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山田昌弘 『近代家族のゆくえ 家族と愛情のパラドックス』 新曜社


山田 昌弘 19940515 『近代家族のゆくえ 家族と愛情のパラドックス』,新曜社,[bk1]

【目次】
序章 家族愛の強調が生む出すパラドックス
I章 近代家族のアイデンティティ
 1 家族への思い込み
 2 近代家族の基本的性格
 3 近代家族の危うさ
 4 近代家族を支える装置
 5 近代家族の成立と形成
II章 近代家族と愛情の諸相
 1近代社会における愛情の意味
 2 母性愛の形成
 3 恋愛結婚と近代家族
III章 家事労働のしくみ
 1 家事労働の基本的性格
 2 家事労働の意味
 3 家事労働とジェンダー
IV章 近代家族のゆくえ
 1 現代化と家族
 2 現代家族の変貌
 3 現代家族の危機
注 
あとがき
参考文献



IV章 近代家族のゆくえ
3 現代家族の危機
■ 近代家族の二つの基本のゆらぎ
1家族責任の不平等な配分により、負担者の不満が顕在化すること
2感情の不安定が顕在化すること

■ 現代家族の危うさ
「過剰な負担を引き受けたくない」、「嫌いな家族と離れたい」という要求は、近代社会が自ら持っていた原理「平等と自由」の一部である。
それゆえに正当性をもって、主張できるのである。」p215−216

「家族であるから愛情が湧くはず」というイデオロギーが強ければ、「嫌い」という感情の抑圧ができた。
そのイデオロギーが弱まるにつれて、感情の不安定が顕在化し、家族責任の切り離しが始まる。」

■ 子から親の変貌
「成人した子の親に対する関係において、現在、家族責任の切り離しが進んでいる。
自分の生活水準が下がらない範囲でしか子は親の面倒を見ない、貧しい親は捨てられるという傾向が現在の親子関係を規定する。」
(青年期の親子関係意識―家族と非家族の間)「季刊家計経済研究」15号1992年夏号p40参照)

■ 家族政策のジレンマ

「現代資本主義の構造転換のために、国家―公共機関の経済・社会領域への介入が不可欠になってきている。
経済領域における自由競争というタテマエがありながら、実質的に国家が経済領域に介入している。一番大きな介入の仕方が福祉政策なので福祉国家と呼ばれる。
しかし、オッフェなどが分析したように、自由資本主義の経済システムの不備を補うために国家の介入が始まりながら、 国家の介入によって、財政危機(オッフェの論点) や正当性の危機(ハーバマスの論点)などの新たな構造的な問題が引き起こされてしまった。
同様に、家族政策は、近代家族のあやすさを補うために発達しながら、新たな別の問題を引き起こしてしまう。
国家は@社会の生産=再生産システムの維持、拡大に責任を負うと同時にA国家自体の正当性を調達するために、国民の不満を処理しなければならない。
現代化の進行によって、@家族の再生産水準の上昇、A家族の過剰な責任負担に対する不満の増大が生じると、家族政策は、質的な転換をせまられるようになる。」 p231−232

「国家が家族の負担を引き受け始めると、不平等性を覆い隠していた愛情のイデオロギーを弱体化させ、それが、また不平等性を意識させるという加速度的な結果を 生み出すのである。」p235

「この傾向に歯止めをかけるため、「家族の愛情」や「家族の価値」を強調するイデオロギー政策がとくに1980年代の保守化の動きの中で顕著になってきた。 しかし、家族の愛情の強調が実際には負担の不平等を覆い隠し、国家の負担を軽減させるだけのものであることが明らかになってきた。」p237



  山田昌弘

専門  家族社会学 感情社会学 ジェンダー論
領域  結婚問題、親子関係、高齢者介護、恋愛、家族の愛情、ポスト青年期論、家族と階層、
    身体接触と感情、愛情の社会学、男女関係論、家事労働論、家族政策、福祉政策など

1983年 東京大学大学院 社会学研究科修士課程 修了
1986年 東京大学大学院 社会学研究科博士課程 単位取得退学
      東京学芸大学 教育学部 助手、専任講師を経て、現在助教授に至る
1993年 文部省在外研究員 〜カリフォルニア大学バークレー校 客員研究員〜
1997年〜厚生省人口問題審議会専門委員
1997年〜1998年 経済企画庁国民生活審議会特別委員


作成:川口由美子(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
UP:20040525 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db1990/9405ym.htm

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