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「戦後的青年期」の解体―青年期研究の今日的課題―

乾彰夫 『教育』2000年3月号 p.15-22



□はじめに 戦後的青年期の解体をめぐる世界的状況
・「戦後的青年期」の解体
 「学校から雇用へ」「子供から大人へ」

・日本…90年代前半
 cf.)鈴木聡「大人になることのむずかしさ」(民主教育研究所『人間と教育』19号、1998年)「世代継承サイクルの異変」(『教育』1999年5月号)

・欧州…80年代以降=経済危機と福祉国家の解体→若年労働市場の急速な縮小と不安定化→青年期研究の共同的な新たな流れが形成
 ex.)Bynner, J., Chisholm, l.& Furlomg, A.(1997) Youth, Citizenship and Social Change in a European Context, Ashgate: Aldershotまたは、Journal of Youth Studies

@「学校から雇用へ」「両親への依存から独立した世帯形態へ」という「子供から大人へ」の移行過程の長期化と複雑化
A青年期の戦後的枠組みの解体が、西ヨーロッパの「福祉国家」と東ヨーロッパの社会主義というそれぞれの社会の日常生活を維持し枠づけてきたシステムの解体と深く結びついていること
 ex.)G・ジョーンズ、C・ウォーレス『若者はなぜ大人になれないのか』宮本みち子他訳、新評論、1996年。

□2 新規学卒就職の崩壊
・日本の場合は?90年代前半にはじまる
@「新規学卒就職」の崩壊
 戦後の日本社会=「企業社会」システム
 cf.)欧米=「ケインズ主義的福祉国家」

 70年代前半=大卒の8割が新規学卒就職
 80年代=約7割
 90年代後半=約5割(学卒採用は絶対数のみでなく割合でも急速に低下)

 70年代=新規採用者に閉めるパートタイマーの割合が1割
 80年代末=ほぼ2割
 90年代後半=大企業も含め3割 19歳以下(ほぼ高卒)では新規学卒就職者の2割(’97)

・バブル崩壊後の大企業の雇用傾向が採用数を減少させているばかりでなく、かつての新規学卒者中心採用が、一方ではパート労働者や派遣労働者等に置き換え られ、他方で世紀雇用では教育訓練投資をあまり必要としない経験者の即戦力的中と採用へと動いていることを物語っている(p.18)
 →新規学卒就職という戦後日本的枠組みは、システムとして「企業社会」内部から崩れてきている

□3 若年労働市場の不安定化と格差化
A若年労働市場の不安定化と格差化
・若年層の完全失業率
 19歳以下…平均10.6% 20〜24歳7.1%(総務庁「労働力特別調査」)

 15〜24歳の雇用者中パート・アルバイトの占める割合…18%(学生含めると34%・99年)
 *学生以外では90年時点に比べ実数・割合ともほぼ2倍

・卒業者に占める就職者/無業者の割合
 高卒…就職者=34%(90年)→20%割る(99年)、無業者=5%→9%

 短大卒…就職者=87%→59%、無業者等(「一時的職に就いた者」を含む)=8%→30%

 大卒…就職者=81%→60%、無業者等=6%→23%
・失業の罠=一度失業してしまい、職歴がないことが不利に働いて失業が固定化すること(イギリスでの事例)→雇用をめぐる格差が累積的に拡大
 日本でも同様の傾向が見られる

□4 学校をめぐる競争の変容
・学校教育の構造への影響
@就学期間の延長
 イギリス:義務教育終了後の進学率(フルタイム)4割以下(70年代半ば)→約7割(90年代後半)
 →高位の学歴・資格をめぐる競争圧力の上昇
  /10代の雇用が失われ、その期間をあてにならない職業機会を待ちながら職業訓練などで過ごすことの「無意味さ」が社会的に浸透したことによると思われる。

日本:同様に就学期間の延長が見られる。
 高卒後の進学率=約60%(90年)→66%(99年)、短大から4年制大学への、大学から大学院への進学率なども90年代前半から急上昇
 *競争圧力の上昇ではなく競争の弛緩ないし「崩壊」現象が顕著なことがイギリスと違う

・大学志願(受験)者の入学率
 男子現役の入学率=45%(90年)→71%(99年)
 過年度卒(浪人)=女子92%、男子88%
*浪人の入学率は求人倍率0.85を上回っており、数字の上では浪人をいとわなければ就職より4年制大学進学の方がかえって容易にもなっている
 =18歳人口の減少に伴う競争緩和と高卒労働市場のほとんど解体に近い後退が原因

A「学校」と「雇用」との間の境界線の曖昧化
 ・「学生」と「社会人」の峻別がもはや通用しない
 ・高学費・貧しい奨学金制度、親世代の経済的逼迫によって就学期間の延長は若者の労働に頼らざるを得なくなっている

□5 日本型戦後的青年期の解体と今日の課題
 ・「新規学卒就職」システムを含む日本型戦後的青年期の解体
 =「生徒・学生」(=親の保護の下に置かれる存在)と「社会人」(=親の保護から外れた存在)とを「最終学年卒業=就職」を境に明確に峻厳する枠組みの解体
 ・ライフステージごとの「成熟」イメージの解体
 ・移行過程を支えるのがイギリスなどでは社会保障制度であるのに対して、日本では家族であること
 ・新規学卒市場が一般市場から分断された若年市場構造が、失業補償などの社会保障制度の不在の問題を顕在化させなかった

*これからの課題
 ・青年期に関する本格的かつ長期的な調査と研究が必要
 ・従来の枠組みを越えた共同的な取り組みが必要
 ・緊急的対応も必要だが、40年来のシステムが崩壊しているということを受けた対応も必要
 ・青年期の新たな様相にふさわしい教育実践の創造




作成:橋口昌治 UP:20040416 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db2000/0003ia.htm
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