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ロバート・B・ライシュ著『ザ・ワーク・オブ・ ネーションズ』


Reich, Robert B. 1991 THE WORK OF NATIONS: Preparing Ourselves for 21st-Century Capitalism, Alfred A. Knopf, Inc.
=中谷巌訳 1991100 『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ──21世紀資本主義のイメージ』, ダイヤモンド社, 445p. 2,243円 ISBN: 4478210187 [amazon] ISBN: 4478210187 [amazon] ※※


作成者:橋口昌治(立命館大学先端総合学術研究科1回生)


●目次
 謝辞
 日本版序文
 序章 国家という概念
 PART ONE/THE ECONOMIC NATION
 第1部 経済と国家の結合
  1 経済ナショナリズムの起源
  2 経済ナショナリズムと大量生産
  3 企業と国益の一致
  4 ナショナル・チャンピオンとしての大企業
  5 国民的な約束事
  6 問題認識における誤謬

 PART TWO/THE GLOBAL WEB
 第2部 グローバル・ウェブ
  7 大量生産から高付加価値生産へ
  8 企業における新しい「クモの巣」組織
  9 「所有」と「支配」の拡散
  10 グローバル・ウェブの特質
  11 「チャンピオン企業」の消滅
  12 企業の国籍を議論するのは無意味だ
  13 古びた考えの危険性

 PART THREE/THE RISE OF THE SYMBOLIC ANALYST
 第3部 シンボリック・アナリストの台頭
  14 未来の主役となるのは誰か
  15 シンボリック・アナリストの社会的有用性
  16 不平等化したアメリカの所得分配
  17 なぜ、貧富の差は広がる一方なのか
  18 シンボリック・アナリストの教育(その1)
  19 シンボリック・アナリストの教育(その2)

 PART FOUR/THE MEANING OF NATION
 第4部 国家の新しい意味
  20 問題の所在―再説
  21 公共投資の衰退
  22 古臭い思想の効用
  23 新しいコミュニティの出現
  24 「離脱」をめぐる政治学
  25 「われわれ」とは誰か

 参考資料・出典
 訳者解説

●作成者による引用
F
「いうまでもなく、ナショナル・エコノミーに影響を及ぼす多くのグローバルな要素は、私が本書で明らかにしたとおり、すでに日本でも知られている。すなわ ち、物的資本よりも人的資本の重要性が大きくなっていること、教育および技術的知識がグローバルな直接投資を惹きつける国際競争の決め手として、その価値 が高まっていること、さらには、一部の限られた富裕層とそれ以外の階層との間の所得格差が広がっていることなどである。」

p.81
「そのようなわけで、今世紀半ばのアメリカの中等教育も高等教育も大量生産システムを反映していた。子供たちは、あたかも工場のベルト・コンベアに乗って いるかのように、あらかじめ定められた順序で標準科目をこなし、一学年ずつ階段を昇っていった。(…)そして、「欠陥製品」はラインからはずされ、「修 理」に回された。そこでは、大量生産システム同様、規律と秩序が何にもまして強調されたのである。」

p.115
「高付加価値型企業においては、利益は規模と量に規定されるのではなく、ニーズと解決策を結びつける新しい組合せを絶えず発見することによって生まれる。 そして「商品」と「サービス」の区別は無意味になっている。というのも、成功している企業が提供する価値の大半は、サービスをも含むからである。」

p.121
「高付加価値企業にとっては速さと軽快さがきわめて重要なので、オフィス・ビル、プラント、設備、従業員への給与など、間接費の圧力が企業を押しつぶすこ とはない。」

p.122-123
「また、危険と報酬とを分け合うとなれば、さらに利点が増す。それは、強烈に創造性が刺激されることである。彼らが技術と市場を結びつける新たな機会を発 見しようとすれば、問題解決者、問題発見者および戦略媒介者に相当の動機がなければならない。共通の仕事に携わることによって、敗北による危険も勝利した ときの報酬も共に分かち合う小さな集団の連帯感ほど、強力なインセンティヴはないといえる。報酬は金に限らない。集団はしばしば同じ夢を追い求めるもので ある。誰もが成功し、得意になりたいのである。」

p.141
「しかし、高付加価値型企業においては、ルーティン生産の労働者と金融資本家の要求は、新たな問題を解決し、発見し、媒介する人々の要求に比べて、次第に 軽視されるようになった。その結果、先進国経済においては、生産労働者の取り分となるドル(あるいはポンド、マルク、円)は着実に低下していった。利益 も、同様に圧縮されていった。しかし、問題を概念としてとらえる人々は、かつてない高給と手数料を要求するようになっている。」

p.208-209
「今や企業の国籍を論じることが的はずれであると主張したからといって、私は急速に進展する地球経済(グローバル・エコノミー)において、国民経済的な利 益が存在しなくなったり、問題にならなくなったということを主張しているわけではまったくない。両者を区別することは重要である。日本人、韓国人、台湾 人、ドイツ人、オランダ人などは、国境を越える投資を続けているとはいえ、正確に自分たちの国民経済的な利益も認識している。そうすることで、どの国も市 民の暮らし向きと安全を高めようと努力しているのである。」

p.241
「本質的な観点から見て、競争的な立場の異なる職業に対応した、三つの大まかな職種区分が生まれつつある。この三つとは、「ルーティン・プロダクション (生産)・サービス」、「インパースン(対人)・サービス」、「シンボリック・アナリティック(シンボル分析的)・サービス」である。」

p.242
「ルーティン生産労働者は、読み書きと簡単な計算ができなければならない。最も基本的な徳目は、信頼性、忠誠心、そして対応能力である。アメリカの伝統に 則った標準的なアメリカの教育は、通常はこのような能力を労働者に与えるという点で満足すべきものである。」

p.243-244
「対人サービス従事者は、ルーティン生産従事者同様、時間に正確で、人から信頼され、素直でなければならない。多くの場合、もうひとつの条件が要求され る。それは、相手に好感を与える振る舞いをしなければならないという点である。(…)伝統的に、対人サービスの多くが女性だったということは当然のことで ある。女性は生来の気質―母性的なもの―が無数の対人サービスの仕事を女性にもたらしてきたのである。」

p.244
「一九八〇年代の米国では、ファストフード店、バー、レストランなどで、三〇〇万を超える新しい対人サービスの仕事が創出された。これは、八〇年代末の時 点で、自動車、鉄鋼、繊維産業にとどまっているアメリカのルーティン生産労働者の合計を上回っている。」

p.246
「シンボリック・アナリストは、多くは一個人または少人数のチームで仕事をするが、世界的な組織網を持つ大きな機関と結びつく場合がある。チームワークは しばしば、非常に重要な役割を演じる。解決方法はおろか、問題自身も事前にわかっているわけではないから、なにげない私的な語らいのなかから有効な発見や 洞察が生じ、それが最高に活用され、即座に決定的評価に結びつくことがあるのである。」

p.247
「シンボリック・アナリストのほとんどは四年制大学を卒業し、その多くは学位を持っている。圧倒的に白人男性が多いが、白人女性の数も増加している。ヒス パニックや黒人も徐々に増えているが、まだ数は少ない。」

p.250
「シンボリック・アナリストは必要となれば、コンピューターのキーをたたくだけで、すでに確立された知識体系を引きだすことができる。事実、データ、文 書、公式、そして規則は容易に手に入る。価値があるのは、その知識をいかに有効かつ創造的に活かすかの能力である。専門家の肩書きはそうした能力を保証す るものではない。」

「そこで次に、シンボリック・アナリストたちは、自分たちの仕事を他人にどう説明するのだろうか。これは容易ではない。」

p.289
「近代的な工場と最新の機械は世界中のどこにでも設置が可能となった。したがって、米国のルーティン労働者は、今や無数の他国の同じルーティン労働者とま ともに競争する羽目に陥っている。」

p.295
「州知事や市長は肝に銘ずべきだ。まことに残念ながら、誘致した外国の工場は選挙民の雇用を奪うことになりかねないのである。」

「全体として、ルーティン生産の仕事が減少することは、女性よりも男性に痛手を与える。すなわち、ルーティン生産職は大量生産型の重厚製造業では男性が主 であり、彼らの給与が繊維やデータ処理といった産業で主力である女性よりも高かったことが、その理由である。従来のルーティン生産がいずれも消滅してきた ため、ルーティン生産に従事するアメリカ人女性の賃金は次第に男性に追いついてきた―とはいえ、共に貧しい水準だが。これが、一九八〇年代を通じて性別、 すなわち男女間の格差を縮小させた大きな理由なのである。」

p.299
「二十一世紀の対人サービス労働者は、あり余るほどのヘルス・ケアの仕事に恵まれるものの、彼らの所得の大部分は国の社会保障負担と所得税に吸い上げられ てしまい、それがまためぐりめぐって、彼らの給料になるというわけだ。」

p.314
「ヨーロッパや日本の中等学校の生徒は常に、数学や科学でアメリカ人の最優秀な生徒さえしのぐ水準にある。しかしながら、最も恵まれた子供たちに対して、 将来の創造的な問題解決者、問題発見者、戦略的媒介者を育てるために、十分に準備をしているという点では、アメリカ社会を超える国はない。」

p.315
「より重要なことは、これらの恵まれた子供たちが、いかにして問題とその解決を頭の中で概念化するかを学習するという点にある。そこで、初歩段階のシンボ リック・アナリスト向けの正式の教育では、四つの基礎的技能の習得が課される。その四つとは、抽象化、体系的思考、実験、そして共同作業である。」

p.344
「このように科学技術によって能力が高まる仕事がどの程度増えるかは、対人サービス労働者の現場での学習いかんにかかっている。したがって、これまでより はるかに多くのアメリカ人が、数学や基礎科学、それに読み書き能力やコミュニケーション能力のしっかりした基礎を求められるようになる。」

p.363
「ここに、新たな経済ナショナリズムの論理が生まれる。すなわち労働者の技能と社会資本の質こそが、世界経済におけるその国独自の特質であり、他の国とは 違った魅力を形成する。世界的な生産における、こうした比較的変動のない要素への投資が、国と国との主要な差なのである。」

p.369
「一九九〇年代には、個人が雇うガードマン数はわが国労働力の優に二・六パーセントを占めた。一九七〇年の倍の比率であり、警察官の数よりも多い。この急 激な伸びに注目した労働統計局は、この職業を一つの職業区分として独立させたほどである。一〇大警備会社の収益は一九八〇年代に実質六二パーセント増加し て、合衆国で最も成長した産業の一つになった(驚くべきことに、法律業よりも成長が速かったのである)。」



UP:20031114 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db1990/9100rr.htm
BIBLIO. 

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