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『援助するということ』
古川 孝順・岩崎 晋也・稲沢 公一・児島 亜紀子 20020625
有斐閣,261+4p. 2200



■古川 孝順・岩崎 晋也・稲沢 公一・児島 亜紀子 20020625 『援助するということ』,有斐閣,261+4p. 2200 ※

 <書誌情報>(紀伊国屋)
 http://bookweb.kinokuniya.co.jp/html/9975954499.html

◆古川 孝順 20020625 「社会援助活動の社会的基盤──社会と個人の交錯するところ」
 古川・岩崎・稲沢・児島[2002:001-068]
◆岩崎 晋也 20020625 「なぜ「自立」社会は援助を必要とするのか──援助機能の正当性」
 古川・岩崎・稲沢・児島[2002:069-133]
◆稲沢 公一 20020625 「援助者は「友人」たりうるのか──援助関係の非対称性」
 古川・岩崎・稲沢・児島[2002:135-208]
◆児島 亜紀子 20020625 「誰が「自己決定」するのか──援助者の責任と迷い」
 古川・岩崎・稲沢・児島[2002:209-256]

 

◆岩崎 晋也 20020625 「なぜ「自立」社会は援助を必要とするのか──援助機能の正当性」
 古川・岩崎・稲沢・児島[2002:069-133]

<目次>

1 はじめに―問いの所在 70

2 「自立」を求める社会 74
   「自立」概念の多義性 74 理性的な存在としての「自立」=「自律」 75 富裕欲をもつ存在としての「自立」=「自助」 77

3 「自立」と対立する援助 78
   「自立」社会における援助の否定 78 「自立」社会における私的扶養の位置づけ 79 「自立」社会で生き延びた援助 81

4 集合的利益を拡大するための援助 85
   「自立」社会の前提条件の不完全性 85 集合的利益の拡大と「自立」 86 「自立」を可能にするための援助の形態 88

5 福祉国家における援助の特質 96
   国民の三層構造化 96 福祉国家を成立させた二つの前提 98 「自立」に収斂されたニーズ 99

6 福祉国家への懐疑 101
   「自立」社会と援助への懐疑の関係性 101 国民の三層構造化への懐疑 102 福祉国家の二つの前提条件への懐疑 106 私的扶養の弱体化と「自立」に収斂されないニーズの増大 109

7 「自立」社会の再編と援助 110
   「自立」社会の新たな展望 110 新自由主義者による過去への回帰 111 ワークフェアを推進する「第三の道」 112 労働と所得保障を分離する「ベーシック・インカム」 114 労働時間と所得保障を分離する「ワークシェアリング」 117 労働の価値の相対化と援助の独自性 117

8 おわりに―新たな「社会的連帯」の可能性にむけて 119


<概要とメモ>

☆問題意識:「援助を支えてきた諸価値を現代の状況に照らして、問い直し、再構築し、再びリアリティを取り戻す必要がある」(p.)

☆「援助」を考えるにあたって「自立」という概念をもちだしてきている。
→問題設定:「「自立」という社会的規範と、「援助」が対立する関係にあり、「援助」は常に自らを正当化する論理を必要としてきた」(p.)

●自立:「「他の援助を受けない」という意味での「自助」と、「他の支配を受けない」という意味での「自律」」(p74)

・神なきあとの空洞化した社会秩序

→政治学アプローチ:社会契約説(ホッブズ、ロック、ルソー)
「・・・人間の本質は理性を有していることであり、人間は理性的であることが要請されるのである。そして理性以外の何ものからも支配されないという意味で人間は「自立」=「自律」していることが求められた」(p76)

→古典的な経済学アプローチ:人間の利己的な欲求(アダム・スミス)
「・・・他者からの支配や規制を受けずに利己的な欲求を追求できるという意味の自由が重要となる。「自立」の意味も、自らの富裕欲を自らの労働によって満たすという経済的「自立」=「自助」が重視されるようになる」(p78)

・近代市民社会:労働力の交換による財の分配システム+私的扶養による財の分配システム
〜「人間を自助できる主体(市民)とそれに従属する主体に二分化し、従属する主体がニーズに基づく分配(扶養)を受けることを可能にするシステム」(p80)
→家族による私的扶養制度
→これだけでは社会的秩序を維持できない
→第三の分配システム必要

●援助:なんらかの社会的な規範に基づくシステム=「援助から私的扶養を除外し、労働力の交換でも私的扶養でもなく、ニーズを基盤に財(モノやサービス)を社会的に再分配するシステム(第三の分配システム)」(p72)

1.近代以前の援助:相互扶助、社会的扶養、貧者への施し(宗教的価値)など

2.自立社会での援助:「自立」社会と矛盾しないように、その目的や内容を再構成することによって生き延びた
→対象を厳格に選別する「社会的扶養」、「自立」と保護を媒介する「慈善」、リスクの共同化による「相互扶助」

3.集合的利益の拡大と援助:労働力の再生産や国力の維持
→予防を目的とする援助、補償を目的とした援助、「自立」する主体を創出する援助、私的扶養を補完する援助、「自立」社会の失敗コストとしての援助

4.福祉国家と援助:要援助状態(need)に基づく援助+特定の被援助階層(needy)への援助

第一層 自立   労働力の交換   生産的労働者    

第二層 私的扶養 ニーズ(扶養)  幼児、主婦、高齢者

第三層 援助   ニーズ(扶養外) ホームレス、外国人労働者、障害者

5.「自立」社会と援助への懐疑:援助への懐疑→自立社会への懐疑→援助のさらなる再構成

・「ノーマリゼーションを「自立」社会によって「価値を低められた」(devalued)人の異議申し立てととらえると、その対象は第三層の障害者に留まらず、第三層のすべて、さらには、第一・第二層にまで拡大されうる。」(p103)

6.自立社会における三つの分配システムの再編:福祉国家の否定・再編・継承→援助の形態、正当化要因に影響

・「こうした労働の価値のゆらぎー相対化は、援助の正当化問題にも大きな影響をもたらす。「自立」社会においては、人間の富裕欲を減退させることはよくないことであり、援助が依存という問題を発生させる危険性があったからこそ、常に「自立」社会との関係で援助は正当化を求められてきた。しかし労働の価値が人間の生存を保障する役割において相対化すれば、援助は、単に労働力の交換による財の分配を補完する存在から、「自立」社会の呪縛を離れ、独自な存在―「自立」との関係で正当化されるのではなく、自らの言葉で正当性を主張する存在―になる可能性を有している。」(p118)

7.援助の新たな正当化の可能性:「自立」に収斂されたニーズ→「品性ある生にとって本質的に必要とされるもの」としてのニーズ

・「労働に基盤を置いた社会的秩序が、その統制力を低下させるとすれば、援助がより一層直接的に社会的秩序の維持・形成に貢献することが求められる。」(p119)

・「・・・「社会的連帯」という手垢がついて誰も信じなくなった言葉に、援助の視点から実質的な意味をもたせる必要があるのではないか。そのためには、「自立」社会の失敗コストとしてしかとらえられなかった社会的扶養や、「自立」に収斂されないニーズへの対応を、新たな論理でとらえなおさなければならない。人間の富裕欲でもなく、そして理性でもない、別の人間の本質に光を当てることが必要なのである。」(p119−120)

・「さらに、単に帰属する場所を保障するだけでなく、理解し合える関係性を作り出す援助、言い換えれば、個々人の「立つ瀬」を保障し、もう労働だけでは得られなくなった「尊厳」を多様な関係性のなかで保障する援助が求められているのではないか。」

・「こうした帰属を保障する援助は、分業による社会的秩序の維持が困難な状況においては、援助が局所的で重層的な帰属を保障するがゆえに正当化される可能性がある。特定集団への帰属だけでは単に帰属集団への連帯しか生み出さないが、帰属を社会的に保障し、援助すること、さらには多様な帰属集団の差異を保障するシステムは、緩やかな「社会的連帯」を生み出し、社会的秩序の形成に貢献する可能性を有しているのである。」(p121)



作成:小林勇人  UP:20030729 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db2000/0206fk.htm
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