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トマス・J・スグルー『アメリカの都市危機と「アンダーク ラス」』




Sugrue, T. J., 1996 “THE ORIGINS OF THE URBAN CRISIS”, Princeton University Press
=川島正樹訳20020208『アメリカの都市危機と「アンダークラス」 ――自動車都市デトロイトの戦後史』明石書店,p.576,¥6800+税, ISBN:4-7503-1522-2 [amazon]


■目次

日本語版読者へのはしがき
謝辞

序章

第一部 造兵廠
 1章 「民主主義の造幣廠」
 2章 「デトロイトの時限爆弾」――一九四〇年代の人種と住宅
 3章 「平和の棺」――公営住宅の封じ込め
第二部 鉄サビ
 4章 「もっとも卑しく汚い仕事」――雇用差別の構造
 5章 「偽りの繁栄のいまいましい兆候」――デトロイトの脱工業化
 6章 「お前の不可侵の労働権は忘れろ」――産業的衰退への反応と差別
第三部 火
 7章 階級、地位、そして抵抗――変わる黒人デトロイトの地図
 8章 「自家所有者の権利」――白人の抵抗と反リベラリズムの興隆
 9章 「コミュニティ連合は難攻不落だ」――暴力と人種の境界線
 結論 危機――デトロイトと脱工業化アメリカの行方

 付録
 A アメリカ主要都市の黒人と白人の相違指数(一九四〇〜九〇年)
 B 一九四〇〜七〇年におけるデトロイトの職業職種就労構成

訳者あとがき

写真・図表リスト
原注
略語一覧
索引


■以下、作成者による引用

◆「私がこれから話すのはある変容を遂げた都市の物語である。一九四〇年代にデトロイトはアメリカの「民主主義の造幣廠」と呼ばれ、この国で急速に成長す るブームタウンのひとつであり、合衆国でも最高の給料を取るブルーカラー労働者の本拠地となった。今日、この都市は職なし〔joblessness=失業 者だけでなく、就労意欲を喪失し、労働力から脱落した人々も含む〕と集中した貧困、物理的破壊、そして人種的孤立にさいなまれている。」(p.15)

◆「中心都市における住居、人種、職なし、そして貧困は、脱工業化時代においては解きほぐしえないほど相互に絡み合っている。第二次世界大戦後期におい て、北部大都市における階級および人種隔離パターンは持続し強化されてきた。貧しい人々は他の貧しい人が多数住む居住区にますます集中するようになってい る。都市居住者、とりわけ若いアフリカ系アメリカ人のますます多くは、自らが主流経済と切り離され、しばしば労働市場総体のそとに置かれていることに気づ いている。失業と貧困はたしかにアメリカの都市生活において目新しい特徴ではない。ジェイコブ・リースやロバート・ハンターのような観察者によって提示さ れた前世紀転換期のアメリカにおける寒々とした描写や過去の問題を明確に思い起こさせてくれる。しかし脱工業化時代における都市の貧困の概観と状況は今ま でのもとのとはまったく異なる。これまでのアメリカ史のどの時代にも、貧困と失業は風土病のように存在したが、貧しい人々は今日存在するのと同程度の隔離 と孤立を経験することはなかった。そして過去においては、大半の貧困者は、常にそうではなかったかもしれないが、労働市場への意欲的な参入者だった。」 (p.17)

◆「「(…)「アンダークラス」論争は次の三つの――ときとして重なり合う――方向で進展してきた。第一の、そしてもっとも影響力があるものは、貧困者の 態度や価値観、そして大都市中心部の職なし文化と依存性を助長してきた、連邦政府の社会的プログラムに焦点を当てる。ダニエル・パトリック・モイニハンと フランクリン・フレイジアの業績にまで遡るその変種として、不平等を持続させるうえでの家族構造の役割や非婚者の妊娠を強調するものもある。第二のもの は、不平等と都市の貧困を構造的に説明する。構造的説明の擁護者たちは、経済的構造改革(リストラクチャリング)の影響を指摘する人々(ウィリアム・ジュ リアス・ウィルソンをはじめとする)と、継続する人種差別を強調する人々(ゲイリー・オーフィールドやダグラス・マッシーをはじめとする)とに二分される 傾向がある。第三の説明は政治に焦点を当て、アメリカの社会政策における都市の周縁化、とりわけ一九六〇年代における都市の動揺と人種紛争の後のそれを強 調する。ブラック・パワーの「行きすぎ」とアファーマティブ・アクションの拡充が白人の郊外化を煽り、都市の貧困者に対する新手の白人の巻き返しを正当化 した。このような分析に内在するのは、好景気に沸いた戦後の時期と騒乱にみちた一九六〇年代の後の年月の対照、すなわち都市の絶頂期と都市の危機の対比で ある。
 近年、学問界は現在の都市の危機という重要な要素を認識してきた。しかし「アンダークラス」論争でほとんど抜け落ちているのは歴史的展望である。私が 行った第二次世界大戦後の四半世紀におけるデトロイトについての検討の結果が示唆するのは、都市の危機の起源は社会科学者が認識してきたよりもずっと以前 にあり、その根は深く、複雑で、おそらく改善し難いだろう、ということである。(…)ただ戦後の人種と住宅、そして労働をめぐる問題が複雑に絡み合った歴 史を明らかにすることを通じてのみ、今日の都市とその貧窮化した住民のおかれた状況を完全に理解しそれに立ち向かうことができる。」(p.18〜19)



製作:橋口昌治 UP:20051114
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労働  

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