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>HOME >DATABASE 宮本憲一 『地方自治の歴史と展望』 自治体研究社 宮本憲一 19860810 『地方自治の歴史と展望』 自治体研究社 210p ISBN:4880370800 [amazon]/ [bk1] 目次 第1章 現代民主主義と地方自治 1 いまなぜ地方自治か 2 地方自治とはなにか 第2章 近代地方自治制の展開 1 明治地方自治制 2 第一次都市化と大正デモクラシー 第3章 戦後地方自治の展開 1 戦後地方自治制の基本的性格 2 第一期地方財政危機と自治労自治研の創生 3 革新自治体の成立と展開 4 革新自治体の退潮 第4章 現代の自治をもとめて 1 「ポスト福祉国家」への再編 2 自治体の新しい創造にむかって 3 協同組合と経済民主主義 4 自治体改革への展望 むすび―21世紀を展望して 目次 第1章 現代民主主義と地方自治 1 いまなぜ地方自治か 「しかし、地方自治というのは、そういう統治構造的なものとして生まれた概念ではない。「ではない」と言うと不正確かもしれませんが、中央と地方がどういう事務配分をした方が効率的で民主的かというような、統治構造的な概念として生まれただけではなくて、むしろ、人権保障的な、あるいは生活権を維持するという、そういうところから生まれてきている概念であると考えることが大切だと思うのです。つまり国家権力が誕生した後において、その組織内における集権か分権かではなく、人間社会に必然的にそなわった共同性としての自治から出発したとみた方がよいのではないかと思います。」(11―12頁) 「そこで、いままでのべた地方自治の意味を三つに整理してみましょう。 第一は、統治機構としての国と地方という形での行政事務の性格からいって、それを効率的に、またそれらに最もふさわしい事務を担当するという意味で地方自治が必要だという統治機構上の、あるいは組織上の地方自治の必要性ということ。 第二には、地方自治は、生活権というものを確立する理念である。つまり、生活権の内容というのが地域によって違うし、地域の問題と密着してはじめて日常生活というのは完結するという意味では、生活権をその地域において保障する、その政治的な権利というものが地方自治なんだという、これは行政法学者などが最近主張している人権保障的、生活権保障的な意味で地方自治が必要だということ。 第三は、民主主義の根幹として、地方自治は必要だということ。」(15―16頁) 2 地方自治とはなにか 「そういう意味で、地方自治というものは参加と分権という二つのキーワードを持っていて、参加の上に成り立つ分権というふうに考えていただきたい。行政学者は、地方自治を住民自治と団体自治という二つに分けて、通常議論します。これは地方自治法の解説書をお読みになると必ず冒頭に出てきます。住民自治というのはどちらかというと、アングロ・サクソン型であって、団体自治はプロシャ型、フランス型であるというふうに通常分類しているのですが、これもかなり便宜的なものであります。住民自治と言われいるものは団体自治を含まないのかというと、そうでもないわけでありますので、私はいちおう参加と分権というふうによんでおきたいと思います。」(34頁) 「都市の住民はいろいろのところから集まってくる。種々の職業に従事している。出身学校もみなちがっている。このように共通した血縁地縁あるいは職業の一致は何もないが、しかし同じ地域に住み生活している。そうなると都市の人々は一定の社会的契約で結ばれなければ慣習では秩序はできない。これが都市の特徴です。社会的契約を結んで、自治体をみずからつくれなければいけないのです。これが都市の特徴です。社会的契約を結んで、自治体をみずからつくらなければいけないのです。都市というのは自治体の根源だと言われるのはそこに根拠があるのです。農村生活から自治体というのは出てこない。農村の共同社会は共同体なのです。」(42―43頁) 第2章 近代地方自治制の展開 1 明治地方自治制 「こうして、モッセは機関委任事務の提案をして、明治地方自治制が発足していくのです。ですから歯どめを非常に巧妙につくったのです。一方で法人格を与えて「近代化」して市制町村制をしいておきながら、この機関委任事務で行政全体をしばっていくというものです。」(76頁) 2 第一次都市化と大正デモクラシー 「そして、この選挙で、労働者と小作人が議員定数の二分の一以上占めた議会が、京都で八議会、大阪では四議会、兵庫では八議会、新潟では三議会、埼玉では六議会、奈良で一議会、三重で二議会、静岡で三議会、岐阜で二議会、徳島で一議会、岡山で三議会、和歌山で一一議会、宮崎で一議会、福岡で七議会、と全国で実に六〇議会も生まれたのです。これは新しい大正デモクラシーの波をはっきりと物語るものでした。」(82頁) 「そういう意味で、戦後の改革や、あるいは革新自治体の問題を考えるときに、私たちはいつも大正デモクラシーの時期を思い浮かべるのですけれども、そういう重要な問題をこの時期は含んでいることに注意してください。」(86頁) 「関は日本で初めて市役所に「社会部」というのをつくって都市における社会政策に着手するのです。都市の労働者の生活状態の実態調査を初めて本格的にやります。そして労働者住宅もつくる。保育所もつくる。さらに、大阪高商を大阪商科大学に昇格させ、シンクタンクとして大阪都市協会をつくる。それから、庄司光教授がおられた大阪衛生試験所をつくって日本で最初の大気汚染観測を大正期から始めたのです。大阪市は世界の中でもトップをきった公害行政をやるのです。それで、戦争が始まるころまでは大阪市の大気汚染はどんどん減っていくのです。そういうソフトな面でもハードな面でも、関は画期的な業績を残す。いわば今の革新自治体のはしりでした。」(95頁) ・1926年7月18日「長野事件」→知事公選、反天皇制運動としての性格 「補助金一律カットがあれよあれよという間にやられてしまったのは、都市と農村の団結がなかったからではないでしょうか。これは大正時代以来の日本の地方行政では最も重大な点で、都市と農村の間にくさびを打ち込まれたら必ず負けます。それが両税委譲問題の結論です。今日でもそうです。都市と農村両方の要求が違っていてもいかにして統一するかということを考えないと、地方財政改革は絶対できません。それを大正デモクラシーは教訓として教えているのであります。」(107―108頁) 第3章 戦後地方自治の展開 1 戦後地方自治制の基本的性格 「しかし問題は国庫支出金です。この国庫支出金こそ、先ほど言ったようにわが国地方財政の最大の問題点を含んでいるものです。大体平均しますと全国庫支出金事業資金の五〇%しか国からきませんから、補助金事業をやりますと、結局、一般財源のうちから国庫支出金と同額のものを地方団体は支出しなければなりません。ですから交付金または地方税などの一般財源から国庫支出金事業の財源へでていってしまう。しかも、国庫支出金事業が地方団体の根幹事業です。道路、港湾、学校、保育所にしても、こういうものはみんな国庫支出金事業です。つまり地方団体は重要な事業を国にゆだねているところに問題があるのであります。」(130頁) 2 第一期地方財政危機と自治労自治研の創生 「私たちも大分考えました。ちょうど教研集会(一九五一年一一月創立)が行われて、私は教研集会の方でも石川県で講師をした経験がありました。教員組合の方は父母との提携というのを非常に熱心にやってきたのです。現在は、あまりうまくいっているとは思いませんが、しかしその当時は実によくやっていて、それを見ていて、どうして自治労は住民と提携ができないのだろうか、とかねて思っていたのです。しかも行財政調査を京都府などでしてみますと、京と府庁は進歩的だといわれているものの、実態はどうも官僚的なんです。そこでこういう新しい運動を、やった方がいいのではないかと、結論的にはそうなりました。 一九五七年に自治労は地方自治研究集会という独創的な仕事に着手します。これは冒険だったと思います。教研集会とは違います。」(138―139頁) 「その結果として二つの新しい事態が起ります。一つは、公害裁判がたたかわれ、被害者が救済されていくという過程であり、もう一つは革新自治体が誕生して、そして革新自治体の手で公害や都市問題の解決への戦線が形づくられていったことでありました。公害反対運動をきっかけにして日本全国に住民運動が広がっていきました。それが革新自治体を生みだす原動力となったのです。その扉をさいしょにひらいたのは、自治研であったのです。」(145頁) 3 革新自治体の成立と展開 「自治体はそれぞれの経済や政治、歴史的伝統や文化もすべて状況がちがいますから、おしなべて「これだ」ということは危険をともないます。あえて一般的にいえば、戦後地方自治制という枠組みを生かして、自治体労働者が自治研活動などを通じて内部改革をはじめ、それをうけて住民が世論と運動をおこして自治体へ要求をつきつけ、革新政党がそれを総合化して民主的な統一戦線をつくって、改革を意識的におこなったときに、革新自治体が誕生したといってよいでしょう。」(147−148頁) 「革新自治体は、三つの点で成果をあげたのでした。 第一は環境保全です。政府は「公害対策は経済成長の範囲内でやればよい」という「経済成長調和論」をもっていたのにたいし、革新自治体は「生活環境優先」のスローガンをかかげます。とくに画期的だったのは、一九六九年の東京都公害防止条例の制定でした。」(157−158頁) ・第二は、福祉の確立、第三は、「自治」の確立。 4 革新自治体の退潮 「ところが、シビルミニマム論には、重大な弱点がありました。私が、当初からこれを批判したのは、まず、シビルミニマム論には基本的に産業政策と財政政策が抜け落ちているからでありました。産業政策と財政政策がないと、どうしても経済的不況がくると弱さを露呈するのです。私は、「シビルミニマム論は、その理念をどのようにして実現するかの手段を欠いている。手段なき理念はかならず経済的に失敗する」というかたちで批判していたのであります。」(160頁) 「いうまもでなく、根本的には革新自治体の衰退は、政治的な要因です。同和問題などをめぐる革新政党内部の対立や国政レベルでの野党の与党へのすりよりなどの右傾化が政治過程で生じて、革新自治体の主体が分裂していきました。しかし、そうした基本的な政治的対立を基盤としながら、同時に政策上の限界=シビルミニマム論の限界があったのではないでしょうか。 もう一つの限界は、革新自治体が住民参加の制度をついに成熟させられなかったことです。」(161−162頁) 「このような結果、八〇年代になると、農業と建設業と比較すると建設業のほうが雇用力がなくなった。一九八四年で日本の農業は四六八万人、建設業は五二七万人となっています。いま述べたように年に二〇%も増えてゆく公共事業費によって−じつはこれが今日の財政赤字の原因ですが−この状況はつくられました。そういう公共事業の地方への散布をやりながら、さらに自民党は総裁公選制で党員を増やし、草の根保守主義を活性化させていったのです。 こうしてついに、七〇年代後半の大平内閣の下で「地方の時代」という声の下で、保守主義が再編され、革新自治体が退潮していったのでした。」(165−166頁) (注) 「(12) 中野区では一九八六年六月の区長選挙で区長公選以来四たび革新側が勝利した。大内→青山→神山と候補者を変えながら革新首長をつづけた自治体は他に例をみない。」(166頁) 「(13) 都市経営論をめぐって論争がある。高寄昇三氏は、民主的行政改革論者にたいして、その制度改革論の主張をみとめつつも、神戸市のように自主的な行財政運営の効率化と民主化の意義を強調し、それなくして、制度改革を主張することの限界をついている(代表的な著作は高寄昇三『現代都市経営論』けい勁草書房、一九八五年)。たしかに、このような批判の意義はみとめるが、神戸市だけで民主的都市経営が完結できない実情を指摘しておかねばならない。山を削って海を埋立てるという神戸市の公共デベロッパーとしての活動は、市行政官の計画としては合理的かもしれぬが、それによって、神戸市民さらに大阪湾沿岸の住民の生活環境は破壊されるのである。そのいみでは自治体の経営の合理性というのは、もっと広く日本の政治経済の中での合理性として判断されねばならぬであろう。」(166−167頁) 第4章 現代の自治をもとめて 1 「ポスト福祉国家」への再編 2 自治体の新しい創造にむかって 「第一期の住民運動は、便宜上、単純化して言えば、”現代的貧困を告発し”、”異議を申したてる”世論や運動でありました。しかし、これからの第二期住民運動は、そのような要求はもとよりですが、その問題を解決するために自らも犠牲をはらい、そして政策を提言するとともに、まちづくりを創造する運動でなければなりません。第一期の運動より一段と高いレベルの、総合性と政策理論をもたないといけないのです。それは住民の文化水準と連帯の社会意識を高め、参加の制度化をめざしていくことなのです。」(175頁) 「私は、この「あんじょうする会」のようなやり方、つまり、アメニティをもとめる都市の新しい住民運動がはじまっていることをのべておきたいのです。おそらく逗子の米軍住宅反対の緑をまもる運動や宍道湖・中海の干拓、淡水化反対運動の進展も同じ系列であるといえます。「内発的な発展」と、このような新しい都市でのアメニティ型の住民運動を含めながら、第二期の地域の創生に向かって全体が動いていくなかで、私は自治体の改革が少しずつはじまっていくと思っています。これからは意識的にこれらの新しい流れが、自治体にどのように参加して、それをかえていくかということになっていくのではないでしょうか。」(186頁) 3 協同組合と経済民主主義 「消費者主権というのは、大企業主権の現実をおおいかくす理念なのですが、しかし、もし、消費者が主権を確立できるとするならば、経済の民主化に寄与することはまちがいありません。消費者というと商品経済の受け手になりますので、もっと公共部門や環境などのすべての生活条件をいれて、そこで主権を確立することを考えてみましょう。かりにこれを、近代経済学の消費者主権と区別して生活者主権とよんでおきます。」(187頁) 4 自治体改革への展望 「日本の自治体は、財政権の確立が必要です。そのためには根本的な財政改革が必要でしょう。すでに私は一九七七年に『財政改革』という本の中で具体的提言をしました。その後の財政危機のために、この提言の大部分は具体化していませんが、真の民主的行政改革そして、経済民主主義にもとづく地域開発=内発的発展のためには財政改革がどうしても必要です。 財政改革の中心は、地方団体の財政権をみとめ、国庫補助金や機関委任事務を整理し、都市部に税源を移譲し、農村部には傾斜つきの交付金(経済力の低い地域に有利な制度)を付与することでしょう。また、地方債については許可制をあらため、一定の条件の下で自由化すべきでしょう。」(193頁) 「「政府の欠陥」の是正は、先述のように現代社会主義をもふくめ、現代福祉国家(その日本的あらわれとしての第一期革新自治体)の共通の課題でありましょう。だが、それは規制の緩和、縮税、民営化という政策で解決するものではないと思います。おそらく、そのような新自由主義論にもとづく諸政策は、ふたたび企業国家にもどって企業と国家の癒着をふかめ、企業万能から「市場の欠陥」をひきおこすにちがいありません。また、それは参加による分権をはばむものとなるでしょう。」(202−203頁) むすび―21世紀を展望して 製作:山本崇記(立命館大学大学院先端総合学術研究科) UP:20050321 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db1980/8608mk.htm |