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『公共性の構造転換――市民社会の一カテゴリーについての探求 第2版』

Jurgen Habermas 1990
Strukturwandel der Offentlichkeit: Untersuchungen zu einer Kategorie der burgerlichen Gesellschaft,
Suhrkamp Verlag.
=1994 細谷貞雄・山田正行訳,未来社



・2003年度「公共論」(担当:西川長夫)で講読

<目次>

一九九〇年新版への序言

 J 市民的公共圏の生成と概念 K 公共圏の構造転換―三つの修正

 L 理論枠組みの変化 M市民社会あるいは政治的公共圏

序言

第一章 序論 市民的公共性の一類型の序論的区画

 第一節 出発点の問い

 第二節 代表的具現の公共性の類型について

  余論 ウィルヘルム・マイスターの例にみられる代表的具現の公共性の終末

 第三節 市民的公共性の成立史によせて

第二章 公共性の社会的構造

 第四節 基本構図

 第五節 公共性の制度(施設)

 第六節 市民的家族 公衆に関わる私生活の制度化

 第七節 文芸的公共性と政治的公共性との関係

第三章 公共性の政治的機能

 第八節 モデルケースとしてのイギリスにおける発展

 第九節 大陸における諸類型

 第一〇節 私的自律の圏としての市民社会 私法と自由化された市場

 第十一節 市民的法治国家における公共性の矛盾をはらんだ制度化

第四章 市民的公共性 イデーとイデオロギー

 第一二節 公論 論点の前史

 第一三節 政治と道徳の媒介原理としての公開性―カント

 第一四節 公共性の弁証法によせて―ヘーゲルとマルクス

 第一五節 自由主義理論にあらわれた公共性の両価的把握―ジョン・ステュアート・ミルとアレクシス・ド・トックヴィル

第五章 公共性の社会的構造変化

 第一六節 公共圏と私的領域との交錯傾向

 第一七節 社会圏と親密圏の両極分解

 第一八節 文化を議論する公衆から文化を消費する公衆へ

 第一九節 基本図式の消滅 市民的公共性の崩壊の発展経路

第六章 公共性の政治的機能変化

 第二〇節 民間文筆家たちのジャーナリズムからマス・メディアの公共サーヴィスへ 公共性の機能としての広告

 第二一節 公開性の原理の機能変化

 第二二節 造成された公共性と非公共的意見 住民の選挙行動

 第二三節 自由主義的法治国家から福祉国家への変形過程における政治的公共性

第七章 公論の概念のために

 第二四節 国家法的擬制としての公論 この概念の社会心理学的解体

 第二五節 問題解明の社会学的な試み

訳者後記

文献目録

人名索引


一九九〇年新版への序言          文責:小林勇人

J 市民的公共圏の生成と概念(第一章から第三章に対応)

A 目標:市民的公共圏の理念型の展開

〜18c・19c初期の英・独・仏で発展した歴史的文脈にもとづいて

1 独の例

・普遍的な読書する公衆/本・雑誌・新聞/文筆家・出版社・書店

・読書協会:結社〜「まだ市民だけが排他的にかたちづくっていたものであったが、そこでは将来の社会で実現される政治的平等にかかわる規範を学習することができた」

2 <排除>

・ある特定の公共圏の形成にとってその果たす役割が本質的であるような集団が問題となる場合

・ヘゲモニーをとった市民的公共圏と並び立つそれ以外のサブ・カルチャーや階級に特有のいくつかの公共圏が、ある程度の妥協がそれなりに可能なことを前提として出現し、そのようなコミュニケーション構造のなかで多くのアリーナが同時に形成される場合

・代表具現的公共圏と市民的公共の区別

3 小家族

・私的領域の中核、自己へと方向づけられた主観性

・公共圏それ自体がもつ家父長制的性格

・女性が労働者や農民や「賎民」たち、つまり「非自立的」な男性と同じ仕方で市民的公共圏から排除されていたのかどうか

・フェミニズム〜市民権が普遍化していく傾向と軸を一

・「女性はたんに偶発的な原因で男性に支配されていたのではなく、政治的公共圏の構造や政治的公共圏と私的領域との関係が性差を基準に規定されていたという意味で、女性の排除は政治的公共圏にとって本質的であった」

・フーコー「権力をもつ言説の形成の規則を、個々の言説がそれ自身の「他者」を構成することによってできる排除のメカニズムとして把握」

・市民的公共圏:労働運動だけでなく、そこから排除された「他者」も加わることができる言説

・「市民的法治国家における公共圏の矛盾をはらんだ制度化」モデル:硬直

K 公共圏の構造転換―三つの修正(第五・六章、第四・七章)

A 社会(福祉)国家的転換(第五章)、マスメディアをつうじたコミュニケーション構造の変化(第六章)

B 叙述とその規範的含意の理論的パースペクティブの検討(第四・七章)〜民主主義理論への貢献

・公共圏の構造転換:国家と経済の変容のなかに埋め込まれている

・自由を保証する公権力と私法にもとづいて組織された経済社会

・国家と社会がしだいに分離していくといモデル

・分離の傾向が廃棄されていく事実→

 <国家の社会化>:ネオ・コーポラティズム

 <社会の国家化>:国家の積極的な介入主義的政策

・ラディカルデモクラシー:国家と経済社会の分離を止揚するような社会の自己組織化を構想

→この規範的意味は、現実に生じた政治と経済の二つのシステムの機能的交錯により吟味

☆西欧型の社会における社会国家と組織資本主義との複合的な発展が引き起こした反作用

1)私的領域および私的自律の社会的基礎への反作用

・市民社会:常に公権力ないし政府にたいして、全体的に見て私的な領域

・私的自律の基礎:生産過程における私的所有者の立場や処分権の範囲

←背後から心理的に支える小家族という親密圏

●機能的に高度に分化した社会は全体の優位性を眼目とする社会構想によってはとらえられない

2)公共圏の構造および公衆の構成と行動への反作用

・公共圏それ自体の構造変動

・<メディア権力>の登場→公共圏はあらかじめ構造化されると同時に支配されるようにもなった

・権力が浸透したアリーナの記述:価値評価の観点を不用意に混入するのは禁止→

 a)自己制御的で、弱い制度によって担われ、水平にネットワーク化され、非排他的で多かれすくなかれ討議をかたちづくるコミュニケーション過程の批判的機能

 b)購買力、忠誠あるいは従順さを動員するためにマスメディア的公共圏に介入する組織がもつ、消費者・有権者・クライアントの決定に影響力を行使する機能

●公衆の行動の変化についての評価→修正

・<文化をめぐって議論する公衆から文化を消費する公衆へ>と直線的に展開→

文化的習慣の面で階級的な制約から抜け出し、多元的で、内部で非常に分化した大衆からなる公衆がもつ抵抗能力や、批判のポテンシャル

・「文化と政治のあいだの新しい親密圏」

3)大衆民主主義の正当化過程それ自体への反作用

・経験的研究にもとづく診断:自由主義的な公共圏の崩壊

・規範的な観点:客観的な国家と社会との機能的な交錯をラディカル・デモクラシーの立場から追跡しその到達点を見極める

●利害の和解なき多元主義〜ヴェールに覆われた多数派の権力


第3章 公共性の政治的機能          文責:竹中聖人

第8節 モデルケースとしてのイギリスにおける発展


政治的機能をもつ公共性の成立:17・18世紀のイギリス

(決定への諸要求の正当化を公衆から調達)


資本主義的生産様式の貫徹による広範な層を巻き込む対立

〈貿易制限的利害関心/拡張的利害関心〉〈商業・取引/製造業・工業〉


新聞:ジャーナリズムの創出 →公衆の批判的機関

(王室・国会について解説・批判することに制度的地位)


新聞:議会討論についての報告/国家:公表禁止令([特権の侵犯)

→1771:事実上の無効 →1803:記者席の設置


政治的支配力:貴族・ブルジョワジー

中産階層の市民:批判的大衆として議会の討論・決定を追跡

国王:『権利章典』による拘束→議会内での支持者探し


〈議会/国〉〈王室/顧問官〉→党派(e.g.〈ホイッグ/トーリー〉)


与党・野党の持続的論争:

少数派:公衆の判断に訴える/多数派:理性による正統化の義務

→18世紀初頭〜「国民感情」:野党の典拠しうるもの


1792フォックスの下院演説「意見形成の手段を公衆に与えよ」

1834タイムワース宣言:野党の選挙綱領(個々の人物への賛否→主義主張をめぐる論議)


第9節 大陸における諸変形


フランス:

政治的ジャーナリズムが未発達 =政治的に論議する制度が貧弱

身分制国会の不在 =政治的に影響を及ぼす社会的基盤の欠如

〈国王(と官僚)/臣民〉


「哲学者」:18世紀前半 道徳的志向 →後半 政治的志向

(男性社交の出現。重農主義の経済学者 →政府の任用)


ネッケル:国家財政の貸借対照表を公表(公衆の政治的議論の政府監査)

→ネッケルは罷免されるも、この後公衆を無視できなくなる

→三部会の招集・フランス革命


政治的公共性の制度化(討論の公開。政治新聞)・法律的規範化(憲法の解釈・定義)


ドイツ:身分的障壁の比較的長期にわたる温存

〈貴族/市民層/人民大衆〉*市民層とは教養のある身分を指す


1770年代以降 雑誌の隆盛。読書クラブ →民間人の社交生活 →政治的に議論する公衆


第10節 私的自律の圏としての市民社会 私法と自由化された市場


市民的公共性を成立させた前提条件:傾向的に自由化された市場

(市場(=私人相互の私的(民間)領域)の拡張 →商品所有者の自律)


法律業務:自由な意思表示による契約(自由に競争する商品所有者の交換過程をモデル)

人格:身分・出生による定義 →ただひとつの自然身分


私人相互の交渉を確保する規範体系の展開:

ローマ法:行政的・同業組合的・ギルド的な経済個人主義的法秩序に対する拘束

→18世紀〜19世紀:「身分から契約へ」。自由交換・自由契約・自由競争


公権力の統制から解放 →私有圏としての市民社会 →市民的法治国家 →政治的公共権の発展


第11節 市民的法治国家における公共性の矛盾をはらんだ制度化


国家機能の一般的規範への拘束 ⇒自由市場の秩序が保護可能

([経済外的な権威が交換関係に干渉しないならば市場は自動調整能力を有する)


国家の法律:例外の拒否、客観的≠市場法則

国家機関:法律と公論の連関の制度的確保として樹立を意図

([階級利害が存在するかぎり、法治国家の形式だけでは立法を保障できない)


法律による支配⇔人民代表による支配(矛盾)

(立法も一種の権力。「権威にあらずして、真理が法を作る」?)


基本法による公共性の機能の明確化

(公衆の制度と機関の保障。私的自律の基盤の保障)

→公共性が国家機関の手続きにとって組織的な原理となった(公開の必要性)


法治国家:財産による「私人」の自律・公衆の教養資格を条件

(「私人」は少数。「人民」は多数)


市民的公共性:一般公開の原則と生死を共にする

⇒教養・財産のある私的自律の資格を取得する平等な機会を万人に許容する条件が整ったとき、公共性は初めて保障される


誰もが「市民」である可能性を持つかのように見える

⇒公共性がその原理を喪失することにはならない

(自由主義的モデルと現実の相当な接近。セイの法則etc)


一階級の他階級に対する支配が存在する土台

←→支配の止揚の理念を真実味をもたせる政治的制度の発達(イデオロギー!)


◇伝達メディアの普及が公論形成の要因 →インターネットは世界的な公論を築くか?それともただの「タコツボ」をもたらすか?

◇選挙権をもたない外国人の存在は、公共性の不完全さを意味するのか?


第5章 公共性の社会的構造変化          文責:北村健太郎

 第5章公共圏の分解の経緯は、公共圏と私的領域との間の関係が構造的に変化したことにもとづくことを述べる(p198−199)

第5章のキーワード?: 国家と社会の相互浸透、公共的保障、私的自律、文化消費、マス・メディア

第十六節 公共圏と私的領域との交錯傾向

 19世紀末から国家の干渉政策が増大

 民間圏内で決着できなくなった利害衝突の調整が政治の場面へ移し替えられ、また公的権能を民間団体へ委譲されるという傾向が出てくる。国家と社会の分離が崩れていく。

  社会の国有化 ⇔ 国家の社会化

 1873年に始まる大不況以来、自由主義を犠牲にして保護貿易を推進するようになる。貧窮化した社会層も、彼らの脅威を感じた階級も、それぞれ経済領域における機会均等の侵害に対して政治的補償を要求する。

国家はこれまで民間に委ねられてきたサービス給付をも引き受けるようになった。私的生産に公共的経費がともなうたけでなく、広汎な大衆の購買力がますにつれて、私的消費の公共的経費も発生する。

第十七節 社会圏と親密圏の両極分解

 私生活圏の私的性格が失われ、私生活圏の中心であった親密圏は、周辺に押しやられる。「労働の世界」は、私的領域と公的領域の間の独自の次元の圏として確立されるようになっている。

「すなわち家族はますます私的になり、労働と組織の境界はますます公的になる、ということができる、ということができる」

 大経営はその従業員や労働者に対して或る種の身分保障をひきうける。「勤務者」というカテゴリーは、労働に対する新しい態度をうかがわせる。大経営において、職域が準公共的領域として自立化するようになる。擬似私的な福利厚生の環境整備の傾向が強まる。

 職業圏の自立化に対して、家庭は内へひきこもっていく。家庭はその基盤を失い、家族財産が個人所得にとって代わられるとともに、生産内部の諸機能だけでなく、生産のための諸機能をも失う。この傾向は、危急時の自給や老年期の自活の可能性をも家庭から奪うのである。 →例えば年金問題とか?

家族は資本形成の機能を失うとともに、次第に養育と教育、保護と指導の基本的な伝統と人生案内の機能をも失うようになる。その地位の公的保障によって、或る意味で私的性格を奪われる。他面において、家庭は所得とレジャーの消費者、公的保障や生活保障の受給者へと発展しはじめる。私的自律は、消費機能の中で維持される。

→国家の介入、生活の外注化?

 個々の家族成員はますます高度に、家庭外の権威によって――社会によって――直接に社会化されるようになる。公式には学校へ、非公式には家の外の匿名勢力へ、明確に教育的な機能を委譲せざるをえなくなった。

 私生活が公開されるにつれて、公共性そのものが親密性の形態を帯びてくる。私生活圏と公共性という契機にはっきりしたけじめがなくなる。個人に保護と支持を与える私生活圏がなければ、個人は公共性の渦に巻き込まれ、そして公共性自身もまさにこの過程によって変質する。

 レジャー行動は、新しい圏の擬似私生活を解明する鍵を与える。表向きの内面性が、実は内面性を奪われていくことなのである。

第十八節 文化を論議する公衆から文化を消費する公衆へ

 文芸的公共性に代わって、文化消費という擬似公共的もしくは擬似私的な生活圏が出現する。

 文芸的公共性は、生活の必要からの解放というギリシア的な意味での「政治的」な性格を持っていた。私的領域の内部で、私人たちが各自生活再生産するための実業と、公衆として連帯させる交際との間を分離させることが前提であった。ところが文芸的公共性が発展して文化消費へ変貌していくにつれてこの敷居がならされてしまう。レジャー行動は、非政治的なものである。

 論議は傾向的には消費へ転化し、公共的コミュニケーションの連関は、孤立化された受容行為へと崩壊していく。

 私人の自律は今では私有財産の処分権の中に本源的に基礎を持つものではなくなって、私生活の公共的身分保障から派生した自律となってしまったので、「人間」が市民(citoyen)として、政治的に機能する公共性を媒介にして彼らの私的生存の条件を自分の手中に掌握するときのみ、実現されるだろう。

 討論そのものが消費の形態をとってくる。今日では、対話そのものさえ管理されている。討論はビジネスに引き入れられて、形式化する。かつて公開論争において戦わされた葛藤は、個人的トラブルの次元へおしやられる。公論としての機能はいよいよ失われる。

 マス・メディアが作り出した世界は、もうみかけの上の公共性にすぎない。しかしまた、それが消費者に保証している私生活圏の充実感も、幻想的なものである。公共性そのものが消費する公衆の意識の中でも私性化され、公共性は私的経歴の暴露圏になる。マス・メディアが作った圏が第二次的な親密性の相を帯びてきた。

 公衆は、公共性なしに論議する専門家たちから成る少数派と、公共的に受容する一方の消費者たちの大衆へと分裂し、公衆としての特有なコミュニケーションを喪失する。

第十九節 基本図式の消滅 市民的公共性の崩壊の発展経路

 公共性は、(経済的にも政治的にも)広告の機能をひきうける。公的領域と私的領域の交錯した中間領域では、社会の国家化された領域と国家の社会化された領域とが、政治的に論議する私人たちの媒介なしに浸透し合う。

 私人たちは、賃金や俸給や給付の受給者や受給資格者であるかぎり、彼らの公共的に重要な要求を集団によって代弁させなくてはならない。他方、消費者や選挙民としての個人的決定は、その公共的重要性に正比例して、ますます経済的政治的権威の勢力範囲にひき込まれる。

 かつて国家と社会を媒介していた公共性は解体した。公共性(広報活動)はいわば、特定の立場に「信用」(good will)の体裁を調達するために、上から展開される。本来、公開性は公共的論議と支配権の立法的創立との間の連帯、さらにはその支配権行使の批判的監視との間の連関を保証するためのものであった。今や、批判的公開性は操作的公開性によって駆逐されるのである。

 国家が計画、分配、管理という形で社会運営の中へ干渉してくるので、規範の普遍性を原理として守りぬくことができなくなる。私生活圏の自立性が法律の普遍性を可能にしていたが、国家と社会の相互浸透によってその私生活圏が解消するにつれて、論議する私人たちから成る比較的同質の公衆によって立つ地盤もゆるがされた。

 公共的な拍手のために動員されているが、しかし同時に公衆は、全く権力行使と権力均衡の過程の埒外に立たされているので、公共性の原理によってこの過程を理性化するということは、保証はおろか要求さえされることもできない。


第六章 公共性の政治的機能変化          文責:小林勇人                                  

公共圏の構造転換:二つの観点から考察1.社会(福祉)国家的転換 2.マスメディアを通じたコミュニケーション構造の変化 →三つ目の局面から見ると弱点(致命的?)あり

☆西欧型の社会における社会国家と組織資本主義との複合的な発展が引き起こした反作

1.私的領域および私的自律の社会的基礎への反作用

★機能的に高度に分化した社会は全体の優位性を眼目とする社会構想によっては捉えられない

2.公共圏の構造および公衆の構成と行動への反作用

★公衆の行動の変化についての評価→修正

3.大衆民主主義の正当化過程それ自体への反作用

★利害の和解なき多元主義〜ヴェールに覆われた多数派の権力

第二〇節 民間文筆家たちのジャーナリズムからマス・メディアの公共サーヴィスへ 公共性の機能としての広告

・公共性の主要な機関である新聞の変遷:通信新聞→思想新聞

1.民間の通信組織の中から出現した段階

2.「文筆家のジャーナリズム」段階

3.「新聞はその広告欄を、編集紙面によって売りこむことのできる商品として生産する企業という性格を帯びてくる」段階

・「端的に大衆娯楽の本質を消費者教育にあるとみなし、この教育はすでに幼年期から始まって、たえまなしに成人にもつきまとう」=「今日ではどの幼児の将来の職業も、熟練した消費者という職業である」

☆新しい「公共性」=公共性の再封建化

「虚偽の公益(public interest)という旗印のもとで手の込んだ意見造形事業(opinion-modeling services)によって作りだされた合意には、そもそも合理性の基準が欠けている。公共的に論議される事態にたいする知的批判は、公的に演出される人物や擬人化へのムード的順応に席をゆずり、合意(consent)は知名度(publicity)がよびおこす信用(good will)と一体化する。かつては公開性(Publizitaet)は、政治的支配を公共的論議の前へ引き出してくることを意味していたが、今では知名度は、無責任なひいきの反応の集約にすぎない。市民社会は、広報活動によって造形されるようになるにつれて、ふたたび封建主義的な相貌を帯びてくる。」(p263)

「さまざまな私企業がその顧客層に、彼らの消費決定にさいして一種の国民意識をそれとなく吹き込むので、国家の方もその国民を消費者とみなして彼らによびかけざるをえなくなる。こうして公権力も、知名度を求めて宣伝することになる。」(p264)

第二一節 公開性の原理の機能変化

☆公開性:批判の原理→統合の原理

・公開性は、その示威機能のために、批判機能を失う

・「もろもろの社会的組織によって横取りされ、集団的私的利害の圧力化で権力化した公共性は、みずからをも公開性の諸条件に容赦なく服従させて、再び厳密な意味における公共性となるかぎりでのみ、政治的妥協への関与をこえて、政治的な批判と統御の機能を発揮することができる。変化した状況のもとで、古典的な公開性要求の趣旨を復古的なものへの錯倒から守るためには、非正統的な公開性要求による補充において、いままでみずから公共性の監視下に服するよりもむしろ他の制度の公共性を食いものにしてきた諸制度―とりわけ政党、ついでは政治的に有力なマス・メディアや公共団体―はどへも公開性を推し及ぼすことが必要である。これらはみな、国家を相手取って行動する社会的勢力の制度であり―すなわち、政治的秩序の内部では公共的機能を発揮する社会の私的組織である。」(p277)

―これらの機能を民主主義的意思形成の線にそって果たすためにすること三つ(p277-8)

→新しい公共性=「国家機関にかかわる周期的もしくは間歇的な選挙や投票という水準をこえて、集合的恒久的な統合過程において厳然する社会」

第二二節 造成された公共性と非公共的意見 住民の選挙行動

☆造成された公共性⇒非公共的意見

例)西ドイツ連邦議会の一九五七年の選挙:与党に有利に影響した措置

〜選挙戦で勝ちを占めた政党の広報活動:四つの戦略的措置―年金法改正

「してみれば、このような政治的意思形成の方法さえも、一面では、非公式的意見によって政府に一種の圧力を加え、冒険的な人気喪失を避けて国民の現実的欲求を充足させることの保証にはなる。しかし他面では、それは厳密な意味での公論の熟成を妨げるのである。」(p289-90)

第二三節 自由主義的法治国家から福祉国家への変形過程における政治的公共性

・政治的公共性が今日において実際にふるっているような諸機能と、政治的公共性に要請されているような諸機能との間の不調和

・自由主義的な自由保障/民主主義的な参加保障の区別:公共圏と私圏の根源的関係から見ると連関あり「身分は私圏(市民社会と家族)においても公共圏においても、民間人の自律さえ保証されているならば公共圏と市場が期待通りの仕方で機能するであろうということを信頼して、禁止命令的に保障されるのである。」(p293)

・自由主義的法治国家の社会福祉国家的転形=連続性を基調、リベラルな伝統から断絶しているわけではない

・禁止命令的効果の積極的充実がもはや「自動的」に現れなくなっている→「国家権力の介入なしに社会の内在的メカニズムの自動調節に任すべき領域を画定しても、社会的報酬や政治的制度への近似的にでも機会均等な参加によって報いられることは、もはやなくなったからにほかならない。これらの参加は、いまや明示的に国家によって保証されることになる。」(p295)cfポランニー

☆自由主義的基本権→どの程度まで参加権として考え直さなければならないか「・・・(基本権は、)民主主義の実質的法治国家思想を、すなわち特に、平等性の命題、そして平等性の命題と自治思想における参加思想との結合を、経済秩序と社会秩序にも推し及ぼし、こうして社会福祉国家思想に現実的内容を与えるようにする趣旨をもっている」(p296)

:経済と政治がクロスするところに福祉が派生してきているといえるのではないだろうか(小林)

・社会的給付への参加と政治的公共性の制度への関与(もはや立入禁止的に間接的に保障されえなくなった事柄)

→積極的に保障されなくてはならない

☆新しい公共性(=基本権の福祉国家的機能変化、自由主義的法治国家から社会福祉的法治国家への転換)vs新しい「公共性」(=公共性の再封建化)

「批判的広報活動と操作的広報活動との抗争は、権力執行や権力調整という政治的に重要な過程に及んでいるだけではない。むしろ消費組合の組織内公共性の中で、独占的競争の操作的広報活動によって透明度を失っていく財貨市場を公法的に監視しようとする運動がめばえている(本書代二〇節参照)。公共圏と私圏との間の敷居が、まず私有領域そのものの内部で水平化されることは、公共性が広告目的のために使役される傾向を生むだけでなく、原理的にはその逆に、批判的広報活動が市場圏へ侵入していくことをも可能にするのである。」(p318、注123)

・自由主義的法治国家=政治的に機能する公共性は国家機関として樹立されることによって本当に実現されたという擬制

・福祉国家の諸条件のもとで機能する公共性:「巨大に拡張された公共圏内で自己自身につきつけられた公開性の原理をその批判的有効性において縮小させようとする第二の傾向と競合しながら、一歩一歩みずからを設定していかなくてはならない」(p302)

・政治的支配権と社会的権力一般とを理性化するという福祉国家的な建前=市民的公共性の理念に内在する根本問題

☆政治的に機能する公共性の二つの前提条件→ユートピアとは決め付けられない

1.官僚的決定を客観的に可能なかぎり極小化すること

2.認識可能な公益を基準にして構造的な利害葛藤を相対化すること

☆新しい公共性の理念は、市民的公共性の理念を完結させるものであり、イデオロギーとして弾劾されてはならない



UP:20040402 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db1990/9000hj.htm
Habermas, Jurgen  ◇BIBLIO.  ◇WHO 

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