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「専業主婦層の形成と変容」

杉野勇・米村千代 20000615 原純輔編『近代化と社会階層』,日本の階層システム1,東京大学出版会


■杉野勇・米村千代 20000615 「専業主婦層の形成と変容」,原純輔編『近代化と社会階層』,日本の階層システム1,東京大学出版会,pp.177-195

1 女性はいつ主婦になったのか

女性の非労働力人口の調査
→「およそ一九七〇年前後にいわゆる「専業主婦」層の数がピークを迎えたと考えられる」(p.178)

「主婦化とは、皆が「(専業)主婦でないもの」から「(専業)主婦」へと変化したということ指すのではなくて、結婚後、一定期間無職になるようなライフコースが典型として出現してくることを指している」(p.179)
再び賃労働市場へ戻っていく

1951−55年頃に生まれた女性たちが最も主婦転換率が高い 47%

「M字型就労の二つ目の山を主に担っているのはパートとして復帰する層なのである。主婦化の主要な担い手であった一九五〇年代前半生まれの世代は結婚退職後、パートとしての復帰が顕著な層でもある。つまり、一九五〇年代前半生まれの女性たちは、「主婦転換」した世代であると同時に「パート化」した世代でもあり、二重の意味で戦後日本の主婦の特徴をもっとも体現している世代なのである」(p.181)

2 主婦化と階層

「専業主婦という在り方は夫の側の被雇用労働形態に、すなわち「職住分離」にともなって登場したと言える」(p.182)

「専業主婦化を促進する条件は、高度経済成長にともない増加する。同時に専業主婦を要請する条件も、夫が「企業戦士」化することによって強化されていった」(p.182)

「高度成長期にむかっての主婦転換型ライフコースの増加の背景には、自営業・家族従業者の減少、サラリーマンの増加とその賃金や雇用の安定、配偶者控除の制度化などの主婦化を促進する条件があった。加えて、結婚後女性が働き続ける職場も限られていた。配偶者(多くの場合妻)の所得が一定額以下の場合、主たる所得者(多くの場合夫)の所得から控除が受けられるという配偶者控除は、結婚退職制度や社内結婚の禁止とともに、「企業戦士」を家庭で支えるという、女性の主婦化を助長する制度であった。一九六一年以降導入されたこの制度が、いわゆるパートの「一〇〇万円の壁」を生み出すこととなった」(p.182)

「一九六〇年代から七〇年代にかけては、サラリーマンの夫が外でフルに働き、妻が家事に専従するという仕組みが完成へと向かった時代であった」(pp.182-183)

▼主婦転換と主婦の学歴

「女性が高学歴化すれば、労働市場への進出が進むという図式を単純には考えがちであるが、逆に主婦化しやすい要因もある」(p.183)

主婦転換する割合:中等学歴>高等学歴>初等学歴(女性の学歴)
夫の学歴が高いほど妻の主婦転換率は高くなる
「夫の学歴の高さは妻の主婦転換率を高め、女性本人が高等学歴であることは主婦転換率を低める」(p.183)
「女性本人が高学歴であることは、主婦転換に対して両方向的に働くことになる」(p.184)

▼職業別にみた主婦化のしやすさ
・夫が結婚時にホワイトカラーor大企業のブルーカラーの層:40〜45%の妻が主婦に転換 ――もっとも高い
・初職がホワイトカラーor大企業のブルーカラーである女性の主婦転換率:約45% ――もっとも高い

「夫の階層的地位の高さは、どうやら専業主婦化を促進している」(p.185)

専業主婦という在り方の条件
・夫が主な稼ぎ手として被雇用労働に従事する
・夫の賃金収入だけで世帯の生計が維持できる

「高学歴・高威信職業の夫の妻ほど、専業主婦化を可能にする条件も要請する条件も多くなる」(p.186)

3 再就職のパターン

「女性が高学歴であることは、それ自体は主婦転換率を低くとどめる傾向があるが、いったん「主婦転換」した高学歴女性は専業主婦にとどまりやすい。なお、夫の学歴が高いほど、主婦転換率が高く再就職率が低い」(p.186)

「高学歴女性は、結婚してキャリアを継続するか、専業主婦化してそのまま無職にとどまるかの分岐点が顕著になる」(p.187)

「専門職層(この層は当然高学歴であると考えられる)は、比較的主婦転換しにくい代わりに、いったん主婦になった後は再就職もしにくい。それに対して中小企業のブルーカラー層は、主婦転換しにくい上に、主婦になってからの再就職率も高いのである」(pp.187-188)
 ↓
☆「中小企業ブルーカラー層が主婦になる・主婦に留まることがなかなか困難であるのに対し、ホワイトカラー・大企業ブルーカラー層は主婦になれるし主婦に留まれるのであり、専門職層になると、あまり主婦にならないが、一度主婦になったらそのまま主婦でいつづけるのである」(p.188)

▼就業継続型と専業主婦・再就職型との比較

夫の階層的地位の高さ
・主婦転換後:専業主婦定着>パートタイム>フルタイム
・就業継続型:フルタイム>パートタイム
 ↓
「主婦転換後の女性の就業は経済的必要性によるものが大きい」(p.189)
「就業継続型にとってのフルタイム就業は、「働き続けられる」ことを意味し、そのためには高学歴であることが有利に働くと考えられる」(p.189)

「就業継続型は、主婦転換型と比較して夫婦の教育年数の差が小さい」「学歴同類婚」(p.189)

フルタイム就業継続型と主婦定着型との差:働くことに対する意味づけや一般的な性別規範意識の違いが顕著
 性別役割意識
  ……専業主婦定着型:常に最も肯定的
    フルタイム継続型:常に最も消極的/否定的
「専業主婦定着型とフルタイム就業継続型という二つのカテゴリーは、本人の学歴や夫の社会的地位などに関しては他の女性たちよりも近い立場にあるのだが、こうした意識に関しては対照的な立場を示していると言える」(pp.189-190)

4 高度成長期以降の「主婦」

主婦転換・専業主婦化とも一九七〇年代半ばをピークとして、それ以降は減少

女性のライフコースの変化  単なる「豊かさ」以上の要因

婚期女子への労働力需要が高まるのは、高度成長期以降の構造転換後
未婚女子中心の女子雇用形態 → 「サービス経済化」に伴い既婚女性へと雇用が拡大
 勤続年数の伸長、パート層の増大

「パート化の進行は、主婦化と抵触しない女性就業であり、M字の一方の山を担うものである。女性のパート雇用が増大することに加えて、家計補助の必要性の高まりが再就職の山を高くしたということができよう」(p.191)

高学歴女性の今後の動向:結婚相手である高学歴サラリーマンの動向に大きく影響される
高学歴の男性と結婚:女性に専業主婦になることを要請しもする

「専業主婦の階層的地位はそうでない女性と比べて確かに高いが、そのことは女性が望んで専業主婦化した結果であると単純に解釈できるものではない。夫の収入が相対的に多く、高い威信を獲得している層は、確かに専業主婦にとどまる確立が高い。しかしこのことは同時に女性が就業を継続しにくい状況におかれることでもある。女性の高学歴化→職場進出という単純な図式では、現実は表現しきれない」(pp.191-192)

「「主婦」は、夫の雇用や収入が安定していること、終身雇用制を前提としたからこそ可能であった。他方で、専業主婦を要請する条件は、家事の外部化にもかかわらず弱まっていると言いきることは出来ず、昨今の子供をめぐって取りざたされる社会問題の論じられ方をみても、依然として子育てにかかわる母親へのさまざまな要請は強いと言わざるをえない」(p.192)

「女性の高学歴化が今後一層進行するとすれば、それはフルタイム就業型と専業主婦型のいずれをも促進する可能性を持っている」(p.192)
一方、学歴インフレ → 中等学歴女性と同じようなライフコースをたどる可能性も

「少なくとも、主婦転換率の減少(M字の谷の高まり)と再就職パターンの多様化(M字の二つめの山の分化)という二つの点で、典型が崩れてきていることは確かである」(pp.192-193)


作成:村上 潔(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
UP:20051117 Rev: http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db2000/0006si.htm

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