階級が存在しなければ、それはまったくなされないだろうと考えるようになってしまっている」(p272)
・ショーの提案:お金と余暇
→「辛い仕事を、自分の時間を守りたいと思っている人々にとっての一つの機会として確立している」(p273)
・ウォルツァーの代案:仕事の再組織化
例)サンフランシスコ市外清掃者組合 cf:ニューヨークのごみ収集:一つの公職
・協同組合と労働組合(「清掃者」と「清掃課員」)
・辛い仕事と他の活動(「株主たち」の集会、政策をめぐっての討論、役員と新メンバーの選抜)との結びつき方
cf経済界の分野の分業→辛い経験の仕事を統合ではなく分離
・「国民的義務とした場合は少なくとも一時的には隣人や市民の役割が必要な仕事をするであろうから、効率はいいかもしれない。しかし長期的には、その仕事は制度的あるいは専門的な地位に支えられた強い意識によってしか行われないであろう。」(p280)
・強い意識←長期にわたる政治闘争、社会的諸力のバランス、諸利益の組織化
⇒共同の理解:仕事の辛さは栄光と結びついている
・「辛い仕事は、自らそれをすることになる人々のほとんどにとって魅力のない仕事」(p281)
☆辛い仕事を廃止してしまうことはない←不可能
☆辛い仕事をする者たちの社会層を廃止してしまうこともない←強制を伴うので辛さ倍加
・配分諸領域をだめにしないような、辛い仕事の配分
・既存の階層性と社会的理解→辛い仕事の政治←連帯、熟練、働く者自身のエネルギー

4.ヤング

・「・・・ある視座や歴史を有する個人が、他の集団特有の視座及び歴史を担っている人々の観点を、完全に理解したり採用することは決して有り得ないのである。しかし、社会政策を共に決定していこうとする欲求や望みを真剣に持ち続けることにより、それらの差異を横断するコミュニケーションが育まれるのである。」(注1、強調引用者)
・「差異を横断するコミュニケーション」→それぞれが複数の境界に関して多数者/少数者の立場にいることが自覚され、境界の流同化も起こり得る(注2)

5.協同の思想と、いわゆる「第三セクター」


1)Young, I. M./施光恒訳「政治体と集団の差異」『思想』No.867, 1996年, 107頁
2)山森亮「福祉国家の規範理論―アファーマティブ・アクションと差異に敏感な社会政策」2000、ミネルヴァ書房

□内容説明[bk1]
正義とは、支配層や多数派の論理を一律にローラーするのではなく、少数派や弱者の生存と主張を擁護することである。社会的財が優越の手段にならない、もしくはなりえない社会を提示する。


作成:小林勇人 UP:20040217 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db1980/8300wm.htm
Walzer, Michael  ◇BIBLIO.  ◇WHO 

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